- 更新日 : 2025年12月5日
EQテストとは?ビジネスで重視される背景や実施するメリットを解説
企業の採用で役に立つEQテストですが、近年注目されている背景にはどのようなものがあるのでしょうか?
本記事では、EQテストの基本的な仕組みや、知能指数を測るIQテストとの違いなどを解説します。EQテストの主な調査項目や、種類についても紹介します。
採用活動における活用のメリットや導入までの流れをわかりやすくまとめているので、ぜひ最後までご覧ください。
EQテストとは?
EQテストは、自分の感情を理解して整える力や、相手の気持ちを読み取って適切に関わる力であるEQ(感情知能)を測定するための評価ツールです。
ビジネスの現場では、専門知識だけでは見えにくいチームへの貢献度や、リーダーとしての振る舞いを把握する目的で活用が進んでいます。
EQテストの結果では、従業員それぞれの強みや課題が明確になる点が特徴です。そのため、理想像とのずれを捉えて育成計画に反映できます。
近年はオンライン版や個別診断サービスなど、多様な形式のEQテストが利用されており、手軽に導入できる点も魅力です。
EQについて詳しく知りたい方は、下記の記事もご覧ください。
IQテストとの違い
IQテストとは、言語理解力や論理的思考・数的処理・空間認識などの能力をもとに、知能指数を測るものです。
数値が高いほど、問題解決力や分析力が優れている傾向を示します。
感情面を測るEQテストとは異なり、IQテストは主に思考力や認知能力といった、頭の働きに焦点を当てている点が特徴です。
EQテストが注目されている背景
AIの普及で単純作業が自動化され、人間には感情や対話が伴う、より高度な業務が求められるようになりました。
単純作業がAIに置き換えられるなかで、企業では状況に柔軟に対応し、自分の感情を整えながら他者と関わるEQの高い人材が必要です。そのため、社員のEQを客観的に評価する「EQテスト」が注目されています。
リモート環境の拡大により、相手の心情を読み取る力の重要性も以前より増してきました。
ほかにも、チームで動く仕事の増加や多様化する顧客ニーズへの対応など、コミュニケーション力や共感力の必要性が高まっていることが、EQテストが注目されている理由です。
EQテストで調査できる主な項目
EQテストでは、感情の理解や対人対応など、さまざまな側面から個人の特性を確認できます。
実施するEQテストの種類によっても測定内容は異なるため、知りたい項目が含まれているか事前に見極めることが重要です。
ここでは、代表的な調査項目についてわかりやすく解説します。
1. 共感力
相手の感情に寄り添い、同じ目線で受け止められるようになると、人とのつながりは一段と深まります。
こうした共感力は、職場でも信頼関係を構築し、協力しやすい環境をつくる重要な基盤といえるでしょう。
2. 感情の抑制力
自分の感情をそのまま相手にぶつけてしまうと、思わぬ衝突や誤解を生むことがあります。
とりわけ怒りは相手に強い影響を与えるため、冷静に受け止めて適切に扱う力が欠かせません。
感情を抑制するスキルは、円滑な人間関係を築くうえで重要な要素のひとつです。
3. 自分の感情を理解する力
自分の感情の動きに気づき、その理由をつかむ力は、EQの主要な部分です。
自分の気持ちを正しく理解できれば、どのような状態にあるのかを冷静に把握でき、状況に応じた行動判断もしやすくなります。
自身の感情を見つめることで、周囲との関わりも円滑になるでしょう。
4. 自分の感情をうまく活かす力
自分の感情を把握したうえで、その状態を日常の行動に反映させる力も重要です。
たとえば、気分が前向きなときは人との交流を楽しみ、落ち込んでいるときは整理整頓や軽い作業に取り組むなど、感情に合わせて行動します。
感情を適切に行動へつなげることで、生活や仕事の質を高められます。
5. 他者の気持ちを感じ取る力
相手の表情や行動から気持ちを読み取れる人は、思いやりのある対応が可能です。
相手への配慮は、安心感や信頼感につながり、他者と関わるうえでの心理的な安定や心の健康にもよい影響を与えます。
日常のコミュニケーションで他者に共感を示すことが、良好な人間関係の基本です。
6. 集団の空気を読む力
個人の感情に加え、チーム全体の雰囲気や感情の動きに注意を払うことも重要です。
メンバー間で感情のずれが生じた際には、それを察知し、適切に場の雰囲気を整えられるとよいでしょう。
結果として、円滑なコミュニケーションやチームのパフォーマンス向上につながります。
EQテストの種類
ここでは、さまざまな種類のEQテストを紹介します。
実施する目的や、測定内容に応じて選べるテストの特徴をわかりやすくまとめました。
EQi 2.0(Bar-On EQ-i 2.0)
EQi 2.0(Bar-On EQ-i 2.0)は、世界中で広く利用されているEQテストのひとつです。
主に下記の5領域を測定します。
- 自己認識
- 自己表現
- 人間関係
- 意思決定
- ストレス耐性
加えて、15の能力要素を評価するのが特徴です。
国際的に信頼性と妥当性が確認されており、職場での対人関係や業務遂行のパフォーマンス向上に役立つツールとして注目されています。
EQ 360
EQ 360は、EQi 2.0を基盤にした多面評価型のEQテストで、自己評価と他者評価を比較できます。
たとえば、上司や同僚、部下など複数の評価者からフィードバックを受けることで、自己認識のギャップを把握することが可能です。
対人スキルや職場での行動傾向も、多角的に理解できます。
主に、リーダーの育成やチーム力の向上といった組織運営にも広く活用されています。
マネージャークラスの人材に求められる能力について知りたい方は、下記の記事もご参照ください。
日本独自のEQテスト
日本国産のEQテストは、日本の文化や職場環境に合わせて開発されています。そのため、日本人特有の感情傾向や対人行動を的確に評価できる点が特徴です。
