- 作成日 : 2026年7月6日
休憩自由利用除外の許可申請とは?対象施設・手続き・リスクを解説
休憩自由利用除外の許可申請は、児童と起居をともにする施設の職員について、所轄労働基準監督署長の許可を得て休憩の自由利用原則を除外できる制度です。
- 対象は乳児院・児童養護施設等の入所型施設の職員
- 許可後も休憩時間の付与義務(45〜60分)は継続
- 未申請のまま運用すると6か月以下の拘禁刑等の罰則あり
Q. 通所型の児童福祉施設も申請対象になりますか?
A. 対象外です。本制度は「児童と起居をともにする」宿泊を伴う勤務形態の職員に限られます。
休憩自由利用除外の許可申請とは、児童と起居をともにする施設の職員について、労働基準法第34条第3項の休憩自由利用の原則を所轄労働基準監督署長の許可により除外できる制度です。本記事では、対象となる施設・職種の判断基準、申請書類の準備、許可後の運用上の注意点、未申請のまま放置した場合のリスクまでを整理します。休憩時間の自由利用除外申請を検討している児童福祉施設の人事労務担当者に向けて、実務に役立つ情報をまとめました。
目次
休憩の自由利用除外とは?
休憩の自由利用除外とは、労働基準法第34条第3項が定める「休憩時間中は労働者を自由に利用させる」という原則について、一定の職種に限り労働基準監督署長の許可を得て適用を除外できる制度です。根拠は労働基準法施行規則第33条にあります。
労働基準法第34条は、休憩について次の原則を定めています。
- 途中付与の原則:休憩は労働時間の途中に与える(同条第1項)
- 一斉付与の原則:原則として全従業員に一斉に休憩を与える。ただし労使協定があれば例外が認められる(同条第2項)
- 自由利用の原則:休憩時間中は労働者を労働から完全に解放し、自由に利用させる(同条第3項)
このうち自由利用の原則は、労働者が休憩中に業務を離れ、自由に過ごす権利を保障する規定です。しかし児童福祉施設の職員のように、業務の性質上どうしても休憩中も児童のそばを離れられない働き方が存在します。こうした実態に対応するため、自由利用の原則のみを除外できる仕組みが設けられています。
ここで注意したいのは、許可を受けても休憩時間そのものを与えなくてよいわけではない点です。自由利用除外の許可後も、休憩時間の付与義務(労働時間が6時間を超える場合は45分、8時間を超える場合は60分)は引き続き適用されます。あくまで「自由に利用させる」という要件のみが緩和される制度であることを理解しておく必要があります。
なお、警察官・消防吏員・常勤の消防団員・准救急隊員および児童自立支援施設の職員で児童と起居をともにする者については、労働基準法施行規則第33条第1項により許可申請なしで自由利用除外が認められています。業務の公共性・緊急性が高い職種は、許可の有無にかかわらず適用除外の対象です。
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自由利用除外の対象者は?
許可申請の対象となるのは、乳児院・児童養護施設・障害児入所施設に勤務する職員のうち、児童と起居をともにする者です。労働基準法施行規則第33条第1項第2号に明示されています。
対象となる施設・職種を確認する
対象施設は児童福祉法に基づく入所型の児童福祉施設が中心です。代表的な施設と該当する職種の例を以下にまとめます。
| 施設種別 | 対象職種の例 |
|---|---|
| 乳児院 | 保育士・看護師等で乳児と起居をともにする者 |
| 児童養護施設 | 児童指導員・保育士等で児童と起居をともにする者 |
| 障害児入所施設 | 指導員・保育士等で入所児童と起居をともにする者 |
| 児童自立支援施設 | 児童自立支援専門員等で児童と起居をともにする者(許可不要) |
単に施設に勤務しているだけでは対象になりません。「児童と起居をともにする」とは、施設内で児童と生活空間を共有し、宿泊を伴う勤務形態で日常的に児童の生活指導や養育に従事している実態を指します。
自施設が対象かどうか判断する
自施設・自職員が対象に該当するかは、以下のチェック項目で確認できます。
- 児童福祉法に基づく入所型施設であるか
- 該当する職員が施設内で児童と生活空間を共有しているか
- 宿泊を伴う通常勤務として児童と起居をともにしているか(宿直勤務とは区別される)
- 休憩時間中も児童のそばを離れることが業務上困難な実態があるか
例えば、児童養護施設で交替制シフトを行う保育士であっても、夜間に児童と同じ居住棟で就寝し、日中の休憩時間中も児童の安全管理が求められる場合は対象となりえます。一方、同じ施設内でも事務職員や調理専任の職員は、児童と起居をともにしていなければ対象外です。
判断に迷う場合は、所轄の労働基準監督署へ事前相談すると確実です。勤務シフト表や施設の配置図など、勤務実態を示す資料を持参すると具体的な回答を得やすくなります。
許可申請の手続きと必要書類は?
