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  • 更新日 : 2021年3月4日

副業する会社員も開業届は必要?提出のメリット・デメリットとは

ゆとりのある生活やスキルの活用などを理由に、パートやアルバイトのほか、フリーランスや個人事業主など、さまざまな形態で副業する人が増えてきました。国による「働き方改革」の促進のほか、企業が主体となって多様な働き方を容認する傾向がみられるように、副業しやすい環境になったのも理由にあるでしょう。

ここで、疑問として挙がりやすいのが「会社員も個人事業主のように開業届が必要なのか?」ということです。この記事では、会社員の副業と開業届の関係、開業届のメリット・デメリットを解説していきます。

開業届とは?副業でも提出が必要になるケースとは?

開業届は、新たに事業を開始したとき、または事業用に事務所や事業所を新設したときなどに必要となる、所轄の税務署への届出です。

開業届の概要については、「開業届の書き方<記入例付>開業届とは、開業の流れ・やり方・期限は?」で詳しく説明していますので参考にしてください。

開業届が必要になる「事業」とは基本的に、資産の譲渡などで対価を得ることであり、それが独立して、一時的なものでなく継続的に行われるもののことです。たとえば、以下のような副業が事業にあたるもの、あるいは事業にならないものと考えられます。

事業になるケース

  • 投資用に賃貸物件を複数所有している(アパートであれば10室以上)
  • 会社と別にフリーでWebデザイナーの仕事を継続的に行っている
  • オンライン講師で複数の生徒を抱え毎週講義を行っている

事業にならないケース

  • 不要になったもの(生活用動産等以外)をフリマアプリで売った
  • 年に何回かハンドメイド商品をネットで販売している
  • 趣味程度に動画サイトで広告収入を得ている

ちなみに、事業を起こす「起業」や、会社から独り立ちする「独立」は、開業と共通する部分もありますが、厳密には異なります。起業は会社自体を起こす場合もありますし、独立では会社を辞めることもありますので、開業届の必要な個人事業主とは限らず、法人の代表になる場合もあるためです。ちなみに、開業は、一般的には個人事業主としての事業の開始を意味します。

会社員が開業届を提出するには

副業をする会社員が開業届を提出するときのポイントを解説します。

本業と副業では開業届の提出に違いはあるのか?

本業で開業届をする人、副業で開業届をする人で、開業届の提出に違いはありません。どちらも、「個人事業の開業・廃業等届出書」(開業届)の必要な欄を埋めて、開業から1カ月以内に所轄の税務署長に提出します。

この際、青色申告を選択する場合は、同時に「所得税の青色申告承認申請書」も提出することが多いです。青色申告の申請は1月15日までなら同年の3月15日、1月16日以降なら事業開始から2カ月以内となっており、開業届よりも期限は長いですが、申請を忘れてしまう可能性を考えると同時に提出した方が効率的です。

【書き方】自宅で副業を始めた場合は?

開業届_書き方

在宅ワークやアフィリエイト、動画広告収入を副業として、自宅で仕事をする場合、開業届は、納税地に自宅の住所や電話番号を記入して、「住所地」を選択します。なお、「居所地」は、国内に住所がない人、国内に住所はあるものの住所地とは違う居所で仕事をする人が選択します。

【書き方】副業別の職業欄や事業の概要の書き方

開業届_書き方2

開業届には、「職業」や「事業の概要」を記入する欄があります。書き方に決まりはありませんが、職業には職業名を、事業の概要には仕事内容を書きます。会社員の副業を例に、書き方の例をいくつか紹介します。

Case1.投資用にマンションを複数所有し運用している
職業:不動産賃貸業
事業の概要:賃貸マンションの経営・管理

Case2.フリーでWebデザインの仕事を副業にしている
職業:Webデザイナー
事業の概要:Webサイトのデザイン

Case3.動画投稿サイトで広告収入を得ている(企業案件ありで事業的規模)
職業:動画クリエイター
事業の概要:企業案件含む動画制作

開業届を提出するメリット・デメリット

会社員の副業は、通常、雑所得と考えられますが、開業届を行うことで、事業所得や不動産所得を選択できるようになります。ただし、事業所得なら、事業的規模で継続的な取引があるなど事業の条件を満たす必要があることを覚えておきましょう。

ここからは、開業届をすることのメリット、デメリットについて解説します。

開業届のメリット開業届のデメリット
経費の範囲が広がる
・青色申告なら青色申告特別控除が受けられる
・損益通算ができる
・損失の繰越しができる
・失業手当が受けられない
・青色申告を選択すると手間がかかる

開業届を提出するメリット

開業届を提出するメリットを細かく見ていきましょう。

経費の範囲が広がる

経費の範囲は、事業所得(開業届で選択できる事業的所得)も雑所得も基本的には同じですが、異なる部分もあります。例としては、生計を一にした親族や配偶者に支払う給与が挙げられます。

通常、身内への給与は経費にできませんが、事業所得であれば、白色申告なら事業専従者給与として一部を、青色申告なら届出をすれば、支払った額を青色事業専従者給与として経費にできます。このように、開業届をして事業所得を選択したほうが経費の範囲が広がり、節税になります。

青色申告なら青色申告特別控除が受けられる

青色申告は、開業届の所得の種類にあたる、事業所得、不動産所得、山林所得にのみ認められた制度です。青色申告を選択し、複式簿記で作成した決算書類を期限内に提出すれば、最高55万円分(電子申告なら65万円分)を所得から控除できます。

