- 更新日 : 2024年10月17日
領収書に収入印紙を貼る場合は割印を押そう!法的理由も解説
領収書に収入印紙を貼る場合には割印が必要です。割印は収入印紙の再利用を防ぐための対処であり、収入印紙と領収書の両方をまたぐようにバランスよく押さなくてはなりません。
この記事では、領収書に割印が必要となる場合、割印の方法、割印に失敗したときの対処法、および割印が必要ないケースについて紹介します。法的根拠も解説しますので、領収書の割印の押し方に迷っている人は参考にしてください。
目次
5万円以上の領収書には収入印紙を貼り割印をする
5万円以上の領収書には、収入印紙を貼って割印をしなければなりません。ここでは、領収書の発行時に収入印紙が必要になる場合、割印をする理由、および割印は手書きでもよいことを解説します。
領収書の発行時に収入印紙が必要になる場合
領収書の発行時に収入印紙が必要になるのは、「受取金額が5万円以上の場合」です。
商品やサービスに対する金銭等の受取を証明する領収書は、印紙税法において「課税文書」に分類されます。課税文書とは印紙税が課税される文書を指し、文書に記載された額に応じた収入印紙の貼付が義務づけられています。領収書に貼付する印紙税の金額は以下の通り、受取金額によって決まります。
【印紙税の金額の一例】
- 5万円未満 :非課税
- 5万円以上100万円以下 :200円
- 100万円を超え200万円以下 :400円
- 200万円を超え300万円以下 :600円
割印をする理由は?
収入印紙に割印をする理由のひとつが、収入印紙の再使用防止です。割印がなければ、一度使用した収入印紙をきれいに剥がし、再び使用することが可能となってしまいます。そのため、割印は、再使用防止に有効な方法で行わなくてはなりません。
再使用防止の観点から、割印は以下のポイントを守ることが必要です。
- 誰の割印かがはっきりわかること
- 消せないこと
また、領収書への割印は収入印紙に対してのみ行うものではありません。領収書とその控えにまたがって押すこともあります。この場合の割印は、領収書と控えの整合性を証明し、不正を防止することを目的としています。
割印は手書きでもいい
印紙税法施行令第5条では、割印を手書きの署名で行うことを認めています。印鑑による割印と同様に、収入印紙と領収書にバランスよくまたがるように記名すれば割印の要件を満たせます。
割印として行う署名は、必ずしも代表者が行う必要はありません。代理人や従業員などが行うことも認められています。また、氏名である必要もなく、通称や商号などでも問題はありません。
ただし、割印は誰が行なったものなのかが明確でなければなりません。そのため、単に「印」と書いたもの、あるいは斜線や二重線を引くなどしただけのものは割印としての効力を発揮しません。
また、消せない方法である必要もあります。そのため、鉛筆やシャープペンシル、消えるボールペンなどは割印に使うには不適切です。
領収書の収入印紙に割印をする方法
ここでは、領収書の収入印紙に割印をする方法を具体的に説明します。
有効な割印の押し方
割印に使用する印鑑は、誰のものかが明確であれば、それ以外は特に指定はありません。代表者のものでなくても、代理人や従業員のものでも認められます。
朱肉をつけて使用する印鑑ではなく、シャチハタのようなインク内蔵式の印鑑も使用可能です。また、会社名の入った角印や、氏名や名称を表示した日付印、役職名や名称などを表示したゴム印などでもかまいません。
ただし、割印は誰のものかがわかるよう、鮮明でなくてはなりません。鮮明な割印を押す方法を、一般の印鑑を使う場合を例として以下で紹介します。
- 朱肉と印鑑マットを用意する(印鑑マットがないと印影がかすれることがあるため、印鑑マットは用意しましょう)
- 上下を確認して印鑑を持ち、朱肉を3回程度軽くつける
- 姿勢を正し、印鑑をまっすぐ押す(姿勢を正して印鑑を押すことで、印影のかすみを防げます)
- 「の」の字を描くように印鑑を押し付ける
収入印紙と領収書に押す場合
割印を収入印紙と領収書に押す場合には、印影が収入印紙と領収書にバランスよくまたがるよう配慮します。収入印紙にだけ押したもの、収入印紙近くではあるものの領収書だけに押したものは、割印とは認められません。
割印の位置は、収入印紙と領収書にまたがってさえいれば、上下左右、あるいは収入印紙の四隅の角など、法的にはどこに押しても割印として認められます。ただし、一般的には収入印紙の右側に押すことが多いでしょう。また印紙税法により、割印は課税文書と印紙の彩紋をまたぐように押すように定められていますので、要件を満たすように注意しましょう。