休憩自由利用除外の許可申請は、事業場の所在地を管轄する労働基準監督署長に申請書を提出して行います。標準的な処理期間は、電子申請であれば15日程度とされています。
STEP1 勤務実態を整理する
対象職員の勤務シフト・居住形態・休憩中の対応内容を洗い出し、自由利用除外の要件に該当するかを確認します。この段階で要件を誤って判断すると、後の不許可につながるため、施設の運営担当者と労務担当者が情報を共有しながら進めることが望ましいでしょう。
STEP2 申請書を作成する
「休憩自由利用除外許可申請書」を作成します。様式は厚生労働省の主要様式ダウンロードコーナーから入手できます。主な記載項目は以下のとおりです。
- 施設の種類・名称・所在地
- 児童と起居を共にする者の職名・員数
- 児童数
- 勤務の態様
- 使用者の職名・氏名
「自由利用除外が必要な理由」の欄は審査の重要なポイントです。「児童と起居をともにしており、休憩時間中も児童の安全確保のためそばを離れることができない」など、具体的な勤務実態を記載することが望ましいでしょう。
参考:主要様式ダウンロードコーナー(労働基準法等関係主要様式)|厚生労働省
STEP3 添付書類を準備する
就業規則の休憩に関する条文の写し、勤務シフト表、施設の見取り図など、勤務実態を裏付ける資料を準備します。労働基準法関連の届出・申請書類の押印欄は2021年4月以降原則廃止されており、押印は不要です。
STEP4 労働基準監督署へ提出する
事業場の所在地を管轄する労働基準監督署へ申請書一式を提出します。電子申請が可能も可能であるため、積極的に活用しましょう。
STEP5 補正対応と許可書の受領
労基署から問い合わせや補正指示があれば対応し、許可通知を受領したら許可書を保管します。許可後に施設の運営体制が変わった場合や、対象職員の人数・職種に大幅な変更があった場合は、再申請が必要になることがあります。
不許可となるケースに備える
申請が不許可となる主な要因は、「児童と起居をともにする」要件を満たしていないと判断されるケースです。通所型施設であるにもかかわらず申請した場合や、対象職員が実際には児童と別の棟で勤務している場合は許可が下りにくくなります。不許可となった場合は労基署の担当者から理由の説明を受けられるため、勤務実態の見直しや追加資料の提出を検討してください。
休憩自由利用除外の許可後に必要な管理体制は?
許可後は、対象職員への書面周知と休憩時間の記録整備が必須です。許可を取得しただけでは適切な労務管理とはいえず、運用面の対応が欠かせません。
従業員への周知を徹底する
許可を受けた事実と、休憩時間中の取り扱いについて対象職員に書面で通知します。口頭のみの説明は「聞いていなかった」というトラブルにつながりやすいため、避けるべきです。
周知すべき内容は主に以下のとおりです。
- 自由利用除外の許可を受けた旨
- 対象となる職員の範囲
- 休憩時間中に求められる対応の内容と範囲
- 休憩時間の長さ・付与タイミングに変更がないこと
- 休憩中の負担が過度にならないよう配慮する体制
自由利用除外が認められても、休憩時間中ずっと通常業務と同じ密度で働かせることは望ましくありません。児童の見守りは必要でも、可能な範囲で身体を休められる環境を整えるなど、職員の健康面への配慮が求められます。
休憩時間の記録を整備する
許可を受けた後も、休憩時間を適切に付与している事実を記録しておく必要があります。労基署の調査(臨検)の際に、休憩時間の付与状況を確認される場合があるためです。
記録方法としては、勤怠管理システムでの打刻記録に加え、休憩時間中の対応内容を簡潔に記した業務日誌を併用する運用が実務上有効です。クラウド型の勤怠管理システムの中には、休憩時間の自動記録機能を備えた製品もあり、記録の精度を高める手段として活用できます。
年度ごとに勤務実態を見直し、許可時の内容と乖離がないか確認する習慣をつけておくと安心です。
休憩自由利用除外を未申請で放置するリスクは?
