• 更新日 : 2026年7月2日

人材戦略とは?人事戦略との違いや立て方・フレームワークを解説

Point人材戦略はどのような手順で立てればよいのか?

経営戦略と人材の状況を結びつけ、必要な人材像の定義から施策の実行まで段階的に進めます。

  • 経営戦略から必要な人材像を定義し、現状をデータで把握する
  • 理想と現状のギャップを数値化し、採用・育成・配置・定着を決める
  • 施策ごとにKPIを設定し、四半期や半期ごとに見直す

有価証券報告書では、経営戦略とつながる人材育成方針や指標の開示が求められます。

戦略 内容
SO戦略(強み×機会) 組織のもつ優れたリソースや能力を活用して、外部環境の成長のチャンスを最大限に活かす戦略
WO戦略(弱み×機会) 組織の改善点を強化しながら、外部の新たなチャンスを利用する戦略
ST戦略(強み×脅威) 自社の強みを活かし、外部からのリスクや競争に対して適切に対応する戦略
WT戦略(弱み×脅威) 組織の弱点を克服し、外部の脅威から受けるダメージを最小化するための戦略

TOWS分析を活用することで、組織は人材関連の強みや課題を、採用市場や事業環境の変化とあわせて整理できます。これにより、変化に柔軟に対応できる行動計画を立案可能です。

目次

人材戦略とは、経営目標を実現するための人材活用方針

人材戦略とは、企業が経営目標を達成するために、人材の確保・育成を計画的に行う方針や手法です。

企業が成長を続けるためには、従業員のスキルや経験を把握し、必要な部署や役割に合わせて活用する必要があります。とくに、生産年齢人口の減少や、市場環境の変化に対応するには、採用だけで人材を補うのではなく、既存社員の育成や配置転換も含めて考えることが大切です。

たとえば、以下のような例が挙げられます。

  • 必要なスキルを持った人材の採用
  • 効果的な研修やキャリア形成の支援
  • モチベーションを高める報酬制度の整備

また、人事データの分析や市場動向の把握も、効果的な人材活用に貢献します。

このように、人材戦略は従業員の能力を最大限に引き出し、企業の競争力強化と成長を支える要素の一つです。

人事戦略との違い

人材戦略と人事戦略は、目的や範囲に違いがあります。

人材戦略は、企業が必要とするスキルや専門性を持つ人材を確保・育成し、経営目標の達成につなげる戦略です。一方で人事戦略は、採用や育成、評価、配置、労務管理など、従業員に関わる施策全体を対象としています。

人材戦略は人事戦略と重なる部分がありますが、経営目標に合わせて必要な人材やスキルを整理する点に特徴があります。人事戦略は、その人材をどのように採用し、育成し、評価するかを具体的に設計する考え方です。

このように、人材戦略は「どの事業に、どのような人材が必要か」を考えるもの、人事戦略は「その人材をどう確保し、活用するか」を整えるものと整理できます。

経営戦略との違い

人材戦略と経営戦略は、目的や対象が異なります。

経営戦略は、企業が中長期的に成長するために、事業の方向性や資金・人材などの配分を決める戦略です。一方で人材戦略は、その経営戦略を実現するために、必要な人材の確保・育成・配置に焦点を当てています。

経営戦略では、市場でのポジショニングや製品・サービス開発などを含みますが、人材戦略はそれを支えるための人的資源の最適化を目指している点が特徴です。

人材戦略は経営戦略を成功させるための重要なサポート役といえます。

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人材戦略が重視される背景

人材戦略は、企業が持続的に成長し、競争力を維持するために欠かせない要素です。ここでは、人材戦略の重要性について解説します。

人材不足により採用だけでは成長しにくい

総務省統計局の人口推計によると、2025年12月1日時点の15〜64歳人口は7,354万7,000人で、前年同月より19万4,000人減少しています。

少子高齢化により人口が減少するなか、企業が必要な人材を外部採用だけで確保することは難しくなりつつあるのが現状です。採用できる人数や予算に限りがある状態で人を増やす方法だけに頼ると、事業拡大や新規施策に必要な人材が不足する可能性があります。

そのため、既存社員のスキルを把握し、必要な部署や役割に合わせて育成・配置する視点が大切です。経営環境の変化に対応するには、採用だけでなく、育成や配置まで含めて人材戦略を考える必要があります。