日本語で自然に回答できるため、より正確なデータを取得できます。
導入コストも比較的低く、日本企業との親和性が高いといえるでしょう。
主に、人材育成や採用、管理職研修などで活用され、実務に即したフィードバックを得られる点も大きなメリットです。
MSCEIT(メイヤー・サロベイ・カルーソEQテスト)
MSCEIT(メイヤー・サロベイ・カルーソEQテスト)は、能力にもとづくEQ測定を行うテストです。
自己申告ではなく課題解決型の問題で、感情をどれだけ適切に扱えるかを客観的に評価します。
感情の知覚・活用・理解・管理の4分野が対象です。写真や状況判断を通じて、実際の処理能力を測定できるため、学術的な信頼性の高い結果が得られます。
主に、研究や教育、企業研修など幅広い分野で活用されています。
採用時にEQテストを活用するメリット
ここでは、採用活動におけるEQテストの活用メリットについて解説します。
人材の感情面や対人スキルを見極めるポイントについて、詳しく見ていきましょう。
企業に合った人材を採用できる
従来の採用方法では、面接官の主観に左右されやすいという点が課題でした。たとえば、技術力はあるものの組織に合わない人材の採用や、短時間面接で適性を見抜けないリスクがありました。
EQテストを導入すると、感情や対人スキルを客観的なデータで評価できます。面接官の主観だけでなく、より公正な採用判断が可能になります。
さらに、組織文化との適合性を事前に確認したり、入社後のパフォーマンスを予測したりする精度も高まる点が大きなメリットです。
面接官の役割について理解を深めたい方は、下記の記事もご覧ください。
チームワークを強化しやすくなる
EQの高い人材を採用すると、社内コミュニケーションの質が向上し、チームワークの改善や職場の心理的安全性向上につながることがあります。
結果的に、チーム全体の生産性も向上します。
管理職候補者の選考でも、EQテストは有効です。
技術力だけでなく、チームをまとめる力や対人スキルを事前に評価できるため、組織に適したリーダーを見極められます。
採用の判断基準を明確にできる
採用判断において、EQテストを用いることで客観的なデータにもとづき、評価基準を明確化できます。
複数の面接官が関わる場合でも、共通の評価基準としてEQテストの結果を活用することが可能です。
これにより、面接官の判断のばらつきを抑え、公正で安定した採用決定につなげられます。
コストを削減できる
EQテストを活用して入社前に組織適性を評価することで、入社後のミスマッチを減らし、早期離職の防止が期待できます。
再募集や再選考、新人研修などにかかる時間やコストを抑えることが可能です。
さらに、EQテストの結果を面接に反映させることで、質問内容を最適化し、より効果的な選考プロセスを実現できます。
企業でEQテストを実施する手順
ここでは、企業におけるEQテストの導入手順について解説します。
準備から実施、結果の活用までの流れをわかりやすくまとめました。
1. EQテストの実施目的を明確にする
EQテストを導入する際は、まず現状の採用課題を整理します。そのうえで、EQテストを実施する目的を明確にすることが重要です。
たとえば「早期離職率を10%削減する」といった数値目標を設定すると効果的です。
同時に、EQテストの実施スケジュールや予算を決めましょう。事前の入念な準備が、EQテストのスムーズな導入につながります。
2. 実施するEQテストを選定する
EQテストを導入する際は、自社が重視するリーダーシップやチームワーク、ストレス耐性などの能力を正確に測定できるものを選ぶことが重要です。
複数のEQテストを比較し、可能であれば体験版を試すと選定の精度が高まります。
採用担当や面接官、経営陣など関係者への周知と準備も欠かせません。
プロジェクトリーダーの選定や実施手順の策定など、必要な準備を整えましょう。
3. 試験的に運用する
EQテストを導入する際は、まず特定の職種や部署で試験的に運用することが効果的です。
数名の従業員にEQテストを実施し、結果の妥当性を確認することで信頼性を評価できます。
また、候補者の使用感や面接官の評価、結果の活用しやすさなどのフィードバックを収集することも大切です。
改善点を明確にすることで、よりスムーズで効果的な運用体制を整えられます。
4. EQテストを実施する
EQテストを本格導入する際は、採用フローの適切な段階に組み込むことが重要です。
たとえば、書類選考通過後の一次面接前や、一次面接後の最終面接前などに実施すると、効果を高められます。
EQテスト結果をもとに、面接での質問内容を応募者ごとにカスタマイズすることも可能です。個々の特性や能力をより正確に評価でき、選考の精度向上につながります。
5. 改善点を分析する
採用者のEQスコアと入社後のパフォーマンスを分析し、必要に応じて、EQテストの実施フローを見直すことが重要です。
職種や部署ごとの傾向を把握し、採用基準を調整することで、より適切な人材選定が可能になります。
面接官に対してテスト結果の読み方に関する研修を行い、結果を活用した面接技法を習得させることも効果的です。
定期的な振り返りと改善を組み合わせることで、選考プロセスの精度を高められます。
EQテストの平均点
EQテストは通常、満点が200点で平均点が100点ほどです。この基準をもとに、個人の心の知能指数を評価します。
100点を基準点として多いか少ないかを確認し、EQの高低を判断します。
たとえば、60点の場合は「感情のコントロールが難しく、自己中心的な言動が多い」などが課題です。この場合は、自己分析や自我を抑える訓練が必要です。
一方、150点であれば、他者の感情に共感し、適切に対応できる能力が高いと評価されます。これは、対人関係における強みとみなされます。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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