- 更新日 : 2026年1月28日
週20時間で社会保険加入になる?条件やシミュレーション、手順など解説
「パートのシフトを週20時間以内に抑えるべきか?」「社会保険料はいくらか?」 2024年10月の法改正で51人以上の企業まで適用が拡大され、2025年以降は全企業への導入も議論されています。
「106万円の壁」などの複雑なルールを理解しておかないと、思わぬ損や法的リスクを招きかねません。 本記事では、週20時間勤務における社会保険加入の5つの条件から、月収不足やダブルワークなどの例外ケース、具体的な保険料シミュレーションまで、疑問を解消できるよう網羅的に解説します。
目次
週20時間以上の勤務で社会保険に加入になる?
週20時間を超えただけでは直ちに加入とはなりませんが、企業規模や賃金などの条件が揃えば「強制加入」となります。
パートやアルバイトであっても、週20時間以上の契約で働き、かつ一定の要件(後述する5つの条件)をすべて満たす場合は、社会保険(健康保険・厚生年金保険)への加入が法律で義務付けられています。 これは「社会保険の適用拡大」と呼ばれる制度によるもので、対象者は年々広がっています。「入りたくないから」という個人の理由で加入を拒否することは原則としてできません。
加入が義務化される基本ルール
社会保険の適用拡大における大原則は、「所定労働時間が週20時間以上」を含めた5つの要件をすべて満たした場合に加入対象となるという点です。 逆に言えば、週20時間以上働いていても、賃金要件や企業規模要件など、他の条件が一つでも欠けていれば加入義務は発生しません。
ただし、要件は年々緩和(対象拡大)されているため、最新のルールを確認する必要があります。
週20時間未満契約の注意点
基本的には雇用契約書上の「所定労働時間」で判断しますが、契約は週20時間未満でも、実態として恒常的に週20時間を超えて勤務している場合は注意が必要です。
実態が契約と大きく乖離していると、実質的な労働契約の変更とみなされ、遡って加入指導を受けるリスクがあります。
特に契約更新時や、数ヶ月連続で超過が続く場合は、契約内容の再確認と適正化が求められます。
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週20時間以上の勤務で社会保険の加入対象になる条件とは?
週20時間以上の勤務に加え、賃金・期間・企業規模など5つの要件すべてが揃えば、本人の希望に関わらず社会保険への加入が義務となります。
パートやアルバイトであっても、法律で定められた明確な基準(5つの要件)をすべて満たす場合は強制加入です。一つでも該当しなければ対象外ですが、年々適用範囲が拡大しているため、労働時間だけでなく賃金や企業規模を含めた総合的な確認が必要です。
労働条件に関する要件(時間・賃金・期間)
まず、雇用契約の内容が以下の3点すべてに該当するかを確認します。特に「週20時間」と「月8.8万円」はセットで管理すべき指標です。
- ① 週の所定労働時間が20時間以上:雇用契約書等の書面で約束されている「週の所定労働時間」が20時間以上であること。
- ここがポイント: 突発的な残業時間は含みません。あくまで契約上の時間です。
- 注意点: 契約が20時間未満でも、実態として恒常的に超えている場合は加入指導の対象になります。
- ② 月額賃金が8.8万円以上:基本給および諸手当を含んだ賃金が、所定内賃金として月額88,000円以上であること。
- ③ 2ヶ月を超える雇用の見込みがある:雇用契約期間が2ヶ月を超える場合、または更新によって2ヶ月を超えると見込まれる場合。
- 判定基準: 当初から「更新あり」とされている場合や、同様の契約者が更新されている実績がある場合は、入社初日から加入対象です。
本人の属性と企業規模の要件(学生・事業所)
労働条件を満たしていても、学生である場合や、勤務先の規模が小さい場合は対象外となることがあります。
- ④ 学生ではない:高校生、大学生、専門学校生などは原則対象外です。
- 例外(加入対象): 休学中の学生、夜間学部生、定時制課程の学生、卒業後も継続勤務が決まっている内定者など。
- ⑤ 特定適用事業所(企業規模要件)に該当する:勤務先の企業が、社会保険の適用拡大対象の規模であること。
- 2024年10月〜: 厚生年金の被保険者数が51人以上の企業。カウント対象には、現在の被保険者だけでなく、適用拡大によって新たに加入対象となるパート従業員等も含みます。
- 今後について:2027年10月以降段階的に要件が緩和され、2035年10月には企業規模要件が撤廃される見通しです。
※50人以下でも、労使合意があれば現時点から任意加入が可能です。
週20時間勤務で判断に迷うケースだと社会保険はどうなる?
