- 更新日 : 2024年7月12日
株式会社を設立するメリット3つ|デメリットもわかりやすく解説
事業をおこなうときに、会社を設立して事業をおこなうか、個人事業をおこなうかで迷う人は多くなっています。それぞれに一長一短あり、会社と個人事業の特徴を見据えてどちらをおこなうかを決めることが重要です。
ここでは、会社、特に株式会社を設立・運営する場合の主なメリット、デメリットを説明します。具体的には、事業を始めるにあたり、株式会社を設立するか個人事業でとどめておくか検討する際の参考になるように説明します。
目次
株式会社とは
株式会社とは、株式を発行して集め、その集めた株式を出資者に販売することで資金を集めて経営を行う会社のことです。
株式を購入した株主は、出資額に応じて所有する株式の割合に基づき、会社の経営に関与する権利と利益を得ます。実際に事業を行うのは、株主から委任を受けた経営者である取締役です。なお、この取締役については、必ずしも出資者となる株主である必要はありません。株式会社は、経営権や意思決定の権限、経営上のリスクを分散化するために、多くの株主を受け入れることが可能です。
株式会社を設立するメリット
株式会社を設立するメリットとしてさまざまなものが挙げられますが、主なものは、以下のとおりです。
- 社会的信用が高い
- 返済不要な資金を調達できる
- 出資額を超えて損失は負わない
ここでは、この3つのメリットについて詳しく説明します。
メリット①社会的信用が高い
株式会社のメリットとして、社会的信用が高いことが挙げられます。なぜ社会的信用が高くなるのかというと、まず株式会社が法人として法的な枠組みの下で事業を行っていることが理由として考えられるでしょう。
また、株式会社の設立には一定の資本金が必要なため、設立のハードルが高いことも信頼性に影響していると言えます。さらに、株式会社の責任は株主に対して限定されるため個人的な責任が制限されること、一方で経営を分散化できるため多元的で柔軟性のある意思決定を行えることも社会的信用を高めている一因です。
上場企業として情報公開を行うことが求められるので、投資家や関係者が企業の情報にアクセス可能となり、顧客やパートナー、投資家などからも信頼を得ることができます。
メリット②返済不要な資金を調達できる
事業をおこなう際は、その元手となる資金を集める必要があります。
通常、資金を集める手段として思い当たるのは、銀行などから借り入れることです。それらの借入金は通常、いつかは返済しないといけません。借り換えを繰り返すことによって返済を先延ばしにすることも可能ですが、それでも契約上、いつかは返済しなければならないものです。
しかし、株式会社の場合は借入金とは別の資金を調達する手段があります。それは株式の発行です。株式会社は株式を発行することによって資金を調達しますが、それで調達した資金については返済する必要はありません。借入金のようにいつか返済しなければならないというプレッシャーのない資金を調達でき、安定的な資金運用が可能となります。
メリット③出資額を越えて損失は負わない
株式会社のメリットとして挙げられる中には責任が出資額に限定されていることがあります。個人の場合、事業がうまくいかなくなり、結果として借入金のみを背負うこととなった場合、そのすべてを自力で返済しなければなりません。
しかし、株式会社の場合、事業がうまくいかなくなり多くの借入金が残ったとしても、すべてを返済する必要はなく、株主が株式会社に対して出資した金銭を放棄すれば、それ以上金銭の支払いをする必要はありません。
万が一事業が失敗したとしても、個人事業の場合と株式会社の場合とで取るべき責任の内容が異なります。
株式会社を設立するデメリット
主なデメリットとして、以下のものが挙げられます。
- 設立に費用がかかる
- 決算公告の義務を負う
- 役員の任期がある
- 赤字でも法人住民税を納税しなければならない
ここではそれらについて詳しく説明します。
デメリット①設立に費用がかかる
株式会社のデメリットとしてまず挙げられるのが、設立に費用がかかることです。
例えば、株式会社を設立するには商業登記や法務局への登記手続きが必要となりますが、これには登記手数料や印紙税などといった費用がかかります。また、必要書類や契約書の作成、印紙費用や会社名の登録などの手続きに伴う費用も発生します。この際、法的な専門知識を持つ専門家や弁護士からコンサルティングを受けると、報酬の支払いも必要です。
会社の設立にかかる主な費用としては、以下のものが挙げられます。
費用 | 金額 |
---|---|
定款用収入印紙代 | 40,000円(*1) |
定款の認証費用 | 30,000円〜(*2) |
登録免許税 | 150,000円〜(*2) |
印鑑の作成費用 | 10,000円程度 |
合計 | 230,000円〜 |
(*1)ただし電子定款にすると安くなる
(*2)資本金により変動する
ここに挙げたものは主なもので、その他にも資本金の振込費用、法務局や税務署等への届出書を出すための交通費や郵便料などの細々とした費用もあります。このように株式会社は、スタートラインに立つまでにさまざまな費用がかかることがわかります。
デメリット②決算公告の義務を負う
株式会社のデメリットとして、決算公告を毎期しなければならない点も挙げられます。
決算公告とは、会社の決算書を外部に公表することです。
決算公告は義務であり、定款に定めて登記した方法で公表する必要があります。なお、官報や新聞で決算公告をする場合は料金が発生し、官報の場合は最低でも7万円かかります。
デメリット③役員の任期がある
株式会社の役員には、任期があります。一定の期間が経過すると、たとえ役員を継続して行う場合でも、株主総会の場で役員を選び直す必要があります。また、役員の選び直しをした場合は、その旨を登記しなければなりません。
株主総会は、全員の賛同を得られるのであれば、書面を作成して押印すれば完了です。一方で役員登記は、登記に必要な書類の作成や手数料の用意などの作業が発生します。株式会社の任期は最長で10年ではあるものの、10年に一度そのような業務が発生することは、多少なりとも負担となるでしょう。
デメリット④赤字でも法人住民税を納税しなければならない
個人の場合は利益がない場合は、所得税も住民税も支払わないこともあります。
しかし、法人の場合はどんなに大きな赤字が出ても、必ず支払わないといけない税金があります。それが法人住民税の均等割です。均等割とは、法人について業績の内容に関係なく、都道府県や市町村に支払う義務のある税金です。その金額は法人がある場所、規模によって異なりますが、例えば神奈川県横浜市の場合は、神奈川県に対して20,000円~、横浜市に対して54,500円~の合計74,500円~を支払うこととなっています。
※令和6年度の所得税及び住民税については、定額で減税される特別控除が実施されます。詳しくは下記記事を参考ください。
まとめ
本記事では、株式会社の設立を考えている人に向けて、メリットとデメリットを中心に解説してきました。株式会社は社会的信用が高く、返済不要な資金を調達できる、かつ出資額を超えた損失は負わないことがメリットとして挙げられます。一方で、設立に一定の費用がかかることや、赤字でも法人住民税を納税しなければならないことはデメリットとなるでしょう。
両方の側面を鑑みたうえで、会社を設立する際に株式会社という形態を選ぶかどうか、慎重に判断してください。
よくある質問
株式会社を設立するメリットとは?
主なメリットは、以下3点が挙げられます。
株式会社を設立するデメリットとは?
主なデメリットは、以下4つが挙げられます。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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