- 作成日 : 2023年1月13日
社会保険(公的保険)と民間保険の違いとは?
保険には、国などが運営する社会保険と民間保険があります。いずれも保険事故が発生したときに備え、多くの人が集団を作り、個人経済のリスクを分散しようとする保険方式による点は共通しています。
では、社会保険と民間保険の違いは何でしょうか。
本稿では両者の概要や種類、その相違について解説します。
目次
社会保険(公的保険)と民間保険の違いとは?
まずは社会保険(公的保険)と民間保険について、適用の仕組み、給付水準、保険原理、費用、財政方式などを比較していきましょう。
社会保険とは?
社会保険(公的保険)は、国や国が設立した公法人が運営主体(保険者)となっています。
原則として法律に基づく強制適用であり、すべての国民は加入を義務付けられています(国民皆保険・国民皆年金)。社会連帯を基本原理とし、給付水準は最低保障、従前取得の保障という特徴があります。
保険の主な財政方式には、給付に必要な費用をその都度被保険者(加入者)からの保険料で賄う賦課方式と、給付に必要な原資をあらかじめ保険料で積み立てる積立方式があります。
社会保険は、現役世代が高齢世代全体を支える「世代間扶養」の考え方から賦課方式を採用しています。被保険者本人だけでなく雇用する事業主も保険料を負担し、国や地方公共団体も費用の一部を負担しています。
民間保険とは?
民間保険は、民間企業が市場の競争原理のもとに運営しています。
契約によって加入し、脱退も自由な任意加入であり、給付水準は個人の希望と支払い能力に応じて決めることができます。
ただし、財政方式は加入者の保険料による積立方式であり、仕組みの維持は保険料の完全な積立が可能なことが前提となります。
このことから、保険料はリスクの程度に見合った額であることが求められます。「給付・反対給付の原則」が基本であり、医療保険であれば病歴のある人は保険料が高くなり、健康な人は低くなります。
希望者のリスクが非常に高く、採算が合わないと保険会社が判断した場合は保険に加入できないということもあるでしょう。
社会保険と民間保険の種類
次に、社会保険と民間保険の種類について見ていきます。
社会保険の種類
社会保険は、加入者によって大きく2種類に分けることができます。会社員のように雇用されて働く人が加入する被用者保険と、自営業者などが加入する地域保険です。
- 被用者保険
被用者保険には、以下のような種類があります。
- 地域保険
- 国民健康保険
自営業者などが加入する公的医療保険です。
- 国民年金
もともとは自営業者だけを対象としていた公的年金制度ですが、1985年からは被用者も含め、すべての国民が加入する基礎年金となっています。
- 国民健康保険
被用者保険と地域保険の他に、船員として船舶所有者に使用される者を対象とする船員保険、75歳以上の人と後期高齢者医療広域連合が認定した65歳以上の障害者を対象とする後期高齢者医療制度があります。
民間保険の種類
民間保険は、生命保険と損害保険の2種類に分けることができます。
- 生命保険
生命保険は、日常生活で起こりうる傷病、障害、死亡などのリスクに備える保険です。生命保険は、さらに以下の種類に分けられます。
- 定期保険
契約時に決めた期間だけ保障を受けられる保険で、掛け捨て保険とも呼ばれます。保険期間中に死亡した場合や、高度障害状態になった場合に保険金が支給されます。
- 養老保険
保険期間は一定で、その間に死亡した場合は死亡保険金、満期時に生存していた場合は満期保険金が支給されます。万が一の際の保障と将来必要になる貯蓄の両方を確保できるという特徴があります。
- 終身保険
一生涯保障が続き、死亡や高度障害などになれば保険金を受け取れる保険です。貯蓄性があり、満期のない養老保険ともいえます。
- 個人年金保険
60歳や65歳など、一定の年齢まで保険料を積み立て、その後は積立金をもとに年金が支給される貯蓄タイプの保険です。
- 定期保険
- 損害保険
- 自動車保険
自動車による人身事故、対物事故などに備える保険です。自動車損害賠償保障法に基づいてすべての自動車・原動機付自転車の保有者が強制加入とされる自賠責保険と、上乗せとして契約する任意保険があります。
- 火災保険
建物や家財の火災被害に備える保険です。落雷、爆発、風災・雪災、盗難などによる被害も対象となります。
- 地震保険
地震や噴火の他、これらを原因とする津波による建物・家財の被害に備える保険です。
- 傷害保険
日常生活における偶然の事故などで負傷した場合に保険金が支給されます。
- 海外旅行保険
海外旅行中の傷病、手荷物の盗難、第三者への賠償などに備える保険です。
- 自動車保険
これら以外にも民間保険があり、保険会社がさまざまな商品を開発しています。また、上記の保険商品を非営利で扱う県民共済や、こくみん共済などの共済保険という仕組みもあります。
社会保険(公的保険)と民間保険は併用可能?併用することのメリット・デメリット
社会保険と民間保険は併用できます。民間保険は、公的保険を補完する役割を果たしているといえます。
社会保険は社会連帯を基本原理とし、給付水準は生活に困らない最低限の保障であるため、民間保険でも備えておくことが大切です。
例えば、公的医療保険である健康保険や国民健康保険には自己負担分があり、費用の全額が支給されるわけではありません。例えば、差額ベッド代などは保険給付の対象外です。
民間保険にはこれらの費用を補填でき、万が一の際の出費を抑えられるというメリットがあります。
一方で民間保険を併用するデメリットとしては、公的保険の保険料以外に保険料を負担しなければならないことが挙げられます。
また、保険会社は営利企業であるため、病歴のある人は保険料が高くなります。採算が合わないと保険会社が判断した場合は、保険に加入できないケースもあります。
社会保険と民間保険の違いを知っておこう!
