• 作成日 : 2025年12月23日

合同会社の維持費はいくら?内訳・節約方法・経費にできるかを解説

合同会社を設立したいと考えたとき、「どれくらいの維持費がかかるのか?」という点は多くの方が気になるポイントです。法人住民税や会計処理、登記変更など、会社を運営するには設立後も継続的な支出が必要になります。

本記事では、合同会社にかかる維持費の内訳や相場、株式会社との違い、節約の工夫などを解説します。

合同会社の維持費の内訳は?

合同会社の維持費は、最低限必ず発生する法人住民税(均等割)を中心に、会計処理や税務申告に関する支出、さらに変更登記の登録免許税や、金融機関によっては口座維持手数料などで構成されます。経理や申告を自社で行えば年間の負担は比較的抑えられますが、税理士へ依頼する場合は顧問料が追加で必要となるため、どの業務を内製化するかが総コストに影響します。

法人住民税(均等割)

法人住民税(均等割)は、毎年必ず発生する基本的な維持費です。資本金1,000万円以下・従業員50人以下の合同会社であれば、年額約7万円となり、赤字でも負担が生じます。なお、均等割額は都道府県と市区町村の設定によって異なり、資本金や従業員数が増えると区分が上がって金額が引き上げられる場合があります。

合同会社を運営する限り必ず支払う必要があるため、年間支出の中でも確実に計上すべき項目です。

参考:会社法 第312条|e-GOV

会計処理や税務申告の費用

会計処理や税務申告にかかる費用は、日々の経理(記帳)を自社で行うか、決算・申告まで含めて外部に委託するかによって大きく変動します。自社で記帳を行う場合は、クラウド会計ソフトの利用料が年間数万円程度に収まり、維持費を抑えたい小規模事業者に適した方法です。

一方で税理士に依頼すると、月額1〜3万円程度の顧問料や記帳代行料に加え、決算期には10〜15万円前後の決算・申告に関する報酬が発生し、年間20〜30万円を超えることもあります。ただし、税理士によるサポートには、税務に関する相談ができる安心感や、申告内容のチェックといった利点もあるため、コストと業務負担のバランスを踏まえて選択することが望まれます。

その他の維持費(変更登記や口座維持手数料など)

その他の維持費として、会社の登記情報の変更に伴う費用や法人口座の維持手数料があります。会社名や所在地を変更する場合には、登録免許税として3万円(本店の管轄外移転は6万円)、代表者変更には1万円が必要となり、発生頻度は低くても発生時の負担は無視できません。

また、法人口座の維持費も継続的なコストです。メガバンクでは月額2,000〜3,000円程度の手数料がかかる場合がありますが、最近は月額無料のサービスも登場しており、ネット銀行でも維持費が無料のところもあります。

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合同会社と株式会社の維持費の違いは?

合同会社と株式会社では、法人として必要となる税金や会計業務に共通点はあるものの、制度上の違いから維持費に差が生じます。以下では、代表的な違いを解説します。

決算公告義務の有無

株式会社には決算公告の義務があり、毎年の決算内容を官報などで公示する必要があります。これには公告費用として年間約6万円程度の掲載費が発生します。公告方法としては官報掲載のほか、定款で自社ホームページによる電子公告を定めることも可能ですが、その場合でも閲覧要件や保管義務を満たすための体制整備が求められます。

一方、合同会社にはこのような決算公告義務がありません。決算内容を外部に公開する必要がないため、公告にかかる費用も手続きの手間も発生しません。したがって、決算公告に関連するコストの有無は、合同会社と株式会社の維持費の差異のひとつです。

役員任期と登記コスト

株式会社では、取締役には原則として任期(最長10年)が定められています。任期満了後には、たとえ同じ人物を再任する場合でも「重任登記」が必要となり、登録免許税として1万円(資本金1億円以下の場合)の費用が発生します。複数の役員がいる場合はこの手続きが定期的に発生し、登記漏れは法的な罰則の対象にもなり得るため、管理体制の整備も欠かせません。

