• 作成日 : 2026年7月16日

労働者派遣基本契約書を作成するには?個別契約との違いや記載事項を解説

Point労働者派遣基本契約書とは何か?

労働者派遣基本契約書は、派遣元と派遣先が継続取引に共通する条件(料金・責任分担・守秘義務など)をまとめて定める契約書です。

  • 個別契約書と役割を分けて二層管理する
  • 押印は必須でなく収入印紙も原則不要
  • 業務委託と異なり派遣先が直接指揮命令できる

Q. 基本契約書と個別契約書の違いは?

A. 基本契約書は取引全体の共通ルールを定め、個別契約書は派遣ごとの業務内容・期間・就業場所などの具体的な就業条件を定めます。

労働者派遣基本契約書は、派遣元企業と派遣先企業が、労働者派遣に関する共通ルールを定める契約書です。個々の派遣条件は労働者派遣個別契約書で定めますが、料金、責任分担、守秘義務、契約解除、損害賠償など共通する部分は基本契約で整理するのが一般的です。

本記事では、労働者派遣基本契約書の役割、記載事項、作成の流れなどを解説します。

労働者派遣基本契約書とは?

労働者派遣基本契約書とは、派遣元と派遣先が、継続的な労働者派遣取引に共通して適用する条件を定める契約書です。派遣料金、責任分担、守秘義務、契約解除など、派遣取引全体の土台となるルールを整理するために使われます。

労働者派遣基本契約書は派遣取引の共通ルールを定める書類

労働者派遣基本契約書は、派遣元事業主と派遣先企業の間で締結される契約書です。派遣料金の計算方法、請求・支払い条件、派遣先での指揮命令、守秘義務、個人情報の取扱い、契約解除、損害賠償など、複数の派遣契約に共通する事項をまとめて定めます。

基本契約書は、派遣労働者を受け入れるたびに同じ条件を確認し直す手間を減らし、取引の安定性を高める役割を持ちます。

派遣契約は「雇用関係」と「指揮命令関係」が分かれる

労働者派遣の契約構造は、派遣元・派遣先・派遣労働者の三者関係で成り立ちます。派遣労働者を雇用するのは派遣元ですが、実際の業務指示は派遣先が行う点に特徴があります。

一般的な雇用では、労働者を雇用する会社が勤務場所や業務内容を指示します。一方、労働者派遣では、派遣元が派遣労働者と雇用契約を結び、派遣先が派遣契約に基づいて就業場所で指揮命令を行います。つまり、賃金支払い、社会保険、雇用管理などは派遣元が担い、日々の業務指示や就業場所の管理は派遣先が担う構造です。

この三者関係を整理するために、派遣元と派遣先の間では労働者派遣契約を締結します。そのうち、継続的な取引条件を定めるのが労働者派遣基本契約書であり、個別の就業条件を定めるのが労働者派遣個別契約書です。

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派遣契約と業務委託契約の違いは?

派遣契約と業務委託契約の大きな違いは、発注側が働く人に直接指揮命令できるかどうかです。派遣契約では派遣先が派遣労働者に業務指示を出せますが、業務委託契約では委託先が自らの責任で業務を進めるため、発注側が作業者へ直接指示することは原則できません。

【派遣契約】派遣先が派遣労働者に指揮命令できる

派遣契約では、派遣元が派遣労働者を雇用し、派遣先が就業場所で業務上の指示を出します。賃金支払い、社会保険、雇用契約の管理は派遣元が担いますが、日々の作業指示や業務の進め方は派遣先が管理する構造です。

そのため、派遣契約では「誰が指揮命令者になるのか」「どの業務を担当するのか」「勤務時間や就業場所をどう管理するのか」を明確にする必要があります。派遣先が直接指示できる一方で、労働者派遣法に基づく契約書や管理台帳、期間制限などのルールも確認しなければなりません。

参考:労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律|e-GOV

【業務委託契約】発注側が作業者に直接指示できない

業務委託契約は、業務の遂行や成果物の完成を外部の事業者に依頼する契約です。発注側は、委託先に対して業務内容や納期、成果物の条件を指定できますが、委託先の作業者に対して勤務時間、作業手順、配置、休憩、日々の進め方を直接指示することは原則できません。

発注側が委託先の作業者に細かく指示し、実態として自社の従業員のように管理している場合、業務委託ではなく労働者派遣に近い状態と判断されるおそれがあります。このような状態は、偽装請負のリスクにつながるため、契約書の名称だけでなく実際の運用を確認する必要があります。偽装請負と判断された場合には労働者派遣法等の法令違反として罰則を受けるリスクがあります。

労働者派遣基本契約書と個別契約書の違いは?

