• 更新日 : 2025年3月5日

テレワーク中でも残業代は発生する!正しい申請方法や禁止の理由を解説

テレワーク中であっても残業についてのルールは、基本的には出社時と変わらないため、残業代が発生します。

しかし、場合によっては残業代が発生しない場合もあり、残業の際は注意が必要です。

この記事では、テレワーク中の残業のルールや、正しい申請方法、会社が残業を認めない場合の対応を解説します。

テレワーク中でも残業代は発生する!厚生労働省の資料を元に解説

原則的にテレワーク中であっても残業代は発生します。

なぜなら、労働基準法は出社時でもテレワークをしているときでも、労働者に適用されるためです。

また、たとえ勤務場所が自宅ではなくサテライトオフィスやカフェであっても、残業代の支払いの規定は変わりません。

ただし、残業の申請方法が適切でないと、残業と認められない場合もあるため気をつけましょう。

参考:在宅勤務での適正な労働時間管理の手引│厚生労働省

法定内残業と法定外残業の割増賃金の違い

テレワーク中でも残業代は発生しますが、出社時と同様に法定内残業については原則的に割増賃金が発生しません。

残業には「法定内残業」と「法定外残業」があり、割増賃金が発生するのは例外を除き法定外残業の場合のみです。

法定内残業……会社で定められた勤務時間(所定労働時間)を超えているものの、法定労働時間(1日8時間、週40時間)の範囲内におさまっている残業

法定外残業……法定労働時間を超えた労働時間(時間外労働)

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たとえば1日7時間の所定労働時間が設定されている企業では、7時間以上8時間以内の労働は法定内残業となります。

この場合、基本給を元にした通常の時給分の残業代は発生しますが、割増賃金に関する特別な規定が就業規則にない限り、割増賃金の対象にはなりません。

一方で、1日8時間、または週40時間を超えた労働は法定外残業となり、必ず割増賃金が発生します。

▼割増賃金についての一覧

労働の種類説明割増率
時間外労働法定労働時間(1日8時間・週40時間)を超える労働25%
深夜労働22時から翌日5時までの労働25%
休日労働法定休日(週1日)における労働35%
時間外労働+深夜労働22時以降の時間外労働(時間外労働25%+深夜労働25%)50%
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出典:割増賃金の計算方法│厚生労働省

テレワークで残業をする際は、法定内残業と法定外残業の違いを理解しておきましょう。

関連記事:「法定内残業・法定外残業とは?違いや割増率と賃金の計算方法、具体例を解説」

テレワーク中に残業代が出ない3パターン

この章で説明する3パターンでは、残業代が発生しないため注意しましょう。

①会社から残業禁止の指示がある

会社から残業禁止の指示が出ている場合、基本的に残業代は発生しません。

テレワーク中に会社から残業禁止の指示があったり、就業規則に記載されている場合、その指示は業務命令とみなされます。

残業禁止の業務命令が出ていると、従業員は勝手に残業を行うことはできません。

そのため、自己判断で勝手に残業を行っても、その時間は残業時間と認められない可能性が高いです。

ただし、例外として下記のような場合は残業として認められる可能性があります。

  • 残業禁止についての周知が十分にされていない
  • 非常に厳しい納期が設定されており、原則残業禁止でも残業せざるを得ない
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テレワーク中に残業が発生しそうな場合、まずは上司の指示や就業規則を確認しましょう。

②みなし残業の範囲内になっている

みなし残業の範囲内で労働している場合も、残業代は発生しません。

みなし残業は「固定残業代」とも呼ばれ、あらかじめ一定時間分の残業代を給与に含めて支払う制度です。

たとえば、「月30時間分の残業代込みで月給30万円」という契約になっていれば、月30時

間までの残業代はすでに給与に含まれていることになります。

みなし残業についての規定はリモートワーク中であっても変わらないため、この場合30時間までの残業には追加の残業代は支払われません。

ただし、みなし時間を超過して残業をした場合、会社は超過分の残業代を別途支払う義務があるため残業代が発生します。

③業務委託・請負契約で働いている

個人事業主などが業務委託契約や請負契約を結んで働いている場合、労働基準法の適用外となるため、基本的に残業代は発生しません。

例外的に業務委託契約や請負契約であっても、実際には使用者の指揮命令下で働き雇用契約に近い状況であれば、労働者として認められる場合もあります。

労働者として認められた場合は労働基準法が適用され、残業代が発生する可能性もあるでしょう。

テレワーク中の残業を正しく申請する方法

テレワーク中に残業の必要が生じた場合、残業許可を正しく申請する方法を解説します。

残業許可を申請する

テレワーク中に残業をする場合、事前に残業許可を申請しましょう。

上司へ残業を申請する際は、下記のような流れで行うと安心です。

▼残業申請の手順

  1. 残業が必要な理由を明確に伝える(例:◯◯の案件の納期に間に合わせるため)
  2. 必要な残業時間を見積もって示す
  3. 残業中に行う業務を説明する
  4. 上記の内容をチャットやメールで申請し記録として残す
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上司が忙しい場合、残業申請のメッセージにすぐに反応できないような場合もあるでしょう。

