- 更新日 : 2025年4月3日
外国人労働者が差別と感じる対応とは?事例や企業がすべき取り組みを紹介
不公平な待遇や暴力、言葉の壁による孤立などの問題は、外国人労働者が差別に感じやすいポイントです。
本記事では、外国人労働者が差別と感じる具体的な事例や、実際の裁判例を紹介し、企業が取るべき防止策や対応方法を解説します。適切な対策を講じることで、多様な人材が安心して働ける環境を整えましょう。
目次
外国人労働者が仕事で差別と感じる3つのケース
使用者や日本人従業員に悪気がなくても、外国人労働者の中には差別と感じる言動に傷ついている人もいます。誰もが心地よく働ける職場環境をつくるには、無意識の差別にも目を向け、排除する意識が大切です。
以下では、外国人労働者が差別と感じやすい具体例を紹介します。
1. 劣悪な労働環境
劣悪な労働環境とは、長時間労働や賃金の未払いなど、法令に反した労働条件のことです。
たとえば、外国人労働者にだけ休憩なしで長時間働かせたり、日本人と同じ業務にもかかわらず低賃金で働かせたりするケースなどです。
労働基準法第3条では、国籍や社会的身分などを理由とした労働条件の差別を禁止しています。しかし、「外国人には労働基準法が適用されない」といった誤解から、差別的な扱いが行われることも少なくありません。
外国人労働者も法律で保護されており、環境が整備されていなければ差別と感じる可能性があります。使用者は、労働条件が適正かどうかを見直し、改善に努めることが重要です。
2. 身体的な暴力を受ける
外国人労働者に対する身体的な暴力は、明確な差別行為であり、労働基準法や労働安全衛生法に違反します。
たとえば、叩く・突き飛ばすといった行為は、たとえ軽いものであっても違法です。最初は些細な暴力でも、暴力が日常化し、職場の人間関係によってはエスカレートしていく恐れがあります。
結果として、集団で特定の外国人労働者を攻撃するケースに発展することもあるため、注意が必要です。
社内で行われていた暴力が明るみに出れば、加害者が警察に逮捕される可能性もあります。外国人労働者にも日本人と同様に法律による保護があることを理解し、暴力のない安全な職場を整えることが必要です。
3. 言葉の暴力を受ける
言葉の暴力とは、「国に帰れ」「バカ」など、外国人労働者の人格を否定する発言を指します。
肌の色や髪型など身体的特徴を揶揄したり、国籍だけで評価を下げたりする行為も差別にあたります。日本語が得意でない外国人労働者と働く際、日本人と異なる習慣や気質に戸惑い、ストレスを感じる人も少なくありません。
しかし、自身のストレスを理由に、差別的な暴言を正当化することはできません。外国人労働者を雇用する企業は、すべての従業員が安心して働けるよう配慮し、暴言や偏見を許さない職場環境を整える必要があります。
具体的にどのようなことがパワハラにあたるかは、下記の記事で解説しているため、ぜひあわせてご覧ください。
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外国人労働者が差別を受けた事例
外国人労働者への差別は無意識に行われているケースもあり、現場ではさまざまな形で起きているのが現状です。なかには劣悪な労働環境や暴力、心ない言葉によって深く傷ついたケースもあります。
以下では、外国人労働者が差別を受けた具体的な事例を紹介します。
身体的な攻撃
ベトナムのホーチミン近郊出身の男性は、日本語が得意でないという理由で、仕事中や仕事後にも継続的にからかわれ、身体的な攻撃を受けていました。
加害者は日本人の同僚3人で、最初はほうきで叩く暴力から始まり、次第にエスカレートしていったのです。2020年5月には建設資材が口に当たり、歯が折れ、上唇が切れるケガを負い、同年11月には安全靴で左胸を蹴られて肋骨が3本折れる重傷を負いました。
外国人労働者への暴力問題を受け、外国人技能実習機構は建設会社と監理団体に対し、改善を求める勧告を行いました。
