- 更新日 : 2026年7月7日
人事制度が未整備な企業が抱える課題と改善ステップを解説
人事制度が未整備な企業は、採用・育成・評価を3ステップで段階的に整備することで、離職率低下と人材定着を実現できます。
- 採用属人化・評価曖昧・データ分散が主な課題
- 課題の可視化→仕組み整備→効果検証の順で進める
- 整備により離職率ほぼゼロを実現した企業事例あり
Q. 人事制度の整備にはどのくらい期間がかかる?
A. 部分的な見直しは半年程度、全面改定は1年程度が目安です。
人事制度や仕組みが十分に整っていない「人事制度未整備」の状態は、採用難や離職増加、人材育成の停滞を引き起こし、人手不足を深刻化させる要因となります。
本記事では、自社の人事制度における課題を整理し、改善の方向性を企業事例を交えながらわかりやすく解説します。人事制度の改善をスムーズに進めたい方は、ぜひ参考にして下さい。
人事制度が未整備な企業に起こりがちな課題
人事制度が未整備な企業では、採用や人材育成、評価、労務管理などさまざまな場面で問題が発生しやすくなります。
「採用が担当者任せになっている」「評価基準が曖昧」といった状態は、人事制度が十分に機能していないサインかもしれません。
ここでは、人事制度が未整備な企業に起こりがちな課題と、その理由を解説します。
採用活動が属人化している
人事制度が未整備な企業では、採用活動が特定の担当者に依存しやすくなります。
その主な理由は、採用基準や評価項目が明確に定められていないためです。基準が統一されていないと、担当者の経験や勘に依存した採用判断になりやすく、客観的な評価が難しくなります。
結果、採用の質にばらつきが生じ、自社に適した人材を見極めにくくなるため、採用後のミスマッチや早期離職につながってしまうでしょう。
採用活動の属人化が続くと、人材の質が安定せず、組織全体の生産性にも影響を及ぼす恐れがあります。 誰が担当しても一定の判断ができる仕組みを整えることが大切です。
人材育成の仕組みが統一されていない
人事制度が確立されていない企業では、人材育成の仕組みが統一されていない傾向があります。
主な理由として、下記2つが挙げられます。
- 教育内容や育成手順が標準化されておらず、OJTが担当者任せになっている
- 経営層や管理職が人材育成に十分関与していない
結果的に、担当者や部署によって教え方が異なり、社員ごとの習得スピードやスキルレベルに差が生じやすくなります。さらに、育成成果を測定する基準がない場合は、教育施策の効果検証も難しくなります。
人材育成の仕組みが統一されないままだと、将来のリーダー候補が育たず、技能継承の停滞や生産性の低下につながる可能性があります。
社員の評価制度が曖昧で時代に合っていない
人事制度が未整備な企業では、社員の評価制度が曖昧になりやすく、現在の働き方や価値観に対応できていない場合があります。
こうした状況が起こるのは、下記のような原因が考えられます。
- 評価基準が明確に定められておらず、評価者によって判断が異なる
- フィードバックが不十分・年功序列型の評価制度が残っているなど、能力や成果を適切に評価できていない
その結果「何を評価されているのかわからない」「評価者によって評価結果が異なる」といった状況が生じ、以下のような課題につながりやすくなります。
- 従業員が不公平感・不満を覚えやすくなる
- 評価者や会社への不信感につながる
- 自身の成長やキャリアの見通しを描きにくくなる
- モチベーションが低下する
- 離職につながりやすくなる
社員の評価制度を具体的かつ明確にするとともに、時代に合わせて柔軟にアップデートしていくことが大切です。
人事データが一元管理されていない
人事制度の基盤が整っていない企業は、人事データを一元管理できていない場合があります。
主な原因は、人事データが紙の書類やExcel、複数のシステムなどに分散管理されていることが考えられます。
情報が分散していると、従業員のスキルや資格、評価履歴、研修受講状況などの情報をすぐに確認できません。 これにより下記のようなデメリットがあります。
- 人材配置や育成計画を適切に立てにくくなる
- 必要な情報の収集や意思決定が遅くなる
- 情報の更新漏れが起こる
- 情報の精査・確認作業の負担が増える など
人事データを人材育成や組織運営に、十分に活用できなくなり、人事業務の効率が低下するでしょう。
