- 更新日 : 2025年1月20日
白色申告の事業専従者控除とは?条件や計算方法までわかりやすく解説!
白色申告の事業主の元で、その子どもや配偶者が事業に従事した場合、子どもや配偶者へ支払った給与については必要経費として認められません。
この記事では、これら給与分が必要経費にならない代わりに設けられた「事業専従者控除の特例」について解説します。
目次
白色申告における事業専従者控除とは?
生計を一にしている配偶者やその他親族が、納税者本人が経営している事業へ従事する際に、納税者がこれらの人に対して給与を支払うことがあります。
白色申告において、これらの給与は必要経費に算入することはできませんが、事業に従事している家族の人数、配偶者なのかそれ以外の親族、その所得金額に応じて計算される金額を事業専従者控除として必要経費と「みなす」ことができます。
青色事業専従者給与との違いは?
青色申告者には、一定要件を満たせば、実際に支払った給与の額を必要経費とする「青色事業専従者給与の特例」が設けられています。
一定の要件とは、次の4要件です。
- 青色事業専従者に対して支払われた給与であること。
- 「青色事業専従者給与に関する届出書」を税務署に提出していること。
- 届出書に記載されている方法でかつ、記載された金額の範囲内で支払われたものであること。
- 青色事業専従者給与の額は、労務の対価に応じたものであること。
したがって、白色申告における事業専従者との違いとして、青色申告は届出書の提出が求められ、届出に記載された金額内であれば認められるという点が挙げられます。
また、細かな違いとしては、専従期間の考え方について白色と青色では異なっていることが挙げられます。
その年を通じて「6か月を超えて」その事業に専従していること
上記の原則に対し「6か月」の取り扱いについては、青色申告では次の特例があります。
<特例(青色申告のみ)>
次のような場合には専従期間が従事可能期間の1/2を超えれば従事要件にあてはまるとされます。
- 年の中途における開業や廃業があった場合など、その年において事業が年中を通じて営まれなかった場合
- 長期にわたる病気、婚姻、就退職などにより、専従者としてその事業に従事できなかった場合
青色事業専従者給与の詳細は、こちらをご参照ください。
マネーフォワード クラウド確定申告では、個人事業主やフリーランスの方が知っておきたい"経費"のキホンや勘定科目を分かりやすく1つにまとめた「個人事業主が知っておくべき経費大辞典」を無料で用意しております。
税理士監修で、経費の勘定科目や具体例だけでなくワンポイントアドバイスもついているお得な1冊となっていますので、ぜひ手元に置きたい保存版としてご活用ください。
専従者控除を受けるための条件は?
では、白色申告者が事業専従者控除の特例を受けるための要件を見てみましょう。
1. 白色申告者の行う事業に事業専従者がいること
事業専従者とは、下記の3つの条件のすべてに該当する方を指します。
- 白色申告者と生計を一にする配偶者やその他の親族である
- その年の12月31日時点で15歳以上である
- 年間で6か月を超えて、その白色申告者が行う事業に従事している
つまり、たとえ親族だとしても、別生計であったり、14歳以下の子供であったり、「ときどき手伝いにくる」といった程度の人については事業専従者として認められないということです。
また、事業専従者控除の対象者は配偶者控除や扶養控除の対象外となりますので、注意が必要です。
さらに注意すべき点として、事業専従者として必要経費とみなした金額がある場合、その金額については、その事業専従者の給与収入とみなされることです。
その事業専従者が他でアルバイト等をしていた場合には、事業専従者控除額とアルバイト収入の合計額が年間収入となります。
2. 確定申告書に必要事項を記載すること
確定申告に必要な収支内訳書及び確定申告書への記載について見ていきましょう。
事業専従者控除額の計算は次で確認しますが、先に確定申告書等の記載する位置を確認しておきましょう。
収支内訳書
まず、収支内訳書ですが、1ページ目の「専従者控除」の欄に計算した事業専従者控除額を記載し、所得金額を求めます。
出典:確定申告書等の様式・手引き等(令和6年分の所得税及び復興特別所得税の確定申告分)|国税庁
確定申告書
そして確定申告書には、上記専従者控除額を記載します。この欄は、青色申告の場合には事業専従者給与を、白色申告の場合には事業専従者控除額を記載することになっています。
出典:確定申告書等の様式・手引き等(令和6年分の所得税及び復興特別所得税の確定申告分)|国税庁
専従者控除の金額の計算方法は?