そのため、残業の可能性があると判断できた時点で、できるだけ早く残業許可のメッセージを送るようにすると安心です。

残業が終わったら業務を報告する

残業が終わった後は、チャットやメールで業務の完了報告を忘れず行いましょう。

報告内容には、実施した業務の概要や時間を記載します。

また、日報を書く必要があればそちらにも業務内容を反映し、勤怠管理システムを使っている場合は、残業に関しての必要な処理を行いましょう。

テレワーク時は業務中の様子が見えないため、残業の申請から終了まで誰の目にも明らかなになるように記録を残しておくことが大切です。

会社が残業を認めない場合に取る対応

適切な手続きを踏んで残業をしたのに、会社から残業が認められず残業代が支払われないような場合もあるでしょう。

残業代が支払われなかった場合、状況を整理し下記のステップで対応していきましょう。

①上司や人事部に確認する

  • 残業に対する認識の違いや給与計算時のミスがないかを上司や人事部に確認する
  • 「先月の給与明細を見たら◯日の残業代が支払われていません」など具体的に伝える
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②証拠を整理・提出する

  • 残業をした日の勤怠記録やチャットなど、残業を証明できる資料を整理する
  • 上司に許可を得た記録やPCの作業ログがあれば、より説得力が増すので提出する
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③労働基準監督署に相談する

  • 残業の証拠が明らかであるにも関わらず、会社側から突っぱねられた場合は労働基準監督署への相談も検討する
  • 未払い残業代の請求は2年間(2020年4月以降は3年間)の時効があるため、放置せず早めに相談する
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残業の許可を適切に得ていれば、②までに解決することがほとんどだと思われますが、会社側が真摯に対応してくれない場合は③の相談も考えましょう。

テレワーク中の残業代稼ぎ・水増し残業は違法

「テレワーク中ならコッソリ残業代を稼げるのでは?」と考える方もいるかもしれませんが、残業代の水増しは違法です。

水増し残業は会社に対して損害を与える行為であり、不正を働いて残業代を受け取っていた場合、まず社内では不正の事実を追及されます。

追及の結果、水増し残業が明らかな場合は始末書の提出(けん責)や減給、重い処分であれば懲戒解雇を受けます。

また、悪質なやり口で多額の残業代を受け取っていた場合は、会社内の処分だけでは済まず刑事告訴を検討され、訴訟に発展する場合もあるでしょう。

その場合、詐欺罪で起訴されることになります。

詐欺罪は他人を欺いて不正に財物を得る行為を罰する法律で、刑法第246条により、詐欺罪が成立した場合は10年以下の懲役が科せられるおそれがあります。

また、水増しをして得ていた残業代は手続きを経て会社に返還されるため、手元には何も残りません。

刑事罰を受ければ実名で全国的な報道もされかねず、社会的な信用をすべて失うことになります。

また、仮にけん責や減給で済み会社に残ることができたとしても、社内での居心地は悪いものになるでしょう。

たとえ少額であっても残業代の水増しは重大な犯罪であり、決して行うべきではありません。

参考:刑法(第246条) | e-Gov 法令検索

テレワークの仕事を効率的に片付ける3つのコツ

テレワーク中は出社時と勝手が違うため、普段通り仕事が進められない場合もあるでしょう。

最後にテレワークの仕事を効率的に片付けるための3つのコツを解説します。

①作業環境を整える

テレワーク中は基本的に机へ座りっぱなしになるため、仕事に集中するための作業環境を整えることが大切です。

▼作業環境の整え方の例

  • デスク周りを整理整頓し気が散るものをよける
  • 目の疲れにくい照明にする
  • 座り心地がよく背筋が伸びる椅子を購入する
  • 家族がいる場合「◯時までは仕事部屋へ入らない」など家族間でルールを設ける
  • 家族との共有スペースではなく、専用の作業部屋を確保する
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テレワークをしているとプライベートと仕事の境目が区切りづらくなるため、仕事に専念できる作業環境を作りましょう。

②時間の使い方を見直す

テレワーク時は自己管理が求められるため、出社時以上に時間の使い方を意識することが大事です。

たとえば集中力が高い午前中に重要な仕事を進め、午後は単純作業に充てるなど、メリハリを意識すると効率的に仕事をこなせます。

また、基本的なことですがタスク管理ツールを活用して進捗を可視化したり、タスクの優先順位を厳密に設定することも有効です。

無理のないスケジュールを組むようにすれば、テレワーク時の残業時間も減らしていけるでしょう。

③丁寧なコミュニケーションを意識する

テレワーク中は対面での会話ができないため、丁寧なコミュニケーションを意識しましょう。

テレワーク中のコミュニケーション手段は、基本はテキストでのやり取りとなり、ちょっとした相談や雑談の機会が減りがちです。

また、ビデオ通話でも表情や声のトーンは伝わりにくいため、普段よりも意思疎通に工夫をするようにしましょう。

コミュニケーションに齟齬があると、指示を誤解してしまったり、認識違いによる仕事の手戻りといったミスが発生しかねません。

▼丁寧なコミュニケーションの例

  • 出社時以上にこまめな進捗報告を行う
  • テキストで伝えにくいことがあれば、積極的にビデオ通話で伝える
  • 口頭での簡単な補足ができないため、普段以上に文面には注意する
  • 仕事の合間を縫って適度に雑談する
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上記のようなコミュニケーションを意識して、円滑な意思疎通を図りましょう。

テレワーク中の業務効率化について、より詳しくは関連記事をご参考ください。

関連記事:「ストレスは溜めない!集中力アップで業務効率最大化するテレワークのやり方とは」

テレワーク中でも残業代は発生するので安心して働こう

テレワーク中でも出社時と変わらず残業代は発生し、法定外残業であれば割増賃金も支払われます。

しかし、会社から残業禁止の指示が出ている場合や、みなし残業の場合は残業代が発生しないため注意しましょう。

また、業務中の様子が見えないからといって残業代を稼ぐための、不要な残業をしてはいけません。

テレワーク中は周りの目がない分、出社時以上に自己管理を求められます。

集中できる作業環境を整えて、生産性を意識しつつ業務に取り組みましょう。


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