労働者派遣基本契約書と労働者派遣個別契約書の違いは、定める内容の範囲です。基本契約書は継続取引に共通する条件を定め、個別契約書は派遣労働者ごとの具体的な就業条件を定めます。

【基本契約書】継続的な取引条件を定める

基本契約書では、派遣元と派遣先の取引関係に共通して適用される内容を定めます。派遣料金の単価や算定方法、支払期限、遅延損害金、契約期間、更新、解除、反社会的勢力の排除、秘密保持、個人情報保護、損害賠償、協議事項などが代表例です。

同じ派遣元・派遣先の間で複数回の派遣を行う場合、毎回すべての取引条件を一から合意するのは非効率です。そこで、基本契約書に共通条件をまとめ、個別の派遣が発生するたびに個別契約書で就業条件を補う形が用いられます。

基本契約書を整備しておくと、契約交渉の負担を減らせるだけでなく、取引先との責任分担も明確になります。

【個別契約書】派遣ごとの就業条件を定める

労働者派遣個別契約書は、実際の派遣就業に必要な条件を個別に定める書類です。業務内容、就業場所、派遣期間、就業日、勤務時間、休憩時間、時間外労働、指揮命令者、責任者、苦情処理、派遣労働者の人数など、現場で働くための具体的な情報を記載します。

派遣契約では、個別の派遣就業条件を明確にすることが欠かせません。基本契約書と個別契約書は、どちらか一方で代替する関係ではありません。基本契約書で取引の土台を作り、個別契約書で派遣ごとの条件を確定する二層構造で管理するのが基本です。

役割を分けて考えると契約管理がしやすくなります。

区分 労働者派遣基本契約書 労働者派遣個別契約書
目的 派遣取引全体に共通する条件を定める 個別の派遣就業条件を定める
主な内容 派遣料金、支払い、秘密保持、解除、損害賠償、責任分担 業務内容、就業場所、派遣期間、勤務時間、指揮命令者
作成時期 継続取引を開始する前 個別の派遣を開始する前
見直し頻度 契約更新時や法改正時 派遣案件ごと、条件変更時
位置づけ 取引の基本ルール 実際の就業条件の確定書面

労働者派遣基本契約書の記載項目は?

労働者派遣基本契約書に記載する項目は、すべてが法律上の必須項目ではありません。業務内容、派遣期間、就業場所、指揮命令者など、派遣ごとに変わる事項は、通常、労働者派遣個別契約書で定めます。

記載項目 記載例
契約の目的 本契約は、派遣元が派遣先に対して労働者派遣を行う際の基本条件を定めるものとする。
適用範囲 本契約は、派遣元と派遣先の間で締結される個別の労働者派遣契約に共通して適用される。
個別契約との関係 個別契約に本契約と異なる定めがある場合は、個別契約の定めを優先する。
派遣料金・支払い条件 派遣料金の算定方法、請求締日、支払期限、振込手数料の負担は、個別契約または別紙で定める。
派遣元・派遣先の責任分担 派遣元および派遣先は、労働者派遣法その他関係法令に従い、それぞれの責任を履行する。
個別契約で定める事項 業務内容、派遣期間、就業場所、勤務時間、指揮命令者、責任者、苦情処理などは、個別契約で定める。
守秘義務 派遣元および派遣先は、契約に関連して知り得た相手方の秘密情報を第三者に漏えいしてはならない。
個人情報の取扱い 派遣元および派遣先は、派遣労働者および関係者の個人情報を法令に従い適切に管理する。
契約期間・更新 本契約の有効期間は1年間とし、期間満了前に異議がない場合は同一条件で更新する。
中途解除 やむを得ない事由がある場合、相手方に事前通知のうえ本契約または個別契約を解除できる。
損害賠償 契約違反により相手方に損害を与えた場合、通常かつ直接の損害を賠償する。
反社会的勢力の排除 当事者は、自己または関係者が反社会的勢力に該当しないことを表明し保証する。
協議事項 本契約に定めのない事項や疑義が生じた事項は、当事者間で協議して解決する。

労働者派遣個別契約書の記載項目は?

