• 更新日 : 2026年7月2日

採用戦略とは?立て方・新卒/中途の違い・業界別のポイントを解説

Point採用戦略とは何のために構築するものなのか?

経営計画に沿って必要な人材を必要な時期に適切な手法で確保する中長期的な方針です。

  • 求める人物像や選考基準を統一し採用担当者間の判断のばらつきを抑える
  • 新卒は将来性、中途は即戦力と、対象で採用アプローチを使い分ける
  • 現状分析から効果測定まで4ステップでPDCAを回して精度を高める

3C分析やペルソナ設定などのフレームワークを活用すると設計しやすくなります。

現代の採用活動では、人手を補うだけでは不十分です。企業の成長や競争力を高めるためには、経営戦略と連動した「採用戦略」の構築が欠かせません。

本記事では、採用戦略の基本から立て方、新卒・中途での違い、業界ごとの特徴などを解説します。

採用戦略とは?

採用を成功させるためには、企業の方向性と人材確保を結びつける視点が必要です。

採用戦略は、その基盤となる考え方を示し、人材獲得の質と安定性を高める役割を担います。

経営計画に基づき必要な人材を適切な方法で確保する方針

採用戦略は、企業の経営戦略や事業計画に沿って「必要な人材を、必要な時期に、適切な手法で採用する」ための中長期的な方針を指します。

場当たり的な採用ではなく、組織づくりの基盤として設計される点が特徴です。

この方針があると、自社の方向性と採用活動を結び付けながら人材の質を安定的に維持でき、求める人物像や選考基準、採用後の育成にも一貫性が生まれます。

さらに組織として共有しやすく、採用担当者間の判断のばらつきが減るため、選考プロセス全体が整い、ミスマッチの少ない採用につながります。

人材競争の激化と組織全体の採用基準を整えるために重要

人材競争の激化や採用基準の統一を図るうえで、採用戦略の構築は欠かせません。

採用戦略が明確であれば、企業内で「誰をどのように採用するか」という共通認識が生まれ、採用方針のぶれを防げます。

戦略が存在しない場合、求人内容や求める人物像が曖昧になり、採用後の早期離職やミスマッチが発生しやすくなります。

企業成長を支える人材を安定的に確保するためには、将来を見据えた採用戦略の構築が求められます。

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採用戦略における新卒と中途採用の違いは?

新卒採用と中途採用では、採用する人材像やアプローチ方法、スケジュールが異なります。

ここでは、採用戦略における新卒と中途採用の違いについて解説します。

【新卒採用】将来性と企業理念への共感を重視

新卒採用では、学生のポテンシャルや価値観の見極めが重要です。

自社の将来ビジョンや成長機会を明確に提示し、研修制度やキャリアパスなど「成長できる環境」を示しておくと、学生の意欲を引き出せます。

新卒採用の多くは一括採用で進み、大学3年生を対象としたインターンシップや説明会が母集団形成に大きく影響します。

また、インターンシップは、学生と企業が早期に相互理解を深められる機会であり、企業文化への共感が入社意欲の向上につながる施策です。

【中途採用】即戦力の確保と迅速な選考

中途採用は、即戦力人材の獲得を目的としており、スピードと正確なマッチングが成功のポイントです。

求人票やスカウトメールでは、求めるスキルや業務内容を明確に示し、候補者との適合度を高める必要があります。

また、転職サイトや人材紹介、社員紹介、ダイレクトリクルーティングなど複数の採用チャネルを活用し、母集団を確保する意識も重要です。

優秀な人材ほど複数社からオファーを受けているため、選考を迅速に進める体制や、柔軟な日程調整、丁寧なフォローが内定承諾率の向上につながります。

業界ごとの採用戦略の違いは?