また、前述の通り、油性ボールペンなど消えない筆記用具を使用して、収入印紙と領収書にまたがるように手書きで署名をしても割印としての効力を生じます。
領収書と控えに押す場合
領収書の原本と控えに割印を押す場合には、割印の位置は領収書・控えの両方にバランスよくまたがっている必要があります。キリトリ線があるタイプの領収書なら、印影がキリトリ線にバランスよくまたがるよう、割印を押しましょう。
キリトリ線がないタイプの領収書なら、領収書とその控えを重ねて少しずらし、それぞれに印影が残るように割印します。
なお、領収書とその控えに割印がなくても、法的には問題がありません。割印を忘れた場合も、先方に連絡して改めて割印するなどの手続きは不要です。
割印に失敗したときの対処法
割印に失敗したときはどうすればよいのか、その対処法を解説します。
印影が不鮮明なときは再度押印する
割印の印影が不鮮明になってしまい、誰の割印であるかが判別できないと、割印として認められません。その場合には、位置をずらして再度押印します。
失敗した割印の上に再度押印するのは、印影がさらに不鮮明になる可能性があるため避けましょう。また、失敗した割印は二重線で消すなどせず、そのままにしておいて特に問題はありません。
印紙税還付手続きを受ける
領収書の書き損じ、あるいは印紙税額の間違いなどにより、収入印紙を貼り付け、割印もした領収書を使わなかった場合には、税務署で「印紙税還付手続き」が受けられます。
郵送での提出をおすすめしますが、税務署に持参する場合には事前予約が必要となります。
還付手続きを受けるためには、使用しなかった領収書と申請者の印鑑、身分証明書、還付金を受け取る口座番号のわかる通帳などを持参し、「印紙税過誤納確認申請書」を提出します。還付対象は過誤納となっている文書を作成した日等から5年以内とされており、還付金は後日口座に入金されます。
なお、書き損じた領収書に貼った収入印紙にまだ割印をしていない場合には、収入印紙をきれいに剥がして郵便局へ持参しましょう。1枚につき5円の手数料はかかりますが、新しい収入印紙と交換してもらえます。
電子的に発行する場合は収入印紙が不要
領収書を電子的に発行する場合、収入印紙の貼付は不要です。国税庁の見解は以下の通りです。
請求書や領収書をファクシミリや電子メールにより貸付人に対して提出する場合には、実際に文書が交付されませんから、課税物件は存在しないこととなり、印紙税の課税原因は発生しません。
そのため、領収書をFAXで送付、またはPDF化した領収書を電子メールで送付した場合には、たとえ5万円以上の受取金額であっても収入印紙は不要です。
また、国税庁はクレジットカードで支払った場合にも、クレジットカード払いである旨が記載されていれば、領収書への収入印紙の貼付は不要という見解を示しています。クレジットカードでの支払いは信用取引であり、実際のお金のやり取りが発生していないため、その際の領収書は課税文書に当たらないからです。
割印は誰のものかがわかるよう、鮮明に押そう
受取金額が5万円以上の領収書には、収入印紙を貼って割印を押さなくてはなりません。割印は収入印紙の再使用防止を目的としているため、割印を行なった人が明確であるならば、印鑑ではなく手書きの署名でも問題はありません。
なお、収入印紙は領収書が効力を発揮した場合に必要であるため、書き損じや印紙税額を誤った場合などは、割印を押した収入印紙でも、税務署で還付手続きを受けられます。また領収書をFAXや電子メール等で送付した場合、クレジットカードによる支払いに対する領収書への収入印紙に貼付は不要とされていますので、収入印紙が必要なケースを把握し、適切な貼付を行うように心掛けましょう。
よくある質問
領収書に割印が必要になる場合は?
受取金額が5万円以上の領収書には、収入印紙を貼ったうえで、割印を押す必要があります。詳しくはこちらをご覧ください。
割印に失敗したときの対処法は?
割印に失敗して印影が不鮮明になった場合は、位置をずらして改めて割印を押しましょう。詳しくはこちらをご覧ください。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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