• 更新日 : 2026年1月28日

基礎控除とは?所得や控除の基礎知識と58万円への改正についてわかりやすく解説

基礎控除」とは、所得税や住民税を計算する際に、すべての納税者の所得から無条件に差し引くことができる、税務計算の土台となる「所得控除」です。2025年(令和7年)の税制改正により、控除額が従来の48万円から最大95万円へ大幅に引き上げられました。

しかし、この改正が実務における年収の壁や住民税の計算に具体的にどう影響するのか、正確に把握できているでしょうか。

本記事では、基礎控除とは何かという基本的な仕組みから始め、2025年改正で変わった重要ポイントを網羅的に解説します。間違いやすい収入と所得の計算ロジック、住民税との控除額のズレ、そして年末調整確定申告での正しい手続き方法まで、人事労務の担当者が迷いやすい実務の要点を分かりやすく紐解きます。

基礎控除とはどのような制度か?

基礎控除とは、合計所得金額が2,500万円以下のすべての納税者に適用される、生活保障のための最も基本的な「所得控除」です。 

個別の事情(扶養家族の有無など)に関わらず、要件を満たす人であれば無条件で適用される点が最大の特徴です。

制度の目的は「最低生活費」への非課税

この制度は、国民が生活するために最低限必要な費用には税金をかけるべきではない、という考え方に基づいています。

これは憲法第25条の生存権に由来する「最低生活費非課税」の考え方によるもので、人間が衣食住を維持するためのコストは、税金の計算から除外するよう設計されています。

「医療費がかかった」「配偶者がいる」といった特別な事情に対する控除とは異なり、基礎控除は「生きているだけでかかるコスト」を考慮したものです。

そのため、物価が上昇して生活費がかさむようになれば、それに応じて控除額(非課税とされる枠)も引き上げられるべきという性質を持っており、2025年の改正はこの考え方を反映しています。

制度の役割は課税所得の圧縮と手取りの増加

基礎控除には、収入から基礎控除額を差し引くことで、税率がかけられる「課税所得」を減らし、最終的な税負担を軽くする役割があります。

所得税は収入そのものではなく、収入から控除を引いた残りの額(課税所得)に対して課税される仕組みであるため、基礎控除が大きいほど税金は安くなります。

基礎控除は、いわば「全員に配られた非課税パスポート」のようなものです。2025年の改正でこのパスポートの額面が増額されたことにより、給与などの収入額が変わらなくても「税金の対象となる部分」が減ります。

その結果、源泉徴収される税金が減り、手元に残るお金(手取り)が増える効果をもたらします。

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基礎控除にはどのような種類がある?

基礎控除は「所得控除」に分類され、税率を掛ける前の所得から差し引く種類の控除にあたります。

税金の控除には「所得控除」と「税額控除」の2つの大きな種類があり、基礎控除は配偶者控除扶養控除と同じく「所得控除」のグループに位置づけられます。それぞれの違いを理解しておくことで、正確な税額シミュレーションが可能になります。

所得控除と税額控除の違い

所得控除は「税率を掛ける前」に引き、税額控除は「税率を掛けた後」に引くという明確な違いがあります。

計算の順序が異なるため、同じ金額の控除でも節税効果が変わってきます。「所得控除」は所得が高い(税率が高い)人ほど節税効果が高くなる傾向がある一方、「税額控除」は税額から直接引くため誰にとっても効果がダイレクトに表れます。

【比較表:所得控除と税額控除】

種類・基礎控除の分類差し引くタイミング減税効果の計算式
所得控除・該当税率を掛ける前控除額 × 税率
税額控除・非該当税率を掛けた後控除額そのもの

基礎控除の適用対象は誰か?

基礎控除の適用対象は、その年の合計所得金額が2,500万円以下のすべての納税者です。 特定の職業や立場に限られたものではなく、国内で収入を得ているほぼ全ての人が該当します。

雇用形態を問わない幅広い適用

基礎控除は、会社員や個人事業主といった働き方に関わらず、納税者であれば等しく適用されるのが原則です。

所得税法において、基礎控除は特定の属性(サラリーマンなど)に向けたものではなく、全ての国民の最低生活費を保障するものと定められているためです。具体的には、以下のような多様な立場の人が対象に含まれます。

  • 給与所得者:正社員、契約社員、公務員など
  • 非正規雇用:パート、アルバイト、派遣社員など
  • 事業所得者:個人事業主、フリーランス、副業をしている人など

所得制限による対象外(2,500万円超)

ただし、合計所得金額が2,500万円を超える一部の納税者については、基礎控除が適用されず0円となります。

これは、年収が非常に高い「超高所得者」に関しては、生活費への配慮(担税力の調整)を税金で行う必要性が低いと判断されるためです。以前は一律適用でしたが、近年の改正により富の再分配機能が強化され、2,350万円を超えると段階的に減額、2,500万円超で消失する仕組みに変更されました。

基礎控除の計算で重要な収入と所得の違いとは?