対して、合同会社には役員任期という概念がなく、一度登記された代表社員や業務執行社員は変更がない限り再登記の必要はありません。このため、登記に関する維持費や手続きの簡便さでも、合同会社の方がコストを抑えやすい形態といえます。

株主総会に伴うコスト

株式会社には、毎年1回の定時株主総会の開催が会社法で義務づけられています。株主が複数いる場合、招集通知の郵送や議案書の準備に加え、規模によっては会場手配などの運営コストが発生することがあります。また、株主総会では、株主の数に関わらず議事録の作成・保管が必要となります。企業によっては株主総会の準備や書類作成を外部の専門業者に依頼することもあり、そうした場合はさらに費用がかさむ可能性があります。

一方、合同会社では株主という概念がなく、出資者=経営者である社員同士の合意により意思決定が行われるため、総会の開催義務がありません。この違いによって、株式会社と比べて事務的・金銭的な負担を軽減できます。

合同会社の維持費を節約する方法は?

合同会社の維持費はもともと少額ですが、経理方法や行政手続きの進め方を工夫することで、さらにコストを抑えることが可能です。

会計業務を自社で行う

税理士に依頼せず、会計処理を自社で行えばコスト削減につながります。クラウド会計ソフトの利用料は年間数万円程度で、日々の記帳から決算書作成まで対応可能です。一方、税理士に依頼すると月額1〜3万円の顧問料に加え、決算期には10〜15万円前後の決算・申告に関する報酬が発生することもあり、社内対応に切り替えることで年間20万円以上の節約も見込めます。

ただし、節税に関する判断や税務調査への備えは専門性が求められるため、必要に応じて税理士の助言を受けられる体制を整えておくと安心です。

電子化・IT活用で業務を効率化する

行政手続きや業務を電子化することで、無駄な出費を抑えることができます。会社設立時に電子定款を利用すれば印紙代4万円が不要になり、日々の業務でも請求書や契約書を電子化することで、郵送費の削減や、電子契約では印紙税が不要になるというメリットがあります。こうした取り組みの積み重ねが、年間を通じた維持費の削減につながります。

変更登記や口座関連の費用を抑える

将来の登記変更を想定して本店を検討しておくことで、後日の本店移転登記にかかる登録免許税(3〜6万円)を避けられる場合があります。また、法人用銀行口座については、ネット銀行など維持費が無料のサービスを選べば、毎月の口座維持料がかからず、年間2〜3万円ほどの削減が見込めます。

合同会社の維持費は経費として計上できる?

合同会社を運営する上で発生するさまざまな維持費は、事業に必要な支出であれば多くの場合「経費」として会計処理が可能です。ただし、すべての支出が経費計上できるわけではありません。ここでは、経費として認められるものとそうでないものの違いについて整理します。

経費として認められる維持費

税理士報酬や会計ソフト代、通信費、文具代など、業務に必要な支出は基本的に経費として計上可能です。これらは「販売管理費」や「一般管理費」として損益計算書に記載され、法人の利益から差し引かれます。さらに、設立時にかかった登録免許税や定款の作成費用などは「創立費」として資産計上したうえで、初年度に全額償却するか、複数年にわたり分割して償却することができます。

このように、日常的に発生する運営上の支出の多くは、税法上の「必要経費」として認められており、正確な利益計算にも役立てることが可能です。

経費として認められない費用

法人税・地方法人税・法人住民税など、いわゆる「法人税等」の本税部分は、原則として経費(損金)にできません。これらの税金は会計上「法人税等」として費用計上されますが、税務申告では損金不算入とされ、課税所得の計算では控除されない項目です。

たとえば、合同会社であっても毎年必ず発生する法人住民税(均等割・年額約7万円)については、損金算入が認められず、税額計算のもとになる所得を減らす効果はありません。また、延滞税や加算税といったペナルティ的な税金も、税務上は経費と認められませんので注意が必要です。

法人形態による違いはない

これらの経費区分は、合同会社か株式会社かといった法人形態によって変わるものではなく、いずれも法人税法に基づき同じ基準で扱われます。役員報酬についても、合同会社の業務執行社員を含め法人税法上は「役員」に該当し、定期同額給与など損金算入のための要件が適用されます。そのため、報酬の決定方法や変更時期が適切でない場合には、支給した金額の一部が損金として認められないこともあります。

合同会社の事業規模拡大時にかかる維持費の変化は?