「週20時間」のライン上がもっとも判断に迷いやすいポイントです。賃金不足・変動・掛け持ちの3つのケースについて回答します。
週20時間以上だが月収8.8万円未満
5つの要件をすべて満たさないため、加入義務はありません。
時給が最低賃金に近い場合などは、週20時間以上働いていても計算上の月給が8.8万円に届かないことがあります。加入要件は「時間」と「賃金」の両方を満たす必要があるため、この場合は社会保険の対象にはなりません。
- 判定例: 時給1,000円 × 週20時間 × 12分の52 = 約86,600円
- 結論: 月8.8万円未満のため、加入不可。
週20時間を超えたり下回ったりする場合
原則は「契約書」で判断しますが、実態が常態化していれば加入が必要です。
基本的には雇用契約書の「所定労働時間」で判定するため、繁忙期のみ一時的に週20時間を超えるだけであれば加入は不要です。
ただし、契約と実態が大きく異なり、「直近2ヶ月連続して週20時間を超え、今後も続くと見込まれる」ような場合は、3ヶ月目から加入させる実務運用が一般的です。
- 対応策: 毎月の勤怠を確認し、超過が続くようであれば雇用契約書を書き換えて加入手続きを行います。
ダブルワークで合計20時間を超える場合
合算はせず、それぞれの会社単体で加入要件を満たすか判断します。
例えば「A社で週15時間」「B社で週10時間」の場合、合計は25時間ですが、どちらの会社も単独では「週20時間」の要件を満たしません。したがって、どちらの会社でも社会保険には加入できません。
- 例外: 両方の会社でそれぞれ加入要件(週20時間以上かつ月8.8万円以上など)を満たした場合は、本人が「二以上事業所勤務届」を提出し、両方で加入(保険料を按分)します。
【シミュレーション】週20時間勤務の社会保険料はいくら?
「社会保険に入ると手取りが減る」というのは事実です。では、具体的にいくら引かれ、どのくらい働けば元が取れるのでしょうか。
東京都の料率(令和7年度目安・40歳未満・介護保険なし・東京都)を基準に、もっとも一般的な「月収8.8万円(年収106万円)」のケースで算出します。
月収8.8万円での保険料と手取り額
月額約12,400円が天引きされ、手取りは年間で約15万円減少します。
加入要件ギリギリのライン(標準報酬月額8.8万円)で社会保険に加入した場合、毎月の給与から以下の保険料が控除されます。
| 項目 | 金額(月額目安) |
|---|---|
| 健康保険料(本人負担) | 約4,400円 |
| 厚生年金保険料(本人負担) | 約8,000円 |
| 合計控除額 | 約12,400円 |
- 加入前: 月88,000円(住民税等は考慮せず)
- 加入後: 月約75,600円
- 結論: 手元に残るお金は月1万円以上減り、年間では約15万円の減収となります。
手取りが回復する損益分岐点
減った手取りを取り戻すには、年収約125万円まで労働時間を増やす必要があります。
社会保険料による年間約15万円の手取り減少分をカバーし、加入前と同じ手取り額を確保するには、年収を約125万円(月収約10.5万円)まで引き上げる必要があります。
- 働き損ゾーン: 年収106万円〜125万円の間は、働いて収入を増やしても、保険料負担で手取りが加入前を下回る状態になります。
- 対策: このゾーンを避けるため、「労働時間を週20時間未満に抑える」か、逆に「時間を延ばして年収126万円以上を目指す」かの選択が迫られます。
週20時間の社会保険適用で企業ができる対策や助成金の活用法とは?
政府の「年収の壁・支援強化パッケージ」を積極的に活用し、従業員の手取り減少を補填することが最適解です。
「手取りが減るならシフトを減らしたい」という従業員の就業調整(働き控え)は、企業にとって深刻な人手不足の原因になります。これを防ぐため、助成金を活用して「手取りを減らさない仕組み」を導入する必要があります。
最大50万円支給「キャリアアップ助成金」
社会保険適用時に手取りを減らさないための手当支給や賃上げを行った企業へ、従業員1人あたり最大50万円が助成されます。
新たに社会保険に加入する従業員に対し、その負担を軽減する取り組みを行うと、「キャリアアップ助成金(社会保険適用時処遇改善コース)」が支給されます。
- 活用メニュー: 「社会保険適用促進手当」として、従業員の保険料負担分を会社が一時的に肩代わり(給与上乗せ)します。
- メリット: 助成金を原資にすれば、企業の実質的な持ち出しなしで、従業員の手取り額を維持・補填することが可能です。
保険料が増えない「適用促進手当」
手取り補填のために出した手当は、最大2年間、保険料計算の対象外(標準報酬月額から除外)にできます。
通常、手当を支給して給与総額が上がると、それに連動して社会保険料も高くなります。しかし、「社会保険適用促進手当」として支給した分については、社会保険料の計算基礎(標準報酬月額)に含めなくて良いという特例があります。
- 期間: 最大2年間適用されます。
- メリット: 手当を出して額面給与が増えても、保険料は「加入時の低い等級」のまま固定できるため、効率的に手取り額を確保できます。
出典:社会保険適用促進手当に関するQ&A 【制度について】|厚生労働省
週20時間超の対象者が出た際の社会保険加入手続きとは?
