• 更新日 : 2026年3月17日

大企業が子会社を作る理由とは?メリット・デメリット、売却の理由も解説

大企業が子会社を作る理由には、意思決定の迅速化などさまざまな理由があります。大企業の中には、なぜ多くの子会社を抱えたグループ企業もあるのでしょうか。大企業が子会社を作るメリットやデメリット、子会社売却の理由などについて解説していきます。

大企業が子会社を作る理由とは?

大企業が子会社を作るのには理由があります。会社設立の主な理由を7つ紹介します。

①事業の専門化

大企業が子会社を作る理由のひとつが、事業の専門性の強化です。子会社の意思決定は基本的に親会社が行うことから、子会社は専門性の高い仕事に集中できます。特定の技術が必要な専門性の高い分野などによくみられます。

②新市場への進出

新しい市場への進出時にも子会社の設立が検討できます。子会社設立は、円滑に事業を進めていくのにメリットがあるためです。例えば、子会社であれば、事業目的変更による定款変更の承認などの手続きを必要としません。

③迅速な意思決定

大企業は、事業が拡大することで組織の指揮系統が複雑化しやすくなります。子会社を設立することによって組織の指揮系統をスリム化できるため、意思決定を素早く実行できるメリットがあります。

④優秀な人材の活用

子会社を作ることによって、優秀な人材を経営に関与させられる機会が増えます。後継者の育成や経営権の分散もでき、後継者問題の対策にも有効です。また、既存の企業を子会社にすることで、その企業で働く優秀な人材を獲得し、有効活用できるメリットもあります。

⑤法規制への対応

事業によっては許認可が必要なものもあります。子会社の設立は、法規制の異なる事業に適切に対応するのにも有効です。別会社にすることで、法対応への専門性を高められるだけでなく、法対応のリスク分散にも役立ちます。

⑥リスク分散

子会社の設立はリスク分散にも役立ちます。業務上の問題により行政指導などを受けた場合、子会社があれば子会社が受け持っている事業についてはリスクを回避できるためです。また、業績不振に陥っている事業を本体から切り離して子会社化することで、倒産リスクを回避できるメリットもあります。

⑦節税効果

節税効果を得られる可能性があるのも、大企業が子会社を作る理由のひとつです。資本金1億円以下の中小法人を設立すれば、法人税の軽減税率や貸倒引当金の計上、中小企業向けの租税特別措置法を適用できるなどのメリットがあります。ただし、税法上の中小法人になるには資本金5億円以上の大法人と完全支配関係がないことが条件となります。税制上の優遇を受けるには、完全子法人(発行済株式等の100%を保有する法人のこと)にしないなどの適切な組織編成が必要です。

子会社が多い大企業ランキング

東洋経済が、全上場会社を対象に毎年1回実施している調査をもとにした、子会社数が多い大企業のランキングは以下の通りです。

順位 企業名 子会社数
1 日本電信電話(NTT) 257
2 第一交通産業 159
3 三菱ケミカルグループ 154
4 トヨタ自動車 143
5 エア・ウォーター 131
6 イオン 123
6 KDDI 123
8 王子ホールディングス 121
9 パナソニック ホールディングス 117
9 名古屋鉄道 117
11 博報堂DYホールディングス 114
11 日本酸素ホールディングス 114
11 日本製鉄 114
11 住友商事 114
15 伊藤忠商事 111
16 三菱電機 105
17 三井不動産 102
18 三菱商事 101
19 セコム 100
20 三井物産 98

出典:「子会社の数が多い企業」ランキングTOP500社|東洋経済ONLINE

子会社数が圧倒的に多い企業は、日本電信電話(NTT)でした。

NTTは、携帯電話事業のNTTドコモや電子通信事業のNTTコミュニケーションズ、地域通信事業のNTT東日本やNTT西日本など、通信サービスを主力事業にしている企業です。コンサルティングやクラウド、不動産やエネルギー事業も展開しています。

ランキング2位は、第一交通産業でした。第一交通産業は、タクシーやバス事業を中心に、住宅販売や不動産関連の事業、パーキング事業、医療・介護事業、船舶事業、旅行事業、ホテル事業など多角的に事業を行なっているグループ企業です。

3位は素材製造を主力事業としている三菱ケミカルグループ、4位は自動車製造事業を主力としているトヨタ自動車、5位は産業ガスを主力事業としているエア・ウォーターでした。20位以内には、総合商社も複数ランクインしています。

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大企業が子会社を作るデメリットとは?

