- 更新日 : 2026年1月14日
持株比率とは?議決権比率・出資比率との違いや計算方法、経営に与える影響などを簡単に解説
持株比率は、会社の経営権(支配権)の所在を示す重要な指標です。特定の株主が、会社の発行済株式総数のうち何パーセントを保有しているかを示します。
しかし、安定した経営を行うためには、表面的な「持株比率」と、実質的な経営への影響力を示す「議決権比率」との違いを正確に理解することが不可欠です。
この記事では、持株比率の基本的な定義から、間違えやすい用語(議決権比率・出資比率・持分比率)との違い、法的に定められた株主の権利、創業者が必要な比率の目安、比率が低い場合の対処法まで詳しく解説します。
目次
持株比率とは?
持株比率(もちかぶひりつ)は、特定の株主がその会社の発行済株式総数のうち、どれだけの割合を保有しているかを示す数値です。株式保有割合とも呼ばれます。
また、英語では “Shareholding Ratio” や “Ownership Percentage”(所有比率)などと表現されます。
持株比率と議決権比率の違いは?
経営への影響力を測る上で最も重要なのが「議決権比率」です。
- 持株比率
発行済株式総数に対する保有株式の割合 - 議決権比率
株主総会で投票できる「総株主の議決権の数」に対する議決権の割合
この2つの比率に違いが生まれる最大の理由は、自己株式(会社自身が保有する自社株)や議決権制限株式(議決権がない、または一部制限された種類株式)の存在です。
これらの株式は発行済株式総数には含まれますが、株主総会での議決権はありません。実質的な経営支配権(普通決議や特別決議への影響力)を測るには、持株比率ではなく、この議決権比率を見なければなりません。
持株比率と出資比率の違いは?
出資比率は、主に会社設立時に、資本金に対して各発起人がいくら出資したかの割合を指します。
通常、設立時は「出資比率=持株比率」となるよう株式が割り当てられます。しかし、設立後に増資(新株発行)や株式譲渡が行われると、当初の出資比率と現在の持株比率は一致しなくなります。経営への影響力を判断する際は、必ず最新の持株比率(議決権比率)を確認しなければなりません。
持株比率と持分比率の違いは?
持分比率は、文脈によって意味が異なりますが、株式会社の経営においては「持株比率」と明確に区別されます。
- 会計上の持分比率
他の会社の議決権を20%以上50%以下保有する場合など、会計処理(持分法)の適用を判断する際に使われる用語です。 - 法律上の持分(社員の持分)
主に合同会社(LLC)や合名会社といった「持分会社」で使われる用語で、株式会社の「株式」とは異なる概念です。
株式会社の経営権を議論する際は「持株比率」および「議決権比率」を用います。
持株比率の計算方法は?
持株比率は、以下の式で簡単に計算できます。
例えば、発行済株式総数が1,000株の会社で、Aさんが300株保有している場合、Aさんの持株比率は(300 ÷ 1,000)× 100 = 30% です。
一方、株主総会での影響力を測る議決権比率の計算式は以下の通りです。
※総株主の議決権の数 = 発行済株式総数 - 自己株式数 - 議決権のない株式数
自己株式は、会社が一度発行した株式を市場や株主から買い戻して自ら保有しているものですが、この自己株式には議決権が認められていません(会社法第308条第2項)。
自己株式の存在は、持株比率(見た目)と議決権比率(実質)に大きな差を生みます。
- 発行済株式総数:10,000株
- 会社が保有する自己株式:2,000株
- Aさんの保有株式数:4,000株
持株比率
議決権比率
- 総株主の議決権の数 = 10,000株 – 2,000株 = 8,000個
- Aさんの議決権比率 =(4,000個 ÷ 8,000個)× 100 = 50%
この場合、Aさんの持株比率は40%(過半数未満)ですが、実質的な議決権比率は50%です。経営権(過半数)のラインに達しているかどうかの判断が全く変わってくるため、常に議決権比率で判断することが重要です。
持株比率が経営に与える影響は?
