- 更新日 : 2025年6月19日
人事業務とは?仕事内容や向いている人の特徴・役立つ資格などを解説
人事の仕事は、採用から労務管理、従業員教育まで多岐にわたります。人事は社内や社外を問わずに多くの人と関わる機会があり、組織運営の要です。
本記事では、人事の具体的な業務内容や向いている人の特徴を紹介するとともに、業務に役立つ資格についても解説します。また、新卒で人事職に就くことのメリットや今後のキャリアアップとの関係、大変な点なども詳しくまとめました。人事の仕事を目指す方に向けて、役立つ情報をお届けします。
目次
人事業務とは?
人事業務とは、企業における「人」の管理を担う仕事であり、採用から配置、育成、評価まで幅広い業務を含みます。「人・物・金・情報」といった経営資源の中でも、とくに重要とされる「人材」を扱う部署として、企業の成長に直結する役割をはたしています。
主な業務内容は、企業にふさわしい人材を見極めて採用し、最適なポジションに配置・活用することです。採用した従業員が能力を発揮できる環境づくりや制度の設計も求められ、それぞれの個人がもつスキルを最大限に引き出す工夫が求められます。
昨今では、外国人労働者の重要性も高まっているでしょう。そのため、外国人が日本での就労ビザをきちんと取得できているか確認したり、多言語対応のマニュアルを用意したりといったサポートも必要です。
外国人雇用における人事管理について知りたい方は、下記の記事もあわせてご覧ください。
会社における人事の役割とは?
人事部は、従業員一人ひとりの特性や能力を把握し、適切に配置することで、組織全体の力を引き出す役割があります。従業員にもっとも近い立場で働く部署として、働きやすい環境を整え、生産性の向上や業績アップを支えることが大切です。
従業員の成長を後押ししながら、公正な評価や適切にフィードバックすることも求められます。企業の目標達成に向けて、従業員が働きやすい環境を整えることが重要です。
人事部と総務部の違い
人事部と総務部は、業務範囲が異なります。人事部は採用や配置、評価、育成、従業員の管理など「人」に関わる業務を担当します。
一方、総務部は企業全体の運営を支える立場として、オフィスの備品管理や施設の維持、社内イベントの企画など「物」や職場環境に関する業務が仕事です。ただし、企業の規模や体制によっては、人事部が総務業務を兼ねることもあり、両者の役割は柔軟に変化することがあります。
人事部と労務部の違い
人事部と労務部についても、業務内容に違いがあります。人事部は採用や配置、育成、評価など「人」に関する全般的な業務を担当します。
一方、労務部は従業員が安心して働ける職場の「環境」を整える部署です。たとえば、労働契約の管理や社会保険の手続き、福利厚生の運用などが主な業務です。企業の規模や体制によっては、人事部が労務の業務を兼ねる場合もあり、組織によって役割分担が異なります。
人事業務の主な仕事内容
ここでは、人事が担当する主な業務内容について紹介します。採用から配置、教育、評価まで幅広い業務を通じて、組織の成長を支える人事の役割を具体的に見ていきましょう。
採用
人事の代表的な業務のひとつが従業員の採用活動です。企業の現状や将来的な人員計画を踏まえたうえで、新卒採用や中途採用、パート・アルバイトを募集し、必要な人材を適切な数と質で確保することを目指します。採用に関する主な業務内容は、下記のとおりです。
- 企業の経営戦略にもとづいた「人材採用計画」の立案
- 求人広告の出稿
- 会社説明会の開催
- 応募者の選考
- 面接
- 内定通知
- 入社手続き
採用活動では求人内容の企画や作成、応募者への対応、面接の実施、選考フローの管理などを担います。
人材育成・教育
人事の重要な業務のひとつに、人材育成や教育があります。主に、従業員のスキル向上や知見を広げることを目的とした取り組みです。たとえば、新人研修の実施や専門スキルの習得支援、資格取得の促進といった仕事内容が挙げられます。
社内だけでなく、外部講師を招いた研修やセミナー・オンライン学習なども必要です。人事は、従業員の育成プログラムの内容を企画し、必要な予算を確保したうえで、研修の実施・運営まで一貫して担います。
評価