未申請のまま自由利用を制限すると、労働基準法第34条第3項違反となり、第119条に基づき6か月以下の拘禁刑または30万円以下の罰金の対象となります。加えて、未払賃金の遡及請求リスクも生じます。
法令違反が発覚する経緯を知る
違反が発覚する経緯として多いのは、従業員からの労基署への申告(通報)と、定期的な臨検監督の2つです。児童福祉施設は労基署の監督対象となることがあり、調査の際に休憩時間の運用状況が確認されるケースがあります。
例えば、休憩時間中も児童対応を義務付けていたにもかかわらず自由利用除外の許可申請を行っていなかった場合、労基署から是正勧告を受け、その後あらためて申請手続きを行う事態が想定されます。是正勧告を受けると、企業名の公表対象となる場合があり、採用活動や取引先との信頼関係に影響が及ぶおそれがあります。
罰則以外に生じる影響を把握する
罰金や拘禁刑といった刑事罰だけでなく、未申請による影響は複数の面に及びます。
| 影響の種類 | 内容 |
|---|---|
| 是正勧告 | 労基署から文書で改善を指示される。是正報告書の提出義務が発生 |
| 評判への影響 | 自治体への報告等を通じ、利用者・保護者からの信頼を損なうおそれ |
| 職員の離職 | 休憩に関する不満が蓄積し、人材流出につながりやすい |
| 損害賠償リスク | 休憩を自由に利用できなかった時間が労働時間と判断され、未払賃金として請求されるリスク |
許可なく自由利用を制限していた時間は労働時間と判断される場合があり、過去に遡って未払賃金の支払いを求められるケースが想定されます。賃金請求権の消滅時効は、2020年4月施行の改正労働基準法第115条により5年(当分の間3年)とされており、対象期間が長くなるほど請求額が大きくなる可能性があります。
参考:未払賃金が請求できる期間などが延長されています|厚生労働省
こうしたリスクを避けるためにも、対象となる施設では速やかに許可申請の手続きを進めることが重要です。申請書類の作成や労基署への提出を社会保険労務士に依頼することも一つの方法です。依頼費用は事務所によって異なるため、複数の事務所に見積もりを確認した上で検討するとよいでしょう。
よくある質問
休憩自由利用除外の許可申請について、よくある質問をまとめました。
Q. 許可に有効期限はありますか?
許可そのものに更新期限を定める規定はありませんが、対象職員の人数や勤務態様が許可時の内容から大きく変わった場合は、変更届や再申請が必要になることがあります。定期的に勤務実態を見直す運用が推奨されます。
Q. 通所型の児童福祉施設は対象になりますか?
対象外です。本制度は「児童と起居をともにする」職員を前提としているため、宿泊を伴わない通所型施設の職員には適用されません。
Q. 許可後に対象職員の人数が増えた場合、再申請は必要ですか?
人数や職種に大幅な変更があった場合は、所轄労働基準監督署へ変更内容を相談し、必要であれば再申請を行います。
Q. 事務職員や調理職員も申請対象になりますか?
対象外です。「児童と起居をともにする」実態がある職員に限られるため、同じ施設内でも事務・調理専任の職員は該当しません。
休憩自由利用除外の許可申請で押さえるべきこと
休憩自由利用除外の許可申請は、児童と起居をともにする施設の職員が対象となり、所轄の労働基準監督署長への申請書提出で手続きが完了します。許可後も休憩時間の付与義務は継続するため、勤怠記録の整備と対象職員への書面周知を合わせて進めることが、休憩時間の自由利用除外を法令に沿って運用するための要点です。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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