- 更新日 : 2025年12月11日
売上なしの合同会社も税金がかかる?申告義務や赤字・休眠時の取り扱いも解説
合同会社は、売上がない状態でも法人住民税の均等割が発生し、税務申告の義務も原則として免除されません。適切な対応を怠ると、将来的なペナルティや不利益につながる可能性があります。
この記事では、合同会社で売上がない場合にかかる税金とかからない税金を分類し、税負担を減らす方法や、申告しない場合のリスクについてわかりやすく解説します。
目次
売上なしの合同会社も税金がかかる?
売上や利益がゼロであっても、合同会社が法人として存在する限り、支払い義務が生じる可能性のある税金が存在します。
法人住民税の均等割
売上がない合同会社でも、原則として法人住民税の均等割の納税義務が発生します。
これは、会社の所得(利益)の有無にかかわらず、法人がその地域(都道府県・市区町村)に存在すること自体に対して課される税金だからです。
資本金1,000万円以下・従業員50人以下の場合、多くの自治体で年間合計7万円(都道府県民税2万円+市区町村民税5万円)が最低ラインとなります。
法人住民税均等割の例(東京都23区内・従業員50人以下の場合)
| 資本金等の額 | 都道府県民税 (均等割) | 市区町村民税 (均等割) | 合計(年間) |
|---|---|---|---|
| 1,000万円以下 | 20,000円 | 50,000円 | 70,000円 |
| 1,000万円超 1億円以下 | 50,000円 | 130,000円 | 180,000円 |
税額は資本金の額や従業員数によって変動します。また、横浜市、などの一部の都市では、標準税率より高い税率(超過課税)を採用している場合があります。
正確な金額は、必ずご自身の合同会社が登記されている自治体のウェブサイトでご確認ください。
資産にかかる税金(固定資産税・自動車税など)
合同会社名義で特定の資産を所有している場合、売上の有無に関わらず以下の税金が課されます。
- 固定資産税:土地、建物(事務所、店舗など)を会社名義で所有している場合に課税されます。
- 償却資産税:PC、コピー機、応接セットなどで、一定額以上の事業用資産を所有している場合に課税されます。
- 自動車税・軽自動車税種別割:会社名義で車両を所有している場合に課税されます。
支払い・契約時に発生する税金(源泉所得税・印紙税)
売上がなくても、特定の支払い(支出)や契約行為を行う際には税金が発生します。
- 源泉所得税
会社が役員報酬や従業員給与を支払っている場合、その支払額に応じた所得税を天引き(源泉徴収)し、国に納付する義務があります。ただし、売上がなく役員報酬を0円に設定している場合は、源泉徴収すべき税額も発生しません。
参考:令和7年分 源泉徴収税額表|国税庁 - 印紙税
請負契約書や金銭消費貸借契約書(借入契約など)といった、印紙税法で定められた課税文書を作成する際には、契約金額に応じた収入印紙を貼付・消印して納税する必要があります。
参考:No.7140 印紙税額の一覧表(その1)第1号文書から第4号文書まで|国税庁
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売上なしの合同会社にかからない税金は?
売上がなく、赤字の状態であれば、以下の税金は原則として発生しません。
所得にかかる税金(法人税・法人事業税など)
法人税、地方法人税、法人事業税、および法人住民税の法人税割は、すべて会社の所得(利益)に対して課税されます。
売上がゼロで、経費(事務所家賃、光熱費、設立費用など)が発生している場合、その事業年度の所得はマイナス(=赤字)です。課税対象となる所得が存在しないため、これらの税額は0円となります。
- 法人税(国税)
- 地方法人税(国税)
- 法人事業税(地方税)
- 法人住民税の法人税割(地方税)
売上にかかる税金(消費税)
消費税(および地方消費税)は、原則として基準期間(2期前)の課税売上高が1,000万円を超える場合に納税義務が発生します。
設立1期目・2期目の合同会社は、この基準期間が存在しないため、原則として消費税の納税義務は免除されます(免税事業者)。また、3期目以降であっても、売上がない状態であれば、仮受消費税が無いため、消費税の納税義務はありません。
参考:消費税のしくみ|国税庁
売上なしの合同会社も決算・確定申告は必要
たとえ売上がゼロで納める税金が均等割だけであっても、合同会社は事業年度ごとに決算書の作成と税務申告を行う法的な義務があります。
決算書の作成義務
合同会社は、会社法や税法に基づき、売上がなくても日々の取引を記録した帳簿を作成し、それに基づいた決算書類(貸借対照表、損益計算書など)を作成・保存する義務を負います。
売上なしでも、均等割の支払いや経費の発生、資本金の変動などがあれば、それらはすべて会計上の取引です。これらを適切に記帳し、事業年度末に決算書としてまとめる必要があります。これらの帳簿や書類は、法律で定められた期間(原則7年、会社法では10年)保存しなければなりません。
確定申告の義務
合同会社は、課税所得がゼロで納付すべき法人税額がなくても、税務署、都道府県税事務所、市区町村役場への確定申告は必須です。
- 申告先:税務署(国税)、都道府県税事務所、市区町村役場(地方税)
- 申告期限:原則として、各事業年度終了の日の翌日から2ヶ月以内
売上なしの合同会社が申告しない場合のペナルティは?
