• 更新日 : 2025年12月11日

合同会社設立後のやることリスト!税務署への届出から社会保険、銀行口座開設まで解説

合同会社の設立登記はゴールではなく、事業運営のスタートラインに立ったにすぎません。合同会社設立後のやることリストをしっかり確認し、法務・税務・労務に関する手続き漏れを防ぐことが、その後の円滑な経営につながります。

本記事では、登記後に必要な税務署への届出、社会保険の手続き、銀行口座開設など、事業開始までに必須となるタスクを解説します。合同会社設立後の手続きをスムーズに進めるためのチェックリストとして、ぜひご活用ください。

合同会社設立直後にやることは?

合同会社の設立手続きが完了したら、すぐに登記事項証明書と印鑑証明書を取得し、法人口座開設の準備を進めることが重要です。

1. 登記事項証明書と印鑑証明書の取得

会社の身分証明書となる「登記事項証明書(登記簿謄本)」と「印鑑証明書」を、法務局で必要部数取得します。

これらの書類は、銀行口座の開設、税務署や役所への届出、重要な契約時など、あらゆる場面で提出を求められるためです。

  • 登記事項証明書(登記簿謄本):会社の基本的な情報(商号、本店所在地、代表社員など)を証明する公的な書類です。原本の提出を求められる場合が多いため、3〜5部程度取得しておくと安心です。
  • 印鑑証明書:法務局に登録した会社実印(代表者印)の印鑑証明書です。銀行口座開設や重要な契約時に必要となります。
  • 印鑑カード:これらを取得するために、まず法務局で印鑑カードの交付申請が必要です。今後、印鑑証明書を発行するために必須のカードなので、紛失しないよう厳重に保管してください。

参考:会社・法人の登記事項証明書等を請求される方へ|法務省

2. 法人用の銀行口座開設

個人の財産と会社の財産を明確に区分し、対外的な信用を確保するために、速やかに法人名義の銀行口座を開設します。会社法上、会社の財産と個人の財産は明確に区分(公私混同の禁止)する必要があり、法人税の申告や融資の際にも法人口座が必須となるためです。

近年、法人口座の開設審査は厳格化しており、申請から開設までに数週間かかることも珍しくありません。登記完了後、登記事項証明書などが取得できたらすぐに申請準備を始めることが重要です。

主な必要書類
  • 登記事項証明書(原本)
  • 法人印鑑証明書(原本)
  • 定款の写し
  • 代表者の本人確認書類
  • 法人番号指定通知書(税務署から後日郵送されますが、申請時に求められることもあります)
  • 事業内容を証明する資料(事業計画書、会社のウェブサイトURL、賃貸借契約書など)

審査では事業の実態が重視されます。メガバンク、地方銀行、ネット銀行など、自社の事業特性に合う銀行を選定しましょう。

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税務署・役所への届出は?

会社を設立したことを国(税務署)と地方(都道府県・市町村)に通知するため、定められた期限内に「法人設立届出書」などを提出する必要があります。

1. 税務署への届出

本店所在地を管轄する税務署へ「法人設立届出書」および関連書類を提出します。法人税法に基づき、すべての法人に提出が義務付けられています。

法人設立届出書
  • 会社が設立されたことを税務署に通知する届出です。
  • 添付書類として「定款の写し」や「登記事項証明書」などが必要です。
給与支払事務所等の開設届出書
  • 役員報酬や従業員給与を支払う場合に提出します(期限:開設から1ヶ月以内)。
  • 一人合同会社であっても、代表社員が役員報酬を受け取る場合は提出対象となります。
  • 提出することで、源泉徴収した所得税を納付するための納付書が送られてきます。

参考:No.5100 新設法人の届出書類|国税庁

2. 都道府県・市町村への届出

税務署とは別に、事業所(本店)所在地の都道府県税事務所および市町村役場へも「法人設立届出書」を提出します。地方税(法人住民税、法人事業税など)を納付するため、地方自治体へも設立を届け出る必要があります。

提出先
  • 都道府県税事務所(本店所在地を管轄)
  • 市町村役場(本店所在地を管轄)

※東京23区の場合は、都税事務所への届出のみで、区役所への提出は不要な場合があります。

提出期限

自治体によって異なり、「設立から15日以内」や「1ヶ月以内」など、税務署(2ヶ月)より早い場合が多いため、必ず各自治体のウェブサイトで確認してください。

添付書類

定款の写し、登記事項証明書(登記簿謄本)の写しが必要です。

社会保険(健康保険・厚生年金)の手続きは?

