- 作成日 : 2026年7月16日
建設業で電子契約システムを導入するには?要件・メリット・選び方を解説
建設業でも、相手方の承諾と見読性・原本性・本人性を確保すれば電子契約システムを利用できます。
- 工事請負契約や注文書も電子化の対象
- 印紙代・郵送費・保管コストを削減できる
- 協力会社の使いやすさと管理機能で選ぶ
Q. 建設業で電子契約を使うために必要な条件は?
A. 相手方の承諾を得たうえで、見読性・原本性(非改ざん性)・本人性を確保できる電子契約システムを使うことが条件です。
建設業でも、一定の要件を満たせば電子契約システムを利用して契約を締結できます。工事請負契約、注文書・注文請書、下請契約、覚書などを電子化すれば、紙の契約書にかかる郵送、押印、印紙、保管の手間を減らせます。電子契約では印紙が不要ですので、印紙代の節約にもつながります。
本記事では、建設業における電子契約システムの基本、導入メリット、選び方などを解説します。
目次
建設業で電子契約システムは利用できる?
建設業でも、建設業法などの要件を満たせば電子契約システムを利用できます。紙の契約書だけが有効というわけではなく、電磁的方法による契約締結も実務上の選択肢になります。
ただし、どの契約書でも単にPDF化すればよいわけではありません。建設工事の請負契約では、契約内容の明示、相手方の承諾、本人性や改ざん防止など、業界特有の確認点があります。
建設業でも電子契約は法的に利用できる
建設業における電子契約は、法令上の要件を満たせば利用できます。工事請負契約を電子化する場合も、契約内容が適切に記録され、当事者が確認できる状態で保存されていれば、紙の契約書と同様に契約管理へ活用できます。
建設業法では、建設工事の請負契約について契約内容を明確にする趣旨から、一定の事項を記載した書面の交付が重視されています。一方で、国土交通省は電磁的方法による契約締結に関するガイドラインを示しており、紙ではなく電子データで契約を交わす運用も想定されています。したがって、建設業で電子契約システムを使う際は、「電子化できるか」ではなく、「電子化に必要な条件を満たしているか」を確認する視点が欠かせません。
参考:重要事項説明書等の電磁的方法による交付に係るガイドライン|国土交通省
工事請負契約や注文書・請書も電子化の対象
建設業で電子化しやすい契約書には、工事請負契約書、下請契約書、注文書、注文請書、変更契約書、覚書、発注書などがあります。契約金額や工期、施工範囲、支払条件などを明確に残す文書は、電子契約システムとの相性が高い領域です。
建設業では、元請・下請・協力会社・資材会社など、複数の関係者と継続的に契約を交わします。紙で運用していると、押印待ち、郵送遅延、原本保管、契約書の所在不明が起こりやすくなります。電子契約システムを使えば、契約締結の進捗を画面上で確認でき、遠隔地の現場や協力会社ともスムーズに契約手続きを進めやすくなります。
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建設業で電子契約を利用できる条件は?
