• 更新日 : 2025年5月19日

法人登記(商業登記・会社登記)とは?必要書類・自分でやる方法【簡単解説】

法人登記とは、法人の各種情報(例:社名、商号・所在地・代表者の氏名・事業の目的など)を、法務局に登録し、一般に開示できるようにするための作業のことです。

定款などの認証が終わり、資本金の払込みが完了したら、設立時の取締役や監査役の就任を経て、いよいよ法務局への登記申請という流れになります。

法人登記の際には、登録免許税の支払いが必要ですが、申請手続きは司法書士に依頼せず自分で行うことも可能です。本記事では、株式会社設立における登記申請の手続きについて解説します。

法人登記(商業登記・会社登記)とは?

法人登記は、法務局においては「商業・法人登記」と記載されます。商業登記は、商法、会社法などの法律により登記すべき事項を公示することによって、商号、会社などに関わる信用を維持し、かつ、取引の安全と円滑に資するための制度です。

商法には、登記申請によって商業登記簿に登記することが明記されており、登記の後でなければ第三者に対抗できないことが記されています。

また、会社法の第49条には、「株式会社は、その本店の所在地において設立の登記をすることによって成立する」とあるように、商業登記の手続きを経ないと株式会社は成立しません。

引用:会社法 | e-Gov法令検索

商業登記を行うと、登記した法務局から登記事項証明書が発行されます。この登記事項証明書(いわゆる登記簿)は、会社が正式に登記を行ったという証拠になるものです。

商業登記の目的は?

商業登記は、法律上、株式会社を成立させるために必要ですが、実務上は、この手続きを経て得られる登記事項証明書がさまざまな手続きにおいて必要となります。

例えば、会社として取引を開始するにあたっては、法人口座が必要です。一般的に金融機関においては、法人口座開設の際にその法人の登記事項証明書や印鑑証明書などの確認が求められます。

金融機関で融資を受ける場合や国の補助金を申請する場合、許認可や入札の手続きなどは、登記事項証明書の添付が必要となるケースが少なくありません。さらに、大きな取引や新規の取引を開始する際には、登記事項証明書が必要な場合があります。

取引先が登記事項証明書で公示されている会社の重要事項を把握することは、その後の取引を円滑に行うための第一段階といえるでしょう。

商業登記・法人登記の厳密な違いは?

一般的に商業登記と会社登記は、ほぼ同じような意味合いで使われます。設立した「会社」を登記するという意味で、商業登記ではなく、慣習的に「会社登記」と呼ぶことがあります。

商業登記は、商法の規定により商業登記簿に行う登記のことで、商人に関する取引上の重要事項を公示するための制度であり、登記によって取引の安全性と円滑化を図るものです。

これに対し、法人登記とは会社以外の「法人」を対象としますが、商業登記と同じような意味で使われているケースも見受けられます。つまり、商業登記は、下記のような会社などについて、法人登記はこれら会社以外の法人について、それぞれその名称や所在地、役員の氏名などを公示するための制度のことを指します。

したがって、次のように商業登記と法人登記は対象が異なります。

登記の種類対象となるもの
商業登記株式会社、合名会社、合資会社、合同会社
法人登記会社以外の一般社団法人、一般財団法人、NPO法人、社会福祉法人等

しかしながら、このような分別をせずに商業登記と法人登記を同じような意味で使っているケースがよく見受けられます。

法人登記(商業登記・会社登記)の流れは?自分でやることも可能!

では、商業登記を行うまでの手続きの流れについて説明します。商業登記は、以下の手順で行います。

1. 会社の設立方法を決める

会社の設立方法は、発起設立と募集設立の2種類です。

発起設立とは、会社設立に際し、発行する株式の全部を発起人が引き受ける方法です。これに対し、募集設立とは、設立に際して、発行する株式の一部を発起人が引き受け、残りは他から引受人を募る方法を指します。一般的には、手続きが比較的簡単にできる、発起設立を選ぶ方も少なくありません。

2. 定款を作成して認証を受ける

定款の「款(かん)」とは、法律の条文の条項や箇条書きを意味するものです。定款とは会社の根本の規則、つまり会社のプロフィールにあたります。定款には、絶対的記載事項といって、必ず記載しなければならない事項が次のように決められています。

定款に最低限定めなければならない事項(絶対的記載事項)

定款の絶対的記載事項
  • 目的
  • 商号
  • 本店の所在地
  • 設立に際して出資される財産の価値またはその最低額
  • 発起人の氏名または名称および住所

引用:会社法第二七条|e-Gov法令検索

この絶対的記載事項以外に、相対的記載事項、任意的記載事項などがありますが、絶対的記載事項の記載がなければ定款自体が無効です。株式会社の場合には、作成した定款は公証人の認証を受けることで初めてその効力が生じます。