損益通算ができる

損益通算は、対象の所得(不動産所得、事業所得、譲渡所得、山林所得)に赤字があった場合、損失分を総所得金額などから控除できる制度です。損益通算をすることによって、総所得金額などが圧縮され、その分、所得税を節税できます。

損益通算の対象に雑所得は含まれないので、開業届が必要な事業所得などを選択したほうが損益通算による節税の面でメリットがあります。

損失の繰越しができる

青色申告であれば、損益通算でも控除しきれない事業所得などの損失(赤字)があったとき、赤字分を3年間繰越せます。

繰越した分は翌年以降の所得から控除できるので、節税効果が期待できます。開業届が不要な雑所得には、損失繰越しの制度はありませんので、赤字が発生しても翌年以降に持ち越すことはできません。

開業届を提出するデメリット

次に、開業届をすることのデメリットを説明していきます。

失業手当が受けらない

雇用保険制度では、会社の離職から過去2年間のうち一定期間の雇用保険被保険者期間があれば、基本手当を受給できるようになっています。ただし、次の就職までの安定した生活を目的とした制度なので、会社を辞めても、自営業者(開業届を提出した人)に該当する場合は、失業手当を受けられません。

開業届を提出していると、会社を辞めても自営業者である事実は残るため、たとえ収入が少なくても失業手当を受けられないデメリットがあります。

青色申告を選択すると手間がかかる

開業届を提出することのメリットとして、事業所得などでの申告ができるようになるため、青色申告を選択できることをメリットとしてあげました。青色申告は青色申告特別控除をはじめ、さまざまな特典があるため、節税面でのメリットは大きいですが、手間がかかるというデメリットもあります。

これは、青色申告で55万円の控除を受けたい場合、複式簿記による厳密な会計処理が求められるためです。副業の経理にあまり時間を割きたくない場合、収入がそこまで大きくない場合は、開業届をせず、簡便な方法で確定申告したほうが良いケースもあります。

副業の確定申告をしよう

副業によって会社員が確定申告をしなければならない代表的なケースは以下です。

  • 2カ所以上から給与を受け取っており、年末調整を受けなかった給与収入と、給与所得と退職所得を除く所得金額の合計が20万円を超える場合
    (給与所得の額が一定以下でほかの所得が20万円以下であれば申告の必要なし)
  • 給与所得と退職所得を除いた所得金額の合計が20万円を超える場合

例えば、開業届で事業所得を選択している場合で、副業による事業収入200万円、必要経費100万円なら、事業所得100万円になるので確定申告が必要です。

同じく、副業による事業収入が200万円あっても、経費が185万円の場合は、事業所得15万円になりますので、確定申告の必要はありません。

ただし、所得税の申告の必要がない場合でも所得が生じた場合は住民税の申告をする必要があります。

副業は会社にバレる?円滑に副業をするためには

副業を始めたものの、会社にバレるのが心配な人も多いのではないでしょうか。就業先で会社の人と鉢合わせる可能性、特別徴収の住民税の増加などを考えると、副業がバレる可能性があります。

ただし、給与・公的年金等以外の所得に対する住民税については、確定申告時に普通徴収を選択できますので、特別徴収の住民税の増加で会社にバレたくない人は普通徴収で住民税を納付するようにしましょう。最近では、社員の副業を認める会社も増えてきていますので、会社がOKとしているのか副業を始める前にできれば確認しておきたいところです。

なお、会社によっては就業規則で副業を認めない旨を記載しているところもあります。法的に、就業規則に定められている副業禁止について、すべて有効とは認められません。本業に支障をきたしている、競合他社で副業をしているなど、会社に重大な影響を及ぼさなければ、就業規則で副業禁止となっていても、副業はできるのです。

しかしながら、副業が法的に大丈夫と思われる範囲であったとしても、会社との関係もあります。トラブルに発展しない程度に、事前に確認しておくなり、常識の範囲内で副業をすることをおすすめします。

事業になるなら会社員の副業でも開業届は必要

会社員の副業の場合、収入がそこまで多くないケースもありますので、基本的には開業届を提出する必要はありません。ただし、事業と認められるような規模で継続的に行っている仕事があれば、開業届を提出したほうが良いケースもあります。

開業届のメリット・デメリットは、この記事で説明したとおりですので、副業が事業規模になってきたと感じたら、開業届を提出するべきかどうかよく検討してみましょう。

(参考)

国税庁|No.2090 新たに事業を始めたときの届出など

国税庁|[手続名]個人事業の開業届出・廃業届出等手続

国税庁|No.6109 事業者が事業として行うものとは

国税庁|No.1350 事業所得の課税のしくみ(事業所得)

国税庁|No.1500 雑所得

国税庁|所得の種類と課税方法

国税庁|[手続名]所得税の青色申告承認申請手続

国税庁|No.2029 確定申告書の提出先(納税地)

国税庁|No.2210 やさしい必要経費の知識

国税庁|No.2075 青色事業専従者給与と事業専従者控除

国税庁|No.2250 損益通算

国税庁|No.2070 青色申告制度

厚生労働省|Q&A~労働者の皆様へ(基本手当、再就職手当)~

国税庁|No.2072 青色申告特別控除

国税庁|No.1900 給与所得者で確定申告が必要な人


※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。

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監修:並木 一真(税理士/1級FP技能士/相続診断士/事業承継・M&Aエキスパート)

並木一真税理士事務所所長
会計事務所勤務を経て2018年8月に税理士登録。現在、地元である群馬県伊勢崎市にて開業し、法人税・相続税・節税対策・事業承継・補助金支援・社会福祉法人会計等を中心に幅広く税理士業務に取り組んでいる。

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