各業界は人材市場の状況や求められるスキルが大きく異なるため、採用戦略の重点も変わります。

ここでは業界ごとの採用戦略の違いについて解説します。

課題が分野ごとに違うため採用戦略は業界で異なる

採用戦略は、業界ごとに置かれた環境や人材ニーズが異なるため、重点が変わります。

IT業界は高度人材の不足、医療業界は慢性的な人員不足、製造・建設業は技術者不足、小売・サービス業は離職率の高さや大量採用の必要性など、課題がそれぞれ違います。

そのため、自社の業界特性を理解し、市場に合った採用アプローチを選ぶことが重要です。

【IT・通信業界】デジタル人材の争奪戦に対応する戦略が必要

IT・通信業界ではAIエンジニアやデータサイエンティストなど高度人材の需要が急増しており、複数オファーが集中するため競争が激しい状況です。

このため通年採用を取り入れ、インターンやハッカソンなどで早期に優秀層と接点を持つ取り組みが求められます。

さらにスカウト型採用の強化や初任給の引き上げなど待遇面の競争力向上も重要です。

大手企業ではスピード選考や在学中内定など選考の迅速化も進み、「選ばれる企業」になるための戦略が重視されています。

【医療・福祉業界】労働環境の改善と定着支援が戦略の中心

医療・介護の分野では慢性的な人手不足が続き、業務の負荷や給与水準の課題から応募が集まりにくい状況があります。

このためスタッフ配置や勤務シフトの見直し、ICT導入による業務効率化など、働きやすい職場環境づくりが戦略の出発点と言えます。

また地方の施設では奨学金支援や住宅補助など地域に根ざした対策も有効です。

さらに新人のメンタルサポートやキャリア支援体制を整え、採用後の定着までを含めた長期的な戦略が重要です。

【製造・建設業界】若年理工系人材への早期接触と育成前提の採用

製造・建設分野においては、技術者や技能職の不足が大きな課題です。

現場の自動化・DX化が進む中で対応できる人材が不足しており、特に中小企業では人材確保が困難です。

このため高校・大学との連携を強め、インターンシップや現場見学会などを積極的に行い、早期から接点を持つ取り組みを強化する企業が増えています。

建設業界では現場見学会が内定につながるケースも増えています。

製造業では教育プログラムを整備し未経験者の受け入れを広げるなど、育成を前提とした採用が有効です。

さらに中小企業では自社の技術力や風土を打ち出すブランディングが競争力を高めます。

【小売・サービス業界】大量採用と離職防止を両立する戦略が求められる

小売・外食・サービス業では人手不足が慢性化しており、採用人数の確保自体が大きな課題です。

求人媒体やSNS、社員紹介制度、合同説明会など複数のチャネルを活用して応募を増やします。

また履歴書不要の面接会やオンライン説明会など応募しやすい仕組みを整えると、採用機会を広げられます。

一方で離職率が高いため、働きやすい環境づくりや評価制度の見直しなどを進め、その取り組みを求人で積極的に伝えることも重要です。

採用戦略を立てる手順は?

効果的な採用戦略を立案するには、現状分析から始めて採用目標と理想の人材像を明確にし、適切な採用手法を計画・実行するステップを踏みます。

以下に基本的な4つのステップを紹介します。

① 現状分析と採用目標の設定

まず自社の現状と課題を分析し、経営計画に沿った採用目標を具体化します。

「何人採用する」というだけでなく、「どの部署でいつまでにどんな役割の人材が何人必要か」を明確に数値化した設定が重要です。

現状の組織課題(例えば新規事業に必要なスキルの不足など)を洗い出し、経営戦略と連動した人材ニーズを定義します。

その上で、「来年度末までに営業部で即戦力の〇〇職を〇名」など具体的な採用計画を立てておくと、採用活動の軸がぶれなくなります。

② 採用ターゲットの明確化(ペルソナ設定)

