- 作成日 : 2025年12月11日
合同会社の解散後に残ったお金はどうなる?分配方法、税金、スケジュールまで解説
合同会社(LLC)の解散・清算を検討する際、会社に残ったお金(資産)がどうなるかは、出資者(社員)にとって大きな関心事です。結論から言えば、会社の債務をすべて弁済した後に残った財産(残余財産)は、原則として出資者である社員に分配されます。
しかし、その分配方法や税金の取り扱いには明確なルールが存在します。これを知らずに手続きを進めると、予期せぬトラブルや税務署からの指摘、余分な納税が発生する可能性もあります。
本記事では、合同会社を解散した時に残ったお金の分配方法、それにかかる税金(みなし配当・法人税)、そして一人合同会社の場合も含めた解散・清算の具体的な手続きとスケジュールについて、分かりやすく解説します。
目次
合同会社の解散後に残ったお金(残余財産)はどうなる?
合同会社が解散すると、まず清算手続きに入り、すべての債務(借入金や未払金など)を弁済します。そのすべてを支払い終えても会社に残ったお金や資産が「残余財産」であり、これが最終的に出資者である社員に分配されます。
1. 清算手続きで資産と負債を整理する
会社が解散すると、通常の営業活動は停止し、会社の法律関係を整理する「清算手続き」が開始されます。清算人(通常は元の業務執行社員)が中心となり、以下の業務を行います。
これらのステップを経て、すべての負債を返済し終えても会社に残った財産(現金や、現金化できなかった不動産なども含む)が「残余財産」と呼ばれます。
2. 残余財産は出資者である社員に分配される
残余財産は、その会社の出資者である「社員」に分配(返還)されます。
合同会社は出資者である社員が会社の所有者です。したがって、会社を清算した結果として残った財産は、所有者である社員に返還されるのが原則です。
※ここでいう「社員」とは、従業員のことではなく、株式会社でいう「株主」に相当する「出資者」を指します。
もし会社が債務超過(負債が資産を上回る)の状態であれば、残余財産は発生しないため、社員への分配も行われません。
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合同会社の残余財産の分配割合は?
残余財産の分配割合は、まず定款の定めが最優先され、定款に定めがない場合は「各社員の出資比率」に応じて決定されます。
1. 定款の定めが最優先
合同会社は「定款自治」が広く認められており、利益の配当だけでなく、解散時の残余財産分配についても定款で自由に決めることができます(会社法)。
例えば、設立時に作成した定款に、「残余財産の分配は、出資比率に関わらず社員Aに60%、社員Bに40%を分配する」といった定めがあれば、その記載内容が最優先されます。
2. 定款に定めがない場合の分配方法
定款に特に残余財産の分配に関する定めがなければ、法律の原則に基づき、各社員の出資割合(出資比率)に応じて公平に分配されます。
- 条件:資本金500万円(社員Aが300万円、社員Bが200万円を出資)
- 出資比率:社員A 60%、社員B 40%
- 残余財産が1000万円あった場合:
- 社員Aへの分配額:1000万円 × 60% = 600万円
- 社員Bへの分配額:1000万円 × 40% = 400万円
解散を決議する前に、自社の定款に「残った財産の分け方」に関する規定があるかどうかを必ず確認する必要があります。
合同会社の残余財産に税金はかかる?
残余財産の分配においては、「社員(個人)」と「会社(法人)」の両方で税金の問題が発生します。特に社員側では「みなし配当」に注意が必要です。
社員(個人)側|みなし配当として所得税がかかる
分配額が「当初の出資額(資本金等の額)」を超える部分は、「みなし配当」として所得税・住民税の課税対象となります。
税務上、社員が受け取る残余財産は、以下の2つに分けて考えられます。
会社(清算人)は、このみなし配当部分に対して、20.42%の源泉徴収を行い、税務署に納付する義務があります。社員は、源泉徴収された後の金額を受け取り、原則として翌年に確定申告を行います。
会社(法人)側|清算中の所得に法人税がかかる
清算手続き中に会社の資産を売却して利益(譲渡益)が出た場合、それらは法人の所得として法人税等が課税されます。
- 課税の理由
清算手続きのために在庫商品や固定資産(不動産、車両など)を売却した際、その資産の帳簿価額よりも高く売れれば「売却益」が発生します。この売却益は法人の所得となり、法人税・住民税・事業税の課税対象です。 - 必要な申告
清算中の法人は、通常の事業年度とは異なる「清算事業年度」として税務申告が必要です。残余財産が確定した時点で「清算確定申告」を行い、税額を計算して納税します。 - 注意点
社員へ残ったお金を分配する前に、これらの法人税等をすべて納付し終えている必要があります。
合同会社の解散・清算手続きの流れは?