人事の業務には、従業員の評価も含まれます。人事評価は年に1〜2回実施され、上半期(4月〜9月)と下半期(10月〜3月)に分けるのが一般的です。
評価の判断材料として、従業員の業績や行動、能力をもとに、昇進や給与に反映させます。透明性と公平性のある評価制度を、整備・運用することが大切です。適切な評価制度を通じて、従業員の意欲向上や定着率の向上を目指します。
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人事制度の構築・運用
人事の業務には、人事制度の設計と運用も含まれます。人事制度とは、給与や役職などの等級に加え、従業員の成果や能力を正しく評価し、公平に処遇するための仕組み全体を指します。
人事制度がうまく機能しないと、不公平感が生まれ、従業員の不満や意欲の低下につながることもあるでしょう。制度構築には、人事に関する専門的な知識に加え、経営陣と連携しながら方針を決めていく調整力や交渉力も求められます。
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労務管理
労務管理は、主に労働時間の管理や健康診断、福利厚生、安全衛生の維持などを担当します。労務管理は、従業員が安心して働ける環境を整える基盤づくりとして欠かせません。
通常は人事部が担当することが多いですが、企業の規模や組織構造によっては、総務や経理部門が兼任するケースも見られます。労務管理は従業員の働きやすさに直結するため、幅広い知識と対応力が重要です。
人事業務に向いている人の特徴は?
ここでは、人事業務に向いている人の特徴について解説します。適性を知ることで、仕事の理解やキャリア選択に役立ててください。
コミュニケーション能力がある人
人事業務に欠かせないスキルのひとつが、コミュニケーション能力です。人事がコミュニケーションを取るのは、従業員だけではありません。経営者と会社のビジョンを共有したり、産業医や研修講師など外部専門家と連携したり、採用面接で応募者と接したりと、さまざまな人と関わります。
そのため相手の立場や状況を理解し、明るく円滑にコミュニケーションを取れることが求められます。幅広い関係者と良好な関係を築くことにより、会社のイメージアップや信頼関係の構築につながるでしょう。
正確な業務が得意な人
人事の仕事では、正確に業務を遂行する能力が重要です。とくに労務管理は法律で義務付けられた業務も多く、対応を誤ると罰則の対象になることもあります。
書類作成や給与計算などの各種手続きを、ミスなく実施できる人が求められるでしょう。正確な業務遂行は、従業員の信頼を得るうえでも大切な要素です。
進捗管理が得意な人
人事業務には、進捗管理の得意な人が向いています。多くの関係者が参加するイベントや採用活動を円滑に進めるためには、スケジュール調整やタスク管理が大切です。
たとえば、企業説明会の開催では日程調整や会場手配が必要になります。ほかにも人材採用では、目標にもとづいた採用計画の作成や選考スケジュールの管理が必要です。そのため、計画的に業務を進める力が欠かせません。
責任感のある人
人事の仕事では、企業の経営に関わる重要な情報や従業員の個人情報を取り扱います。そのため、機密情報の管理に対し、責任感のある人が求められます。
情報が漏れると企業の信用が失われるだけでなく、従業員に不利益を与える可能性もあるでしょう。機密性を保ち、情報を外部に漏らさないよう適切に管理するために情報の閲覧権限を制限したり、パスワードを適切に管理したりすることが、人事に求められる役割です。
論理的思考が好きな人
人事業務では感情に左右されず、冷静な判断が求められます。たとえば、給料計算では従業員の残業時間を正確に把握し、税金や保険などの細かい数字を管理します。ほかにも、新しい従業員に対して社内の規則を説明したり、新しい制度を適用するときに従業員に丁寧に説明したりすることがあるでしょう。とくに福利厚生や従業員の評価に関わる場面では、公平性が大切です。
基本的なコミュニケーション能力を備えつつも、冷静で論理的に業務に向き合える人が人事に向いています。
柔軟性の高い人
