• 更新日 : 2026年3月31日

中小企業が利用できる退職金制度は?導入率や金額の相場もあわせて解説【テンプレート付き】

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中小企業にとって退職金制度は、人材の確保・定着に関わる重要な制度です。企業規模や業態によって最適な制度は異なりますが、中退共や特退共、企業型DCなど多くの選択肢があります。

本記事では、退職金制度の特徴や導入率、金額の相場について解説します。

中小企業の退職金制度をめぐる現状

中小企業の退職金制度は、企業の規模や業態によって導入状況や制度の内容が異なります。まずは、企業規模別の導入率と退職金の支給金額の相場から、現状を見ていきましょう。

退職金制度の導入率

厚生労働省の「令和5年就労条件総合調査」によると、日本企業における退職給付制度の導入率は74.9%です。企業規模別に見ると、下表のとおりです。

企業規模 導入率
1,000人以上 90.1%
300~999人 88.8%
100~299人 84.7%
30~99人 70.1%

参考:厚生労働省|令和5年就労条件総合調査

制度の形態では、もっとも多く採用されているのが「退職一時金制度のみ」で、全体の69.0%を占めています。また、退職年金制度のみは9.6%、両制度併用は21.4%でした。

中小企業退職金共済をベースに、独自の上乗せ制度を組み合わせた柔軟な制度設計を行う企業も増えてきています。

退職金金額の相場

中小企業の退職金金額は、勤続年数や退職理由、学歴によって異なります。

東京都が公表した「中小企業の賃金・退職金事情(令和4年版)」によると、従業員が10人~299人の都内中小企業を対象とした調査で、モデル退職金(※)として下記の相場が示されています。

勤続年数 学歴 自己都合退職 会社都合退職
10年 大学卒 112.1万円 149.8万
高専・短大卒 98.7万円 126.9万円
高校卒 90.7万円 122.3万円
20年 大学卒 343.1万円 414.7万円
高専・短大卒 292.4万円 346.5万円
高校卒 272.9万円 328.4万円
30年 大学卒 653.6万円 754.2万円
高専・短大卒 565.8万円 645.9万円
高校卒 532.5万円 604.6万円
定年 大学卒 1091.8万円
高専・短大卒 983.2万円
高校卒 994.0万円

参考:産業労働局|中小企業の賃金・退職金事情(令和4年版)

※モデル退職金:学校を卒業してすぐ入社した人が普通の能力と成績で勤務した場合の退職金水準

定年まで勤続した場合のモデル退職金は、大学卒が約1,091万円、高専・短大卒が983万円、高校卒が994万円でした。

退職金額は勤続年数が長いほど増え、会社都合退職のほうが高額である傾向が見られます。学歴別では大学卒がもっとも高額ですが、高専・短大卒と高校卒との差は小さく、全体的に大きな開きはありません。

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中小企業が退職金制度を導入するメリットと注意点

退職金制度は、企業の成長と従業員の満足度向上に大きく影響する制度です。一方で、注意すべき点もいくつかあります。

ここでは、退職金制度を導入する際のメリットと、導入・運用時の注意点について解説します。

メリット

退職金制度の導入には、従業員のモチベーション向上と長期定着促進というメリットがあります。退職金の見込みがあることで、従業員は安定した将来を期待し、企業への忠誠心が高まる可能性があります。

また、退職金制度は求職者にとって魅力的な条件となり、優秀な人材を確保する助けになるでしょう。中小企業は大企業に比べて給与面での競争力が弱い場合でも、退職金制度の存在が魅力を高めます。

さらに、社内積み立てではなく、外部の退職金制度を利用すると税制上のメリットもあり、掛金が損金扱いとなって節税効果が期待できます。これによって、企業の財務負担を軽減しながら、従業員の満足度の向上が可能です。

注意点

退職金制度を導入する際には、企業の財務負担が大きくなる点に注意が必要です。とくに中小企業にとって、長期的な財務計画に退職金支払いを組み込むことは大きな課題となるでしょう。複数の社員が同時期に退職すると、会社の資金繰りが厳しくなる可能性もあります。

