• 作成日 : 2026年10月28日

適格請求書の要件を満たすには?記載事項や簡易請求書との違いを解説

Point適格請求書の要件とは?

適格請求書は、登録番号・取引年月日・税率ごとの対価の額・消費税額など6つの記載事項を満たした書類です。

  • 登録事業者のみが発行できる
  • 領収書・納品書でも要件を満たせる
  • 簡易請求書は宛名と税率の一部を省略可

Q. 適格請求書に必要な記載事項は何か?
A. 発行者名・登録番号・取引年月日・取引内容・税率ごとの対価の額と適用税率・消費税額・取引相手名の6項目です。

適格請求書(インボイス)として認められるためには、適格請求書発行事業者の登録番号や取引年月日、税率ごとの対価の額、消費税額など、定められた記載要件を満たす必要があります。

この記事では、適格請求書の要件と必要な記載事項を整理します。

適格請求書の要件とは?

適格請求書とは、適格請求書発行事業者が発行する、所定の記載事項を満たした請求書などの書類やデータです。インボイス制度では、買手が原則として仕入税額控除を受けるため、一定事項を記載した帳簿と適格請求書などを保存します。

適格請求書には6つの記載事項がある

適格請求書として扱うには、原則として6つの事項を記載します。登録番号だけを追加すればインボイスになるわけではなく、税率ごとの対価の額や消費税額なども確認しなければなりません。記載要件を整理すると、次のとおりです。

記載事項 記載する内容
発行事業者の情報 適格請求書発行事業者の氏名または名称、登録番号
取引年月日 商品の販売やサービス提供などを行った年月日
取引内容 商品・サービスの内容。軽減税率対象の場合はその旨
税率ごとの対価の額 8%・10%など税率ごとに区分した税抜価額または税込価額の合計額と適用税率
消費税額等 税率ごとに区分した消費税額等
取引相手の情報 書類の交付を受ける事業者の氏名または名称

10%対象の商品と8%の軽減税率対象商品を同時に販売した場合、両者を分けて対価の額や税額を表示します。軽減税率対象の商品については、「※」などを付け、その記号が軽減税率対象を示すことがわかるように記載する方法もあります。

参考:No.6497 仕入税額控除のために保存する帳簿および請求書等の記載事項|国税庁

適格請求書は登録を受けた事業者だけが発行できる

適格請求書を発行できるのは、税務署長の登録を受けた「適格請求書発行事業者」に限られます。請求書に必要事項を記載していても、発行者が登録を受けていなければ適格請求書にはなりません。

登録番号は「T+13桁の数字」で構成されます。法人番号を持つ法人の場合は「T+法人番号」、個人事業者などの場合は「T+割り当てられた13桁の数字」です。個人事業者の登録番号にマイナンバーが使用されるわけではありません。

取引先から受け取ったインボイスの登録番号については、国税庁の適格請求書発行事業者公表サイトで登録状況を確認できます。

参考:適格請求書発行事業者公表サイト|国税庁

適格請求書には決まった様式がある?

適格請求書には、法律上決められた一律の様式はありません。必要な記載事項が確認できれば、従来の請求書を変更して利用することも、領収書や納品書などをインボイスとして交付することもできます。

請求書以外の領収書や納品書でも要件を満たせる

書類の名称ではなく、適格請求書として定められた事項が記載されているかどうかで判断します。「請求書」という名称がなくても要件を満たすことがあります。領収書、レシート、納品書、利用明細書などでも、必要事項が確認できればインボイスとして扱えます。

また、一枚の書類だけですべての事項を記載しなければならないとは限りません。納品書と請求書など複数の書類について相互の関連性が明確であり、全体として必要事項を確認できる場合には、それらを合わせて適格請求書の記載要件を満たすこともできます。

請求期間をまとめて記載することもできる

月締めなど一定期間の取引についてまとめて請求書を発行する場合は、その取引期間を記載する方法でも対応できます。たとえば、毎月1日から末日までの取引を翌月にまとめて請求する場合、「2026年9月1日~2026年9月30日分」のように対象期間を表示できます。必ずしも請求書に一つの取引日だけを記載する仕組みではありません。

ただし、どの期間の取引について交付した書類なのかを確認できる状態にしておく必要があります。

適格簡易請求書の要件は適格請求書と何が違う?

