• 更新日 : 2026年1月14日

農業法人とは?設立のメリット・要件・種類や手続きをわかりやすく解説

日本政府が農林水産物・食品の輸出拡大を推進する中、農業への本格参入や規模拡大の鍵となるのが「農業法人」です。

この記事では、農業法人の基礎知識から、株式会社と農事組合法人の違い、設立のメリット・デメリット、そして農地を取得するために必須となる農地所有適格法人の要件まで詳しく解説します。

農業法人とは?

農業法人とは、法人の資格を持って農業を営む組織の総称であり、特定の法律名ではありません。個人ではなく組織として、土地を活用した栽培や動物の飼育を行う形態を指します。

農業法人の現在の正式名称は「農地所有適格法人」であり、旧名称が「農業生産法人」です。両者は実質的に同じものを指しています。農業法人が農地を所有(売買)して農業を行うためには、この「農地所有適格法人」としての要件を満たす必要があります。

参考:農業法人について|農林水産省

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農業法人の種類は?

農業法人は、農業協同組合法が定める「農事組合法人」と、会社法が定める「会社法人」の2つのカテゴリに分類されます。

農業法人の種類は?

農事組合法人とは?

農事組合法人は農業者同士が協力し、共同の利益を増進することを目的とした非営利的な法人です。構成員は原則として農家に限られ、サラリーマンなどが単独で設立することはできません。事業内容も農業に関連するものに限定されます。

農事組合法人は、共同利用施設の設置や農作業の近代化などを目的に設立される「1号法人」と、自ら農業経営や関連事業を行う「2号法人」に分けられます。

  • 1号法人:共同利用施設の設置や農作業の機械化などを目的とする法人
  • 2号法人:自ら農業経営を行う法人

参考:農事組合法人とは(設立方法も含む)|農林水産省

会社法人(株式会社・合同会社など)とは?

会社法人は、会社法で定められた営利法人です。営利を目的とし、一般的なビジネスとして農業を行いたい場合に適しています。会社法では、会社を設立する発起人に年齢制限はありません。ただし、未成年者が発起人になる場合は、親の同意が必要になるなど、実務上の制約があります。原則として、日本国内に住所がある18歳以上の人であれば、誰でも会社を設立可能で、広く出資者を募ったり、他業種との連携もしやすい点が特徴です。

会社法人の種類
  • 株式会社:農業法人全体の約8割以上を占める最も一般的な形態です。
  • 合同会社株式会社に次いで採用される形態で、設立コストが比較的安価です。

農地を所有できる農地所有適格法人の要件は?

農業法人が農地を所有・購入するためには、「農地所有適格法人」として認められる必要があり、以下の4つの厳格な要件をすべて満たさなければなりません。

1. 法人形態の要件

認められる法人の種類は以下のいずれかに限定されます。

  • 株式会社(株式譲渡制限会社であること)
  • 農事組合法人(2号法人)
  • 合名会社、合資会社、合同会社

2. 事業内容の要件

法人の主たる事業が「農業」である必要があります。具体的には、直近の売上高の過半数が農業(および関連事業)によるものでなければなりません。

3. 構成員(議決権)の要件

総議決権の過半数が「農業関係者」でなければなりません。

農業関係者とは、農地の権利提供者や常時従事者などを指します。農業に関係のない法人や個人の出資(議決権)は、原則として総議決権の1/2未満である必要があります。

4. 役員の要件

以下の2点を満たす必要があります。

  1. 役員の過半数が、その法人の農業に常時従事(原則年間150日以上)する構成員であること。
  2. 役員または重要な使用人(農場長等)のうち1名以上が農作業に従事(原則年間60日以上)すること。

農業法人化のメリットは?

個人経営から法人化することで、対外的な信用力の向上や経営の効率化など、多くのメリットが得られます。

メリット1. 対外信用力の向上

法人化することで、取引先や金融機関からの信用度が大きく向上します。法令遵守(コーポレートガバナンス)の体制が整っているとみなされやすいためです。これにより、取引先からの優遇や、金融機関からの融資・制度利用がスムーズになるほか、優秀な人材の採用・定着にも有利に働きます。

メリット2. 経営の透明化・近代化

「家計」と「経営」が分離され、経営状態が透明化されます。従来の家族経営的な農業から脱却し、企業としての財務管理が可能になります。外部からの資金調達もしやすくなるため、農地拡大や設備投資など、経営の大規模化・効率化を進めることができます。

メリット3. 経営の多角化(6次産業化など)

農業以外の関連事業(加工・販売・観光など)への展開や、法人特有の税制メリットを享受できます。生産(1次)だけでなく、加工(2次)・販売(3次)を手掛ける「6次産業化」が進めやすくなります。

また、税制面では、個人事業主の所得税(累進課税)に比べ、一定税率の法人税が適用されるため、利益規模によっては大きな節税効果があります。さらに、欠損金の繰越控除期間が個人(3年)よりも法人(10年)の方が長いのも利点です。

農業法人化のデメリットは?

法人化はメリットばかりではありません。以下のコストやリスクを理解しておく必要があります。

デメリット1. 経営コストの増加

社会保険への加入義務など、金銭的な負担が増えます。法人化して従業員を雇用する場合、条件を満たす従業員の社会保険加入が必要です。また、経営者自身も国民健康保険から社会保険へ切り替わるため、会社の保険料負担が発生します。

デメリット2. 農地所有要件の維持

「農地所有適格法人」であり続けるためには、厳格な要件を満たし続ける必要があります。特に「役員の過半数が農業に常時従事する」という要件は、役員の高齢化や退職によって満たせなくなるリスクがあります。要件を欠くと農地を所有できなくなるため、組織体制の維持管理が重要です。

デメリット3. 事務負担の増加

税務処理や労務管理が複雑化し、専門家への依頼が必要になります。複式簿記による会計処理や、決算申告、社会保険の手続きなど、事務作業が大幅に増えます。通常は税理士や社会保険労務士との契約が必要となり、その顧問料も発生します。

農業法人の設立手続きと流れは?