労働者派遣の個別契約書には、派遣ごとの就業条件を具体的に記載します。

記載項目 記載例
派遣労働者が従事する業務内容 一般事務、経理補助、データ入力、受付業務など、派遣労働者が行う業務を具体的に記載する。
派遣労働者の人数 本契約に基づき派遣する労働者は1名とする。
派遣期間 2026年7月1日から2026年9月30日までとする。
就業場所 東京都〇〇区〇〇町1-2-3 株式会社〇〇 本社管理部とする。
就業日 月曜日から金曜日までとし、土曜日、日曜日、祝日は休日とする。
就業時間 始業時刻は9時00分、終業時刻は18時00分とする。
休憩時間 12時00分から13時00分までを休憩時間とする。
時間外労働・休日労働の有無 業務上必要がある場合、1日2時間、1か月20時間の範囲で時間外労働を命じる場合がある。
派遣先の指揮命令者 派遣先管理部 課長 〇〇〇〇を指揮命令者とする。
派遣元責任者 派遣元営業部 〇〇〇〇を派遣元責任者とする。
派遣先責任者 派遣先人事部 〇〇〇〇を派遣先責任者とする。
苦情処理の方法 派遣労働者から苦情の申出があった場合、派遣元責任者および派遣先責任者が協議のうえ対応する。
派遣料金 派遣料金は1時間あたり3,000円とし、時間外・休日・深夜労働については別途定める割増率を適用する。
派遣料金の支払い条件 派遣元は毎月末日締めで請求し、派遣先は翌月末日までに指定口座へ支払う。
派遣労働者の就業条件 就業条件は本契約および派遣元が派遣労働者に明示する就業条件明示書の内容による。
派遣先が講ずべき安全衛生措置 派遣先は、就業場所における安全衛生管理、設備説明、緊急時対応の周知を行う。
派遣労働者の福祉施設の利用 派遣労働者は、派遣先の食堂、休憩室、更衣室を利用できるものとする。
派遣契約解除時の措置 派遣先の都合で契約を解除する場合、派遣先は派遣元と協議し、派遣労働者の雇用安定に配慮する。
派遣先における教育訓練・能力開発に関する事項 派遣先は、業務遂行に必要なシステム操作や社内ルールについて説明を行う。
紹介予定派遣に関する事項 紹介予定派遣の場合、職業紹介を予定する旨、直接雇用後の業務内容、労働条件などを記載する。
派遣期間制限に関する事項 派遣先は、事業所単位および個人単位の期間制限に抵触しない範囲で派遣労働者を受け入れる。
派遣元・派遣先の名称 派遣元は株式会社〇〇、派遣先は株式会社△△とする。
派遣元・派遣先の所在地 派遣元所在地は東京都〇〇区〇〇、派遣先所在地は東京都△△区△△とする。
派遣元・派遣先の許可番号 派遣元の労働者派遣事業許可番号は派00-000000とする。

労働者派遣基本契約書を作成する流れは?

労働者派遣基本契約書は、派遣元と派遣先の継続取引を始める前に作成します。先に共通条件を整理し、その後、実際に派遣労働者を受け入れるタイミングで個別契約書を作成する流れです。

1. 派遣取引の基本条件を整理する

まず、派遣元と派遣先で、派遣する業務の範囲、想定する職種、派遣料金、支払い条件、契約期間、更新方法を確認します。ここで曖昧な点が残ると、基本契約書と実際の運用にずれが生じやすくなります。登録型派遣か常用型派遣か、紹介予定派遣を含むかも確認しておくと、条項を調整しやすくなります。

2. 基本契約書に共通ルールを記載する

契約の目的、適用範囲、個別契約との関係、派遣料金、請求・支払い、守秘義務、個人情報、責任分担、中途解除、損害賠償などを記載します。基本契約書は、個々の就業条件ではなく、複数の派遣契約に共通する取引ルールを定める書類として作成します。

3. 派遣開始前に個別契約書を作成する

基本契約書を締結した後、派遣労働者を受け入れる案件ごとに個別契約書を作成します。個別契約書では、業務内容、派遣期間、就業場所、勤務時間、休憩時間、指揮命令者、責任者、苦情処理などを具体的に定めます。個別契約書は、派遣労働者が就業を開始する前に作成・確認しておく必要があります。

労働者派遣基本契約書に押印・収入印紙は必要?

労働者派遣基本契約書は、契約当事者の合意が確認できれば、必ずしも押印がなければ成立しないわけではありません。また、労働者派遣基本契約書は、一般的には印紙税法上の課税文書に該当しないため、収入印紙は不要と考えられます。

押印は必須ではないが、合意の証拠として使われ

契約は、原則として当事者の意思表示が合致すれば成立します。そのため、労働者派遣基本契約も合意により成立します。契約書に署名や押印がないだけで直ちに無効になるわけではありません。

ただし、実務では、誰がどの内容に合意したのかを明確にするため、記名押印または署名を行うケースが多くあります。電子契約を利用する場合も、電子署名や承認履歴によって、契約締結者、締結日、契約内容を確認できる状態にしておくと、後日の紛争予防につながります。

収入印紙は原則不要だが、契約内容の確認が必要

労働者派遣基本契約書は、労働者派遣という役務提供の基本条件を定める契約であり、一般的には印紙税法上の課税文書には該当しないと整理されます。通常の労働者派遣基本契約書であれば、収入印紙を貼付しない運用が一般的です。

もっとも、契約書の名称ではなく、記載内容によって課税文書に該当するかが判断されます。たとえば、請負契約、業務委託契約、継続的取引の基本契約に近い内容が含まれる場合、印紙税の扱いが変わる可能性があります。継続的取引に関していえば、基本的には労働者派遣は請負ではなく委任であるから印紙税は不要とされていますが、業務内容に成果物の納品などの請負の要素がある場合には印紙が必要とされるケースもあります。判断に迷う場合は、税務署や税理士に確認するのが安全です。なお、電子契約であれば、課税文書に該当する契約であっても印紙税は不要です。

労働者派遣基本契約書を正しく整備して派遣取引のリスクを抑えよう

労働者派遣基本契約書は、派遣元と派遣先の継続的な取引条件を定める契約書です。個別の就業条件は労働者派遣個別契約書で定めるため、両者の役割を分けて管理する必要があります。作成時は、派遣料金、責任分担、秘密保持、個人情報、中途解除、損害賠償、更新・変更の方法を確認します。基本契約書を整備することで、派遣契約書全体の管理がしやすくなり、派遣先・派遣元双方のトラブル予防につながります。

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