- 更新日 : 2024年10月17日
軽減税率制度に対応した請求書とは?様式と書き方を解説
軽減税率制度とは、2019年10月1日、消費税増税によって消費税が10%に引き上げられる中で、飲食料品や新聞等の消費税を例外的に8%に据え置く制度です。今回は、軽減税率制度の基本を確認し、制度に対応した請求書の様式や書き方について紹介します。ぜひ参考にしてみてください。
目次
軽減税率制度とはどんな制度?
そもそも軽減税率制度とはどんな制度なのでしょうか。一部商品の消費税を8%据え置きすることは分かりますが、もう少し掘り下げてみましょう。
軽減税率制度とは?
軽減税率制度とは、特定の商品の消費税率を一般の商品の消費税率より低く設定するルールです。2019年10月1日から制度が実施されたことで、お店には消費税率が8%の商品と10%の商品が並ぶようになりました。
軽減税率制度は、消費税率の引き上げによって高所得者より低所得者のほうが負担が大きくなることを防ぐために「低所得者の消費税負担を軽減する」目的で導入されました。
請求書の様式の変更とその採用期間
軽減税率制度の導入に伴って、消費税の課税事業者が仕入税額控除の適用を受けるために必要な請求書の様式が変更になります。この様式は、「区分記載請求書等保存方式」において定められたもので、2023年10月1日に適格請求書保存方式(いわゆるインボイス制度)が導入されるまで採用されます。「区分記載請求書等保存方式」では、消費税の区分に対応した帳簿や請求書等の保存が必要となってきます。
※仕入税額控除とは、納付する消費税額の算出にあたり、売上の消費税額から事業に必要な物品の購入やその他の経費について支払った消費税額を差し引いて計算する制度になります。
仕入税額控除について、詳しくは以下のページを参考にしてください。
軽減税率に必要な対応とは?
こうした軽減税率制度に対して、事業者として対応すべきことがあります。
先にも述べましたが、軽減税率制度では、適用税率ごとに区分した記帳や消費税計算が求められます。飲食料品・新聞を商品として扱う業界であれば、特に影響が大きく制度への対応が必要になります。
また、直接関係のない事業者であっても、食料品類や新聞を購入していたり、福利厚生や来客用の茶菓子、会議用の飲み物等の購入について、軽減税率制度の対象となるため、関係ないとは言えません。
今回は直接影響が大きい小売業や飲食業等の軽減税率制度への対応を例とし、以下の4点を紹介します。
(1)対象商品の確認
消費税率が8%に据え置かれるのは「酒や外食以外の飲食料品と週2回以上発行されている定期購読の新聞」となりますが、全てが対象となるわけではなく、例外もあります。
対象品目については、国税庁のホームページで確認することができます。

引用:軽減税率の対象品目①② よく分かる消費税軽減税率制度|国税庁
(2)請求書の様式の変更
複数税率(軽減税率制度と標準税率)が混在することにより、2023年9月30日までは、「区分記載請求書等保存方式」が導入されています。区分記載請求書保存方式は、かつての「請求書等保存方式」を踏襲しながら、区分経理に対応するために導入された方式です。
(3)軽減税率制度対応レジ
軽減税率制度では、8%と10%(複数税率)に対応するレジの導入が必要です。
「区分記載請求書」とは?
軽減税率制度のもとで採用されている請求書は「区分記載請求書」です。
消費税の課税事業者と取引をする場合には、必要になるものです。
区分記載請求書の基本事項
区分記載請求書で必要になる項目は以下のとおりです。
- 発行者の氏名または名称
- 取引年月日
- 取引の内容
- 受領者の氏名または名称
- 軽減税率制度の対象品目である旨
- 税率ごとに区分して合計した対価の額
区分記載請求書の書き方の具体例を確認しよう
区分記載請求書には取引ごとに8%または10%の税率を記載するか、以下の3つの方法で取引ごとの税率が分かるように記載します。
- 軽減税率制度の対象品に記号・番号を付けて区分する方法
- 軽減税率制度の対象品とそれ以外をまとめて表示する方法
- 軽減税率制度の対象の請求書とそれ以外の請求書を分ける方法
3つの方法について、具体的に見ていきましょう。
軽減税率制度の対象品に記号・番号を付けて区分する方法
軽減税率制度の対象であることを記号や番号を付けることで、別途表示する方法です。軽減税率制度が適用される商品に記号(※)を記載し、税率ごとの税込合計額を記載します。このとき、記号が軽減税率制度対象商品を示していることを記載しておきます。