合同会社は設立・運営コストを抑えられる点が魅力ですが、事業規模の拡大に伴って維持費の内容も変化します。従業員の増加や取引規模の拡大、場合によっては資本金の増加などにより、義務や負担が増える場面も出てくるため、段階的なコストの見直しが必要になります。

社会保険の加入義務と保険料負担

合同会社などの法人が従業員を雇用する場合、従業員が1人であっても原則として社会保険(健康保険・厚生年金)への加入が義務づけられます。また、パート・アルバイトであっても、所定労働時間や勤務日数、企業規模などの要件を満たすと加入が必須です。社会保険料は会社と従業員が折半して負担する仕組みのため、賃金水準によっては月数万円規模の固定費が発生し、事業規模の拡大に伴って負担が増える可能性があります。従業員が増えると労務管理の手間も大きくなるため、給与計算の体制整備や外部委託の検討が必要です。

資本金増加による消費税の課税事業者化

資本金が1,000万円を超えて設立した場合は、設立直後から消費税の課税事業者となり、免税措置は適用されません。これにより、売上に対する消費税の納付義務が生じ、納税資金の確保が必要になります。また、消費税の帳簿や請求書の管理も強化され、間接的な維持費(記帳や税務処理の手間・外注費)も増える傾向があります。

管理コストや外注費の増加

事業の拡大に伴い、社内リソースだけでは経理・労務・法務などのバックオフィス業務が賄えなくなり、専門家への外注が必要になるケースが増えます。税理士、社労士、司法書士への報酬や顧問料が新たな固定費として発生し、年間で10万〜数十万円規模の支出につながることもあります。法人としての信用力を維持するため、法令対応の精度や適切な手続きが求められるようになります。

合同会社の解散・休眠と維持費の関係は?

合同会社を設立した後、事業が継続できなくなった場合や一時的に活動を止めたい場合、選択肢として「解散」「休眠」があります。これらの手続きにはそれぞれ一定のコストがかかり、継続して維持費を払い続ける場合と比較して、どの対応が適切かを判断することが重要です。

解散する場合の手続きと費用

合同会社の解散には、登記手続きや税務申告が必要です。法務局への解散登記では登録免許税3万円が発生し、さらに「清算結了登記」にも3万円かかるため、登記だけで合計6万円前後の費用が必要です。加えて、税務署には「解散確定申告」と「清算確定申告」を提出する義務があり、税理士に依頼すればその報酬も発生します。

したがって、維持費を避けたいからといって即座に解散するのは、かえって一時的に出費がかさむリスクがあります。

休眠させても最低限の費用が発生し続ける

休眠とは、会社を存続させたまま事業活動を停止している状態を指し、特別な登記手続きは行わないため、解散と比べて手続きは比較的簡単です。税務署には「異動届出書」などを提出し、事業活動を行っていないことを明示します。ただし、休眠中であっても法人住民税の均等割(約7万円/年)は課税されるため、完全なゼロコストにはなりません。また、法務局に長期間登記の変更がないと「みなし解散」の対象となる場合があり、注意が必要です。

「今後事業を再開する予定がある」「一時的に活動を止めたい」という場合は休眠が適しています。一方、事業終了が確定しており今後法人を使わないのであれば、多少費用がかかっても解散したほうが長期的には合理的です。維持費の負担と将来の事業計画を比較して選択しましょう。

合同会社の維持費を理解し、長期的な運営に備えよう

合同会社は、設立費用・維持費ともに比較的コストを抑えやすい法人形態ですが、毎年の法人住民税や会計処理にかかる費用など、継続的な支出が発生します。さらに、経営体制の変更や事業規模の拡大によっては、登記費用や税務・労務対応の負担が増える場面もあります。維持費の内訳を正しく理解し、必要な支出と節約可能な項目を見極めることで、無理のない経営を継続できます。計画的な費用設計と定期的な見直しが、合同会社運営の安定化につながるポイントです。


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