- 更新日 : 2025年8月6日
離職年月日とは?退職日や喪失日との違いや、決定後の手続きの流れを解説
離職年月日とは、従業員と事業主との雇用関係が終了した日の翌日を指します。この日付は、雇用保険の手続きや各種証明書の作成において利用されます。しかし、退職日や雇用保険の資格喪失日など、似たような日付が多く、混乱する担当者も少なくありません。この記事では、離職年月日の意味、退職日や喪失日との違い、そして雇用保険被保険者資格喪失届や離職証明書への正しい記載方法を解説します。
目次
離職年月日とは?
離職年月日は「雇用契約が終了した日の翌日」のことです。雇用保険の基本手当(失業給付)の受給資格期間を計算するうえで基準となる日となります。ここでは、類似の言葉とその違いについて解説します。
離職年月日と退職日との違い
従業員が3月31日をもって退職する場合、退職日は3月31日の扱いになりますが、離職年月日は4月1日となります。「翌日」という考え方は、雇用保険の受給資格期間の計算に関係するため、正しく理解する必要があります。
離職年月日と喪失日との違い
雇用保険の資格喪失日とは、雇用保険の被保険者資格を失う日を指します。離職年月日は雇用契約が終了した日の翌日のことであり、原則として雇用保険の資格喪失日と同じ日となります。つまり、雇用保険の被保険者でなくなる日、という意味合いです。
ただし、例外的に雇用関係が終わっていても賃金支払いの関係で資格喪失日が遅れるケースや、長期休職中で賃金が支払われていない期間があっても、雇用関係が継続していれば被保険者資格も継続となります。両者とも原則として同じではあるものの、必ずしも一致するとは限らないことがあるため、注意が必要です。
離職年月日が使われる場面
離職年月日は主に、雇用保険の基本手当(失業給付)の受給資格を判断する際に用いられます。失業給付は、原則として離職した日からさかのぼって2年間の間に、被保険者期間が通算して12ヶ月を超えていることが必要です。この被保険者期間とは、雇用保険の被保険者であった期間のうち、離職日から1ヶ月ごとに区切った各期間において、賃金支払いの基礎となる日数が11日以上ある月を指します。
離職年月日は雇用保険の資格喪失日であり、失業給付の支給開始日や受給期間の起算点に影響しますが、直接的に被保険者期間の計算基準となるのは「離職日」となります。
また、離職票や雇用保険被保険者資格喪失届といった公的な書類にも、離職年月日の記載が求められます。
これらの書類が正しく作成されていないと、退職した従業員が失業給付の受給に影響を与えるため、慎重に手続きを進めましょう。
退職まで欠勤や有給の場合でも離職年月日に影響ある?
従業員が退職するまでの期間に、欠勤や有給休暇の取得、あるいは長期休業があった場合でも雇用契約が終了した日(退職日)の翌日が離職年月日となります。
実際に出勤していなかったとしても、契約が継続していれば、その期間の最終日が「退職日」、翌日が「離職年月日」となります。
例えば、以下のようなケースです。
- 最終出勤日:4月10日
- 有給休暇消化期間:4月11日〜4月30日
- 退職日(雇用契約終了日):4月30日
- 離職年月日:5月1日
有給休暇を使い切ってからの退職や欠勤を伴うケースでも、雇用契約の終了日が確定していれば、その翌日が離職年月日になります。
ここで注意したいのは、その期間が雇用保険の「被保険者期間」として算入されるかどうかです。賃金の支払いが伴う日(=給与が発生する日)が「被保険者期間」に該当します。
有給休暇は賃金が発生するため、被保険者期間に含まれます。一方で、無給の欠勤や休職(病気・育児・介護など)中は、雇用関係が継続していても、原則として賃金支払いの基礎となる日数が不足するため、被保険者期間として算入されない場合があります。
つまり、書類上の離職年月日は変わらなくても、雇用保険の受給資格や必要な被保険者期間を判断するうえで、給与の有無が大きく影響する点に注意が必要です。
離職年月日が決まった後に行うべき手続き
離職年月日が確定したら、人事・労務担当者は速やかに雇用保険に関する手続きを進める必要があります。これらの手続きは、退職者が失業給付を適切に受け取れるようにするため、また、雇用主が法的義務を果たすためにも不可欠です。
離職年月日が確定した後の流れは、主に退職者への確認、雇用保険関連の書類の作成になります。
退職者に離職票が必要か確認する
まず、退職者に対して離職票が必要かどうかを必ず確認しましょう。離職票は、ハローワークで失業給付の手続きを行う際に必要な書類です。
退職者がすぐに再就職する、または雇用保険の被保険者期間が短く受給資格を満たさない場合などは、離職票を希望しないケースもあります。ただし、後日必要になる場合もあるため、必ず事前に意思確認を行い、希望があれば作成するとよいでしょう。
雇用保険被保険者資格喪失届を作成・提出する
離職年月日が決まったら、雇用主は雇用保険被保険者資格喪失届を作成し、退職日の翌々日から10日以内にハローワークへ必ず提出します。この届出は、従業員が雇用保険の被保険者資格を喪失したことを行政に通知するもので、「離職年月日=資格喪失日」となるのが一般的です。
提出が遅れると、退職者が失業給付の手続きが遅れたり、または不利益を被るおそれがあるため、期限内に対応することが重要です。
離職票が必要な場合は離職証明書を作成する