合同会社の解散・清算手続きは、法務局への登記や税務署への申告など、法律に定められたステップに沿って進める必要があり、最短でも約3ヶ月はかかります。
- 解散の決定と解散登記
総社員の同意(定款に別段の定めがなければ)によって解散を決定します。決定から2週間以内に、管轄の法務局に「解散登記」を申請します。 - 解散事業年度における確定申告書の提出
解散日までの事業年度については、解散日に事業年度が終了したものとみなされるため、解散日から2ヶ月以内に「解散確定申告書」を管轄税務署、都道府県税事務所、市区町村役場へ提出し、納税を行います。 - 各自治体へ解散した旨の届出書の提出
税務署、都道府県税事務所、市区町村役場へ解散した旨の届出を行います。 - 清算人の選任と清算人登記
清算業務(財産整理や債務弁済など)を行う「清算人」を選任し、「清算人選任登記」を行います。定款に定めがなければ、通常は業務執行社員がそのまま清算人となります。 - 現務の結了と財産調査
清算人は、会社の資産と負債を詳細に調査し、「財産目録」および「貸借対照表」を作成し、社員の承認を得ます。 - 債権者保護手続き(官報公告・個別催告)
会社の債権者に対し、債権を申し出るよう呼びかけます。- 官報公告:官報に、解散した旨と、2ヶ月以上の期間内に債権を申し出るべき旨を掲載します。
- 個別催告:会社が把握しているすべての債権者(金融機関、取引先など)には、個別に書面で同様の通知(催告)を行います。
- 債務の弁済
公告・催告期間が終了した後、申し出があった債権や会社が把握していた債務(借入金、税金、社会保険料など)を、会社の財産から支払います。 - 残余財産の分配
すべての債務を弁済し終えて、なお財産(資産)が残った場合、その「残余財産」を社員に分配します。「みなし配当」が発生する場合は、源泉徴収の手続きも同時に行います。 - 決算報告書の作成と承認
清算人は、清算事務がすべて完了したら「決算報告書」を作成し、社員の承認を得ます。 - 清算結了の登記と税務申告
- 登記:社員の承認から2週間以内に法務局へ「清算結了登記」を申請します。これが受理されると、会社の登記簿は閉鎖され、法的に会社が消滅します。
- 税務:残余財産が確定した日から1ヶ月以内に税務署へ「清算確定申告書」を提出し、納税します。あわせて、税務署や都道府県税事務所などに「異動届出書(廃止届)」を提出します。
合同会社が赤字・債務超過だった場合はどうする?
債務超過(資産より負債が多い)の場合、社員への財産分配は一切ありません。会社の資産はすべて債権者への返済に充てられます。
社員は「有限責任」のため、原則として出資額以上の返済義務を負いません。会社の資産で返済しきれない債務は、会社が消滅すればなくなります。
社員個人が会社の借入金などで「連帯保証人」になっている場合、会社が消滅しても、個人の返済義務はそのまま残り続けます。
債務超過が判明した時点で、清算人は通常の清算手続きを中止し、裁判所に「破産」または「特別清算」を申し立てる法的な義務があります。これは債権者を公平に扱うためです。
合同会社解散時の残余財産分配を正しく理解しよう
合同会社の解散時、債務をすべて完済した後に「合同会社に残ったお金」(残余財産)は、定款の定めまたは出資割合に応じて、出資者である社員に分配されます。
しかし、その分配額が当初の出資額を超える部分については「みなし配当」として税金(所得税)がかかる点に、最大の注意が必要です。
また、残った資産の分配に至るまでには、「解散登記」「2ヶ月以上の債権者保護手続き」「清算確定申告」など、法律と税務に則った多くの厳格な手続きとスケジュール管理が求められます。
特に社員が一人の場合や、自分で手続きを進めようとすると、税務署への申告漏れや法務局への登記不備が起こりがちです。合同会社の解散・清算は、司法書士や税理士といった専門家の助言を受けながら、慎重に進めることを強くおすすめします。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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