どのような人材を求めるのかを具体化し、スキルや経験だけでなく、価値観や志向性、自社文化との適合性まで考慮した採用ペルソナを設定します。

「主体性がありチーム志向のエンジニア」「顧客志向が強く柔軟な営業」など、具体的な人物像を描く取り組みが重要です。

特に若手人材の採用では、企業の社会的使命や働き方の柔軟性を重視する傾向があるため、ターゲット像に合わせて自社の魅力を訴求できるよう準備します。

③ 採用手法の選定と戦略設計

設定したペルソナに基づき、適切な採用チャネルや手法を選択します。

新卒採用であれば大学連携やインターンシップ、社員紹介などを活用し、中途採用では求人サイトやエージェント、人脈紹介や直接スカウトなど複数の手法を組み合わせます。

職種や対象によって有効な手段は異なるため、採用予算や期間も考慮しながら最適な方法を設計しましょう。

「即戦力エンジニア採用には専門人材向け求人媒体とリファラルを併用する」「新卒採用には夏季インターンで母集団形成を図る」など、ターゲットごとに戦略を立てます。

加えて、各施策のコスト・労力と見込まれる効果(応募者数や定着率など)を比較した優先順位付けも重要です。

④ 採用活動の実行、効果測定と改善

採用戦略の実行後は、効果を検証しながら継続的な改善を行いましょう。

応募数・選考通過率・内定承諾率・入社後の定着率といったKPI(指標)を設定し、採用プロセスのどの段階で課題があるかをモニタリングします。

「応募は集まるが選考辞退が多い」場合は企業説明や選考フローを見直す、「内定承諾率が低い」場合は提示条件やフォロー体制を改善するといった具合です。

こうしたデータに基づく検証とPDCAサイクル(計画→実行→評価→改善)を回すと、採用戦略の精度が高まり自社に最適な戦術が見えてきます。

採用戦略で使えるフレームワーク・手法8選

採用戦略では、自社の課題や採用ターゲットに合わせてフレームワークを使い分けましょう。

ここでは、採用市場の分析から候補者体験の改善まで、採用活動で活用しやすい8つのフレームワークを紹介します。

①3C分析

3C分析とは、下記の視点から採用市場を整理するフレームワークです。

  • Customer(候補者)
  • Competitor(競合他社)
  • Company(自社)

候補者が求める給与や働き方、成長機会などのニーズを把握し、競合企業がどのような条件や魅力を訴求しているかを分析したうえで、自社の強みや採用上の課題を整理します。

たとえば競合が給与水準を強みにしている場合でも、自社が裁量権や成長環境を提供できるのであれば、異なる訴求軸を打ち出せます。

3つの要素を整理すると、自社ならではの採用メッセージを設計しやすくなるため、採用戦略の現状把握として最初に活用したいフレームワークです。

②4C分析

4C分析は、下記の視点から自社の採用活動を見直すフレームワークです。

  • Customer Value(候補者価値)
  • Cost(負担)
  • Communication(接点)
  • Convenience(利便性)

3C分析が市場環境や競合分析を目的とするのに対し、4C分析は「候補者がどのように感じるか」に焦点を当てている点が特徴です。

入社によって得られる成長機会ややりがいを整理し、転職に伴う不安や負担をどのように軽減するかを検討したうえで、候補者との接点や応募や選考のしやすさを見直します。

候補者視点で採用活動を改善すると、応募率や内定承諾率の向上につながります。

③SWOT分析

SWOT分析は、下記4つの視点から、自社の採用状況を整理するフレームワークです。

  • Strength(強み)
  • Weakness(弱み)
  • Opportunity(機会)
  • Threat(脅威)

たとえば中小企業の場合、強みとして「技術力が高い」「裁量権が大きい」、弱みとして「知名度が低い」「初任給が大手より低い」と整理できます。

また、機会として「DX需要の拡大」、脅威として「大手企業の採用強化」など外部環境も把握できます。

強みと機会が重なる部分は採用訴求のポイントになりやすく、弱みや脅威を把握すると優先的に取り組むべき課題も明確です。

④ペルソナ分析

ペルソナ分析とは、採用したい人物像を一人の具体的な人間として描く手法です。

年齢や職歴だけでなく、価値観や転職理由、情報収集の方法まで整理すると、有効な採用施策を明確にできます。

たとえば、「28歳・SaaS企業勤務・開発業務担当・スタートアップへの転職希望・情報収集はWantedlyやX」とすると、スカウト方法や媒体選定などが設計しやすくなります。