参考:人口推計(2025年(令和7年)12月令和2年国勢調査を基準とする確定値、2026年(令和8年)5月概算値) (2026年5月20日公表)|総務省統計局

人材の定着と育成が企業価値に影響する

人材の定着と育成は、採用コストや教育負担だけでなく、社内に知識やノウハウを蓄積するうえでも重要です。

採用した社員が短期間で離職すると、教育にかけた時間が再び発生し、残った社員の業務負担も増えます。新人が独り立ちする前に退職すれば、教える側は通常業務と次の育成を並行しなければなりません。

そのため、人材戦略では社員を企業の成長を支える資本と捉え、育成・配置・評価をつなげて考える必要があります。

有価証券報告書で人的資本開示が求められる

人材戦略が重視される背景には、有価証券報告書で人的資本や多様性に関する情報開示が必要になったことがあります。

2023年3月期決算企業から、有価証券報告書を提出する企業は、売上や利益などの財務情報だけでなく、人材育成や働く環境づくりに関する方針も示すことになりました。人的資本に関する項目では、人材育成方針や社内環境整備方針、それらに関する指標や目標を記載します。

そのため、人材戦略は社内の人事施策にとどまらず、企業が人材をどのように育て、働きやすい環境を整えているかを投資家などに説明するうえでも重要です。

人材戦略の4本柱

人材戦略の4本の柱とは、組織の目標達成に向けて人材を効果的に活用するための基本的な要素で、採用・育成・定着・配置の4つを指します。

1. 採用

採用では、経営目標に合わせて、必要なスキルを持つ人材を必要な人数だけ確保することが重要です。中期・長期の事業計画をもとに、どの部署で、どのような経験やスキルを持つ人材が必要かを明確にします。

職務要件を具体化することで、求める経験やスキルに合う候補者を見極めやすくなります。また、採用チャネルを組織の特性に合わせて選ぶことで、より多くの候補者にアプローチでき、質の高い人材の確保が可能です。

採用方針を経営目標とそろえることで、事業に必要な人材を確保しやすくなります。

2. 育成

育成は、従業員が業務に必要なスキルを身につけ、役割に合わせて働けるようにする取り組みです。未経験者や中途採用者に対しては、自社の戦略や担当業務に合わせた育成を行うことで必要なスキルを補完し、組織に適応できるようサポートすることが求められます。

たとえば、研修やメンタリングでは、従業員の強みを伸ばすだけでなく、業務上不足している知識やスキルを補うことも重要です。職場での人間関係の構築を支援することも、成長を促進する要素となります。

さらに、リーダーシップ開発プログラムを通じて、将来のリーダーを育成することも欠かせません。継続的な学習と評価を行い、従業員の成長を支援することで、事業環境の変化に対応しやすい人材を育てやすくなります。

3. 定着

少子高齢化により採用できる人材が限られるなかでは、採用費や教育にかけた時間を活かすためにも、従業員の退職を防ぐ「定着」が重要です。

従業員に長く働いてもらうには、不満を早めに把握し、定着率を向上させるための施策が求められます。具体的には、定期面談や従業員サーベイで悩みを確認し、キャリアパスの提示や働きやすい職場環境の整備につなげましょう。

従業員が長く働ける体制を整えることで、業務知識やノウハウが社内に残り、採用や育成を繰り返す負担も抑えやすくなります。

4. 配置

人材を適材適所に配置することで、従業員は経験やスキルを活かしやすくなり、組織内の役割分担も明確になります。適切な役割に割り当てることで、新しい業務や責任ある仕事を経験する機会にもなります。

人事異動や部署の再編では、会社の方針を反映させつつ、従業員のスキルや興味と組織のニーズを照らし合わせることが重要です。配置後は、パフォーマンス評価やフィードバックを通じて、担当業務や役割が合っているかを定期的に見直します。

本人の強みや希望を踏まえて配置を見直すことで、役割への納得感が生まれやすくなり、組織全体の業務も進めやすくなるでしょう。

人材版伊藤レポートで示された3つの視点・5つの共通要素

人材版伊藤レポートの3つの視点・5つの共通要素は、人材戦略を経営戦略と結びつけて考えるための観点です。経営戦略と人材戦略のずれを確認しておくと、採用・育成・配置・働き方などの施策を目的が曖昧なまま進める状態を避けやすくなります。

