- 更新日 : 2026年1月14日
法人化で後悔する理由とは?節税にならないケースやあえて法人化しない選択肢も解説
法人化(法人成り)は、節税や社会的信用の獲得といった大きなメリットがある一方で、準備不足のまま進めると「こんなはずじゃなかった」と後悔するケースが後を絶ちません。
この記事では、法人化して後悔しがちなポイントと、それを回避するための具体的な対策、そして最適な法人化のタイミングについて解説します。
目次
法人化で後悔する理由とは?
法人化で最も多い後悔は、資金繰りや手取り額に関するものです。会社のお金と個人のお金が明確に区分されることで生じるギャップに苦しむケースが典型的です。
社会保険料の負担が個人の倍近くに増える
法人化で最も重くのしかかるのが社会保険料の負担増です。
法人は、社長一人であっても社会保険(健康保険・厚生年金)への加入が義務付けられます。保険料は会社と個人で折半しますが、一人社長の場合は実質的に全額自己負担となるため、国民健康保険・国民年金だった個人事業主時代と比較して、キャッシュアウトが大幅に増える傾向にあります。最低でも年間約26万円以上の負担増を見込んでおく必要があります。
赤字でも年間約7万円の法人住民税が発生する
個人事業主とは異なり、法人は赤字であっても税金を支払う義務が発生します。
法人住民税には「均等割」という仕組みがあり、利益が出ていなくても資本金や従業員数に応じた納税が必要です。例えば、資本金1,000万円以下・従業員数50人以下の場合、多くの自治体で年間約7万円の均等割が発生します。「赤字なら税金はゼロ」という個人の感覚でいると、痛い出費となります。
交際費の全額を経費にできない
個人事業主時代は事業に関連すれば全額経費にできた交際費も、法人になると制限がかかります。中小企業の場合、交際費として損金算入(経費計上)できるのは「年間800万円まで」、または「接待飲食費の50%まで」という上限が設けられています。多額の接待交際費を使うビジネスモデルの場合、この制限が節税の足かせになることがあります。
参考:No.5265 交際費等の範囲と損金不算入額の計算|国税庁
利益が少ないうちは税負担が増える可能性がある
「法人化すれば税金が安くなる」というイメージだけで法人化するのは危険です。 個人の所得税は累進課税ですが、利益が少ないうちは税率が低く抑えられています。一方、法人税は一定税率であり、均等割もあるため、利益が少ない段階で法人化すると、かえってトータルの税負担が増える可能性があります。
経理・税務申告を依頼する費用がかかる
法人の決算・申告業務は、個人事業主の確定申告とは比較にならないほど複雑です。厳密な複式簿記による会計処理に加え、貸借対照表・損益計算書の作成、法人税・消費税・地方税など複数の申告書作成が求められます。
専門知識なしでこれらを一人で行うことは困難であり、税理士への依頼が必須となるため、年間30万〜50万円程度のコスト増を覚悟する必要があります。
会社設立後も登記などの手続きとコストが発生する
法人は設立時だけでなく、運営中も様々な場面で登記手続きが必要です。例えば、役員の任期が満了するたびに、同じ人が再任する場合であっても「重任登記」が必要となり、登録免許税がかかります。また、本店移転や目的変更の際も登記費用が発生し、これらの手続きを怠ると過料(罰金)を科されるリスクもあります。
融資の際に経営者保証から逃れられない
「法人になれば個人の資産は守られる」というのは、中小企業の融資実務においては必ずしも正しくありません。実績の少ない法人が融資を受ける場合、代表者個人の連帯保証(経営者保証)を求められるケースが大半です。会社が倒産すれば代表者が個人的に借金を背負うことになるため、リスクの実態は個人事業主と大きく変わらないのが現実です。
自分の会社なのに自由にお金を引き出せない
法人化すると、会社のお金を個人的な理由で自由に使うことは法律上できなくなります。
法人の資産と個人の資産は明確に区別されるため、個人事業主のように「生活費が足りないから事業用口座から引き出す」といった処理(事業主貸)は不可能です。社長が個人として自由に使えるお金は、原則として毎月定額の「役員報酬」のみに限られ、期中に金額を変更することも原則として認められていません。
社長自身は失業保険(雇用保険)の対象外になる
法人の代表取締役や役員は「労働者」ではないため、原則として雇用保険に加入できません。したがって、会社が倒産したり廃業したりした場合でも、従業員のように失業手当を受け取ることができず、生活が一気に困窮するリスクがあります。
