• 作成日 : 2025年11月6日

飲食店の税金対策完全ガイド|個人事業主から法人まで使える10の節税方法

飲食店の経営において、利益を最大化するためには売上向上だけでなく、適切な「税金対策」が不可欠です。しかし、何が経費になるのか、どんな制度が使えるのか、複雑で分かりにくいと感じる経営者も少なくありません。

この記事では、飲食店が支払う税金の基本をふまえ、個人事業主から法人まで明日から実践できる具体的な10個の税金対策を、初心者にもわかりやすく解説します。

まずは基本!飲食店経営で支払う税金の種類

税金対策の前に、どのような税金を支払うのかを把握しましょう。主に以下の税金が関係します。

  • 所得税(個人の場合)/法人税(法人の場合):利益(所得)に対してかかる税金。
  • 消費税:お客様から預かった売上に対する消費税から、経費で支払った消費税を引いた金額を納付。
  • 個人事業税:法定課税業種に該当し、事業所得が年間290万円(事業主控除額)を超える場合にかかる税金。
  • 住民税:都道府県や市区町村に納める税金。

これらの税額は、利益(所得)を基準に計算されるため、「課税所得をいかに合法的に抑えるか」が税金対策の基本となります。

【実践編】飲食店の税金対策10選

ここからは、飲食店の経営者が実践すべき具体的な税金対策を10個に絞って解説します。

対策1:経費を漏れなく計上する

節税の王道は、事業にかかった費用を漏れなく「経費」として計上することです。領収書やレシートは必ず保管し、帳簿に記録しましょう。飲食店で経費にできるものの例は以下のとおりです。

  • 食材や飲料の仕入れ代
  • 従業員の給与、福利厚生費
  • 店舗の家賃、水道光熱費
  • 広告宣伝費(グルメサイト掲載料など)
  • 店舗兼住宅の家賃や通信費(事業で使う割合分を「家事按分」して計上)
  • 同業者の店舗への視察・調査費用(事業目的が明確な場合)

対策2:青色申告で最大65万円の特別控除を受ける

個人事業主の場合、確定申告には「白色申告」と「青色申告」があります。青色申告は複式簿記での記帳が必要ですが、最大65万円の所得控除という大きな節税メリットがあります。事前に税務署への届出が必要ですが選択すべき制度です。

出典:No.2072 青色申告の特典|国税庁

対策3:家族への給与を経費にする(青色事業専従者給与)

青色申告をしている個人事業主は、生計を一つにする家族(15歳以上)に支払った給与を「青色事業専従者給与」として全額経費にできます。ただし、妥当な金額であることや、事前に届出を提出するなどの条件があります。

対策4:小規模企業共済で退職金を準備しながら節税する

個人事業主や小規模企業の役員のための「退職金制度」です。毎月の掛金(最大7万円)が全額、課税所得から控除されます。将来の自分のための積立をしながら、所得税や住民税を大きく節税できる非常に有効な制度です。

対策5:経営セーフティ共済(倒産防止共済)でリスクに備える

取引先の倒産などに備えるための共済制度です。毎月の掛金(最大20万円)を全額経費(法人の場合は損金)に算入できます。なお、掛け金の積立限度額は800万円となります。40ヶ月以上掛金を支払えば、解約時に掛金が100%戻ってくるため、利益を将来に繰り延べられる効果があります。ただし、解約返戻金は益金として課税対象になり、税負担が生じる場合もある点には注意が必要です。

対策6:所得控除を最大限に活用する

iDeCo(個人型確定拠出年金)の掛金、ふるさと納税の寄付金、生命保険料、医療費なども所得控除の対象です。これらを活用することで、課税所得をさらに圧縮できます。会社員から独立した方は見落としがちなので、使える控除がないか必ず確認しましょう。

対策7:簡易課税制度を選択して消費税を節税する

2年前の課税売上高が5,000万円以下の場合、「簡易課税制度」を選択できます。これは、実際の仕入れにかかった消費税を計算する代わりに、飲食業なら売上にかかる消費税の60%を「みなし仕入率」として控除できる制度です。人件費の割合が高いなど、実際の経費率が低いお店ほど節税につながる可能性があります。

対策8:赤字を繰り越して将来の黒字と相殺する

個人事業主が青色申告をしている場合、事業で出た赤字(純損失)を翌年以降3年間にわたって繰り越し、将来の黒字と相殺できます。これにより、利益が出た年の税負担を軽減できます。開業当初は赤字になりやすいため、非常に重要な制度です。法人の場合の欠損金繰越は10年間可能となっています。

対策9:法人化(法人成り)して税率を最適化する

個人の所得税は利益が増えるほど税率も上がる「累進課税」ですが、法人税の税率はほぼ一定です。一般的に、課税所得が800万円~1,000万円を超えると、法人化した方が税負担は軽くなる傾向があります。自分への給与を「役員報酬」として経費にできるのも大きなメリットです。

対策10:設備投資で節税する(中小企業経営強化税制)

新しい厨房機器の導入や内装工事などを行う際、「中小企業経営強化税制」といった制度を活用できる場合があります。中小企業経営強化税制では、設備取得に関して即時償却または取得価額の最大10%(資本金3,000万円超法人は7%)の税額控除を受けることが可能です。ただし、経営力向上計画の認定や事前申請などの要件があります。

飲食店が税金対策で注意すべきこと

節税と脱税は全く異なります。節税は法律で認められた方法で税負担を軽くすることですが、脱税は売上を隠すなどの違法行為であり、重いペナルティが課されます。とくに現金商売が中心のスナックやバーなどは、売上管理の正確性が税務調査で厳しく見られる場合があります。日々の記帳を正確に行うことが、何よりの防御策となります。

適切な税金対策が経営の安定につながる

飲食店の税金対策は、単に支払う税金を減らすためのテクニックではありません。経費を正しく管理することは日々の経営状況の把握につながり、共済制度への加入は将来のリスクに備えることになります。

そして、適切なタイミングでの法人化や設備投資は、事業のさらなる成長を後押しします。目先の利益だけでなく、長期的な視点で自店に合った税金対策を計画的に実行していくことが、厳しい競争を勝ち抜き、お客様に愛され続ける「潰れない店」を作るための重要な経営判断となるのではないでしょうか。


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