外国人労働者が安心して働ける環境をつくるためには、身体的暴力が行われていないかも確認し、見逃さないように早期に対応することが重要です。
精神的な攻撃
建設現場で働くカンボジア国籍の外国人労働者が、「バカ、アホ」「国へ帰れ」などの暴言を繰り返し受けていた事例があります。
上記のような発言は、人種や国籍、日本語能力の不足を理由にした精神的な攻撃であり、深刻な差別にあたります。さらに、外国人労働者は、暴言だけでなく身体的な暴力も受けており、うつ病を発症しました。
うつ病は労災として認定され、この外国人労働者は、深刻な精神的負担から治療を受ける状況にまで至りました。精神的な暴力も重大な人権侵害であり、職場における差別的な言動をなくす取り組みが必要です。
人間関係からの切り離し
人間関係からの切り離しとは、職場で母国語の使用を禁止したり、日本人労働者との会話を制限したりする行為のことです。
実際に、中国国籍の労働者が「職場では中国語を話すな」といわれた事例があります。また、中国人労働者が日本人労働者と会話したことを理由に、「職場で日本人との会話を禁止している」として解雇された事例も報告されています。
人間関係の切り離しは、外国人労働者を孤立させ、精神的な苦痛を与える差別行為です。本人の意思に反して帰国を強要するような行為も同様に問題があります。職場では、文化や言語の違いを尊重し、すべての従業員が安心して働ける環境づくりが大切です。
外国人労働者への差別を防ぐ5つの方法
外国人労働者への差別は、気づかないうちに起きていることもあります。そのため、使用者が定期的に職場の状況を確認し、問題がないかを把握することが重要です。
差別を未然に防ぐためには、どのような対策をすべきか理解しておく必要があります。以下では、外国人労働者が安心して働ける職場をつくるために役立つ5つのポイントを紹介します。
1. 雇用・採用の際の公平性を保つ
雇用や採用の場面で公平性を保つことは、外国人労働者への差別を防ぐために重要です。
外国人であることを理由に応募を拒否したり、不採用にしたりする行為は明確な差別にあたります。また、「外国人だから」と一括りにせず、一人ひとりの個性や能力を正当に評価し、日本人側が無意識の偏見や思い込みを持たないことが大切です。
採用時には、雇用条件や待遇、仕事内容、残業・休日に関する情報を外国人にもきちんと伝えて相違がないようにする必要があります。場合によっては、母国語で記載された契約書を準備することも重要です。
採用の時点から差別をなくすことが、公平な職場づくりの第一歩となります。
採用の際のポイントについては、下記の記事で詳しく説明しているため、ぜひ参考にしてみてください。
2. 生活面をサポートする
異国での生活は、言語や文化の違いに加え、家族や友人が近くにいないことでストレスを感じやすくなります。外国人労働者が安心して働くためには、職場だけでなく、生活面でのサポートも欠かせません。
日本の生活に早く馴染めるよう、ゴミ出しのルールや公共交通の利用方法など、基本的な生活情報を提供することが大切です。また、住居の確保が難しい場合もあるため、企業が宿舎を用意したり、信頼できる不動産業者と連携したりする支援も有効です。
生活面でのサポートは、外国人労働者の孤立を防ぎ、長く安心して働ける環境づくりにつながります。
3. 労働環境を見直す
外国人労働者を雇用する際は、企業の労働環境を見直すことが重要です。
雇用契約書や就業規則、業務マニュアルなどの書類は、多言語化や図解を取り入れることで、外国人労働者が内容を正しく理解しやすくなります。また、安全衛生に関する説明も、言葉の壁を意識し、丁寧に行うことが必要です。
さらに、宗教や食文化、生活習慣の違いにも可能な限り配慮することで、より働きやすい職場環境が整います。労働環境の見直しは、差別を防ぎ、互いに尊重し合える職場づくりにつながるでしょう。
4. 法律を理解する
外国人労働者を雇用する際は、関連する法律を正しく理解することが重要です。