廃業(解散)するのにも多額の費用と時間がかかる
法人の廃業手続きは設立以上に大変です。解散登記、清算人登記、官報公告、清算結了登記など法的な手続きが必須で、最低でも7万円以上の登録免許税に加え、官報掲載費、司法書士・税理士報酬などで合計30万〜50万円ほどの費用がかかります。期間も最低3〜4ヶ月を要するため、撤退のハードルは非常に高いと言えます。
この記事をお読みの方におすすめのガイド4選
続いてこちらのセクションでは、この記事をお読みの方によく活用いただいている人気のガイドを簡単に紹介します。すべて無料ですので、ぜひお気軽にご活用ください。
※記事の内容は、この後のセクションでも続きますのでぜひ併せてご覧ください。
会社設立時に決めることチェックリスト
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【会社形態別】法人化で後悔しやすいケースは?
選ぶ法人の形態によっても、後悔の種類は異なります。
株式会社で後悔しやすいケース
合同会社で後悔しやすいケース
- 信頼性の不足:株式会社に比べて知名度が低いため、古い体質の企業や新規取引先から「軽く見られる」ことがあります。
- 人材採用の苦戦:「株式会社」という響きを好む求職者も多く、採用面で不利になる場合があります。
- 意見対立によるロックアウト:出資者=経営者であるため、共同経営者と意見が対立した際に意思決定がストップし、事業が空中分解するリスクがあります。
マイクロ法人で後悔しやすいケース
「社会保険料削減」を目的に、一人社長が小規模の会社を作るケースです。
- 均等割の負担:売上がほぼゼロでも、毎年約7万円の法人住民税均等割がかかります。節税効果がこのコストを下回ると本末転倒です。
- 税理士報酬とのバランス:決算申告を税理士に頼むと、年間数十万円が飛びます。自分でやる手間とコストを天秤にかける必要があります。
- 実態の否認リスク:実態が伴わないペーパーカンパニーとみなされると、税務調査で節税スキームを否認されるリスクがあります。
法人化に必要な費用は?
後悔を防ぐためには、「いくらかかるか」を具体的にシミュレーションしておくことが不可欠です。
設立時にかかる費用
- 株式会社:約20万〜25万円(定款認証、登録免許税など)
- 合同会社:約6万〜10万円(登録免許税など) ※司法書士に依頼する場合は別途報酬(5万〜10万円程度)が必要。
毎年必ず発生するランニングコスト
- 法人住民税(均等割):約7万円〜
- 税理士報酬:年間30万〜50万円程度(顧問料+決算料)
- 社会保険料:最低でも年間約26万円〜(社長一人の場合でも会社負担分と個人負担分の合計で発生)
これらを合計すると、年間最低でも60万〜80万円程度の固定コストが増加します。この増額分をペイできるだけの利益増が見込めない場合は、法人化を見送るべきです。
法人化におすすめのタイミングは?
後悔を避けるには、事業の状況に合わせて適切なタイミングで法人化することが重要です。やみくもに法人化するのではなく、以下の目安を参考に検討しましょう。
課税所得が800万円を超えたとき
個人事業主の所得税は、所得が増えるほど税率が高くなる「累進課税」です。所得が800万円を超えたあたりから、所得税・住民税・事業税を合わせた税率が、法人税の実効税率よりも高くなる可能性があります。法人化による節税効果が期待できるため、最初の検討タイミングといえます。
インボイス制度対応や売上1,000万円超で消費税課税事業者になるとき
売上が1,000万円を超えて消費税の課税事業者になったタイミングも、法人化を検討する好機です。資本金1,000万円未満で法人を設立すると、原則として設立から最大2年間、消費税の納税が免除される特例があります。ただし、インボイス制度の開始により、免税事業者でいることが取引上不利になるケースもあるため、自社の状況に合わせて慎重な判断が必要です。
大きな設備投資や融資を計画しているとき
多額の資金調達や投資を考えている場合、法人の方が有利に働くことがあります。
対外的な信用度や事業の拡大を目指すとき
事業のステージを上げたい場合、法人格は大きな力になります。
- 信用度:企業によっては、取引相手を法人のみに限定している場合があります。法人化することで、大企業との取引の道が開ける可能性があります。
- 事業拡大:求人活動において、法人であることは社会的信用の証となり、優秀な人材が集まりやすくなります。社会保険への加入も、従業員の安心につながります。
法人化しないほうがいいケースは?