対象となる従業員が発生した場合、会社(事業主)は速やかに「被保険者資格取得届」を作成し、管轄の年金事務所へ提出する必要があります。
加入漏れがあると、後から最大2年間遡って保険料を徴収される(遡及適用)という重大なリスクがあるため、以下の4ステップに従い、遅滞なく手続きを行ってください。
ステップ1:対象者の特定(スクリーニング)
給与計算ソフトや勤怠データを用い、「所定労働時間」と「所定内賃金」の2軸で候補者を抽出します。
法改正のタイミングや契約更新時期(年度末など)の前に、全従業員の契約状況を洗い出します。特に「月額8.8万円」の判定には細心の注意が必要です。
- 労働時間の確認: 雇用契約書上の「週所定労働時間」が20時間以上になっている者をピックアップします。
- 賃金の確認(月額8.8万円): ここでの賃金は、総支給額ではありません。「基本給」と「諸手当」のみで計算し、以下の項目は除外して判定してください。
- 除外対象:残業代(時間外労働手当)、通勤手当(交通費)、精皆勤手当、家族手当、賞与など。
- 判定例: 総支給10万円でも、交通費1.5万円を含んでいる場合は「8.5万円」となり、対象外の可能性があります。
ステップ2:従業員への説明・意向確認(面談)
加入は義務であることを伝えた上で、「働き方をどう変えるか」を相談し、記録に残します。
対象者に対し、個別に面談の場を設けます。「手取りが減る」というネガティブな面だけでなく、社会保険加入のメリットを必ずセットで説明してください。
- 伝えるべきメリット
- 将来受け取る年金(老齢厚生年金)が増える(2階建てになる)。
- 病気やケガで休んだ際に「傷病手当金」が受給できる。
- 障害がある状態になった場合、「障害厚生年金」が上乗せされる。
- 会社が保険料の半分を負担してくれる。
- 意向の確認と対応: 本人が「どうしても扶養内で働きたい(手取りを減らしたくない)」と希望する場合は、労働時間を週20時間未満に抑える契約変更が必要です。
- 重要: 「要件を満たしているが加入手続きはしない」という選択肢は違法となるため、絶対に避けてください。面談記録を残しておくと、後のトラブル防止になります。
ステップ3:資格取得届の提出
加入要件を満たした日から「5日以内」に、年金事務所へ届出を行います。
加入の方針が決まったら、速やかに公的な手続きを行います。
- 提出書類: 健康保険・厚生年金保険 被保険者資格取得届
- 提出先: 事業所を管轄する年金事務所(または事務センター)
- 提出方法: 窓口持参、郵送、または電子申請(e-Govなど)。
- 添付書類:添付書類は原則不要です。
- 注意点: 60歳以上で定年再雇用された場合など、特殊なケースでは添付書類(就業規則の写し等)が必要になることがあります。
ステップ4:給与計算への反映と通知
保険料の控除開始月を設定し、本人に標準報酬月額を通知します。
手続き完了後、年金事務所から「標準報酬決定通知書」が届きます。これに基づき、給与計算システムの設定を変更します。
週20時間勤務の社会保険適用を人材確保のチャンスに変えるために
週20時間以上の勤務における社会保険の適用拡大は、企業にとってコスト増となる一方で、従業員の定着率向上や求人競争力の強化につなげるチャンスでもあります。現在は51人以上の企業で「週20時間かつ月額8.8万円以上」が加入のボーダーラインですが、要件は段階的に緩和される見込みです。
「手取りが減るから損をする」という現場の誤解を解くためには、将来の年金増額などのメリットを丁寧に説明し、政府の助成金活用などで手取り減少を補填する対策が欠かせません。
また、ダブルワークや収入要件などの例外ケースを正しく理解し、誤った未加入扱いを防ぐコンプライアンス意識も重要です。これからの人事労務担当者には、単に事務手続きを行うだけでなく、従業員に最適な働き方の選択肢を提示するコンサルタントのような役割が求められています。まずは自社のパートタイマーの現状把握と、助成金活用の検討から始めてみましょう。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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