人事の仕事には、柔軟な対応力が欠かせません。たとえば、従業員が不足した場合は迅速に採用活動を開始したり、社内外でトラブルが発生した場合に素早くコミュニケーションを取り、連携したりするなどです。
状況に応じて業務の優先順位を見直し、的確な判断を下すことで、スムーズな組織運営につながります。
人事業務で役に立つ資格
ここでは、人事業務に役立つ資格について紹介します。取得することで専門知識が深まり、業務の幅が広がるでしょう。
キャリアコンサルタント
キャリアコンサルタントは、労働者の職業選びやスキルアップを支援する国家資格です。人事担当者が資格をもつことで、従業員のキャリアアップに対して的確なアドバイスができるようになります。
従業員一人ひとりの適性や能力を把握し、適材適所の配置を検討する際にも役立ちます。組織の人材活用を効果的に進めるための、重要な資格といえるでしょう。
社会保険労務士
社会保険労務士は、社会保険や労働法に関する専門知識をもつ国家資格です。人事や労務管理においても、社会保険労務士は役立ちます。
雇用や社会保険、労働問題、公的年金など幅広い分野を扱い、企業では採用から退職までの労務手続きに活用されます。資格をもつことで、人事や労務担当者としての信頼性が高まり、より専門的な対応が可能です。
メンタルヘルス・マネジメント検定
メンタルヘルス・マネジメント検定は、職場の環境が原因となる心の健康問題への対策に役立つ、民間資格です。近年、過重労働や人間関係のストレスから従業員のメンタル不調が増え、多くの企業が課題を抱えています。
メンタルヘルス・マネジメントの資格をもつ人事担当者がいることで、従業員が抱えるストレスや悩みを相談しやすく、安心して働けるような体制が整うでしょう。そのため、従業員のメンタル面での健康管理が可能になります。
人事業務に関するよくある質問
ここでは、人事業務に関してよく寄せられる質問と回答を紹介します。疑問解消に役立ててください。
人事の仕事で大変なことは何ですか?
人事は従業員への注意喚起や書類提出の催促、研修参加のフォロー、給与計算など多岐にわたる業務を担います。そのため残業が多いこともあり、忙しさを感じる可能性があるでしょう。
また、営業のように成果が数値で表れにくいため、仕事の実績が見えにくいのも大変だと感じる理由です。機密情報の管理時には厳しい対応を求められることもあり、ストレスを感じる場面が多い仕事といえます。しかし、従業員の成長を身近に感じられたり、トラブルが解決した際に感謝を直接伝えてもらえたりと、やりがいもあります。
新卒で人事配属されるのはなぜですか?出世コースは本当?
人事は企業の「人」に関わる業務全般を担い、経営層の意図を汲みつつ、従業員に的確に伝えるポジションです。そのため、新卒で人事に配属される場合は、将来的に企業の顔として、外部とやり取りする重要な役割を任される期待があります。企業によっては出世コースとされることもあるでしょう。
プレッシャーを感じることもありますが、キャリアアップのチャンスと捉え、積極的に経験を積むことが大切です。
人事部はなぜ人気があるのですか?
人事部が人気の理由は、従業員と直接関わる機会が多く、成長を間近で見られる点にあります。新しい従業員からの質問対応や既存の従業員のキャリア相談に応じることも多く、日々のコミュニケーションが活発です。
従業員の成長や成果をダイレクトに実感できるため、やりがいを感じやすく、仕事へのモチベーションを高める要素となっています。
人事未経験での転職は何歳まで?
人事未経験者の転職に、年齢制限はありません。人事業務は未経験であっても、これまでの職務経験やスキルが活かせる場面は多くあるためです。
また、近年ではデジタル化が進み、データ分析やITツールに強い人材が求められる傾向もあり、年齢よりもスキル重視の傾向が強まっています。そのため、データ分析などのスキルがあると有利です。ほかにも、労働法や社会保険の知識は、実務に活かしやすく即戦力として評価されやすいものです。
このように、人事に関連した専門的なスキルがあれば、年齢を問わず転職市場で優位になります。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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