前述のとおり、建設業では、相手方の承諾を得たうえで、見読性・原本性(非改ざん性)・本人性を確保できれば電子契約を利用できます。紙の契約書を単にPDF化するだけではなく、契約内容を確認でき、改ざんを防ぎ、誰が契約したかを証明できる仕組みで運用することが前提です。
相手方の承諾を得ていることが前提
建設業で電子契約を利用するには、契約の相手方から電子契約による締結について承諾を得る必要があります。自社だけが電子化を希望していても、相手方が紙の契約書を希望する場合は、一方的に電子契約へ切り替えることはできません。
承諾を得る際は、利用する電子契約システム、契約書の確認方法、電子署名やタイムスタンプの有無、締結後の保存方法を説明します。建設業では、協力会社や一人親方など取引先のIT環境に差があるため、操作方法や費用負担の有無も事前に共有しておくと、導入後の混乱を抑えられます。
見読性・原本性(非改ざん性)・本人性を確保する
電子契約では、見読性・原本性(非改ざん性)・本人性を確保できる仕組みが必要です。見読性とは、契約内容を画面や書面で明瞭に確認できることです。原本性(非改ざん性)とは、契約締結後に内容が変更されていないことを確認できることです。本人性とは、契約した相手が本人であることを確認できることを指します。
そのため、電子契約システムを選ぶ際は、電子署名、タイムスタンプ、締結履歴、アクセスログ、検索機能などを確認します。建設工事の請負契約では、工事内容、請負代金、工期、支払条件、契約変更の扱いなどを明確に残す必要があります。メール送付だけでは、誰がいつ承諾し、契約後に内容が変わっていないかを説明しにくい場合があります。
電子契約できるものと紙対応が残るもの
建設業では、工事請負契約書、下請契約書、注文書・注文請書、変更契約書など、多くの契約書を電子契約にできます。相手方が承諾しない場合や、発注者が紙での提出を指定する場合は、紙での契約対応が残ります。
| 区分 | 書類・契約の例 | 判断のポイント |
|---|---|---|
| 電子契約できるもの | 建設工事請負契約書 | 相手方の承諾を得て、見読性・原本性(非改ざん性)・本人性を確保できれば電子化できる。 |
| 下請契約書 | 建設業法上の記載事項を満たし、電子契約による締結に相手方が承諾していれば電子化できる。 | |
| 注文書・注文請書 | 注文と承諾の履歴を残し、契約内容を確認できる状態で保存できれば電子化できる。 | |
| 変更契約書・追加工事の合意書 | 当初契約とひも付けて保存し、変更内容、金額、工期を確認できる状態にする。 | |
| 覚書・合意書・秘密保持契約書 | 契約当事者の同意と電子契約システム上の証跡を残せれば、電子契約の対象にできる。 | |
| 紙対応が残るもの | 相手方が電子契約を承諾しない契約 | 電子契約は相手方の承諾が前提となるため、紙の契約書で対応する。 |
| 発注者が紙での提出を指定する書類 | 公共工事や発注者指定の手続きでは、提出方法の指定に従う。 | |
| 社内規程で紙原本の保管を求めている書類 | 法的に電子化できる場合でも、社内規程が未整備なら先に運用ルールを見直す。 | |
| 見読性・原本性(非改ざん性)・本人性を確保できないデータ | 電子契約としての証跡が不十分な場合は、システムや保存方法を見直す必要がある。 |
建設業で電子契約システムを導入するメリットは?
建設業で電子契約システムを導入する主なメリットは、契約締結の迅速化、印紙代や郵送費の削減、契約書管理の一元化です。現場や支店が分散しやすい建設業では、紙の契約よりも電子契約の効果を実感しやすい場面があります。
郵送・押印・返送にかかる時間を短縮できる
電子契約システムを使うと、契約書を印刷して製本し、押印して郵送する工程を省けます。現場事務所、支店、本社、協力会社の間で書類を往復させる時間を短縮できるため、契約締結までのリードタイムを圧縮しやすくなります。
建設業では、工期の都合上、短期間で契約書を取り交わす場面があります。紙の契約書では、担当者不在、押印者の出張、郵送遅延などにより、手続きが止まりやすくなります。電子契約なら、承認者が遠隔地にいても確認や承認を進められるため、契約締結の滞留を抑えられます。
印紙代や紙の管理コストを削減できる
電子契約では、紙の契約書に貼付する収入印紙が不要になります。印紙税法上の課税文書は紙の書面のみが対象であり、電子で作成されたものは印紙は不要です。契約件数や契約金額が大きい建設業では、印紙代の削減効果が大きくなる可能性があります。
紙の契約書では、印紙代だけでなく、封筒、郵送、製本、ファイリング、倉庫保管、検索作業にもコストが発生します。電子契約システムを導入すれば、契約データをクラウド上で管理できるため、契約書を探す時間や保管スペースの負担も軽くなります。契約件数が多い会社ほど、ペーパーレス化以上の業務改善効果を得やすくなります。
契約書の所在や締結状況を一元管理できる
電子契約システムでは、誰に送信したか、誰が確認したか、どの契約が締結済みかを管理しやすくなります。契約書の所在が担当者の机や現場ファイルに分散しにくくなる点も利点です。
建設業では、工事ごと、現場ごと、協力会社ごとに契約書が発生します。紙で保管していると、変更契約書や覚書が別ファイルに分かれ、最新の契約条件を確認しづらくなることがあります。電子契約システムで案件名、取引先名、契約期間、金額、工事名などを検索できるようにすれば、社内確認や監査対応も進めやすくなります。
電子帳簿保存法への対応は必要?