人材版伊藤レポートの内容や人的資本経営との関係を詳しく知りたい場合は、関連記事も参考にしてください。

3つの視点とは

人材戦略を進める際は、採用、育成、配置、評価などの施策を個別に考えるだけでなく、経営方針とのつながりや、あるべき姿と現状の差を整理することが大切です。

人材版伊藤レポートの3つの視点を押さえることで、育成や配置、評価を経営戦略に合わせて見直しやすくなるでしょう。

1. 経営戦略と人材戦略を連動させる

経営戦略と人材戦略を連動させるとは、経営戦略で掲げる事業の方向性に合わせて、必要な人材やスキルを整理し、配置や育成の方針を決める考え方です。

たとえば海外展開を進めるなら、語学力や現地商習慣に詳しい人材を採用・育成し、海外事業を担う部署へ配置する流れを考えます。採用や育成、配置の方針は人事部門だけで決めず、経営陣が事業の方向性と人材面の課題をすり合わせることが重要です。

実行時は、不足しているスキルや人員数を整理し、採用数、育成状況、配置後の成果などを指標にして進捗を確認します。

2. 現状と理想のギャップを数値で把握する

現状とあるべき姿のギャップを数値で把握するとは、経営目標の達成に必要な人材の人数やスキルと、現在の人員体制との差を確認する考え方です。

たとえば、新規事業に専門人材が30人必要なのに現在10人しかいない場合、不足人数は20人です。あわせて、必要なスキルを持つ社員がどの部署にいるかも確認します。

不足している人数やスキルを数値で整理すると、採用や育成、配置で優先すべき課題が見えやすくなります。採用人数や育成人数、スキルを持つ社員数などの指標を決め、定期的に進捗を確認しましょう。

3. 人材戦略を企業文化として定着させる

人材戦略を企業文化として定着させるとは、企業が大切にする価値観や行動基準を、採用基準や研修内容、評価項目に反映する考え方です。人材版伊藤レポート2.0では、企業文化は人材戦略の実行を通じて形づくられるものだとされています。

たとえば挑戦を重んじる企業であれば、新規提案や改善活動に取り組んだ行動を評価に反映し、研修でも新しい業務に挑戦する機会を設けます。

経営理念やパーパスを掲げるだけでなく、管理職の声かけや目標設定、評価面談にも反映させることで、価値観が日々の行動に結びつきやすくなるでしょう。従業員サーベイや面談で浸透状況を確認し、採用基準や評価項目を見直すことも大切です。

5つの共通要素とは

5つの共通要素は、人材戦略を施策に落とし込む際に確認したい項目です。人材の配置や確保、知識・経験の多様性、学び直し、従業員の意欲、働き方を確認しましょう。これらを整理すると、自社に足りない人材やスキル、整えるべき職場環境を把握しやすくなります。

1. 動的な人材ポートフォリオを設計する

動的な人材ポートフォリオとは、どの部署にどのようなスキルや経験を持つ人材が何人いるかを把握し、経営戦略に合わせて見直す考え方です。

たとえば新規事業を広げる場合は、企画、営業、デジタル領域の人材が足りているかを確認します。不足している場合は、採用で補うのか、既存社員の育成や配置転換で対応するのかを整理します。

事業環境が変わっても人材戦略を見直せるよう、現状の人材情報と将来必要な人材を定期的に確認することが大切です。

2. 知・経験のダイバーシティ&インクルージョンを進める

知・経験のダイバーシティ&インクルージョンとは、経営戦略に必要な知識や経験を持つ人材を集め、それぞれの視点を事業に活かす考え方です。

海外事業を進める企業では、外国人材や海外勤務経験のある社員を登用し、現地の商習慣や顧客理解を事業に活かします。会議では発言する人が偏らないようにし、専門知識や経験を持つ社員を責任ある役割に置くことも必要です。

知識や経験の異なる人材が意見を出しやすい環境を整えることで、顧客ニーズの変化に気づきやすくなり、新しい提案や業務改善につながりやすくなります。

3. リスキル・学び直しを支援する

リスキル・学び直しとは、デジタル化や新規事業など、事業の変化に合わせて従業員が新しい知識やスキルを身につける取り組みです。

紙中心の業務をデジタル化する場合、ITツールの使い方やデータの扱い方を学ぶ必要があります。企業は従業員任せにせず、自社に足りないスキルを整理し、研修や学習時間を用意することが大切です。