議決権比率の高さに応じて、株主が行使できる権利は会社法で明確に定められています。特に重要な経営支配権のラインは以下の通りです。
| 議決権比率 | 行使できる主な権利・影響 | 決議の種類 |
|---|---|---|
| 100% | 完全な支配。全ての意思決定を単独で可能。 | – |
| 3分の2以上 | 特別決議を単独で可決できる。 | 特別決議 |
| 2分の1超 | 普通決議を単独で可決できる(=経営権の掌握)。 | 普通決議 |
| 3分の1超 | 特別決議を単独で阻止できる(=拒否権)。 | 特別決議 |
3分の2以上(特別決議の単独可決)
議決権比率の3分の2以上は、会社の根幹に関わる特別決議を単独で可決できるラインであり、経営を安定的にコントロールするための理想的な比率とされます。
特別決議は、合併、会社分割、事業の全部譲渡、定款の変更、監査役の解任、会社の解散など、特に重要な経営判断に必要な決議です。この比率を確保していれば、経営者はM&Aや組織再編といった重大な経営判断を自らの主導で進めることができます。
2分の1超(普通決議・経営権)
議決権比率の2分の1超(過半数)は、日常的な経営判断を行う普通決議を単独で可決できるラインであり、実質的な経営権(支配権)を意味します。
取締役や監査役の選任、取締役の解任、役員報酬の決定、剰余金の配当など、会社経営の基本事項は普通決議で決定されます。この比率を確保することで、経営陣を自らの意向に沿う人物で固め、経営方針を決定できます。
3分の1超(特別決議の拒否権)
議決権比率の3分の1超は、単独で特別決議を阻止できるラインです。これは拒否権とも呼ばれます。
特別決議の可決には3分の2以上の賛成が必要です。逆に言えば、3分の1を超える反対があれば、可決を阻止できます。経営権は握れなくても、会社にとって重大な変更をストップさせる強力な影響力を持ちます。
3分の1未満
過半数や3分の1に満たなくても、一定の持株比率(議決権比率)は経営や会計・税務上で重要な意味を持ちます。
- 20%以上
会計・税務上、他社の議決権の20%以上を保有すると、その会社は関連会社として扱われる基準の一つとなります(持分法適用の判定基準)。 - 15%以上
同じく会計・税務上、その他の関係会社(議決権の15%以上20%未満を保有し、かつ一定の要件を満たす場合)の基準となることがあります。 - 10%以上
少数株主権として、会社の解散請求権(重大な経営上の問題がある場合など)を行使できます。 - 3%以上
少数株主権として、株主総会の招集請求権や、会計帳簿の閲覧・謄写請求権(経営の透明性を確認するため)を行使できます。 - 1%以上
少数株主権として、株主提案権(株主総会で特定の議題や議案を提案する権利)を行使できます。
創業者・経営者に必要な持株比率は?
創業者は、将来の経営の安定性を見据えて持株比率を設計することが極めて重要です。
経営への影響力を守るなら3分の2以上
創業者が経営の主導権を完全に掌握し、M&Aや組織再編などの重大な意思決定を迅速に行うためには、議決権の3分の2以上を確保することが理想です。最低でも、経営権のラインである過半数を割り込まないことが絶対条件です。
出資を受けるなら可能な限り多く持つ
ベンチャーキャピタルなどから資金調達(第三者割当増資)を行うと、新株が発行されて発行済株式総数が増えるため、既存株主(創業者)の持株比率は必ず低下(希薄化)します。
将来の資金調達ラウンドを重ねても、自身の比率が経営権を維持できるライン(過半数や3分の2)を割り込まないよう、創業時の比率は可能な限り高く設定し、資本政策を慎重に立てる必要があります。
持株比率が低下するリスクと対処法は?
経営者の持株比率は、意図せず低下するリスクがあります。
- 資金調達:増資により発行済株式総数が増加する。
- 相続・事業承継:株式が経営に関心のない相続人に分散する。
- ストックオプションの行使:従業員などが権利を行使し、新株が発行される。
経営権が不安定になるほど比率が低下した場合、以下の対処法が考えられます。
1. ほかの株主との信頼関係を築く
他の株主と良好な関係を築き、経営方針への理解を得ることで、株主総会での議決権行使において賛同を得やすくします。
2. 持ち株比率を上げる(買い戻す)
- 自己株式の取得:会社が他の株主から株式を買い戻します。これにより総議決権数が減るため、経営者の議決権比率が相対的に上昇します。
- 経営者による買い増し:経営者個人が他の株主から株式を買い取ります。
3. 比率以外の手段で影響力を確保する
- 株主間契約:他の株主と「議決権を特定の方向に(経営者に賛同して)行使する」といった契約を結びます。
- 種類株式の活用:定款を変更し、特定の重要事項について拒否権を持つ株式(黄金株)などを発行し、経営者がそれを保有する方法もあります。
持株比率に関してよくある質問
最後に、持株比率に関してよくある質問とその回答をまとめました。
上場企業の代表者の持株比率はどう調べる?
上場企業の代表者や大株主の持株比率は、金融庁のEDINET(電子開示システム)で公開されている「有価証券報告書」で確認できます。報告書内の「大株主の状況」の欄に、上位10名程度の株主名と持株比率が記載されています。
持株比率が変わっても登記変更は不要?
不要です。 株式の売買や相続、増資などで株主やその持株比率が変わっても、法務局への登記変更(変更登記申請)は必要ありません。 株主の氏名や持株比率は登記事項証明書(登記簿謄本)の記載事項ではなく、会社が管理する「株主名簿」によって管理されます。
持株比率の正しい理解が経営安定の基盤に
持株比率は、会社の支配権に直結する経営の根幹です。
特に重要なのは、発行済株式総数に基づく「持株比率」と、自己株式などを除いた実質的な「議決権比率」を明確に区別することです。経営判断は、必ず後者の「議決権比率」に基づいて行う必要があります。
会社設立時から3分の2や過半数といったラインを意識し 、資金調達や事業承継においても比率の変動に注意を払うことが、安定した会社経営を守るための第一歩となります。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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