• 更新日 : 2025年12月5日

Web-CABとは？ほかの適性検査との違いや導入メリットを解説

Web-CABは、IT系企業やコンサルティングファームなど、論理的思考力を求める業界で広く活用されている適性検査です。

本記事では、Web-CABの基本や、ほかの適性検査との比較や、導入による企業側のメリットを紹介します。導入時の注意点や、導入に向いている企業の特徴もわかりやすく解説します。

Web-CABとは

Web-CABは、IT系企業を中心に、技術職の採用で広く利用されるWeb形式の適性検査です。日本エス・エイチ・エル株式会社が提供しているCAB（Computer Aptitude Battery）のオンライン版です。

Web-CABの問題は、暗算や法則性といった5項目で構成されており、数理的・論理的な処理能力を測定できる特徴があります。業務に直結する思考力を可視化できることから、ミスマッチの防止や効率的な人材選考に活用されています。

Web-CABとほかの適性検査との違い

Web-CABとほかの適性検査には、実施方法や評価内容に違いがあります。採用活動で適性検査を用いて何を把握したいのかを明確にすることで、自社に合った適性検査を選べます。

CABとの違い

CABはIT職種向けの適性検査であり、基本的には会場でのペーパーテストとして実施されます。一方で、Web-CABはCABをオンライン化した形式です。問題内容はほぼ同じであり、実施方法や受検環境に違いがあります。

CABではすべての科目を一括で解く必要がありますが、Web-CABは科目ごとに中断・再開ができます。また、Web-CABは自宅や職場から受検できるため、時間や場所の制約が少なく、柔軟性に優れている点が特徴です。CABは企業指定の会場・日時での受検が必要となるうえ、出題数が多く、制限時間が長いという特徴があります。

両者とも論理的思考力や数理的処理能力を測る点は共通しており、IT職種の適性を見極める目的で利用できます。

GABとの違い

GAB（Graduate Aptitude Battery）は、日本エス・エイチ・エル株式会社が提供する総合適性検査で、幅広い職種を対象としています。GABでは以下の項目が出題され、読解力やマネジメント適性などを評価できます。

GABは長文読解など言語能力に重点を置くのに対し、Web-CABは数理的思考力や論理的推論力を問います。そのため、GABは総合商社・金融・コンサルティング業界など幅広い企業で、Web-CABはIT企業やエンジニア職で利用されています。GABは総合的なビジネススキルの評価、Web-CABは技術的思考の適性評価が目的です。

SPIとの違い

SPI（Synthetic Personality Inventory）は、株式会社リクルートマネジメントソリューションズが提供する、総合適性検査です。SPIは言語・非言語・性格検査などを通じて、社会人としての基礎能力や協調性、判断力などを幅広く測定できます。

一方、Web-CABはIT・技術職に特化しており、数理的思考力や論理的推論力を重視する点が特徴です。

SPIは人柄や総合的な職務適性の可視化を、Web-CABは技術職に必要な論理的・計算的スキルの評価を目的としています。職種や採用目的に応じてSPIとWeb-CABを選択することで、人材採用の精度をより高められます。

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玉手箱との違い

玉手箱は、日本エス・エイチ・エル株式会社が開発した総合職向けの適性検査で、多くの大手企業で導入されています。言語・計数・パーソナリティと出題内容は幅広く、ビジネス全般に必要な基礎力を測定します。

玉手箱は営業職や企画職、総合職などの採用で活用されるのに対し、Web-CABはプログラマーやエンジニアなど、理系職種に特化している点が特徴です。「汎用的な適性を測るか」「専門的な思考力を測るか」という検査目的に、大きな違いがあります。

そのため、職種に応じて玉手箱とWeb-CABを使い分けると、より精度の高い人材採用を行えます。とくに中小規模のIT企業では、実務に直結する論理的思考力を見極められるため、Web-CABの導入が有効です。

Web-CABの問題構成

Web-CABは、暗算・法則性・命令表・暗号・性格検査の5つの問題で構成されています。各項目でどのようなスキルを評価できるのか、わかりやすく解説します。

暗算

暗算はWeb-CABの最初に出題される科目で、四則演算を中心に構成されています。出題形式は、空欄に入る数値を導き出す計算問題が中心です。前半が基本的な計算、後半に進むほど桁数や小数点以下の桁数が増え、難易度が上がる構成となっています。

暗算は実務で求められる数的処理能力や集中力を測る目的があり、論理的かつ瞬発的な思考力を把握できます。

法則性

法則性の問題は、並んだ図形の中から一定の法則を見つけ、空欄に入る正しい図形を選ぶ形式です。図形の変化の仕組みを素早く見抜く力が求められます。

出題パターンの代表例は以下のとおりです。

法則性は表面的な形に加えて、位置や方向の変化など、複数の要素を同時に分析する論理的思考力が求められます。受検者の「論理的推論力」や「空間把握能力」の評価により、IT・技術系職種に求められる問題解決力を見極められます。

命令表

命令表は、与えられた指示に従って図形や表を変化させ、最終的な形を導き出す問題です。出題内容は以下のように多岐にわたり、正確な理解力と順序立てた思考が求められます。

命令表は、学力よりも論理的思考力や手順の整理能力が問われるため、プログラミング的思考を評価する目的で出題されます。ひとつの命令を誤って処理すると全体の結果がずれてしまうため、冷静に順序を追う慎重さと集中力を判断できます。

命令表の問題により、IT職に必要な論理的手順で課題を処理する力や正確性、集中力などを測定可能です。

暗号

暗号は、初めに与えられた図形と最後の図形を比較し、どのような操作が行われたかを推理する問題です。変化の要素には、以下が含まれます。

暗号の問題文には多くの情報が含まれているため、正確な情報の整理能力と分析力が問われます。論理的推論力や情報処理能力を評価できるため、IT職種の選考では、暗号の結果を重視するのがおすすめです。