合同会社の売上がないからといって決算申告を怠ると、税務上のペナルティや経営上の重大なリスクを負うことになります。
青色申告の承認取り消し
無申告の最大のデメリットは、青色申告の承認取り消しのリスクです。
2期連続で期限内に申告書を提出しない場合、税務署は青色申告の承認を取り消すことができます。 一度取り消されると、取り消し後の事業年度以後に発生した欠損金は繰越控除(赤字の繰り越し)ができなくなってしまいます。将来黒字化した際に、過去の赤字を一切考慮せず、多額の税金を支払うことになりかねません。
加算税や延滞税の発生
申告を怠ると、納付すべき税金に対してもペナルティが課されます。
- 無申告加算税:期限後に申告した場合に課されます(ただし、赤字で法人税額がゼロなら結果的に加算税もゼロとなるケースが多いです)。
- 延滞税:納付すべき法人住民税の均等割を期限までに納付しなかった場合に、遅れた日数に応じて課されます。
税務調査のリスクと信用の低下
申告を長期間怠っていると、税務署から無申告法人としてマークされ、税務調査の対象となる可能性が高まります。
また、決算書が確定していない状態では、金融機関からの融資や取引先との契約が困難になり、社会的信用力が著しく低下します。
売上なしの合同会社の税負担を減らす方法は?
売上がない状態が長期化しそうな場合は、以下の選択肢も検討できます。
休眠
休眠とは、法人格は存続させたまま、一切の事業活動を停止している状態を指します。休眠届を提出することで、法人住民税の均等割が免除または減額される可能性があります。
ただし、均等割の取り扱いは自治体によって異なります。 例えば、東京都のように「休眠中でも均等割は原則課税される」と明確にしている自治体もあるため、必ず事前に確認が必要です。また、休眠中でも法人格は存続するため、原則として「税務申告」の義務は残ります。これを怠ると、青色申告の承認が取り消されるリスクがあります。
清算・解散
清算・解散とは、会社を完全に消滅させる法的な手続きです。
将来的に事業を再開する可能性が全くなく、均等割の負担や申告の手間を完全になくしたい場合の最終的な選択肢です。解散登記を行い、財産整理を経て、清算結了の登記が完了すると、会社の法人格は完全に消滅します。
清算が結了すれば、法人格がなくなるため、以降の税金の負担(均等割など)や申告義務は一切なくなります。ただし、手続きが複雑で、登記費用(登録免許税など)がかかります。一度清算すれば、同じ会社で事業を再開することはできません。
売上なしの合同会社に関してよくある質問
最後に、売上がない合同会社の税金に関してよくある疑問点をまとめます。
設立1年目で売上なしの場合も申告は必要?
はい、設立1年目であっても、事業年度が終了すれば決算と確定申告の義務があります。
設立にかかった費用(定款認証代、登録免許税、開業準備費など)は「創立費」「開業費」として経費計上し、赤字申告(欠損金の申告)を行うことができます。
役員報酬をゼロにすれば源泉所得税は不要?
はい、役員報酬の支払額を0円に設定している場合、源泉徴収すべき所得税もゼロになるため、納付は発生しません。
源泉所得税は、支払われる給与・報酬額に基づいて計算されるためです。売上がない見込みであれば、期初(事業年度開始から3ヶ月以内)に役員報酬を定期同額給与として0円に設定しておくのがシンプルです。
売上なしの合同会社も最低7万円の均等割が発生する
合同会社を運営する上で、売上なしの状態であっても、法人住民税の均等割は原則として発生します。また、確定申告を怠ると、青色申告の取り消しという重大なペナルティを受けるリスクがあります。
売上がない時期は、税理士に依頼せずご自身で申告を試みる方も多いですが、将来のメリットを確実に享受するためにも、申告義務だけは必ず果たしましょう。活動の長期停止を考える場合は休眠や清算の選択肢も視野に入れて判断することが賢明です。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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