不特定多数の者と取引する一定の事業では、通常の適格請求書より記載事項を簡略化した「適格簡易請求書」を交付できます。一般的には「簡易インボイス」とも呼ばれます。

適格簡易請求書では宛名を省略できる

適格簡易請求書では、書類の交付を受ける事業者の氏名または名称を記載しなくても構いません。また、通常の適格請求書では「適用税率」と「税率ごとに区分した消費税額等」の両方を記載しますが、適格簡易請求書ではいずれか一方を記載すれば要件を満たします。

両者の違いは次のとおりです。

項目 適格請求書 適格簡易請求書
発行者名・登録番号 必要 必要
取引年月日 必要 必要
取引内容 必要 必要
税率ごとの対価の額 必要 必要
適用税率 必要 消費税額等とのいずれかで可
消費税額等 必要 適用税率とのいずれかで可
取引相手の氏名・名称 必要 省略可

小売業や飲食店業などは簡易インボイスを交付できる

適格簡易請求書は、誰でも通常の適格請求書の代わりとして使用できるわけではありません。不特定多数の者に対して販売やサービス提供を行う一定の事業者が対象です。代表的な対象には、小売業、飲食店業、写真業、旅行業、タクシー業、駐車場業などがあります。不特定かつ多数の者に対してサービスを提供する事業が想定されています。

自社が簡易インボイスを交付できる事業に該当するかを確認したうえで帳票を設計すると、宛名入力などの事務負担を減らせます。

適格請求書と仕入明細書の要件はどう違う?

適格請求書と仕入明細書は、どちらも一定の条件を満たせば仕入税額控除のために保存する「請求書等」に含まれます。ただし、適格請求書は原則として売手が作成するのに対し、仕入明細書は買手が作成する点が大きな違いです。

適格請求書は売手が作成・交付する

適格請求書は、適格請求書発行事業者である売手が、買手に対して交付する書類です。売手の氏名・名称と登録番号、取引年月日、取引内容、税率ごとの対価の額と適用税率、消費税額等、交付を受ける事業者の氏名・名称などを記載します。

適格請求書の交付には、適格請求書発行事業者としての登録が必要です。 買手は受け取った適格請求書と一定事項を記載した帳簿を保存することで、原則として仕入税額控除を適用できます。

仕入明細書は買手が作成し、売手の確認を受ける

仕入明細書は買手が作成する書類であり、仕入税額控除に利用するには、記載内容について売手の確認を受ける必要があります。適格請求書とは作成者が反対になる点が特徴です。

仕入明細書には、作成者である買手の氏名・名称、売手の氏名・名称と登録番号、課税仕入れを行った年月日、取引内容、税率ごとの支払対価の額と適用税率、消費税額等を記載します。売手の確認方法は、書面への署名だけでなく、電子メールで確認の返信を受けたり、受発注システム上で確認したりする方法も認められています。

適格請求書の消費税額はどのように記載する?

適格請求書では、8%と10%など適用税率の異なる取引を区分し、それぞれの消費税額等を記載します。複数税率の商品を一つの請求書に記載するときは、合計金額だけを表示して終わらないよう注意します。

8%と10%の取引は税率ごとに区分する

標準税率10%と軽減税率8%の取引が混在している場合、それぞれの税率に対応する対価の額と税額を分けて表示します。たとえば税込11万円の10%対象取引と、税込5万4,000円の8%対象取引がある場合、総額16万4,000円だけを記載するのではなく、10%対象額と8%対象額がわかるように区分します。

軽減税率対象商品についても、「※は軽減税率対象」のような表示を設けるなど、対象となる商品を判別できる状態にします。

消費税額の端数処理は税率ごとに1回行う

1円未満の端数が生じる場合、原則として一つの適格請求書につき税率ごとに1回だけ端数処理を行います。商品ごとに端数処理した税額を合計する方式は、適格請求書に記載する消費税額等の計算方法として認められていません。端数については、切り捨て、切り上げ、四捨五入など、どの方法を採用するかは任意です。

たとえば同じ10%対象の商品を10点販売するケースでは、一商品ごとに消費税額の端数処理を行って合計するのではなく、10%対象となる対価の合計額を基礎として消費税額を算出し、最後に端数処理します。

電子データでも適格請求書の要件を満たせる?