性格検査

性格検査は、受検者の価値観や行動傾向を把握し、企業文化や職場環境への適合度を判断する項目です。4択形式で「当てはまる」「当てはまらない」を選ぶ質問が多数出題されます。

性格検査を通じてチームワークの適性やストレス耐性など、配属先を検討する際の有効な指標として活用できます。

Web-CABを導入するメリット

Web-CABの導入により、ミスマッチの防止や採用プロセスの効率化など、企業の採用活動にさまざまなメリットをもたらします。メリットの理解は自社に最適な適性検査の導入につながるため、しっかりと把握しておきましょう。

採用活動の精度を高められる

Web-CABの結果をもとに面接を行うと、応募者に対して的確な質問ができ、面接の質を向上できます。スコアの低い項目に対しては、実務に支障がないかを見極める質問をすれば、リスクを事前に把握できます。一方で、スコアの高い項目に対しては、自己評価とのズレがないかを確認すると、応募者の過大評価を避けられるでしょう。

また、Web-CABのスコアシートに記載された質問例を活用すると、面接準備の手間を軽減でき、効率よく本質を見抜く面接を行えます。論点を絞って応募者を深掘りできるため、採用のミスマッチ防止にもつながります。

採用プロセスの効果を検証できる

Web-CABの受検データを活用すると、採用プロセス全体の妥当性や効果を数値的に検証できます。たとえば、内定者と不合格者のスコア傾向の比較により、自社が重視すべき評価指標の明確化が可能です。

また、受検者の傾向分析により、自社の求める人材像の精度向上につなげられるため、より効率的かつ的確な採用活動を達成できます。

Web-CABの分析は、日本エス・エイチ・エル株式会社が提供するツールで簡単に行えます。さらに、同社の専門家によるサポートも受けられるため、自社での分析が困難であっても、導入しやすいでしょう。

内定者に結果のフィードバックができる

Web-CABの結果を内定者にフィードバックすることで、評価の根拠を示せるため、内定への納得感を高められます。また、結果をもとに自社業務との関連性を説明すれば、入社後の仕事への理解と前向きなイメージを与えられます。

さらに、内定者が自身の強みや課題を把握できるため、入社前の自己理解・準備に活用できる点も特徴です。Web-CABの結果は配属先の検討にも活用できるため、早期離職やミスマッチのリスクも低減できます。

Web-CABの導入にはコストがかかる点に注意が必要

Web-CABの導入には、39,600円（税込）の年間使用権料が発生します。受検料は、Web-CABが3,520円（税込）/名、ペーパー試験が4,510円（税込）/名です。導入初期はペーパー試験よりもコストが高くなる傾向があるため、短期的な費用対効果だけで判断するのは注意が必要です。

一方で、Web-CABを導入すると、採用効率化・自動採点・データ分析の省力化による人的コストの削減効果が見込めます。短期的には導入コストが高くても、長期的には採用精度向上と運用効率化によって、十分な投資回収が期待できます。

Web-CABの導入が向いている企業の特徴

採用選考での適性検査としてWeb-CABが向いている企業には、IT系企業やコンサルティングファームなどが挙げられます。Web-CABは思考のスピードや正確性を数値化できるため、専門知識に加えて論理的思考力を求める企業に適しています。

IT系企業

Web-CABは、IT業界などの論理的思考力と課題解決力が求められる業種で広く導入されています。とくにSIerやITベンダーなどでは、採用試験の標準ツールとして活用されています。ITエンジニア職に必要な情報処理スピードや論理的推論力、正確な判断力を数値化できる特徴があるからです。

限られた時間内で冷静に正答を導く力を重視するWeb-CABは、IT職の実務スキルを反映した選考ツールとして有効に機能します。

コンサルティングファーム

コンサルティングファームでは、論理的思考力や課題解決力を重視する傾向が強いため、Web-CABが広く採用されています。外資系や大手コンサルティング会社では、面接前のスクリーニングとしてWeb-CABを導入し、思考スピードと正確性を評価しています。

Web-CABは問題解決のプロセスを数値的に可視化できるため、応募者の分析力や仮説構築力を把握しやすい点が特徴です。とくに法則性や命令表などの問題は、コンサルタントに求められる論理的思考力や構造的思考を確認するうえで有効に働きます。

Web-CABの活用により、プレゼン力や応募者の印象に左右されず、基礎的な思考力を客観的に見極められます。

エンジニア職やプログラマーを採用している企業

Web-CABは、エンジニア職やプログラマーなど技術系職種の採用で広く活用されています。数理的処理能力や論理的思考力を評価できるため、プログラミングやシステム設計などの業務適性を見極めるのに最適だからです。

Web-CABは、プログラマーであれば実装力や集中力を、システムエンジニアであれば分析力や構築力など、職種ごとの適性を具体的に測定することが可能です。さらに、カスタマーエンジニアやプロジェクトマネージャーなど、マネジメント寄りの職種でも活用できる特徴があります。

IT系職種の未経験者の採用であっても、適性検査のスコアを通じて伸びしろや習熟スピードを客観的に判断できるため、採用選考に役立ちます。

• 監修：松本 幸一（社会保険労務士）

  元ハローワーク正職員の社会保険労務士。ハローワーク時代に社会保険労務士試験に合格し、その後社会保険労務士事務所、企業人事部勤務を経て独立。官・民・士業の三視点からのアドバイスを得意とする。独立後は顧問業務のほかWebメディア記事を通じた情報発信などを行っている。