• 作成日 : 2026年1月14日

1円株式会社の作り方とは?資本金1円のメリット・デメリットから成功例まで解説

1円株式会社の設立は、2006年の会社法改正により理論上可能です。最低資本金制度が撤廃されたため、資本金が1円でも法的に株式会社を設立できます。しかし、設立には資本金とは別に約20万円の実費がかかり、設立後の資金繰りや信用面で大きな注意点があります。

この記事では、1円株式会社の具体的な設立手順から、後悔しないための注意点、成功の現実まで詳しく解説します。

そもそも1円株式会社(1円起業)とは?

1円株式会社とは、最低資本金制度の撤廃によって設立が可能になった、資本金が1円の株式会社のことです。

2006年5月に施行された新会社法により、それまで株式会社設立に必要だった最低1,000万円(有限会社は300万円)の資本金が不要になりました。これにより、資本金が1円であっても法務局で登記が受理され、法的に会社を設立できるようになったのです。

設立費用は1円ではない!実際にかかる金額の内訳は?

資本金1円の会社を作るためには、約20万円〜24万円の現金(法定費用など)が別途必要です。

資本金1円はあくまで会社の元手(出資金)であり、設立費用が1円という意味ではありません。法務局や公証役場に支払う手数料として、以下の費用が必ず発生します。

項目紙の定款の場合電子定款の場合
定款印紙代40,000円0円
定款認証手数料約30,000円約30,000円
登録免許税150,000円150,000円
合計(目安)約220,000円約180,000円

これらに加え、会社印鑑の作成費用も必要です。つまり、資本金1円の会社を作るために、実際には約20万円〜25万円程度の現金が別途必要になるのです。

この設立費用約20万円は初年度の経費となるため、資本金1円の会社は設立初日から債務超過の状態になります。これらの設立費用は、会計上「創立費」、「開業費」として繰延資産に計上することも可能です。

ただし、資本金が1円の場合、費用処理を行えばすぐに債務超過に陥る可能性が高く、いずれにしても財務基盤としては極めて脆弱な状態からスタートすることになります。これは融資や取引において著しく不利な評価となります。

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1円株式会社の作り方は?

資本金1円の株式会社設立は、通常の株式会社設立と全く同じ法的手続きを踏む必要があります。資本金が1円だからといって、手続きが簡略化されるわけではありません。

1. 会社の基本事項(概要)を決定する

まず、設立する会社の基本事項を決定します。これらは定款や登記申請書に記載する必須事項です。

  • 商号(会社名)
  • 本店所在地
  • 事業目的
  • 役員構成
  • 資本金額
  • 事業年度(決算期)

2. 株式数と発行可能株式総数を決める

資本金1円を何株で構成するかを定款で定めます。最もシンプルなのは「1株=1円」として、設立時の発行株式数を1株とする方法です。あわせて、会社が将来発行できる株式の上限(発行可能株式総数)も決定します。

3. 会社の印鑑を作成する

登記申請や法人口座の開設に不可欠な印鑑を準備します。法務局に登録する代表者印(会社実印)は必須です。実務上は、銀行印・角印を加えた3本セットを作成するのが一般的です。

4. 定款の作成と認証を行う

会社のルールブックである「定款」を作成します。作成した定款は、公証役場で公証人による認証を受ける必要があります。

定款認証には紙と電子の2種類があります。設立費用を抑えるには電子定款が必須ですが、専用の機器やソフトが必要です。司法書士などの専門家は電子定款に対応しています。

5. 資本金の払い込み

発起人(設立者)個人の銀行口座に、資本金(1円)を振り込みます。この時点ではまだ法人口座は作れないため、個人口座を使用します。振り込んだ事実が分かる通帳のコピーなどを「払い込み証明書」として登記申請時に提出します。

6. 法務局への登記申請

最後に、すべての必要書類を揃え、本店所在地を管轄する法務局に設立登記申請を行います。

この登記申請日(法務局が受理した日)が、会社の設立日となります。申請後、約1〜2週間で審査が完了すれば、登記簿謄本(登記事項証明書)が取得できるようになります。

参考:商業・法人登記申請手続|法務局

1円株式会社のメリットは?