3. 出資金(資本金)の払込み

出資金の払込みについては、次の順序で実施し、登記に備えましょう。

出資金の払込み手順
  1. 払込預金口座を決定する
    会社成立前のため、払込口座は発起人の個人口座を利用します。会社成立後には、そのお金を会社の法人口座に振り替える必要があるため、会社成立後に取引を継続する金融機関の口座にしておくのが適切です。
  1. 出資金の振り込みをする
    出資はあくまで「振り込み」によるものとします。いくら残高があったとしても、一度引き出して「振り込み」の形跡がわかるようにします。
  1. 払込みがあったことを証する書面を作成する
    振込みが完了すると、その通帳は出資金を払込んだ証明として使用します。通帳の所定部分をコピーし、「払込みがあったことを証する書面」を作成し、登記申請の添付資料とします。

4. 登記申請を行う

ここまでの手順をすべて行った後に、商業登記の申請を行うことになります。商業登記の申請を行った日が、会社の「設立年月日」となりますので、申請日に吉日を選ぶ方もいます。

法人登記(商業登記・会社登記)の必要書類は?

商業登記を行う際に必要な書類は、会社の形態や役員構成によって変わってきますが、基本的には、以下の書類が必要です。

株式会社設立登記申請書

様式は、発起設立か募集設立か、取締役会を設置するかしないかなどで変わってきますが、作成そのものは難しいわけではありません。書式は、法務省の公式ホームページからダウンロードするか、法務局の窓口で直接入手できます。

登録免許税納付用台紙

登録免許税に相当する収入印紙は登記申請書内への貼付でもよいとされますが、登録免許税納付用台紙に領収証書または収入印紙を貼り付けます。なお、この「登録免許税納付用台紙」は、A4縦置きの白紙で代用可能です。

登録免許税は現金で納付し、金融機関から領収証書を受け、台紙に貼付したものを法務局に提出します。登録免許税額は、3万円以下の場合には収入印紙での納付が認められます。また実務上、3万円を超えても収入印紙で納付するケースもあります。

収入印紙を貼り付ける際は、用紙の右側に寄せて貼り付け、収入印紙は割印をせずに貼りましょう。

定款

商業登記において、設立申請時には会社の定款の添付が必要です。

会社の設立においては、書面での定款の場合、定款認証のための公証役場提出用、登記申請のための法務局提出用、会社設立後においての会社保管用と少なくとも3通の定款が必要です。書面保存の定款であっても、パソコンで作成した場合は元データも保管しておきましょう。

印鑑届出書

会社の実印を登録するための書類です。実印は個人でも必要ですが、法人でも実印が必要です(登記申請をオンラインで行うときは印鑑の提出は任意)。印鑑届出書の詳細は、以下を参考にしてください。

代表取締役の就任承諾書

設立登記申請においては、添付資料として設立時の代表取締役を選定したことを証する書面が必要です。発起設立の場合には発起人が設立時取締役を選任し、募集設立の場合には創立総会の決議によって設立時取締役を選任します。

代表取締役は、これら選任された取締役の中から選任され、就任を承諾する旨の「代表取締役就任承諾書」を作成します。

取締役の就任承諾書

設立登記申請においては、添付資料として設立時の取締役を選定したことを証する書面が求められます。就任承諾書の形式を取らなくても、創立総会などによる選任の決議書の記載をもって就任承諾書の添付に代えることも可能です。

その場合、「就任承諾書は設立時取締役選任決議書の記載を援用する」などと記載して提出します。

監査役の就任承諾書

設立登記申請においては、添付資料として設立時の監査役を選定したことを証する書面が必要となります。取締役の就任承諾書と同様、就任承諾書の形式を取らなくても、創立総会などによる選任の決議書の記載をもって監査役の就任承諾書の添付に代えることができることもあります。

役員の印鑑証明書

設立時に取締役個人の印鑑証明書が必要となります。印鑑証明書とは、印鑑が市役所などに登録されている実印であることを証明するための書類です。

実印とは、市役所などに申請をして受理をされている印鑑のことをいいます。ただ、印鑑証明書の有効期限は発行日から3カ月なので、有効期限を事前に確認しましょう。

出資金(資本金)の払込証明書

先述のように、出資金を振り込んだ証明書(通帳のコピー)を作成して出資金の払込証明書として、添付します。これらの必要書類を作成し、法務局に申請を行うことにより、審査を経て登記事項証明書の発行が可能です。

法人登記(商業登記・会社登記)の申請方法

法人登記(商業登記・会社登記)の申請には、窓口で申請する方法、郵送で申請する方法、オンラインで申請する方法の3つがあります。

法務局の窓口で申請

法人登記の申請は、会社の本店所在地を管轄する法務局(登記所)で行います。管轄登記所で、指定の申請書の記載を行い、添付書類とともに窓口に提出します。窓口の場合、その場で申請受付が完了です。

郵送

法人登記の申請は、郵送も可能です。郵送申請の場合、窓口提出と同様に、管轄登記所に申請書や添付書類を送付します。

記入漏れなど補正が必要な場合は、補正の申請書や添付書類も郵送できます。申請書を郵送で提出する際は、到達を確認できる書留などを利用し、必ず連絡先を記載して提出しましょう。