以下の状況であれば個人事業主のままの方が、手取りが多く精神的にも楽な場合が多いです。
1. 利益(課税所得)がまだ少ない
売上ではなく利益が重要です。目安として課税所得が800万円(あるいは売上1,000万円)を超えていない場合、税金や社会保険料の負担増がメリットを上回るため、急ぐ必要はありません。
2. 副業のサラリーマンである
サラリーマンが副業で法人を作る場合、本業の会社にバレるリスクが高まるほか、社会保険料の計算が複雑になり、かえって手取りが減るケースがあります。副業規模であれば個人のままで十分なことが多いです。
3. 事業規模を拡大するつもりがない
自分一人、あるいは家族だけで細々と続けたい場合、法人の事務負担は重荷でしかありません。特に、売上が安定しない時期に固定コストが増える法人はリスクが高すぎます。
4. 現金の流動性を重視したい
「会社にお金はあるが、個人としてはお金がない」という状態を避けたい場合、資金移動の自由度が高い個人事業主の方が適しています。
法人化に後悔した場合の「個人成り」の手続きは?
「法人化してみたけれど、やっぱり維持できない」となった場合、法人を廃業して個人事業主に戻ること(いわゆる「個人成り」)は可能です。 しかし、これには設立時以上のコストと手間を伴います。いざという時のために、具体的な流れを知っておきましょう。
1. 法人の解散に関する手続き
法人の事業を終わらせるには、単に営業を止めるだけでなく、法的な「解散」と「清算」の手続きが必要です。
- 解散決議と登記:まず株主総会を開いて解散を決議し、法務局で「解散登記」と「清算人選任登記」を行います。この時点で登録免許税として39,000円〜がかかります。
- 官報公告:会社が解散することを公に知らせるため、国の機関紙である「官報」に掲載する義務があります。掲載費として約3〜4万円かかり、掲載期間は最低2ヶ月以上必要です。
- 清算結了登記:官報掲載期間を経て、債務の整理や財産の分配(清算事務)がすべて終わったら、最後に「清算結了登記」を行います(登録免許税2,000円〜)。
このように、廃業手続きだけで司法書士報酬を含めると30万円〜50万円ほどの費用と、最低でも3〜4ヶ月の期間がかかります。
2. 個人事業主に戻るときの手続き
法人の廃業手続きと並行して、個人として事業を再開するための準備も必要です。
「とりあえず法人化して、ダメなら戻ればいい」と考えるのは危険です。 法人化後1〜2年で戻るケースの多くは、シミュレーション不足による資金ショートが原因です。戻る際の手間とコストを考えると、最初から「あえて法人化しない」判断をするか、綿密な計画を立てることがいかに重要かがわかります。
法人化の後悔は入念な準備で防ごう
法人化は、事業拡大や社会的信用を得るための強力な手段ですが、タイミングを間違えると「働いても働いてもお金がない」「事務作業で忙殺される」という後悔につながります。
- 役員報酬と社会保険料のシミュレーションを徹底する。
- 法人形態(株式会社・合同会社)を目的・予算に合わせて慎重に選ぶ。
- 維持コスト(最低年60〜80万円)を賄える利益があるか確認する。
- 専門家(税理士など)を味方につけ、事務負担を減らす。
「周りがやっているから」と流されず、メリット・デメリットを正しく理解した上で、ご自身の事業にとって本当に今必要なのかを検討してください。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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