学んだスキルを業務で使えるようにするには、担当業務や配置、評価項目にも反映する必要があります。

4. 従業員エンゲージメントを高める

従業員エンゲージメントを高めるとは、従業員が企業の理念や経営方針を理解し、自分の役割に納得して働ける状態を作ることです。

経営層が事業方針を伝えるだけでなく、1on1やキャリア面談で業務上の悩みや希望を聞き、担当業務や育成計画に反映します。従業員の意見を施策に反映する流れがあると、仕事への納得感が生まれやすくなります。

従業員サーベイや面談で状態を確認し、評価制度や育成計画、職場環境を見直すことも大切です。

従業員エンゲージメントの意味や低下した場合の影響、具体的な高め方を詳しく知りたい場合は、関連記事も参考にしてください。

5. 時間や場所にとらわれない働き方を整える

時間や場所にとらわれない働き方を整えるとは、業務内容に合わせて、リモートワークやフレックスタイム制、時差出勤を使える状態にすることです。

たとえばフレックスタイム制を使えると、始業・終業時刻を調整しやすくなり、育児・介護・通院などと仕事を両立しやすくなります。ただし、勤務状況の把握や評価基準が曖昧なままだと、制度が使われにくくなる可能性があります。

制度を定着させるには、成果の確認方法や連絡ルール、会議の進め方を見直し、リモートワークと出社勤務の比率を業務内容に合わせて決めましょう。

人材戦略の3つのフレームワーク

人材戦略のフレームワークは、企業の目標達成に向けて必要な人材を効果的に確保し、育成・活用するための基本的な構造です。フレームワークを導入することで、組織は戦略的な人事施策を計画・実行し、持続的な成長と競争力の強化を実現できます。

1. SWOT分析

SWOT分析は、人材戦略に使えるフレームワークです。組織の現状を、以下の4つの要素で整理・評価します。

要素 内容
強み
(Strength)
内部要因で有利に働く特長や資源 経験豊富なスタッフや高い技術力
弱み
(Weakness)
内部要因で改善が必要な点 技術革新への遅れや人的リソースの不足
機会
(Opportunity)
外部環境における成長のチャンス グローバル市場への進出や新たな技術の普及
脅威
(Threat)
外部環境における潜在的なリスクや障害 新規競争者の出現や法規制の変更

SWOT分析により、組織は人材関連の強みと課題、外部環境の変化を整理できます。整理した内容をもとに、採用・育成・配置で優先すべき取り組みを考えやすくなります。

2. TOWS分析

TOWS分析は、SWOT分析の結果をもとに強み・弱み・機会・脅威を組み合わせ、具体的な施策を考えるための手法です。人材戦略では、自社の強みをどう活かすか、弱みをどう補うかを整理しやすくなります。

TOWS分析では、SWOT分析で整理した強み・弱み・機会・脅威を掛け合わせた「TOWSマトリクス」を使い、採用・育成・配置で取るべき施策を考えます。

戦略 内容
SO戦略(強み×機会) 組織のもつ優れたリソースや能力を活用して、外部環境の成長のチャンスを最大限に活かす戦略
WO戦略(弱み×機会) 組織の改善点を強化しながら、外部の新たなチャンスを利用する戦略
ST戦略(強み×脅威) 自社の強みを活かし、外部からのリスクや競争に対して適切に対応する戦略
WT戦略(弱み×脅威) 組織の弱点を克服し、外部の脅威から受けるダメージを最小化するための戦略

TOWS分析を活用することで、組織は人材関連の強みや課題を、採用市場や事業環境の変化とあわせて整理できます。これにより、変化に柔軟に対応できる行動計画を立案可能です。

3. ロジックツリー分析

ロジックツリー分析は、課題や目標をツリー状に分解し、原因や目標達成などを整理するためのフレームワークです。複雑な課題を細分化し、各要素のつながりを確認しやすくなります。

たとえば、人材戦略では、従業員の離職率が高い原因を「待遇」「業務量」「人間関係」「キャリアの見通し」などに分けた整理が可能です。

ロジックツリー分析を通じて、課題の原因を深く理解し、優先すべき施策や効果的な解決策を導き出せます。

人材戦略の基本的な立て方・流れ

人材戦略を立てる際は、経営戦略と人材の状況を切り離さずに整理することが大切です。必要な人材像を決め、現状をデータで把握すると、採用・育成・配置・定着の施策を考えやすくなります。