適格請求書は紙で発行する必要はなく、PDFや電子データなどの電磁的記録による提供も可能です。必要事項を満たしていれば、メールへの添付やインターネット上からのダウンロードなどによって電子インボイスを提供できます。

PDFや電子インボイスでも記載要件は同じ

紙か電子データかによって、インボイスに必要な基本的な記載事項が変わるわけではありません。

発行者の氏名・名称と登録番号、取引年月日、取引内容、税率ごとの対価の額と適用税率、消費税額等、取引相手の氏名・名称などを確認できれば、電子データとして提供できます。

請求書発行システムからPDF形式で請求書を発行するケースや、Webサービス上で利用明細を提供するケースでも、要件を満たせば適格請求書に係る電磁的記録となります。

電子インボイスを受け取った場合は電子データの保存にも注意する

適格請求書を電子データで受領した場合は、仕入税額控除の要件を満たすため、電磁的記録を適切に保存します。メール添付のPDFやWebサイトからダウンロードした請求書など、電子取引で受け取った取引情報については、電子帳簿保存法に基づく保存方法も確認しておく必要があります。

紙へ印刷して保管することだけを前提とせず、取引データをどのような方法で受領し、どこに保存するのかまで経理フローとして決めておくと管理しやすくなります。

参考:インターネットを通じて取引を行った場合の仕入税額控除の適用について|国税庁

適格請求書の要件に不備があった場合はどうする?

交付した適格請求書に誤りが見つかった場合、適格請求書発行事業者は修正した適格請求書を相手方へ交付します。受け取った側は、自社で自由に請求書を書き換えればよいわけではありません。発行者側と連携して訂正することになります。

【発行者】修正した適格請求書を交付する

発行済みのインボイスに誤りがあった場合は、正しい内容を反映した適格請求書を改めて交付できます。修正方法には、正しい記載事項をすべて記載した適格請求書を新たに交付する方法があります。また、当初交付した適格請求書との関連がわかるようにしたうえで、修正した事項だけを示す書類を交付する方法もあります。

たとえば消費税額を誤って記載していた場合、修正前の請求書との関係がわからない訂正書だけを送るのではなく、どの請求書のどの部分を修正したのか確認できる状態にします。

【受領者】請求書を自由に書き換えることはできない

受け取った適格請求書に誤りがある場合、買手が原則として自分で内容を追記・修正してインボイスを完成させる方法はとれません。基本的には、売手である適格請求書発行事業者へ修正を依頼し、修正後の適格請求書を受け取って保存します。

ただし、買手が必要事項を記載した仕入明細書などを作成し、その内容について売手の確認を受ける方法もあります。受領した請求書に不備を見つけた場合は、自社だけで訂正するのではなく、発行者との確認を行うのが基本です。

適格請求書の要件を確認して正しいインボイスを作成しよう

適格請求書の要件では、発行者名と登録番号、取引年月日、取引内容、税率ごとの対価の額と適用税率、消費税額等、取引相手の氏名・名称を適切に記載します。請求書という名称や専用の様式が必須ではなく、必要事項を満たせば領収書や納品書、電子データなどでもインボイスとして扱えます。

適格簡易請求書では一部の記載事項を省略でき、消費税額の端数処理にも独自のルールがあります。請求書を発行する側だけでなく、受け取る側も適格請求書の記載要件を理解し、不備がある場合は発行者へ修正を依頼できる体制を整えておくと、インボイス制度に対応した経理処理を行いやすくなります。


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