合同会社は、役員1名(代表社員)のみであっても、法律上、社会保険(健康保険・厚生年金保険)への加入が義務付けられています。設立から5日以内に年金事務所で手続きが必要です。

1. 加入義務の確認

法人は「強制適用事業所」となり、常勤の役員や従業員がいる場合、事業主や従業員の意思に関わらず、健康保険・厚生年金保険に加入しなければなりません。これは健康保険法および厚生年金保険法に基づく義務です。

「役員1名だけの会社で、役員報酬も低額だから」といった理由で加入を免れることはできません。代表社員が常勤(業務執行権を持つ)であり、法人から労務の対価として報酬を受けていれば、加入対象となります。未加入が発覚した場合、過去に遡って(最大2年間)保険料を徴収されるペナルティがあります。

2. 年金事務所への新規適用届

本店所在地を管轄する日本年金機構の年金事務所へ「健康保険・厚生年金保険 新規適用届」を提出します。期限が5日以内とタイトなため、登記完了後すぐに準備する必要があります。

主な提出書類
  • 健康保険・厚生年金保険 新規適用届
  • 登記事項証明書(登記簿謄本)の原本
  • 法人番号指定通知書のコピー
  • 健康保険・厚生年金保険 被保険者資格取得届(役員・従業員分)
  • (役員・従業員に扶養家族がいる場合)健康保険 被扶養者(異動)届

「被保険者資格取得届」には、役員報酬の額(標準報酬月額)を記載する必要があるため、設立時に役員報酬額を決定しておく必要があります。

参考:健康保険・厚生年金保険の適用関係届書|日本年金機構

従業員を雇用する場合の手続きは?

従業員(パート・アルバイト含む)を1人でも雇用する場合は、労働保険(労災保険・雇用保険)への加入が必須です。労働基準監督署とハローワークでの手続きが必要になります。

注意点として、社会保険(健康保険・厚生年金)が「役員と従業員」の保険であるのに対し、労働保険は基本的に「従業員(労働者)」のための保険です。役員は原則として加入できません(兼務役員を除く)。

1. 労働基準監督署への届出(労災保険)

従業員を雇い入れた日の翌日から10日以内に、管轄の労働基準監督署へ「労働保険関係成立届」を提出します。

労災保険は、業務中や通勤中の怪我・病気などに対する保険であり、従業員を1日でも雇用すれば加入義務が発生します。

この届出を行い、労働保険番号を取得します。その後、その年度の労働保険料(概算保険料)を申告・納付します。保険料は全額事業主負担です。

参考:労働保険の成立手続|厚生労働省

2. ハローワークへの届出(雇用保険)

管轄のハローワーク(公共職業安定所)へ「雇用保険適用事業所設置届」と「雇用保険被保険者資格取得届」を提出します。

雇用保険は、従業員が失業した際の給付金(失業手当)などを支給する保険です。週20時間以上かつ31日以上の雇用見込みがある従業員が対象です。

手続きには、労働基準監督署で受理された「労働保険関係成立届」の控えや、登記事項証明書などが必要になります。

参考:事業主の行う雇用保険の手続き |厚生労働省

節税のために行うべき税務手続きは?

法人設立届出書と同時に、青色申告の承認申請や源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請を行うことで、税務上のメリットや事務負担の軽減が図れます。

1. 青色申告の承認申請

設立第1期目から税制上の優遇措置(欠損金の繰越控除など)を受けるためには、「設立の日から3ヶ月を経過した日」または「第1期の事業年度終了の日」のいずれか早い日の前日までに税務署へ提出します。

これにより、赤字(欠損金)を最大10年間繰り越して将来の黒字と相殺できる「欠損金の繰越控除」が可能となります。期限に遅れると、第1期は自動的に白色申告となり、このメリットが使えません。設立届と同時に提出するのが最も確実です。

参考:C1-19 青色申告書の承認の申請|国税庁

2. 源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請

従業員が常時10人未満の場合、この申請書を提出・承認されると、源泉所得税の納付を毎月から年2回(7月と1月)にまとめることができます。これは小規模事業者の事務負担を軽減するための特例措置です。設立時に「給与支払事務所等の開設届出書」と併せて提出することが推奨されます。

参考:A2-8 源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請|国税庁

合同会社設立後の手続きを専門家に依頼するメリットは?

合同会社設立後の手続きは期限が短く複雑なため、税理士や社会保険労務士に依頼することで、本業に集中し、手続き漏れのリスクを回避できます。

  • 税理士:税務署や都道府県・市町村への届出、青色申告申請、会計ソフトの導入支援、役員報酬の設定アドバイス、その後の決算申告までを一貫して依頼できます。
  • 社会保険労務士(社労士):期限が短い年金事務所への社会保険手続き(新規適用届)や、従業員雇用時の労働保険手続き(労基署・ハローワーク)を代行してもらえます。

設立直後の多忙な時期に、これらの手続きをすべて自分で行うのは大きな負担です。早い段階で信頼できる専門家を見つけ、顧問契約やスポットでの依頼を検討することは、有効な経営判断と言えます。

合同会社設立後のスタートダッシュを成功させよう

合同会社の設立登記が完了したら、多くの手続きが待っています。本記事で解説した必須の手続きと、青色申告などの任意の手続きを漏れなく完了させることが、その後の円滑な事業運営と節税の基盤となります。

手続きに不安がある場合は、税理士や社会保険労務士など専門家の力も借りながら、確実なスタートダッシュを切りましょう。


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