労働基準法第3条では、使用者が国籍を理由に賃金や労働条件で差別的な扱いをしてはならないと定められています。また、入管法では外国人の在留資格や就労条件が定められており、雇用前に適切な資格を持っているか確認する必要があります。
外国人労働者には、日本人と同等の給与や福利厚生を提供し、法律を遵守した適正な雇用管理を行うことが、差別の防止につながるでしょう。
5. 相談窓口を設置する
外国人労働者が職場での問題や不安を気軽に相談できるよう、相談窓口を設置することは効果的です。相談を通じてストレスを軽減し、職場環境の改善や差別の早期発見・解決にもつながります。
相談窓口は多言語対応であることに加え、プライバシーが守られるよう配慮する必要があります。さらに、設置しているだけでなく、窓口の存在や利用方法を外国人労働者にきちんと周知することも大切です。
安心して働ける環境づくりには、相談しやすい体制の整備が欠かせません。
外国人労働者への差別が起きた場合の対処法
外国人労働者への差別は、事前に対策していても完全に防げない場合があります。
そのため、万が一差別が発生した際には、速やかに状況を把握し、適切に対応することが重要です。以下では、差別が起きた場合の具体的な対処法を紹介します。
相談者や差別をした者にヒアリングする
外国人労働者への差別が疑われる場合は、相談者や加害者、目撃者などから丁寧にヒアリングを行うことが重要です。
まずは差別的な言動が本当にあったのか、いつ、どこで、どのような状況だったのかを具体的に確認します。関係者とは個別に面談を行い、あらかじめ用意した質問項目に基づいて、公平かつ一貫した聞き取りを行います。
ヒアリングでは中立的な立場を保ち、関係者が安心して話せるよう、プライバシーの保護や心理的安全性にも配慮した環境を整えることが大切です。
事実確認後に社内で解決策を考える
差別的な行為が事実であると確認できた場合は、人事部門や関係部署が連携し、問題の背景や影響、今後の対応について話し合う必要があります。
被害者のケアと同時に、再発防止を目的とした取り組みも必要です。たとえば、社内規定の見直しや、差別に関する意識を高める研修の実施が効果的です。
また、朝礼などの場で「差別行為は許されない」と明確に伝えることで、全従業員の意識を高められます。外国人労働者に対して差別行為が発生した際は、問題を放置せず、社内全体で向き合う姿勢が重要です。
差別をした者を処罰の対象とする
差別的な行為が事実として認められた場合は、加害者を処罰の対象とする必要があります。
たとえ加害者が企業内で重要な立場にあったり、業績が優れていたりしても、差別を容認してはいけません。処分の一貫性を保つことで、社内全体に対して「差別は許されない」という姿勢を示せます。
ただし、事実確認が不十分なまま処分を行うと、加害者との間に新たなトラブルを生む可能性があるため、慎重な対応が必要です。正しい判断と適切な処分が、信頼される職場づくりにつながるでしょう。
被害に遭った人をサポートする
外国人労働者が差別の被害に遭った場合は、企業が適切なサポートを行いましょう。
心理的なケアとしてカウンセリングサービスを提供したり、日本人従業員との交流イベントやミーティングを通じて、相互理解と信頼関係を築くことに取り組んだりすることが効果的です。また、被害者の状況に応じたアフターケアを行うことも、企業の責任です。
さらに、法務局の人権相談窓口を活用すれば、職員や人権擁護委員が被害内容について相談に応じてくれます。被害者が安心して働けるよう、継続的な支援を実施しましょう。
外国人労働者への差別を防ぐためにも事例から学ぼう
外国人労働者への差別を防ぐには、実際に起きた事例を知り、適切な対策を取ることが重要です。
法律を理解し、相談窓口の設置や労働環境の見直しを行うことで、外国人労働者が安心して働ける職場が実現できます。事例から学び、差別のない職場づくりに取り組みましょう。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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