大企業の子会社設立にはデメリットもあります。主なものを紹介します。

損益通算ができない

子会社を設立することで、これまで1つの会社の中で行われてきた事業が、別会社に移転することになります。そのため、基本的に損益通算ができなくなります。

損益通算とは、各事業の利益と損失を合算させて法人税等を計算することです。子会社を設立することで親会社から事業が切り離されるため、子会社の事業の損益と親会社の事業の損益を合算できません。損益通算ができないことで、税負担が増加する可能性があります。

ただし、詳細は後述しますが、親会社と完全支配関係のある子会社については、任意で適用できるグループ通算制度があります。

税務調査が厳しくなるおそれ

子会社を設立すると税務調査が厳しくなる可能性があります。親会社と子会社の取引は、第三者との取引と異なり、恣意(しい)的な操作がしやすいためです。例えば、親会社から子会社への不適切な商品の販売により利益を操作するといったことも可能になります。

国税庁は、大企業の税務コンプライアンスを向上するべく取り組みを進めてきました。税務調査では恣意(しい)(しい引が行われていないか厳しく調査される可能性があるほか、誤りや不正が確認された場合には、再発防止のための改善策の策定など適切な運用が大企業である親会社には求められます。

親会社が子会社の管理責任を求められる

親会社と子会社はそれぞれ別の会社ではありますが、親会社が子会社の出資などを行なっている以上、親会社が子会社を管理する責任があります。法によって、子会社の業務における適正性の確保が取締役会の権限に定められているほか、子会社の不祥事は企業グループ全体の問題にもなるためです。重大な事故や不正などで社会的に大きな問題となった場合、親会社だけでなく、企業グループ全体の信用リスクの低下につながる可能性もあります。

子会社を設立する場合、親会社は子会社取締役などからの報告体制を整備したり、子会社の危機管理体制を整備したり、適切な内部統制が求められます。

子会社が赤字の場合メリットはある?

親会社と子会社は別の会社となるため、法人税等の申告も個別に行われます。そのため、基本的に子会社が赤字になることによる親会社側のメリットはありません。

しかし、グループ通算制度を利用すれば、子会社の赤字がメリットになることがあります。グループ通算制度とは、企業グループ内の各法人が個別に法人税額の計算を行なったうえで、損益通算の調整を図る制度です。グループ内の損益通算ができるため、子会社で赤字が発生した場合、親会社の黒字と通算することで、税額負担を軽減できるメリットがあります。

大企業が子会社を作る際の検討事項

大企業が子会社を設立する際に検討すべき事項を2つ解説します。

子会社の設立方法や資本金

大企業が子会社を設立する際には、設立方法や子会社の資本金について検討する必要があります。

設立方法については、事業の権利義務の全部または一部を分割する「新設分割」、資産・負債や契約を個別に移転する「事業譲渡」による設立方法があります。既存の子会社を取得する場合には、株式譲渡などの方法も検討できるでしょう。組織再編の方法によっては税制面の優遇もあるため、設立目的に応じた選択が必要です。

子会社の資本金(または出資金)は、中小法人の税制優遇などにも関わってくる事項です。株式会社は資本金1円以上で設立可能ですが、信用面も関わってくるため、状況に応じて検討が必要です。

グループ通算制度を導入するか

グループ通算税制は、通算グループ内の赤字を損益通算できる制度です。法人が任意に適用できる制度で、グループ通算税制の適用を受ける親会社と子会社が国税庁長官に承認を受けることで適用できます。

グループ通算税制は、グループ内の所得と欠損金を通算することで、法人税額の負担を軽減できるメリットがあります。また、グループ全体で適用していく必要があるため、財務ガバナンスの強化にもつながる制度です。

しかし、通算グループ内に1つでも中小法人以外の法人が存在すると、中小法人の特例措置を受けられないデメリットもあります。また、法人税の軽減税率や交際費の損金算入限度額は個別ではなくグループ全体に適用されるため、メリットよりもデメリットが上回る可能性もあります。