一般的な株式会社(農業法人)を設立するフローは以下の通りです。特に資本金や役員構成の決定時には、農地法の要件を意識する必要があります。

1. 事業計画書の作成

事業計画書の作成は、設立後の経営を安定させ、融資や農地取得の審査をスムーズにするために重要なステップです。

農業は天候リスクや市場変動の影響を受けやすいため、事前に収支計画や販売戦略を練っておくことが重要です。また、農地を取得する際や金融機関から融資を受ける際には、具体的で実現可能性の高い事業計画書の提出が求められます。

以下のテンプレートなどを活用し、整理することをおすすめします。

2. 会社基本情報の決定

会社名、本店所在地、事業内容、資本金、役員構成などの基本情報を決定します。

  1. 会社名
  2. 本店所在地
  3. 事業内容
  4. 資本金の額
  5. 持株比率
  6. 役員構成

農地所有適格法人の認定を目指す場合、この段階で「持株比率」や「役員構成」が法的な要件(議決権の過半数が農業関係者など)を満たしているかを入念に確認してください。また、株式の譲渡制限を設けることが必須です。

3. 定款の作成と認証

会社の基本ルールをまとめた定款を作成し、公証役場で認証を受けます。

定款には、商号、目的、本店所在地、設立に際して出資される財産の価額などを記載します。現在は電子定款を利用することで、紙の定款で必要な収入印紙代(4万円)を節約することが可能です。

4. 出資の履行と設立時役員の選任

通常は発起人が設立時発行株式を引き受け、その出資に係る金銭を払い込みます。そして、発起人は設立時役員会を開催し、設立時役員を選任します。さらに、設立時役員会は代表取締役を選任します。

5. 設立登記・諸官庁への届出

法務局へ設立登記を申請し、法人として正式に成立させます。登記完了後は、速やかに以下の機関へ各種届出を行います。

  • 税務署:法人設立届、青色申告の承認申請書、給与支払事務所等の開設届出書、源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書
  • 都道府県税事務所および市町村役場:法人設立届
  • 年金事務所:健康保険・厚生年金新規適用届、健康保険・厚生年金被保険者資格取得届、健康保険被扶養者届
  • 労働基準監督署:労働保険関係成立届、適用事業報告書
  • ハローワーク:雇用保険適用事業所設置届、雇用保険被保険者資格取得届

農地を取得する場合は、法人設立手続きとは別に、農業委員会への許可申請(農地法第3条許可申請)を行い、許可を得る必要があります。

参考:C1-4 内国普通法人等の設立の届出|国税庁

農業法人の設立にかかる費用は?

株式会社として農業法人を設立する場合、以下の法定費用がかかります。

  • 定款認証手数料:3〜5万円(資本金額等による。電子定款なら印紙代不要)
  • 登録免許税:最低15万円(資本金額による)
  • その他:会社印鑑作成費、印鑑証明書取得費など

※司法書士等へ依頼する場合は、別途報酬(数万円〜十数万円)が必要です。

農業法人の設立に関する参考データは?

農業法人の設立を検討する際、法人設立の手続きがどの程度大変なのか、事前に把握しておくことが大切です。ここでは、会社設立経験者への調査データをもとに、手続きの難易度について解説します。

会社設立経験者の約65%が「大変だった」と回答

マネーフォワード クラウドで実施した調査によると、会社設立の準備や手続きについて「大変だった」または「少し大変だった」と回答した経験者は全体の64.7%に上り、3分の2近くの人が何らかの困難を感じていたことが分かりました。

設立年数別に見ると、設立1年以内の企業では44.4%が「大変だった」と回答しており、全区分で最も高い割合となっています。設立直後で記憶が鮮明なためか、手続きの複雑さがより強く印象に残っていると考えられます。また、設立2〜3年以内の企業では「大変だった」「少し大変だった」の合計が82.9%に達し、最も高い数値を示しました。

出典:マネーフォワード クラウド、先輩起業家が一番困ったことは?【会社設立の意思決定調査】(回答者:会社設立の経験がある方1,040名、集計期間:2024年1月)

農地所有適格法人の要件が手続きをより複雑に

農業法人の設立では、一般的な株式会社設立の手続きに加えて、農地所有適格法人の要件を満たすための準備が必要です。手続きの複雑さを実感する経験者が多い中、農業法人の場合は持株比率や役員構成について農地法の要件を詳細に確認しなければなりません。役員の過半数が法人の農業に常時従事(年間150日以上)する必要があるなど、一般的な法人設立とは異なる厳格な基準が設けられています。さらに設立後も税務署、都道府県税事務所、年金事務所、労働基準監督署、ハローワークへの届出が必要です。農業での起業を成功させるには、これらの複雑な要件と手続きを理解し、計画的に準備を進めましょう。

農業での起業は法人化がおすすめ!

日本の農業は、少子高齢化や国際競争の激化など厳しい環境にありますが、高品質な農産物は海外でも高い人気を誇ります。 こうしたチャンスを活かすためにも、対外信用力が高く、経営の多角化や人材確保に有利な「農業法人」としての起業・転換は非常に有効な選択肢です。

ただし、設立には「農地所有適格法人」の複雑な要件をクリアする必要があります。メリットとデメリット、そして必要な手続きを十分に理解した上で、計画的に準備を進めましょう。


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