電子契約システムで締結した契約書は、電子取引データとして保存要件の確認が必要です。契約を電子で交わした場合、印刷して紙で保管するだけでは不十分となる可能性があります。
電子で受け取った契約書は電子データのまま保存する
電子契約システムで締結した契約書は、電子データとして保存する運用が基本になります。PDFを印刷して紙で保存するだけでは、電子取引データの保存対応として不十分になる場合があります。
保存時には、契約日、取引先、金額などで検索できる状態を整えることが求められます。建設業では、工事番号、現場名、発注者名、協力会社名などでも検索できるようにしておくと、税務調査や社内確認の際に探しやすくなります。なお、紙に印刷した場合には、その印刷した契約書等が契約の成立を証明するためのものである場合には印紙が必要になるケースもあります。
真実性と可視性を確保できる仕組みを選ぶ
電子帳簿保存法への対応では、データが改ざんされていないことを確認できる仕組みと、必要なときに画面や書面で内容を確認できる状態が求められます。電子契約システムを選ぶ際は、契約締結後の保存機能まで確認する必要があります。
タイムスタンプ、訂正削除履歴、アクセス制限、検索機能、ダウンロード機能などは、電子保存の実務に関わる機能です。契約書を締結できても、保存要件に対応しづらいシステムでは、別途文書管理システムや社内ルールを補う必要が出てきます。
契約書以外の関連書類も保存範囲を整理する
建設業では、契約書のほかに見積書、発注書、請求書、検収書、工事指示書、変更合意書など多くの書類が発生します。電子契約システムを導入する際は、どの書類を電子契約の対象にし、どの書類を別システムで管理するかを整理します。
契約書だけを電子化しても、関連書類が紙やメールに分散していると、案件全体の確認に時間がかかります。最初からすべてを電子化する必要はありませんが、契約書、注文書、請書、変更合意書のように契約条件に直結する書類から優先すると、効果を出しやすくなります。
建設業で電子契約システムを選ぶポイントは?
建設業で電子契約システムを選ぶ際は、建設業法対応、取引先の使いやすさ、契約書管理機能、社内承認フロー、既存システムとの連携を確認します。価格だけで選ぶと、現場や協力会社に定着しないおそれがあります。
建設業法に配慮した契約運用ができるか
建設業向けに電子契約システムを選ぶ場合は、工事請負契約や注文書・請書の運用に対応できるかを確認します。建設業法上の記載事項を含む契約書テンプレートを使えるか、契約変更にも対応できるかが判断材料になります。
また、契約締結前の社内承認、相手方への送信、締結後の保管、更新管理まで一連の流れで確認します。建設業では、契約前に工事が始まってしまうリスクもあるため、未締結案件を一覧で把握できる機能があると管理しやすくなります。
協力会社や一人親方でも使いやすい操作性
建設業では、取引先のIT環境に差があります。電子契約システムは、自社の担当者だけでなく、協力会社や一人親方でも操作しやすいものを選ぶ必要があります。
相手方がアカウント登録なしで確認できるか、スマートフォンで操作できるか、メール通知が分かりやすいか、締結済みデータを相手方も保存できるかを確認します。操作が複雑だと、結局は紙での契約を求められ、電子化が進まない原因になります。
契約書の検索・権限管理・ログ管理
電子契約システムは、締結機能だけでなく、契約書を管理する機能も比較します。契約書を探せない、権限設定が粗い、履歴が残らないシステムでは、建設業の多案件管理に向きません。
工事名、取引先名、契約金額、契約日、工期、担当部署などで検索できると、契約確認の効率が上がります。加えて、閲覧権限を部署や役職ごとに分けられる機能、誰が契約書を確認したかを残せるログ機能があると、内部統制や監査対応にも使いやすくなります。
建設業で電子契約を導入する流れは?