オンライン

法人登記は、申請用総合ソフトを利用することでオンライン申請できます。申請用総合ソフトは、法務省の登記・供託オンライン申請システムで取り扱われているソフトウェアです。以下の流れでオンライン申請をします。

法人登記のオンライン申請手順
  1. 推奨環境を満たしているか確認する
  2. 登記・供託オンライン申請システムのユーザー登録を行う
  3. 登記・供託オンライン申請システムのページで申請用総合ソフトをダウンロードする
  4. 申請用総合ソフトにログインする
  5. 申請書情報を作成する
  6. 添付書類に電子署名を付与する
  7. 添付書類情報を添付する
  8. 申請書情報に電子署名を付与する
  9. 申請書情報を送信する
  10. 登録免許税を納付する
  11. 添付書面を提出する

登記申請から登記完了までは、いずれの方法でも1週間前後かかるとされています。そのため、余裕を持って申請をしましょう。

法人登記(商業登記・会社登記)の後に取得するとよい書類

法人設立後は、銀行の法人口座の開設や借入契約、取引先との契約など、さまざまな手続きが発生します。

法人の手続きで提出を求められることが多いのは、登記事項証明書や印鑑証明書です。いずれも、法人登記が完了した段階で法務局の窓口やオンラインなどで取得でき、登記が完了すると法務局から登記事項証明書を受け取ることができます。

登記事項に変更が生じたときも商業登記が必要!

法人を設立するとき以外にも、さまざまなシーンに登記が必要です。具体的には以下のような場合です。

1. 目的変更や住所変更

会社の事業目的に変更があった場合や、会社の本店が移転に伴い住所が変更になった場合には、変更登記を行います。

2. 役員変更

役員が辞任した場合や、新しく役員が就任した場合など役員に変更があった場合、変更登記を行います。

3. 法人の解散時

会社の解散時にも登記が必要です。漏れがないよう確実に対応しましょう。

法人登記(商業登記・会社登記)をしないとどうなる?

法人登記をしないと、会社として認められません。会社を設立するには法人登記が必要です。

法人登記後に所在地の変更など登記内容に変更があった場合は、変更が発生した日から2週間以内に変更登記申請をすることが定められています。変更登記を忘れる、または怠ると、代表者個人に対して100万円以下の過料が課される可能性もあるため、注意しましょう。

商業登記にかかる費用は?

株式会社が誕生するまでにはいろいろな手続きがあり、定款の作成に始まり、認証、そして設立登記のための登録免許税などで出費があります。

株式会社の主たる出費としては、次の費用を見込んでおけばよいでしょう。

株式会社の登記までの費用費用内訳概算額
定款の認証公証人への手数料
50,000円※1
(書面の場合)定款貼付※2収入印紙代
40,000円
設立登記登録免許税
(資本金の7/1,000)
最低150,000円

※1 資本金の額に応じて、100万円未満は3万円、100万円以上300万円未満は4万円であり、その他の場合は5万円となります。
※2 電子定款の場合には収入印紙は不要です。

このほか、募集設立の場合には払込保管証明書として、およそ2万5,000円が必要となります。

商業登記にかかる詳細は、法人設立で最低限必要な費用と、株式会社・合同会社の違いをご参照願います。

商業登記は司法書士に依頼できる?

司法書士に登記申請を依頼するケースは少なくありません。司法書士は、登記の手続きだけでなく、定款の作成の相談にも対応できるため、自社に適切な手続きを進めることができます。

また、定款の作成や認証を含めてどの範囲までを依頼するか、会社の規模などによっても費用は異なります。そのため、司法書士に依頼を検討する場合、事前に相談し、見積りを取ることが不可欠です。

商業登記は意外と簡単にできる!

商業登記というと、人によっては難しいイメージがあるかもしれませんが、一つずつ確認しながら進めていけば、意外と簡単に思われるかもしれません。

法務局の担当者に相談しながら、時間に余裕を持って準備を進めると、必要な書類も整理することができます。登記の審査中に補正が必要となった場合も、法務局から連絡が入ります。

費用をかけて専門家に依頼する前に、自分で手続きを進めてみるのも、これからのビジネスを動かすうえで貴重な経験になるでしょう。

よくある質問

商業登記とはなんですか?

商業登記は、商法、会社法などの法律により登記すべき事項を公示することによって、商号、会社等に係る信用を維持し、かつ、取引の安全と円滑に資するための制度です。詳しくはこちらをご覧ください。

商業登記と法人登記はどう違う?

商業登記は、株式会社、合同会社、合資会社、合名会社等を対象として、法人登記はこれら会社以外の法人を対象として、それぞれ商号や所在地、役員の氏名などを公示する制度のことを言います。詳しくはこちらをご覧ください。

商業登記にかかる費用とは?

細かな費用を除き、登記費用として主なものは登録免許税(最低150,000円)であり、司法書士に依頼した場合は別途、報酬が必要です。詳しくはこちらをご覧ください。


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