- 作成日 : 2026年7月6日
住宅手当は一軒家にも適用される?適用条件・相場・メリット・デメリットを解説
住宅手当を一軒家(持ち家)に支給するかどうかは企業が自由に設定でき、対象とする企業も存在します。
- 平均支給額は月1万8,700円
- 導入企業は全体の45.7%にとどまる
- 適用条件は雇用形態・住居形態・世帯主など
Q. 一軒家でも住宅手当はもらえる?
A. 企業の制度次第で支給可能です。持ち家を対象に含める企業もあれば、賃貸のみとする企業もあります。
「住宅手当は一軒家でも支給されるのか」「持ち家だと対象外になるのではないか」といった疑問を持つ人事担当者や経営者は少なくありません。
住宅手当は従業員の住居費を支援する法定外福利厚生であり、一軒家やマンションなどの持ち家を対象とするかどうかは企業によって異なります。そのため、賃貸のみを対象とする企業もあれば、一軒家を含む持ち家にも支給する企業もあり、制度設計の考え方を理解しておくことが重要です。
本記事では、住宅手当の仕組みや相場、持ち家・一軒家への適用条件、導入メリット・デメリット、制度設計のポイントまで人事担当者向けにわかりやすく解説します。
目次
住宅手当とは?
住宅手当とは、企業が従業員の住居費を補助するために支給する法定外福利厚生の一つです。
支給の有無や金額、対象者は企業が自由に設定できるため、賃貸住宅のみを対象にする企業もあれば、一軒家などの持ち家を含めて支給する企業もあります。
ここでは、住宅手当の相場や導入状況について解説します。
住宅手当の相場
厚生労働省「令和7年就労条件総合調査」によると、住宅手当の平均支給額は1万8,700円となっており、令和2年調査よりわずかに増加しています。
企業規模別に見ると、1,000人以上の企業では平均2万1,100円となっており、規模が大きい企業ほど支給額が高い傾向があります。
支給額の設定方法は「一律定額方式」「家賃割合連動方式」「住居種別による差額方式」など企業によって異なり、一軒家と賃貸で支給額に差をつけるケースもあります。
平均支給額はあくまで参考値であり、自社の予算・従業員構成・勤務地の家賃水準を踏まえた設定にする意識が重要です。
支給額が市場相場と大きくかけ離れている場合は採用訴求力が低下するリスクがあるため、競合他社の水準も参考にしながら設定しましょう。
住宅手当の導入状況
厚生労働省の調査によると、住宅手当を支給している企業の割合は45.7%であり、半数以上の企業では導入されていません。
近年は同一労働同一賃金への対応やテレワークの普及を背景に、住宅手当の支給条件を見直す企業が増えています。
また、現金支給による住宅手当は課税対象となるため、節税効果を重視して借り上げ社宅制度へ移行する企業もみられます。
一方で、物価上昇や住宅費負担の増加を受け、従業員支援の一環として住宅手当を新設・拡充する企業もあり、制度の見直しが活発におこなわれている状況です。
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住宅手当における適用条件の例5つ
住宅手当の支給条件は法律で定められておらず、企業が自由に設計できます。
実際には、雇用形態や住居形態、世帯構成、通勤条件などを組み合わせて対象者を決めるケースが一般的です。
ここでは、一軒家を含む住宅手当の代表的な支給条件を解説します。
①正社員・契約社員などの雇用形態であるか
住宅手当を人材確保や定着施策として位置づける企業では、正社員を中心に支給対象とするケースが一般的です。
一方で、雇用形態のみを理由に契約社員やパートを一律に対象外とすると、同一労働同一賃金の観点から問題となる可能性があります。
支給対象や支給額に差を設ける場合は、職務内容や責任範囲、配置転換の有無など合理的な理由を説明できる状態にしておく必要があります。
説明が難しい場合は、雇用形態を問わず一定条件で支給する方法も有効です。
支給対象となる雇用形態や条件は、就業規則に明記して従業員が確認できるようにしておきましょう。
②持ち家・賃貸など対象住居に居住しているか