社会保険と民間保険の概要や種類、その違いについて解説しました。いずれも、万が一のリスクに備える保険である点は同じです。
しかし、強制保険である社会保険の保障は最低限であるため、それを補完するために民間保険を併用することは大切です。
併用する場合は公的保険の種類と給付内容を正しく理解した上で、公的保険を補完できる民間保険の商品を選びましょう。
よくある質問
社会保険(公的保険)と民間保険の違いを教えてください。
社会保険は法律で加入が義務付けられていますが、民間保険は任意加入であることなどが挙げられます。詳しくはこちらをご覧ください。
社会保険(公的保険)と民間保険は併用できますか?
併用できます。併用することで、保障が最低限である社会保険を補完することができます。詳しくはこちらをご覧ください。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
人事労務の知識をさらに深めるなら
※本サイトは、法律的またはその他のアドバイスの提供を目的としたものではありません。当社は本サイトの記載内容(テンプレートを含む)の正確性、妥当性の確保に努めておりますが、ご利用にあたっては、個別の事情を適宜専門家にご相談いただくなど、ご自身の判断でご利用ください。
関連記事
育児休業給付金とは?育休中の社会保険料についても解説!
育児休業給付金は育児休暇を取得している際に収入を補填してくれる大切な制度です。そこでこの記事では育児休業給付金の支給条件や支給期間などについて分かりやすく解説しました。また、社会保険料の免除など育休中に助かるそのほかの制度についてもお伝えす…
詳しくみる社会保険の必要書類と手続き方法を紹介! 全体の流れを解説
社会保険ではさまざまな場合で必要な届けを提出します。会社が新たに社会保険の適用を受けるとき、任意適用事業所の申請を行うとき、従業員が入社・退職するとき、家族を被扶養者にするときなどは、必要な書類とともにそれぞれ定められた届出書類の提出が必要…
詳しくみる雇用保険料とは?2022年の法改正における変更点についても解説
2022年度は、雇用保険料率が引き上げられ、雇用保険料の負担が増えます。新型コロナウイルス感染症の影響を受けて雇用保険の財政が悪化し、健全化を図る必要が生じたためです。4月は事業主負担分のみを対象とした引き上げ、10月は事業主負担分と労働者…
詳しくみる雇用保険の基本手当とは?給付額や要件を解説
「雇用保険」と聞いてまず思い浮かぶのが失業等給付の基本手当ではないでしょうか? 基本手当は、離職して失業した際に受給要件を満たすと支給されるものです。 その受給要件、受給期間や基本手当の計算に必要な賃金日額、基本手当日額、所定給付日数につい…
詳しくみる転職する従業員の社会保険手続き
従業員が転職をするときの社会保険手続きは、現在勤めている会社での社会保険喪失手続き後、転職先の会社での取得手続きの順で行われます。 転職者から回収する書類 転職のために現在の会社を退職することになった場合は、社会保険の資格喪失手続きを行いま…
詳しくみる育休(育児休業)中も住民税は支払う?税金・社会保険料は?わかりやすく解説
育児休業中で給料の支払いがなくても、住民税の納付は必要です。しかし、給料天引きできない住民税はどうやって支払えばよいのでしょうか。 本記事では、育児休業中の住民税について解説します。育児休業中の住民税の納付方法や育休終了後の手続き、住民税の…
詳しくみる