基礎控除の判定基準となる「合計所得金額」を正しく把握するためには、「収入(年収)」と「所得」が別物であることを理解しておく必要があります。 税金計算において、基礎控除は「収入」から直接引くのではなく、経費を引いた後の「所得」から差し引かれます。

収入から経費を引いたものが所得

収入とは給与や売上の総額であり、所得とはそこから必要経費を差し引いて手元に残った利益のことです。

税金は、入ってきたお金すべて(収入)にかかるのではなく、そこから経費を引いた「儲け(所得)」に対して課税される仕組みになっています。そのため、基礎控除などの所得控除を適用する際も、ベースとなるのは収入ではなく所得になります。

  • 収入(Revenue):源泉徴収票の「支払金額」。いわゆる額面の年収。
  • 所得(Income):収入から経費を引いた金額。ここで基礎控除を引く

会社員特有の「給与所得」の出し方

会社員の場合、実費を経費として計上するのが難しいため、「給与収入給与所得控除 = 給与所得」という計算式を用います。

会社員やパートタイマーには、スーツ代や文具代などの実費を経費申請する代わりに、年収に応じてあらかじめ決められた一定額を経費とみなして差し引く「給与所得控除」という仕組みがあります。 基礎控除の判定に使われる「合計所得金額」とは、源泉徴収票の支払金額(年収)ではなく、この給与所得控除を差し引いた後の「給与所得控除後の金額」を指します。

2025年最新の基礎控除額はいくら?

2025年分からは、納税者の合計所得金額に応じて、「95万円」「58万円」「48万円」などの段階的な控除額が適用されます。

従来の「一律48万円」から仕組みが変わり、所得が低いほど手厚い控除が受けられるようになりました。

出典:令和7年度税制改正による所得税の基礎控除の見直し等について|国税庁

控除額の引き上げ(最大95万円)と改正背景

2025年(令和7年)の税制改正により、物価高対策および「年収の壁」の解消を目的として、基礎控除額の全体的な底上げが行われました。

これにより、多くの一般的な所得者にとっては、従来の48万円から10万円アップした「58万円」が新しい標準となります。さらに、パートやアルバイトなどで所得が低い層に対しては、そこからさらに上乗せされた「95万円」の控除が適用され、手取り額が増えるよう調整されています。なお、令和7年、8年については、合計所得132万円超2,350万円以下であれば、58万円から88万円までが段階的に適用され、132万円以下で、最大の95万円となります。

合計所得金額ごとの詳細と住民税の差

具体的な控除額は、納税者本人の合計所得金額によって以下のように区分されます。

所得税の計算においては最大95万円が控除されますが、住民税の基礎控除は所得税よりも低い設定になっている点に注意が必要です。所得税が0円でも、住民税がかかるケースがあるのはこのためです。

【速見表:合計所得金額別の基礎控除額(2025年版)】

合計所得金額所得税の基礎控除額住民税の基礎控除額
132万円以下

(給与年収 約200万円以下)

95万円43万円
132万円超 〜 2,350万円以下

(一般的な会社員層)

58万円

※令和7年、8年は58万円~88万円

43万円
2,350万円超 〜 2,400万円以下48万円43万円
2,400万円超 〜 2,450万円以下32万円29万円
2,450万円超 〜 2,500万円以下16万円15万円
2,500万円超0円0円

基礎控除の増額と「年収の壁」の関係は?

基礎控除の大幅な増額は、パートやアルバイトの方にとっての大きな関心事である「年収の壁」に直接的な影響を与えています。 具体的には、税金がかからない年収ラインが従来の「103万円」から「約160万円」へと大きく引き上げられました。

非課税ラインの変化:「103万円」から「160万円」へ

所得税が発生するボーダーライン(課税最低限)は、これまでの年収103万円から、2025年以降は約160万円になります。

このラインは「基礎控除」と「給与所得控除(最低額)」の合計で決まる仕組みです。2025年の改正では、基礎控除が最大47万円増(48万→95万)、給与所得控除が10万円増(55万→65万)と、両方が引き上げられました。その結果、これらを足し合わせた非課税枠が大幅に拡大しました。

  • 旧・非課税枠:基礎控除48万円 + 給与所得控除55万円 = 103万円
  • 新・非課税枠:基礎控除95万円 + 給与所得控除65万円 = 160万円

就労調整への影響:働き控えの解消

この変更により、パートやアルバイトの方は「税金がかからないように働く時間を抑える」必要性が大幅に薄れ、手取り減少を気にせずに長時間働けるようになります。

これまでは「103万円を超えると所得税がかかる」ため、年末に向けてシフトを減らすなどの就労調整を行う人が多くいました。しかし、ボーダーラインが160万円まで上がったことで、既存の時給や労働時間のままであれば税負担を気にする必要がほとんどなくなります。これにより、世帯の手取り収入を増やしやすい環境が整いました。

基礎控除を受けるための確定申告や年末調整の手続き方法は?