住宅手当は賃貸住宅を対象とする企業が多く、一軒家などの持ち家を対象外とするケースも少なくありません。
背景には、賃貸住宅は毎月の家賃負担が発生する一方で、持ち家は住宅ローンを通じて資産形成につながるという考え方があります。
一方、住宅ローン返済中の従業員を支援する目的で、一軒家を含めて支給する企業もあります。
持ち家と賃貸で支給条件や支給額に差を設ける場合は、理由を就業規則に明記しておきましょう。
一軒家を対象に含めるかどうかは、従業員構成や公平性、コストのバランスを踏まえて判断する必要があります。
③世帯主・主たる生計者であるか
住宅手当では、二重支給を防ぐ目的から世帯主や主たる生計者を支給条件にする企業が多くあります。
夫婦が同じ会社に勤務している場合には、どちらか一方のみを支給対象とするケースも一般的です。
世帯主要件を設ける場合は、目的や合理性を明確にし、従業員へ説明できる状態にしておきましょう。
また、持ち家では住宅ローン契約者や名義人が世帯主かどうかを確認する運用が必要になる場合もあります。
近年は共働き世帯の増加を背景に、世帯主要件を見直す企業も増えています。
④扶養家族がいるか
扶養家族の有無や人数を支給条件に設定する企業もあります。
家族が増えるほど住居費負担が大きくなるため、扶養人数に応じて支給額を加算する制度には一定の合理性があります。
一軒家に住む従業員についても、扶養家族がいる場合のみ支給対象とする設計は、支援目的を明確にしやすい制度設計です。
ただし、扶養人数に応じて加算する場合は、想定以上に支給総額が増える可能性があるため、事前の試算が欠かせません。
家族構成の変更時の届け出ルールも、就業規則へ明記しておきましょう。
⑤勤務地から一定範囲内に居住しているか
勤務地から一定距離または一定時間圏内に居住しているかどうかを支給条件とする企業もあります。
通勤負担の軽減や遅刻・欠勤リスクの低減につながるため、制度上の合理性を説明しやすい条件です。
ただし、一軒家は転居が難しいため、距離条件によって対象外となる従業員が生じやすい点には配慮が必要です。
距離条件を設ける場合は、「勤務地から10km以内」「通勤時間60分以内」など具体的な基準を設定し、就業規則へ明記しておきましょう。
近年はテレワークの普及によって通勤頻度が減少しているため、定期的な見直しも必要です。
住宅手当を導入するメリット
住宅手当は従業員の住居費負担を直接支援できる数少ない福利厚生のひとつで、持ち家・賃貸を問わず設計次第で幅広い従業員をカバーできます。
ここでは企業側が得られる代表的な3つのメリットを解説します。
従業員の生産性が向上する
住宅手当は、従業員が安心して働ける環境づくりにつながり、生産性の向上につながる可能性があります。
また、毎月の住居費に対する不安が軽減されると、仕事への集中度やモチベーションの向上が期待できる点もメリットです。
特に、一軒家を購入して住宅ローンを抱える従業員にとっては、住宅手当が家計の負担軽減につながるため、安心して働き続けやすい環境を整えられます。
また、生活基盤が安定した従業員ほど業務へ前向きに取り組みやすく、会社への貢献意欲も高まりやすくなります。
さらに、住宅手当を雇用形態を問わず適用している企業では、職場全体の一体感が生まれやすく、組織全体の生産性向上にもつながります。
離職防止につながる
住宅手当は従業員の定着を促し、離職防止に寄与する制度です。
一軒家を購入した従業員は住宅ローンという長期的な固定費を抱えるため、住宅手当が長期的な定着を後押しする要因の一つです。
また、結婚や出産、一軒家の購入などライフステージの変化に合わせて住居費を支援すると、会社が従業員の生活に寄り添う姿勢を示しやすくなります。
人材が定着すると業務の安定やノウハウの蓄積につながるほか、新人育成コストの削減にも寄与します。
離職率の低下は採用コストの削減にもつながるため、住宅手当への投資は中長期的に回収しやすい施策です。
採用面でアピールできる
住宅手当は採用活動における差別化要素となり、応募者への訴求力向上につながります。