また、一度導入した制度は容易に廃止や変更ができません。そのため、制度を作るときは慎重に検討することが大切です。制度を運営・管理するための費用や、景気の変動による財務面のリスクにも気を配る必要があります。

中小企業が利用できる退職金制度

中小企業が採用できる退職金制度には、大きく分けて社内で積み立てを行う方法と、社外の制度を活用する方法の2つがあります。

従来の社内積立方式は退職金を支給したときに初めて損金処理が可能になることに加え、積立金を運用する場合、運用に伴うリスクを企業が負うことになるため、導入のハードルが高いと言えます。一方、社外制度は掛金拠出の時点で損金処理が可能なものもあるため比較的手軽にはじめやすく、生命保険会社・信託会社などによる運用で安定性も期待できるのが特徴です。

ここでは、社外の退職金制度で代表的なものを、具体的に解説していきます。

中小企業退職金共済

中小企業退職金共済(中退共)は、国が運営する中小企業向けの退職金制度です。加入できる企業は、業種によって基準が異なります。加入できる条件は下記のとおりです。

業種 条件
一般業種 常用従業員数300人以下

または資本金・出資金3億円以下

卸売業 常用従業員数100人以下

または1億円以下

サービス業 常用従業員数100人以下

または5千万円以下

小売業 常用従業員数50人以下

または5千万円以下

参考:中小企業退職金共済事業本部|制度の概要

大きな特徴は、新規加入時の掛金減額制度(最大6万円)や、掛金の全額非課税措置(※)があることです。また、口座振替による自動納付で管理が簡単なため、独自の退職金制度をもつことが難しい中小企業でも導入しやすい仕組みとなっています。

※資本金または出資金が1億円を超える法人の法人事業税には、外形標準課税が適用される

参考:中小企業退職金共済事業本部|制度の概要

特定退職金共済

特定退職金共済(特退共)は、商工会議所や地方自治体が運営する退職金制度です。会社規模に関係なく加入でき、月額1,000円から30,000円までの範囲で掛金を選択できます。

中退共と比べてより手ごろな掛金設定が特徴ですが、給付金額が掛金額を上回るまでには中退共よりも長い期間を要します。

15歳以上70歳未満の従業員が加入可能で、使用人兼務役員も対象です。掛金は全額非課税で、過去の勤務期間も通算できる特徴があります。

中退共との併用も可能なため、従業員の福利厚生を段階的に充実させたい企業に適しています。

参考:東京商工会議所|特定退職金共済

一般財団法人 全国中小企業共済財団|特定退職金共済制度

企業型確定拠出年金(企業型DC)

企業型確定拠出年金(DC)は、企業が拠出する掛金を従業員自身が運用する制度です。個人ごとに資産が区分され、転職時の持ち運びも可能です。

掛金の上限はほかの年金制度への加入状況によります。月額55,000円または27,500円となり、2022年10月からはiDeCoとの併用も可能になりました。

従業員が自己責任で資産運用できる点や、企業側の運用リスクがない点が特徴です。従業員の資産形成意識を高めたい企業に適しています。

参考:厚生労働省|確定拠出年金制度の概要

企業年金連合会|確定拠出年金のしくみ

確定給付企業年金(DB)

確定給付企業年金(DB)は、企業があらかじめ約束した年金額を従業員に支給する制度です。

「規約型」と「基金型」があり、規約型は比較的導入しやすく運営コストも低めです。一方、基金型は従業員300人以上が対象で、独立した法人が運営します。どちらも労使合意と厚生労働大臣の承認や認可が必要です。

従業員は将来の受給額が確定しているため、安心感がありますが、企業側は運用リスクを負担する必要があります。

参考:企業年金連合会|確定給付企業年金(DB)

労働金庫連合会|確定給付企業年金(DB)