会社員は年末調整の申告書に記入し、個人事業主は確定申告書第一表に記入することで基礎控除が適用されます。

基礎控除は自動適用ではなく「申告主義」のため、本人が所定の書類に金額を記載して提出しなければなりません。手続きを忘れると、本来払わなくてよい税金を払うことになりかねないため、確実な対応が求められます。

年末調整での書き方(会社員)

配布される「給与所得者の基礎控除申告書」の判定欄で、自分の所得に合う金額(58万円など)を選択・記入します。

この申告書は「配偶者控除等申告書」と兼用になっています。ここで判定した「区分(A〜C)」が、配偶者控除を受けるための要件として連動している点に注意が必要です。自分の基礎控除の記入を適当に行うと、結果として配偶者控除の計算まで誤ってしまうため、必ず正確に「合計所得金額」を見積もって記入しましょう。

確定申告での書き方(個人事業主)

確定申告書 第一表の「基礎控除」欄(項目24付近※令和7年分以降は25)に、該当する控除額を直接記入します。

青色申告白色申告のどちらでも書き方は同じであり、別途「基礎控除申告書」を添付する必要はありません。e-Tax会計ソフトを使用する場合、所得金額を入力すれば自動的に「580,000」や「950,000」が反映されます。

基礎控除に関する実務上の注意点とは?

実務においては、「住民税との控除額の差」や「申告書の提出ルール」について正しく理解しておく必要があります。

ここを誤解していると、所得税は0円なのに住民税の請求が来て驚いたり、書類の出し忘れで本来受けられるはずの控除が適用されなかったりするリスクがあります。

住民税の非課税ラインとのズレ

所得税は160万円までかからないが、住民税はそれより低い水準(約110万円前後)から発生する可能性があります。

基礎控除額が所得税(最大95万円)と住民税(最大43万円万円)で大きく異なるためです。また、自治体によっては住民税の非課税限度額が独自に設定されていることもあります。「所得税が0円だから住民税も0円」とは限らない点を理解しておく必要があります。

青色申告特別控除とのダブル適用

個人事業主の場合、基礎控除は「青色申告特別控除」と併用が可能です。

2025年改正により基礎控除が増えたため、青色申告(最大65万円控除)を行っている事業主は、「基礎控除(最大95万円)+青色申告特別控除(65万円)=合計160万円」もの所得控除を受けられます。この2つを確実に適用することで、極めて高い節税効果を得ることができます。

給与年収2,000万円超の人は確定申告が必要

会社員であっても、給与年収が2,000万円を超える人は年末調整で基礎控除を受けることができません。

所得税法上、会社が年末調整を行えるのは「給与年収2,000万円以下の人」に限定されているためです。年収2,000万円を超える経営者や役員などは、会社から源泉徴収票を受け取り、自分で確定申告を行うことで基礎控除(所得に応じて95万円〜16万円)を適用させる必要があります。

申告書の提出忘れは「適用なし」のリスク

基礎控除は「全員対象」ですが、申告書を提出しない限り適用されず、税金が高くなってしまう恐れがあります。

基礎控除は自動的に計算されるものではなく、あくまで納税者の意思表示(申告)に基づいて適用される仕組みだからです。特に年末調整において、「自分は独身で扶養家族もいないから、何も書かなくていい(提出しなくていい)」と勘違いをして申告書を出さないと、基礎控除が適用されず手取りが減ってしまうため、必ず提出・記入が必要です。

基礎控除の改正を正しく理解し、ミスのない実務対応をしよう

2025年の税制改正により、基礎控除は最大95万円へと大幅に拡充されました。今回の変更は単なる税負担の軽減にとどまらず、従業員の働き方や企業の実務プロセスそのものに直結する極めて重要な転換点と言えます。

特に実務上の核心となるのは、控除額の底上げに伴い、いわゆる年収の壁が「約160万円」へと移動した事実です。計算においては、基礎控除が「収入」ではなく「所得」から差し引かれるという基本に加え、住民税の控除額は所得税よりも低く設定されている点にも注意を払わなければなりません。また、これらの適用は自動的に行われるものではなく、年末調整や確定申告での申告手続きが必須である点も、従業員へ周知徹底する必要があります。

人事労務担当者は、現場からの「もっと働いても大丈夫か」という問いに対し、この新しい非課税ラインを根拠とした的確な回答が求められます。もはや「38万円」や「48万円」といった過去の知識は通用しません。最新の基準に基づいた正確な実務対応を行い、組織全体の信頼性を高めていきましょう。


※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。

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