1. 経営戦略から必要な人材像を決める

人材戦略を立てる際は、まず経営戦略で目指す方向性を確認しましょう。新規事業や海外展開、DXなど、経営戦略によって必要なスキルや経験は変わります。

まずは、経営層との意見交換を通じて戦略の方向性を把握し、その実現に必要な人材を明確に定義することが重要です。求める人物像は、担当する業務や必要なスキル、経験、役割まで具体的に決めておくことが大切です。

2. 現在の人材データを集める

必要な人材像を決めたら、現在の社員のスキルや経験、配置状況を集めます。現状を把握しないまま施策を進めると、採用や育成で優先すべき課題が見えにくくなります。

具体的には、社員ごとの担当業務、保有スキル、経験年数、資格、評価結果などを確認しましょう。集めたデータをもとに、必要な人材像に対して不足しているスキルや、特定の部署に人材が偏っていないかを整理します。

現在の人材データを確認することで、採用・育成・配置のどこから見直すべきかを判断しやすくなります。

3. 理想と現状のギャップを数値で把握する

人材戦略を進める際は、経営戦略の実現に必要な人数やスキルと、現在の組織の状態を比較しましょう。差を数値で把握すると、採用・育成・配置のどこを見直すべきか判断しやすくなります。

たとえば、3年後に必要な管理職候補数と、現在要件を満たす社員数を比較すると、育成や採用で補う人数の把握が可能です。あわせて、部署ごとの人員数や保有スキル、経験年数、離職率なども確認します。

組織文化や職場環境の課題を見る場合は、従業員サーベイや面談結果を確認します。集めたデータをもとに、採用で補う人数や育成が必要なスキル、配置を見直す部署を整理しましょう。

4. 採用・育成・配置・定着の施策を決める

人材戦略を実行するには、採用・育成・配置・定着の施策を具体的に決める必要があります。

まず、理想と現状のギャップをもとに、不足している人材を採用で補うのか、既存社員を育成するのか、配置を見直すのかを整理します。あわせて、離職を防ぐために、面談やキャリア支援、働き方の見直しなどの定着施策も検討しましょう。

また、人員配置では、社員のスキルや経験と担当業務が合っているかを確認します。適切な配置を行うことで、部門間の協力が円滑になり、組織全体の成長と競争力向上につながるでしょう。

5. KPIを設定して定期的に見直す

人材戦略を実行する際は、施策ごとにKPIを設定し、進捗を数値で確認します。

KPIは経営目標や人材面の課題と結びつけ、採用人数、研修後に必要なスキルを習得した人数、配置後の定着率などを設定します。

たとえば、研修回数だけで判断すると、実際に必要なスキルが身についたかまでは確認できません。研修後に対象スキルを持つ人材が増えたか、配置後も担当業務を続けられているかまで確認しましょう。

四半期や半期ごとに数値の変化と原因を見直すことで、採用・育成・配置・定着のどこを修正すべきか判断しやすくなります。

有価証券報告書における人材戦略に関する基本方針等の書き方

有価証券報告書で人材戦略に関する基本方針等を書く際は、経営戦略と人材戦略のつながりを示したうえで、人材育成方針や社内環境整備方針、指標と目標を整理します。

まずは、方針・施策・指標・目標を分けて考え、それぞれがどうつながるかを整理しましょう。

人材育成方針には、育てたい人材像と育成施策を書く

人材育成方針では、経営戦略に沿って、どのような人材を育てたいのかを書きましょう。

有価証券報告書では、人的資本に関する情報として、人材育成方針や社内環境整備方針、指標及び目標の開示が求められています。

採用人数や研修制度だけを並べても、経営戦略と育成施策の関係性は十分に伝わりません。たとえばDXを進める企業なら、データを使って業務改善できる人材を育てる方針を示したうえで、研修内容や配置方針まで書くと伝わりやすくなります。

社内環境整備方針には、働きやすさと定着施策を書く

社内環境整備方針では、経営戦略に沿って、従業員が働き続けやすい環境をどのように整えるのかを書きます。

たとえば、育児や介護と仕事を両立しやすい職場を目指す場合は、フレックスタイム制やリモートワーク、相談窓口などの施策を示します。制度名を並べるだけでなく、離職防止や定着につなげるために、どの課題に対してどの施策を行うのかまで書くと、方針の目的が伝わりやすくなるでしょう。