引用:消費税軽減税率制度の手引き|国税庁、 帳簿及び区分記載請求書等の記載に係る留意点
軽減税率制度の対象品とそれ以外をまとめて表示する方法
軽減税率制度対象商品とそれ以外の商品を分けて税込合計額を算出し、1枚の請求書にまとめる方法になります。各消費税率の対象商品の税込合計額がいくらであるかも分かりやすく、請求書を受け取った事業者も整理しやすい方法です。

引用:消費税軽減税率制度の手引き|国税庁、 帳簿及び区分記載請求書等の記載に係る留意点
軽減税率制度の対象の請求書とそれ以外の請求書を分ける方法
軽減税率制度対象商品とそれ以外の商品の請求書を分けて作成する方法です。軽減税率制度対象商品の請求書については、記載された商品が軽減税率制度の対象である旨を記載しておく必要があります。

インボイス制度導入後は記載項目が変わる場合もある
2023年10月1日からのインボイス制度開始に伴い、事業者が適格請求書(インボイス)発行事業者となった場合、発行する請求書はこれまでの区分記載請求書から適格請求書に変わります。
適格請求書のフォーマットは、区分記載請求書と異なる箇所があります。適格請求書やインボイス制度について、詳しくは以下の記事をご覧ください。
インボイス制度開始後は適格請求書への対応を
2019年10月1日に軽減税率制度が始まり、消費税の税率は8%と10%の複数税率になりました。軽減税率の8%は食料品などに適用されています。また、請求書の様式は軽減税率対象品目や、各税率に対応する金額を記載する「区分記載請求書」が採用されるようになりました。
さらに、2023年10月1日からはインボイス制度の開始により、適格請求書発行事業者は区分記載請求書に代わって適格請求書を発行することになります。
区分記載請求書と適格請求書の違いを理解し、必要に応じて準備をしましょう。
参考:
よくわかる消費税軽減税率制度|国税庁
I 消費税の軽減税率制度の概要|国税庁
VI 区分記載請求書等の記載方法等|国税庁
よくある質問
軽減税率制度とはどんな制度?
軽減税率制度とは、特定の商品の消費税率を一般の商品の消費税率より低く設定するルールです。詳しくはこちらをご覧ください。
「区分記載請求書」とは?
消費税の課税事業者と取引をする場合には、必要になるものです。詳しくはこちらをご覧ください。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
※本サイトは、法律的またはその他のアドバイスの提供を目的としたものではありません。当社は本サイトの記載内容(テンプレートを含む)の正確性、妥当性の確保に努めておりますが、ご利用にあたっては、個別の事情を適宜専門家にご相談いただくなど、ご自身の判断でご利用ください。
関連記事
請求管理システムとは?導入メリットや比較検討のポイントを解説
取引先が拡大するにつれて、請求書の作成や入金確認業務には多くの工数が費やされます。請求管理システムを導入することで、自社の請求業務や債権管理を効率化でき、労働生産性向上にも効果的です。本記事では、請求管理システムの概要や種類、サービスを比較…
詳しくみる税理士の請求書の書き方
国家資格である税理士は、税理士試験に合格するなど一定の資格を得たうえで、日本税理士会連合会に備える税理士名簿に登録を受けてなることができます。税理士は、税務代理、税務署類の作成、税務相談、e-Taxの代理送信、その他各種税務相談などといった…
詳しくみる請求書の訂正-発行側が気をつけたい日付や金額ミス、防止策を解説
請求書は取引先に対して入金の支払いを求める書類であるため、記載する内容に不備が無いように作成する必要があります。 そこで今回は、請求書を発行する際に気をつけたいポイントを「金額」と「日付」に絞って解説すると同時に、不備があった場合の具体的な…
詳しくみるカメラマンの請求書の書き方を解説!テンプレートも
カメラマンという呼称には、フォトグラファー(写真家)とテレビなどの映像撮影を仕事とする人の両方が含まれますが、この記事ではフォトグラファーとしてのカメラマンの仕事と請求書の書き方を説明します。 カメラマンという職業には、特に法律で規定がある…
詳しくみるアルバイトの請求書テンプレートと書き方のポイントを紹介!
アルバイトの請求書は、基本的には発行するケースが少ないものの、アルバイトとして働く人が、提供したサービスや作業に対する対価を請求する際に使用することもあります。 当記事では、アルバイトの方向けに、アルバイトならではの請求書の書き方のポイント…
詳しくみる請求書をキレイに三つ折りする方法は?封筒に入れる際のマナーを解説
請求書は、商品やサービスの代金を徴収する際に用いる文書ですが、封筒に入れて送る場合、請求書を折っても問題ないでしょうか。請求書は、相手先への送り方についてもビジネス上のマナーがあります。この記事では、請求書の折り方や封筒に入れる際のマナーに…
詳しくみる