退職者が離職票を希望する場合、雇用保険被保険者離職証明書(離職証明書)を併せて作成し、前述の喪失届と一緒にハローワークへ提出します。
離職証明書には、退職理由や退職前の賃金、勤務状況などを正確に記載する必要があります。これをもとにハローワークが離職票を発行するため、虚偽や記載漏れがあると失業給付に支障が出る可能性もあります。記入内容は、必ず本人に確認を取りながら、正確に作成しましょう。
雇用保険被保険者資格喪失届の書き方のポイント
雇用保険被保険者資格喪失届は、従業員の退職により雇用保険の被保険者資格を喪失したことをハローワークに届け出るための重要な書類です。この届出は、失業給付などの手続きに直結するため、正確な作成と期限内の提出が不可欠です。
雇用保険被保険者資格喪失届の作成時に注意すべき主な項目は以下のとおりです。
1. 被保険者番号の正確な転記
従業員の雇用保険被保険者証に記載されている番号を、誤字脱字がなく正確に記載します。記載ミスがあると処理の遅れが生じる可能性があります。
2. 氏名・生年月日の確認
従業員の氏名と生年月日は、住民票・運転免許証・マイナンバーカードなど公的な本人確認書類に基づいて記入します。漢字の表記や旧字体にも注意しましょう。
3. 資格喪失年月日の記載
原則として、雇用契約が終了した日の翌日=離職年月日を資格喪失日として記載します。
例:退職日が6月30日なら、喪失日は7月1日
4. 喪失理由の選択
「自己都合退職」「会社都合退職」「定年退職」など、該当する退職理由の番号に○を記入します。選択を誤ると離職票の内容に影響し、失業給付の受給区分に誤解を与える場合があります。
5. 賃金月額の記入
退職直前の6ヶ月間の賃金総額(賞与、退職金、結婚祝金などの臨時的な賃金を除く)を記載します。これは離職票の記載内容にも連動するため、基本手当の算定基礎となる「賃金日額」を計算するために用いられ、賃金日額は、離職日の直前6ヶ月の賃金総額を180で割って計算します。そのため、給与明細や賃金台帳をもとに正確に計算する必要があります。
記入例や様式の確認も忘れずに
不安がある場合は、厚生労働省やハローワークの公式ホームページに掲載されている最新の様式や記入例を参照しましょう。誤った記載や不備があると再提出を求められ、退職者の手続きに遅れることもあるため、確認しながら作成することが重要です。
参照:事業主の行う雇用保険の手続き|厚生労働省
参照:雇用保険被保険者資格喪失届|ハローワークインターネットサービス
離職証明書の書き方のポイント
離職証明書(雇用保険被保険者離職証明書)は、退職者が雇用保険の基本手当(失業給付)を受けるために必要な離職票の発行に用いられる基礎書類です。
この書類に記載された内容は、受給資格の有無や給付額、給付制限の有無などに直接影響を与えるため、正確かつ事実に基づいた記載が不可欠です。
離職証明書を作成する際は、特に以下の項目に注意して記載しましょう。
1. 離職年月日の正確な記載
離職年月日は、雇用契約が終了した日の翌日を記載します。
例:退職日が3月31日であれば、離職年月日は4月1日
被保険者資格喪失届と一致させることが重要です。
2. 離職理由の明確化と具体的な記述
離職理由には、自己都合退職・会社都合退職・契約期間満了・解雇などの区分を明示し、必要に応じて補足説明を具体的に記載します。
例えば、「業績悪化による希望退職募集に応じた」など、状況を明らかにすることで、ハローワークによる正確な判断につながります。
この理由は、給付制限の有無(待機期間・支給開始時期)に直結するため、事実に基づいた内容を記載する必要があります。
3. 賃金支払状況の記載(過去2年分)
離職日以前の過去2年間における各月の賃金支払状況を記載します。これは、失業給付の算定基礎となる「賃金日額」の計算に使われます。
空白の月や賃金支払基礎日数が不足する月がある場合も、その期間について賃金が支払われていたか、雇用関係が継続していたかなどを詳細に記載し、必要に応じて理由を付記することが求められます。
これは、ハローワークが被保険者期間を正確に判断し、失業給付の受給資格の有無や期間を決定するために重要な情報となります。
4. 支給された賃金の内訳も記入
単に総額を記載するのではなく、基本給・各種手当・残業代などの内訳を具体的に記入します。賃金の内訳が明確になるため、ハローワーク側の誤解や処理ミスを防げます。
作成前に様式と記入例を確認する
離職証明書は、内容次第で退職者の給付資格や金額に影響を与えるため、記載ミスや不備は厳禁です。
作成にあたっては、厚生労働省やハローワークの公式サイトに掲載されている記入例・ガイドラインを必ず確認しましょう。退職者本人への確認を行いながら作成することで、トラブルの防止にもつながります。
離職年月日を正しく理解し、適切な退職手続きを
離職年月日は、雇用保険の給付に直結する重要な日付です。退職日や喪失日との違いを正確に理解し、雇用契約終了日の翌日が離職年月日となる原則を踏まえて、関連書類には正しい情報を記載しましょう。
適切な手続きは、退職者の安心につながるだけでなく、企業の信頼性向上にも寄与します。迷った場合は、ハローワークや社労士など専門機関に相談することをおすすめします。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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