法人向け生命保険

法人向け生命保険は、企業が従業員を被保険者として契約し、退職金や死亡退職金を積み立てる方法です。毎月の保険料の支払いで計画的に資金を積み立てられるため、安定した退職金準備が可能です。

また、従業員が在職中に万が一亡くなった場合には、死亡保険金が遺族に支払われるため、死亡退職金としての機能も備えています。途中で契約を解約した場合には解約返戻金を受け取れるので、資金の流動性も確保できます。

ただし、契約初期に解約すると元本割れするリスクがある点には注意が必要です。法人向け生命保険は、資金準備とリスク管理を同時に行えるため、中小企業でも広く活用されています。

契約内容や保険商品は多くあるので、自社の財務状況や退職金計画に合ったものを選択することが大切です。

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中小企業が退職金積立方法を選ぶポイント

中小企業が退職金の積立方法を選ぶ際は、自社の経営状況や従業員のニーズに合った方法を選ぶことが大切です。

まず、退職金制度を導入する目的を明確にし、従業員のモチベーション向上や優秀な人材の確保といった効果を期待できるか検討しましょう。次に、現状の賃金体系や就業規則を確認し、制度導入が企業全体に無理なく適応できるかを判断します。

外部積立制度は、中退共や特退共、企業型確定拠出年金(企業型DC)などがあります。それぞれの特徴を理解し、自社に適した制度を選択または組み合わせることが大切です。国の助成がある中退共は導入しやすい一方、確定給付企業年金(DB)は運用リスクを企業が負うため、慎重に検討することが求められます。

また、外部積立制度の運用には手数料や管理コストが伴います。そのため、制度設計や運用計画の作成時には専門家の意見を求めることも大切です。

とくに中小企業では、資金計画を明確にし、将来的な負担を見据えた運用体制を整える必要があります。

退職金制度の見直しは行ったほうがよい?

退職金制度は、企業の成長や働き方の変化に合わせて見直しを行うことで、より効果的に機能する仕組みへと改善できます。ここでは、退職金制度を見直すメリットやタイミングについて解説します。

見直すメリット

退職金制度を見直すことで、企業にはさまざまなメリットが期待できます。

従来の年功序列型退職金制度を見直し、資産の持ち運びや成果連動型に変更すれば、転職者や若手社員に魅力的な福利厚生が整います。これにより、即戦力となる人材の採用がしやすくなるでしょう。

また、社内積立を社外積立に切り替えることで、予測可能な支払い計画を立てやすくなる点も魅力です。税制優遇も活用できるため、財務面での安定性が向上します。

さらに、60歳定年が前提の退職金制度を見直し、高年齢者雇用に対応させることで雇用延長や再雇用時の労働条件にも柔軟に対応できます。これにより、企業の競争力や従業員満足度の向上につながるでしょう。

見直すタイミング

退職金制度の見直しは、以下のタイミングで検討するとよいでしょう。

見直すタイミング 詳細
総人件費の再検討が必要な時期
  • 定年制度の変更
  • 雇用延長への対応 など
人事制度全体の改革を実施する時期 年功序列から能力主義への移行 など
人材の定着に課題が生じている時期
  • 退職者の増加
  • 従業員満足度の低下 など
採用面での課題が顕在化している時期
  • 中途採用の困難さ
  • 求人への応募減少 など

このような状況下で退職金制度の見直しを行う際は、従業員への丁寧な説明と理解を得ることが大切です。

制度変更は企業の将来と従業員の生活に大きく関わります。そのため、安易な変更は避け、社会保険労務士などの専門家に相談しながら慎重に進めましょう。

退職金制度を見直して、企業と従業員の将来を支えよう

本記事では、中小企業が利用できる退職金制度について解説しました。導入の際は、中小企業退職金共済や特定退職金共済など、多くの選択肢から企業規模や財務状況に合った制度を選ぶことが大切です。

時代の変化に応じた定期的な見直しを行うことで、従業員の満足度を高め、企業としてもさらなる成長が期待できるでしょう。

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