また、営業職やエンジニアなど職種ごとに求める人物像が異なる場合は、複数のペルソナを設定する方法も有効です。

⑤ファネル分析

採用ファネルとは、「認知→応募→書類選考→面接→内定→承諾」という採用プロセスを数値化し、各段階の離脱状況を把握するフレームワークです。

たとえば、「求人閲覧1,000人、応募80人、書類通過30人、面接通過12人、内定5人、承諾3人」と整理すると、どの工程で候補者が離脱しているかを把握できます。

応募数が少ない場合は認知や訴求に課題があり、内定承諾率が低い場合は選考体験やクロージングに課題がある可能性があります。

KPI管理と組み合わせると改善サイクルを回しやすくなり、専用システムがなくてもスプレッドシートで管理できるため、多くの企業で導入しやすい手法です。

⑥STP分析

STP分析とは、下記の3段階で採用市場を整理するフレームワークです。

  • Segmentation(市場の細分化)
  • Targeting(ターゲットの選定)
  • Positioning(立ち位置の明確化)

経験年数や職種、志向性などで候補者を分類し、自社が採用しやすく活躍が期待できる人材層を選定したうえで、成長環境など自社の強みを明確にします。

知名度や採用予算で大手企業と競争しにくい中小企業やスタートアップにとっては、自社が勝てる市場を見つけるために有効な分析手法です。

⑦TMP設計

TMP設計とは下記の要素を連動させて、採用精度や内定承諾率の向上につなげる取り組みです。

  • Target(ターゲット)
  • Message(訴求メッセージ)
  • Process(採用プロセス)

たとえば、若手ポテンシャル人材を採用したい場合は、「成長機会」や「教育制度」を訴求し、会社説明会や面談を重視した選考フローを設計する方法が考えられます。

一方で、ターゲットと訴求内容、選考プロセスがそれぞれ独立していると、「求人には魅力を感じたが選考が長く離脱した」といったミスマッチが発生しやすくなります。

⑧キャンディデイト・ジャーニーマップ

キャンディデイト・ジャーニーマップとは、候補者が求人を認知してから入社するまでの行動や感情の変化を時系列で整理する手法です。

特にエンジニアやハイレイヤー人材など採用難易度の高い職種では、選考内容だけでなく、候補者体験そのものが内定承諾に大きく影響します。

ジャーニーマップを作成すると、「どのタイミングで不安を感じているのか」「どの接点で温度感が下がっているのか」を客観的に把握できます。

採用戦略を成功させるためのポイント・注意点は?

採用戦略は、策定だけでなく実行・改善のプロセスも含めて初めて効果を発揮します。

ここでは採用戦略を成功させるためのポイント・注意点を解説します。

【成功のポイント】社内連携・選考品質・候補者体験の最適化

採用戦略を実現するには、まず社内での密な連携が前提です。

人事部門だけでなく、実際に人材を受け入れる現場と協力し、「どのような人材を、どう評価するか」をすり合わせておきましょう。

現場の担当者を面接に参加させたり、選考基準のトレーニングを行うと、組織として一貫性のある採用体制が整います。

また、選考プロセスそのものの質も成果に直結します。

評価のブレを防ぐために基準を標準化し、応募者に対しては迅速かつ誠実な対応を心がけましょう。

採用段階では、職場環境や条件の詳細を丁寧に伝えると候補者の納得感を高められます。

さらに、内定後から入社後にかけてのフォローも欠かせません。

定期的な連絡や事前の不安解消、入社後の研修やメンター制度の整備によって、早期の戦力化と離職の防止を実現できます。

これらの要素を含め、採用活動の効果測定とPDCAサイクルによる継続的な改善を行うことで、戦略全体の完成度が高まります。

【注意点】要件設定・情報開示・対応スピード

まず、採用要件を細かく設定しすぎると、該当する人材が極端に限られ、母集団が縮小してしまいます。

必要な条件(MUST)と望ましい条件(WANT)を分けて整理し、柔軟に対応できる枠を持たせましょう。

また、選考プロセスの遅さや説明不足も、優秀な人材の離脱につながります。

給与や勤務地などの基本情報はできるだけ早い段階で明示し、面接や内定提示のスピードにも気を配る必要があります。

さらに、内定辞退や入社後の早期離職を防ぐには、候補者との継続的なコミュニケーションが有効です。

入社後の職場ギャップを最小限にするための情報提供や、定着をサポートする仕組みの構築が欠かせません。

最後に、採用環境や求職者の価値観は常に変化しているため、過去の成功事例に固執せず、新たなツールや手法を取り入れる柔軟性も重要です。


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