事業専従者控除の計算は難しくありません。
という計算式によって簡単に求めることができます。
ただし、配偶者86万円・配偶者以外50万円/人という上限が定められている点に要注意です。求められた金額がこれを超える場合には超過部分が切り捨てられ、「控除額=上限額」となります。
それでは具体例を挙げて計算してみましょう。
例1 収入300万円・経費150万円・専従者1人(配偶者)の場合
この場合の専従者控除額は、次のとおり計算されます。
(300万 - 150万) ÷ (1 + 1) = 75万 < 86万円(配偶者)
この場合における事業専従者控除額は算出された数字がそのまま適用されて75万円となります。
例2 収入400万円・経費200万円・専従者1人(配偶者)の場合
この場合の専従者控除額は、次のとおり計算されます。
(400万 - 200万) ÷ (1 + 1) = 100万 > 86万円(配偶者)
この場合における事業専従者控除額は上限である86万円をオーバーしているため、86万円となります。
マネーフォワード クラウド会社設立は、個人事業主が法人成りを検討したほうがよいタイミングをまとめた「法人化を検討すべき7つのタイミング」を無料で用意しております。
創業支援に強い税理士監修で、ポイントがまとまったお得な1冊となっていますので、ぜひ将来を見据えた情報収集でご活用ください。
事業専従者控除を受けるための手続き
事業専従者控除を受けるための手続きは、とてもシンプルです。
収支内訳書
確定申告の作成時に、収支内訳書1ページ目の所定の欄に対象となる事業専従者の氏名、続柄、従事月数などを記入します。
出典:確定申告書等の様式・手引き等(令和6年分の所得税及び復興特別所得税の確定申告分)|国税庁
確定申告書
次に、確定申告書 第二表の「事業専従者に関する事項」に、氏名、専従者のマイナンバー、続柄、生年月日、従事月数、従事の程度(毎日6時間従事など)、仕事の内容、控除額など控除の対象となる者の情報を記載します。この第二表に記載した合計額が確定申告書B第一表の「専従者給与(控除)額の合計額」と一致するようにします。
出典:確定申告書等の様式・手引き等(令和6年分の所得税及び復興特別所得税の確定申告分)|国税庁
青色申告において事業専従者の給与を必要経費にする場合には、事前に届出書を提出しておかなければならないのですが、白色申告者の場合はこうした書類は不要です。
事業専従者控除を賢く活用しましょう
白色申告の事業専従者控除は、生計を一にする親族への給与をある程度認める制度ですが、上限があります。
賢明な活用によってある程度は節税が可能ですが、青色申告に切り替えるほうがより節税になります。親族の支援をより事業に活かす意味でも、将来的に青色申告についても検討しましょう。

マネーフォワード クラウド確定申告の導入事例
データ連携機能を使って、銀行やクレジットカードの明細データを自動で取り込むようになってからは、会計ソフトへの入力作業が減ったので、作業時間は1/10くらいになりましたね。
ハンドメイド作家・ブロガー 佐藤 せりな 様
よくある質問
白色申告における事業専従者控除とは何ですか?
事業に従事している家族の状況や所得金額に応じて計算される金額を必要経費と「みなす」ことができる制度です。詳しくはこちらをご覧ください。
青色申告と白色申告の事業専従者はどこが違いますか?
青色申告は税務署に届出書の提出が必要であり、届出書に記載した金額の範囲内で支払われた給与は必要経費になります。白色申告は、専従者への支払額とは別に控除額が計算されます。 詳しくはこちらをご覧ください。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
確定申告の知識をさらに深めるなら
※本サイトは、法律的またはその他のアドバイスの提供を目的としたものではありません。当社は本サイトの記載内容(テンプレートを含む)の正確性、妥当性の確保に努めておりますが、ご利用にあたっては、個別の事情を適宜専門家にご相談いただくなど、ご自身の判断でご利用ください。
白色申告の関連記事
新着記事
個人事業主の領収書に印鑑は必要?電子化や保管についても解説
個人事業主として発行・受領する領収書に印鑑は本当に必要なのでしょうか? 法律上の義務があるのか、印鑑のない領収書は経費として使えるのかという疑問を持つ方も多いはずです。 本記事では、領収書への押印の要否から、記載すべき項目、電子化対応、確定…
詳しくみる個人事業主の利息の仕訳は?勘定科目や注意点をわかりやすく解説
個人事業主が取り扱う利息には、借入に伴う支払利息や、預金・貸付による受取利息などさまざまな種類があります。これらは一見似ているようでいて、税法上の取扱いや仕訳方法が大きく異なるため、正確な知識が求められます。 本記事では、利息の種類別に適切…
詳しくみる個人事業主が法人化を検討する目安は?所得・売上・タイミングを解説
個人事業主として事業が成長してくると、「いつ法人化すべきか?」という判断に直面します。法人化の目安は明確に決まっているわけではありませんが、一般的には課税所得が800万円を超える頃から検討するのが妥当とされます。また、法人格を持つことで金融…
詳しくみる【個人事業主向け】簿記の活用法とは?青色申告や確定申告のポイントを解説
個人事業主にとって、簿記は避けて通れない重要なスキルです。日々の売上や経費を正確に記録することで、事業の収支を可視化でき、経営判断や確定申告にも役立ちます。さらに、青色申告での特別控除や税務調査への備えといった面でも、簿記の知識は大きな力を…
詳しくみる売上過少申告とは?個人事業主がやりがちな理由やリスクを解説
個人事業主にとって確定申告は避けて通れない業務の一つですが、売上や利益の申告内容に誤りがあると、思わぬペナルティや信用リスクを招くことがあります。「うっかりミスだから問題ない」と考えていても、税務署から過少申告とみなされ、追徴課税や延滞税な…
詳しくみる年収3,000万の個人事業主が納める税金は?確定申告・節税対策を解説
年収3,000万円という水準に到達した個人事業主は、事業が軌道に乗っている一方で、相応に重い税負担を抱えることになります。所得税や住民税をはじめ、さらに課税売上高1,000万円超で納税義務が生じる消費税や業種や所得に応じて課される個人事業税…
詳しくみる