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人事未整備を改善するための3ステップ
人事制度が未整備だからといって、一度にすべてを改善しようとすると負担が大きくなります。まずは現状の課題を把握し、優先順位を付けながら段階的に進めることが重要です。
ここでは、人事未整備を改善するための3つのステップを解説します。
1.人事課題を可視化し、優先順位を決める
人事制度の未整備を改善するためには、人事課題を洗い出し、現状を正しく把握することが大切です。
経営目標と人材戦略にズレがないかを確認するとともに、離職率や採用状況、人事評価などのデータを活用して問題点を可視化します。たとえば、入社後1年以内の離職率を分析して採用基準や受け入れ体制に課題がないか確認したり、部署別の人事評価データを比較して評価方法に偏りやばらつきがないかを把握したりします。
そのうえで、採用・育成・評価のどこに課題があるのか整理し、改善効果や緊急度を踏まえて優先順位を決めましょう。
限られたリソースで複数の人事課題を一度に解決することは難しいため、優先順位を明確にすると人事制度を改善しやすくなります。
2.採用・育成・評価の仕組みを整備する
課題を整理した後は、採用・育成・評価の仕組みを整備します。
| 領域 | 取り組み内容 | 目的・効果 |
|---|---|---|
| 採用 | 自社で活躍している社員の特徴を分析し、必要なスキルや経験を整理・言語化して求める人物像を明確化。評価項目や面接質問を文書化し、面接評価シートとして運用する | 選考基準を明確化し、誰が担当しても一定の基準で採用できる仕組みを整備 |
| 育成 | 職種・役職ごとに必要なスキルや到達目標を設定し、3年後などの成長イメージから逆算して育成計画を策定。研修内容やOJTの進め方を標準化し、定期的な1on1や育成データで成長度合いを確認する | 従業員が継続的に成長できる環境を整備 |
| 評価 | スキルや実績などの評価項目と評価基準を明確にした評価シートを作成。評価者研修を通じて評価基準を統一する | 評価のばらつきを防止し、従業員の納得感やモチベーションを向上 |
採用・育成・評価は別々の取り組みではなく、一連の人材マネジメントの仕組みとして連動させることが重要です。求める人物像を起点に育成計画を組み、評価基準と整合させることで、入社から成長、評価までの一貫性が生まれます。
また、人事制度の改善を進める際は、福利厚生の見直しも重要です。 マネーフォワード クラウド福利厚生賃貸なら、福利厚生制度の設計・運用を効率化し、従業員満足度の向上を支援します。 従業員の税金・社会保険料が低下し、手取りアップを実現できます。
3.効果を検証しながら継続的に運用する
人事制度を定着させるには、導入後も運用状況や成果を確認し、現場の理解を得ながら継続的に改善することが重要です。
まずは、離職率や定着率、採用充足率などのKPIを設定し、人事制度の導入前後でどのような変化があったのかを定量的に測定します。これにより、実際に成果につながっているのか、見直しが必要な部分はどこか客観的に判断しやすくなります。
また、従業員アンケートや1on1ミーティングを実施し、現場の意見や課題を把握することも大切です。制度が現場で適切に機能しているかを確認し、運用上問題がないか検証しましょう。
分析・検証の結果をもとに、制度や運用方法を見直します。たとえば、離職率が高ければ、評価制度や育成方法、職場環境などに問題がないかを検証し、採用充足率が低い場合は、求める人物像や採用要件を再検討します。
PDCAサイクルを回しながら継続的に改善することで、自社に合った人事制度として定着しやすくなるでしょう。
人事制度を整備・改善し人手不足解消につながった企業事例
人手不足の解消には、自社の課題に応じた施策を実施することが重要です。
ここでは、人事制度を整備・改善することで人手不足解消につながった事例を紹介します。
採用ターゲットの見直しで人材確保に成功した事例|シンセメテック株式会社
シンセメテック株式会社は、採用ターゲットの見直しによって人材確保に成功しました。同社では、製造業特有の人手不足に直面しており「工学系のみ」や「専門分野経験者のみ」といった職種のイメージが人材確保の壁となっていました。
そこで、採用ターゲットと採用広報の見直しを実施し、未経験者や女性にも応募対象を拡大し、2015年には、2名の女性技術職の採用に成功。あわせて「専門職中心の企業」というイメージを払拭する情報発信を行い、採用の間口を広げています。