グループ通算制度を適用するかどうかは、通算グループ全体の状況やメリット・デメリットのバランスを踏まえた検討が必要です。

大企業が子会社の会計処理で気をつけたいポイント

大企業が子会社の会計処理で押さえておきたいポイントを4つ紹介します。

親会社と会計期間を統一させる

グループ通算制度の適用を受ける場合、グループ内の子会社は親会社と事業年度(会計期間)を統一しなければなりません。子会社の会計期間が親会社と異なる場合は、会計期間を親会社に合わせて処理を進める必要があります。

なお、グループ通算制度の適用を受けない場合は会計期間の統一の必要はありません。しかし、連結財務諸表作成の便宜上、親会社と子会社の決算日を親会社の連結決算日に統一するケース、あるいは逆の対応策をとるケースもあります。

グループの会計方針に準拠させる

企業会計基準において、同一の環境下かつ同一の性質がある取引については、親会社と子会社の会計処理および手続きを原則として統一させることとされています。そのため、子会社の会計処理はグループの会計方針に準拠させることが求められます。

グループ間で統一すべき会計方針とは、資産の評価基準や引当金の評価基準などです。ただし、子会社で独自に採用すべき合理的理由がある場合や重要性の低い会計方針については、統一すべき事項からは除かれます。

資産譲渡などは適正に行う

完全支配関係(100%の資本関係)がある親子間の資産の譲渡や配当などの取引は、グループ法人税制が適用されます。対象の取引について、税務上の損益を認識しない制度です。親子間で金銭や資産の移転があっても、同じ会社内で取引があったように扱われます。

親子間の会計処理で注意が必要なのは、完全支配関係にない子会社との取引です。時価と比較して著しく低額または高額な資産の譲渡や無利息の貸し付けについては、親会社から子会社あるいは子会社から親会社への寄附があったものとみなされます。税務上、寄附金は損益算入額に限度があるため、いずれか一方に有利な取引は法人税の面で不利益を被る可能性があります。

適切な会計システムを利用する

子会社などを有する企業グループには、連結会計が求められます。連結会計とは、企業グループを1つの組織とみなして、貸借対照表損益計算書などの決算書類を作成するための会計です。

連結会計では、会社ごとの個別の会計とは別の手続きが求められます。また、企業グループ全体を連結させる必要があるため、会社ごとの個別の決算書類(財務諸表)の収集も必要です。連結会計を円滑に進めるためにも、連結会計に対応した適切な会計システムを取り入れることが重要です。

マネーフォワード クラウド連結会計

大企業が子会社を売却する理由

大企業が設立した子会社や事業譲渡で取得した子会社を売却するケースもあります。大企業が子会社を手放す主な理由を紹介します。

主力事業に集中できるため

子会社は、親会社とは別会社であっても、さまざまなコストがかかります。連結会計などにかかるコストのほか、親会社と関連する業務については親会社から子会社に経営資源を移転することもあるでしょう。子会社を売却すれば、親会社の主力事業に経営資源を集約させることができ、主力事業を強化できるメリットがあります。

新規事業に力を入れるため

新規事業を立ち上げる場合、多大な経営資源が必要になることがあります。新規事業に力を入れるために、子会社を売却して得られた売却益を新規ビジネスの立ち上げや育成資金に回すことがあります。

業績が悪化した子会社を切り離せるため

業績の悪い子会社があると、親会社が赤字を補てんしなければならないなど、企業グループ全体の足を引っ張ってしまいます。将来的な赤字の回復などが見込めない不採算事業を切り離すために子会社を売却することがあります。

資金調達のため

大幅な赤字に陥っている場合を除き、子会社を売却することで、親会社は事業譲渡による譲渡対価を得られます。主力事業の資金繰り改善など、資金調達を理由に子会社が売却されるケースもあります。

大企業が子会社を作るのにはさまざまな理由がある

大企業が子会社を作る理由には、専門性の強化や新市場への進出、迅速な意思決定の実現など、さまざまな理由があります。子会社の設立は大企業にとってメリットがある一方、税務調整や管理責任などの問題もあるため、慎重に進めていく必要があるでしょう。会計処理の面でも対応が必要になるため、システムの変更なども見越した検討が求められます。


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