1円株式会社のメリットは、主に「リスクの限定」と「税務上の優遇」の2点にあります。

起業のリスクが分散できる(有限責任)

法人格(株式会社)を取得することで、経営上のリスクを個人と切り離すことができます。

個人事業主(フリーランス)の場合、事業で負った借金や損害賠償は、個人の全財産で返済する無限責任を負います。 一方、株式会社の場合、出資者は自分が出資した資本金の範囲内でしか責任を負わない有限責任が原則です。

これにより、万が一事業が失敗しても、個人の財産まで差し押さえられるリスクを限定的にできます。

消費税が最大2年間免除される

資本金1,000万円未満で会社を設立すると、原則として設立から最大2年間、消費税の納税が免除されます。

これは売上に対して課税される消費税の負担がなくなるため、設立直後の資金繰りにおいて非常に大きなメリットです。ただし、インボイス制度や特定期間の売上高などにより、免除が受けられない場合があります。

法人住民税(均等割)が最低限で済む

法人住民税の均等割は、資本金の額によって変動しますが、資本金1,000万円以下であれば最低ランク(年間約7万円)で済みます。これは1円でも100万円でも同じであり、赤字でも必ず発生する税金です。

参考:総務省|地方税制度|法人住民税

1円株式会社のデメリットは?

メリットがある一方、資本金1円での起業には、事業運営において致命的とも言える重大なデメリットが存在します。

社会的な信頼が得られにくい

資本金は会社の体力や信用を示す指標であり、登記簿謄本で誰でも確認可能です。資本金1円では「支払い能力がない」「本気で事業をやる気がない」と疑われ、法人取引を断られたり、不利な条件を提示されたりする可能性が非常に高くなります。

銀行口座の開設や融資に悪影響が出る

金融機関は、法人の信用力を厳しく審査します。

  • 銀行口座の開設:近年、法人口座の開設はマネーロンダリング防止の観点から非常に厳格化しています。資本金1円の会社は実態がないペーパーカンパニーと疑われ、口座開設自体を断られるケースが多発しています。
  • 金融機関からの融資:法令上、資本金1円でも創業融資の申込み自体は可能ですが、実務上、自己資金が極端に少ないため、融資を受けるのは非常に困難です。自己資金(資本金)が1円の経営者に対し、金融機関がお金を貸すことはまずないからです。

必要な許認可が取得できない

業種によっては、事業を行うために行政の許認可が必要ですが、事業開始の要件として「資本金」または「自己資本(純資産)」の最低額が定められています。

  • 建設業(一般):自己資本500万円以上
  • 人材派遣業(一般):資産総額2,000万円以上

資本金1円では、これらの事業を合法的に始めることができません。

1円起業の成功例と5年後の現実は?

資本金1円で設立した会社が成功することは可能ですが、資本金1円のまま成功した企業は、ほぼ存在しません。

成功例として名前が挙がる有名企業も、最初は少額の資本金でスタートしたかもしれませんが、事業を成長させる過程で必ず増資を行っています。

  • 上場企業を目指す場合:証券取引所の厳しい審査をクリアする必要があり、資本金1円の状態では絶対に不可能です。
  • 事業を継続・拡大する場合:設立5年後を見据え、融資、取引拡大、許認可取得を行うためには、いずれかのタイミングで信用力を高めるための増資が必要不可欠です。

1円株式会社の設立は慎重に!

1円株式会社の作り方自体は、2006年の会社法施行により法的に確立されています。しかし、設立には資本金とは別に約20万円以上の実費がかかり、何より「資本金1円」という事実は、金融機関や取引先からの信用を著しく欠く大きなデメリットとなります。

1円起業はあくまで法人格を取得する手段の一つと割り切り、ご自身の事業計画に合わせて、適切な資本金額を設定することが成功の鍵と言えるでしょう。


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