さらに、下記のような受け入れ体制そのものの強化も行いました。
- 女性が働きやすい環境整備として設備面の改善
- 未経験者でも対応できるよう業務プロセスの簡素化
これらの取り組みにより間口が広がり、応募数・採用数の増加につながり、継続的な人材確保を実現しています。
人手不足解消のためには、ただ求人を増やすだけでなく、採用ターゲットを見直し、働きやすい環境・受け入れ体制を整備することも重要だとわかります。
参考:中小企業・小規模事業者の人手不足対応事例集|経済産業省
育成方法を標準化し若手社員の定着化を実現させた事例|原田左官工業所
有限会社原田左官工業所は、人事制度の改善として育成の標準化を進め、若手社員の定着に成功した事例です。同社では、従来の人材育成が職人に依存しており、指導者によって教育内容や習得スピードにばらつきが生じるという課題がありました。
そこで、iPadを活用して作業手順や技能のポイントを動画・画像で共有できる教育コンテンツを整備し、指導者によって異なっていた教育内容を標準化しました。
これらにより、若手社員が段階的にスキルを習得できる環境が整い、教育の再現性が高まったのです。
これまで約1年かかっていた訓練を約1か月で教えられるようになり、若手人材の定着や技能継承の促進につながりました。
教育内容を標準化し属人的な育成から脱却することで、少ない人材でも安定した現場運営が実現でき、中小企業における人材不足と定着率の課題解決に向けた有効な取り組みといえます。
参考:中小企業・小規模事業者の人手不足対応事例集|経済産業省
公平な評価制度の導入で10年間離職率ほぼゼロを実現した事例|株式会社日本レーザー
株式会社日本レーザーは、評価制度を見直し、離職率の大幅な改善と高い定着率を実現した事例です。同社では、過去に大量退職を経験したことを契機に、従来の評価制度の在り方を見直しました。
たとえば、育児や介護などの事情に応じて勤務日数や時間を調整できる「勤務時間限定正社員制度」を導入し、正社員のまま短時間勤務を続けられる仕組みを整備しています。
また、勤務時間にかかわらず、各種手当を含めてフルタイムの正社員と勤務時間限定正社員とで同じ評価基準を適用し、能力や成果を公平に評価する制度を構築しました。
これにより、従業員はライフスタイルに合わせた働き方を選択しながらも、自身の成果が正当に評価される環境で働けるようになり、モチベーションの向上につながっています。その結果、離職率は大幅に低下し、10年以上にわたりほぼゼロという高い定着率を維持しています。この事例から、公平性の高い評価制度と柔軟な働き方を両立させることは、従業員の定着率向上につながる有効な取り組みであることがわかるでしょう。
参考:多様な正社員制度の導入事例|厚生労働省
参考:中小企業・小規模事業者の人手不足対応事例集|経済産業省
人事評価制度について詳しく知りたい方は、こちらの記事もご覧ください。
人事制度の整備についてよくある質問
ここでは、人事制度の整備に関してよくある質問について解説します。
人事制度の整備には、どのくらいの期間がかかりますか?
人事制度の整備にかかる期間は、企業の規模や制度の見直し範囲によって異なりますが、一般的には半年〜1年程度が目安です。
部分的な見直しであれば半年程度で完了するケースもありますが、等級制度・評価制度・報酬制度などを含めた全面的な改定の場合は、1年程度かかるでしょう。
また、制度設計には人事部門だけでなく、現場の責任者を巻き込んで進める必要があり、合意形成にも一定の時間を要します。
人事制度は、自社だけで整備できますか?
人事制度は自社だけでも整備することは可能ですが、制度設計の難易度や法的リスクを考慮すると、外部の専門家と連携しながら進めるケースが一般的です。
社会保険労務士などの専門家による確認を受けることで、制度の精度と安全性が高まります。
また、中小企業では人事専任の担当者が不足しているケースも多く、制度設計から運用まですべて自社で行うのが難しい場合があります。そのため、課題整理までは社内で行い、制度設計や客観的な見直し部分を外部のコンサルタントや専門家に依頼する方法が現実的です。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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