指標と目標には、方針とつながる数値を選ぶ

指標と目標を書く際は、人材育成方針や社内環境整備方針とつながる数値を選びます。

専門人材の育成を重視する企業であれば、研修受講率だけでなく、専門スキルの保有人数や資格取得者数、配置後の定着率まで示すと、方針との関係が伝わりやすくなります。

数値は、経営戦略を進めるうえで優先度の高い人材課題から設定するのが基本です。たとえば、DX人材の育成を掲げる場合は、DX人材数や専門部署への配置人数を指標にします。

あわせて、女性管理職比率や男性の育児休業取得率など、他社と比較しやすい指標も確認しましょう。

記載例を作る前に、経営戦略とのつながりを整理する

有価証券報告書で人材戦略を書く際は、記載例をそのまま当てはめる前に、自社の経営戦略と人材戦略のつながりを整理しましょう。

たとえば海外展開やDXを重視する場合、必要な人材やスキル、採用・育成・配置の方針は変わります。

経営戦略、人材課題、方針、施策、指標・目標の関係が見えないと、開示内容の目的が伝わりにくくなります。人的資本に関するリスクと機会も確認し、採用や育成、働き方の整備に取り組む理由まで説明することが重要です。

人材戦略を成功させるための4つのポイント

人材戦略は、計画を作るだけでなく、社員が力を発揮できる環境や人材データの活用まで考えることが大切です。多様な人材の活躍や強みの把握、採用対象の広げ方を整理すると、施策を継続して見直しやすくなります。

1. 多様な人材が活躍できる環境を整える

多様な人材が活躍できる環境を整えるには、異なる文化や経験を持つ社員を受け入れるだけでなく、意見を出しやすい場づくりや公平な評価制度も必要です。

異なる文化や経験を持つ人々が意見を出しやすい環境を整えると、従来とは異なる視点から課題を見直しやすくなります。これにより、顧客ニーズや業務課題を多面的に捉えるきっかけになるでしょう。

同じような経験や考え方を持つ社員に偏ると、柔軟性が失われ、判断や発想が一方向に寄りやすくなります。そのため、会議で発言機会をそろえたり、スキルや経験に合わせて配置を見直したりすることで、多様な人材が業務に関わりやすい環境を整えることが大切です。

2. タレントマネジメントで人材の強みを把握する

タレントマネジメントでは、社員のスキルや経験、強みを把握し、育成や配置に活かしましょう。社員ごとの得意分野や担当業務を整理しておくと、必要な研修や配置を決めやすくなります。

まず、社員のスキルや経験、強みを整理し、育成や配置の方針に反映することが必要です。これにより組織は競争力を高め、重要な役割を担う人材を効果的に育成し、中長期的な人材育成や配置の判断に役立ちます。

人材の強みを把握しておくと、採用・育成・配置の判断がしやすくなります。

タレントマネジメントの具体的な進め方やシステムの活用方法を知りたい場合は、関連記事も参考にしてください。

3. グローバル人材やシニア人材を採用する

海外展開や技術承継を進める企業では、グローバル人材やシニア人材の採用を検討することがあります。グローバル人材の語学力や海外経験は、海外顧客への対応や現地の商習慣に合わせた事業展開に活かしやすいのが強みです。

シニア人材の採用は、これまでの業務経験や専門知識をもとに、若手社員へ実務の進め方を伝える役割を担えます。

採用後は、担当業務や育成の役割を明確にし、それぞれの経験やスキルを活かせる部署へ配置することが大切です。

4. 人材データを効果的に管理・活用する

人材データを管理・活用すると、採用・育成・配置の判断に必要な情報を確認しやすくなります。従業員のスキルやパフォーマンスなどのデータを収集・分析することで、採用計画や配置転換を検討する際の判断材料となるでしょう。

一方で、社員情報が複数のシステムや書類に分かれていると、確認や更新に時間がかかります。担当者の感覚だけに頼らず判断するには、必要な情報を同じ基準で管理できる体制を整えることが大切です。

また、人材データを活用する際は、採用・育成・配置だけでなく、給与・手当・福利厚生などの処遇とのつながりも確認しておきましょう。

たとえば、配置転換や役割変更にあわせて住宅手当や社宅制度の対象者を見直す場合は、従業員情報、適用条件、給与への反映方法を整理しておく必要があります。

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※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。

※本サイトは、法律的またはその他のアドバイスの提供を目的としたものではありません。当社は本サイトの記載内容(テンプレートを含む)の正確性、妥当性の確保に努めておりますが、ご利用にあたっては、個別の事情を適宜専門家にご相談いただくなど、ご自身の判断でご利用ください。

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