求人票に「住宅手当あり」と記載すると他社との差別化につながり、住居費の負担が大きい若手層や住宅購入を検討している世代への訴求力も高まりやすくなります。
また、持ち家の従業員も対象に含める制度設計は、住宅手当を導入していない企業との差別化につながるほか、「従業員の生活を支える企業」というイメージ形成にも有効です。
地方出身の若手や転勤を伴う採用では、住居費の補助によって入社への心理的ハードルが下がり、採用エリアの拡大も期待できます。
採用面でのメリットは早期離職の防止にもつながるため、住宅手当は採用・育成コストを抑える施策としても位置づけられます。
住宅手当を導入するデメリット
住宅手当はメリットが多い一方、導入・運用には事前に把握しておくべき課題もあります。
ここでは代表的な3つのデメリットを解説します。
管理・運用コストがかかる
住宅手当は給与として支給されるため、所得税や社会保険料への対応が必要です。
また、一軒家か賃貸か、世帯主かどうかなどの条件確認や書類管理も継続的に発生します。
住居変更や家族構成の変化を把握できないと、誤支給や過払いにつながる可能性があります。
支給条件を整理し、申請フローや更新手続きを整備しておきましょう。
一度導入すると廃止が難しい
住宅手当は労働条件の一部として扱われるため、廃止や減額は不利益変更に該当する可能性があります。
特に、一軒家を購入した従業員は住宅手当を前提に住宅ローンを組んでいるケースもあり、影響が大きくなりやすい傾向があります。
廃止を検討する場合は、段階的な縮小や代替制度の提示など慎重な対応が必要です。
導入前に長期的な継続可能性を十分に検討しておきましょう。
公平な支給基準の設計が難しい
賃貸のみを対象とすると、「なぜ一軒家は対象外なのか」という不満が生まれる場合があります。
また、世帯主のみ対象、正社員のみ対象など条件を増やすほど制度が複雑になりやすくなるため注意が必要です。
条件が複雑になると、従業員自身が対象かどうかを判断しにくくなり、問い合わせや不満につながる場合があります。
制度の目的を明確にしたうえで、できるだけシンプルな基準を設計しましょう。
住宅手当導入時のポイント
住宅手当は制度設計だけでなく、社内への周知・申請手続きの整備・運用管理の効率化という3つの観点を合わせて整備すると、制度が形骸化せず機能しやすくなります。
ここでは導入後に担当者がつまずきやすいポイントを解説します。
社内への周知・通知を徹底する
制度を導入しても従業員が内容を知らなければ十分に活用されません。
一軒家の従業員が対象かどうかを判断しやすいよう、Q&Aやフローチャートを作成しておくと効果的です。
入社時の説明や社内ポータル、社内報など複数の手段を活用して周知をおこないましょう。
会社として重要な制度である旨を継続的に発信する取り組みも大切です。
申請手続きをわかりやすくする
申請手続きが複雑になると、利用率の低下につながります。
必要書類を住居形態ごとに整理し、一軒家の場合は住宅ローン関連書類、賃貸の場合は賃貸借契約書などを明示しておくとよいでしょう。
オンライン申請やペーパーレス化を進めると、従業員と担当者双方の負担を軽減できます。
また、年1回程度の更新制度を設けておくと、住居状況の変化を把握しやすくなります。
運用・管理が煩雑にならないようにする
住宅手当は継続的な管理が必要な制度です。
住居形態や家族構成の変更を申告する仕組みを整えておくと、誤支給を防ぎやすくなります。
給与システムとの連携や運用マニュアルの整備によって、担当者が変わっても安定した運用を継続できます。
また、一軒家への転居や同居など判断が難しいケースをQ&A化しておく取り組みは、運用の属人化を防ぐ有効な施策です。
定期的に支給状況や従業員満足度を確認しながら制度を見直すように心がけましょう。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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