建設業で電子契約を導入する際は、対象契約の棚卸し、ルール設計、システム選定、取引先への案内、試験運用の順に進めましょう。いきなり全契約を電子化するより、件数が多く標準化しやすいものから段階的に進めていくと負担が少なく進められます。
1. 電子化する契約書を棚卸しする
最初に、現在使っている契約書や注文書を棚卸しします。工事請負契約書、下請契約書、注文書、注文請書、変更契約書、覚書などを洗い出し、電子化しやすいものから優先順位を付けましょう。
契約件数が多く、定型化しやすく、取引先の理解を得やすい書類は初期導入に向いています。個別交渉が多い大型案件や発注者指定の様式がある契約は、後から段階的に電子化する方が混乱を避けやすくなります。
2. 社内承認と相手方承諾のルールを決める
契約書を誰が作成し、誰が承認し、誰が送信するかを決めます。電子契約では送信操作が契約締結に直結するため、紙の押印申請と同じ感覚で権限管理を設計する必要があります。
あわせて、取引先に電子契約を利用する旨をどのタイミングで案内するかを決めましょう。基本契約の締結時、発注前、見積依頼時など、相手方が戸惑わないタイミングで説明すると、承諾を得やすくなります。
3. 小規模に試験運用してから対象を広げる
電子契約システムは、限られた部署や契約類型で試験運用してから拡大すると定着しやすくなります。初期段階で操作ミス、承認漏れ、取引先からの問い合わせ、保存ルールの不備を発見できるためです。
試験運用では、契約締結までの日数、差し戻し件数、問い合わせ内容、紙契約に戻った理由を確認しましょう。その結果をもとに、マニュアルやテンプレート、取引先向け案内文を改善すれば、全社展開時の混乱を減らせます。
建設業の電子契約システム導入で確認したい比較項目は?
電子契約システムを比較する際は、契約締結のしやすさだけでなく、建設業の契約実務に合うかを見ましょう。導入費用が低くても、協力会社が使いにくい、契約書を検索しづらい、保存要件に対応しにくい場合は再検討が必要です。
| 比較項目 | 確認する内容 | 建設業で見るべき理由 |
|---|---|---|
| 建設業法対応 | 工事請負契約や注文書・請書の運用に対応できるか | 契約内容の明示や相手方承諾が必要になるため |
| 電子署名・タイムスタンプ | 本人性、非改ざん性、締結日時を確認できるか | 契約トラブル時に証跡を示しやすくするため |
| 相手方の使いやすさ | アカウント登録の要否、スマートフォン対応、操作案内 | 協力会社や一人親方にも利用してもらうため |
| 社内承認フロー | 部署別承認、金額別承認、差し戻しができるか | 現場判断だけで契約送信されるリスクを抑えるため |
| 契約書管理 | 工事名、取引先名、金額、契約日で検索できるか | 案件数が多い建設業で契約書を探しやすくするため |
| 権限管理 | 閲覧、送信、承認、管理者権限を分けられるか | 契約情報の漏えいや誤送信を防ぐため |
| 電子帳簿保存法対応 | 検索性、真実性、可視性を確保できるか | 電子取引データを適切に保存するため |
| 外部連携 | 会計、販売管理、工事管理、文書管理と連携できるか | 契約情報を二重入力せずに使うため |
建設業では電子契約システムを段階的に導入しましょう
建設業で電子契約システムを導入すると、契約締結のスピード向上、印紙代や郵送費の削減、契約書管理の効率化が期待できます。工事請負契約、注文書・請書、下請契約、変更契約など、紙のやり取りが多い建設業では効果を得やすい仕組みです。一方で、建設業法上の記載事項、相手方の承諾、電子帳簿保存法に沿った保存、協力会社への説明を省くと運用が不安定になります。まずは契約書を棚卸しし、電子化しやすい書類から試験運用を始めると、無理なく電子契約を定着させやすくなります。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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