• 作成日 : 2026年7月16日

運送委託契約書とは?記載項目・標準貨物自動車運送約款との関係・印紙税を解説

Point運送委託契約書に必要な記載項目とは?

運送委託契約書は、貨物の運送条件・責任分担・料金を明確にし、トラブルを防ぐための書面です。

  • 基本契約と個別契約を分けて運用する
  • 約款で不足する個別条件は契約書で補う
  • 継続取引の基本契約書は印紙4,000円

Q. 運送委託契約書に収入印紙は必要ですか?

A. 紙の契約書は内容により第1号または第7号文書に該当し印紙が必要ですが、電子契約なら不要です。

運送委託契約書は、荷主が運送会社などに貨物の運送を依頼する際、業務範囲、運送料、責任分担、事故時の対応などを明確にする契約書です。継続的に配送を依頼する場合は、運送委託基本契約書や個別契約書を組み合わせて運用するケースもあります。

本記事では、運送委託契約書の意味、標準貨物自動車運送約款との関係、主な記載項目や作成時の確認点などを解説します。

目次

運送委託契約書とは?

運送委託契約書とは、荷主が運送人に貨物の運送を委託し、運送人が対価を受けて運送を行う条件を定める書面です。貨物の種類、配送先、運送料、事故時の責任などを明文化することで、取引後の認識違いを防ぎます。

運送委託契約書は貨物運送の条件を明確にする書面

運送委託契約書の役割は、誰が、何を、どこからどこまで、いくらで運ぶのかを明らかにすることです。運送は、荷主、元請運送事業者、下請運送事業者、倉庫会社、納品先など複数の関係者が関わるため、条件が曖昧なままだと責任の所在が不明確になりやすい取引です。

貨物が破損した場合、梱包不備によるものなのか、積込み時の扱いによるものなのか、輸送中の事故によるものなのかで責任の考え方は変わります。契約書で業務範囲、受渡方法、検品方法、事故報告の期限を定めておけば、問題発生時の判断基準を持てます。

運送委託契約書と運送契約書はほぼ同じ意味で使われる

運送委託契約書と運送契約書は、実務上かなり近い意味で使われます。一般には、荷主が運送業務を外部に委託する文脈では「運送委託契約書」、運送そのものの契約条件を広く指す場合は「運送契約書」と表現されます。

ただし、契約書の名称だけで法的性質が決まるわけではありません。表題が「業務委託契約書」であっても、内容が貨物の運送であれば、実質的には運送委託契約として扱われます。

単発契約と基本契約では書くべき内容が変わる

1回限りの運送を依頼する場合は、貨物、数量、集荷場所、納品場所、運送料、運送日などを個別に詳しく記載します。継続的に運送を依頼する場合は、共通ルールを基本契約書に定め、個別の配送条件を発注書、配送指示書、個別契約書で指定する形が一般的です。

継続取引では、基本契約書に支払条件、損害賠償、再委託、秘密保持、契約解除、反社会的勢力排除などを定めます。そのうえで、個別契約では配送日時、車種、積地、卸地、運賃、附帯作業の有無を指定します。この分け方により、毎回同じ条項を作り直さずに済み、契約管理もしやすくなります。

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運送委託契約書と標準貨物自動車運送約款の関係は?

運送委託契約書を作成する際は、標準貨物自動車運送約款との関係を確認しましょう。約款は運送人が定める運送ルールであり、契約書に定めのない事項を補う役割を持ちます。

国土交通省は、貨物自動車運送に関する標準運送約款を公表しています。一般貨物自動車運送事業者が標準貨物自動車運送約款と同一の約款を用いる場合、その約款が運送契約の内容として機能します。

標準貨物自動車運送約款は運送条件の標準ルール

標準貨物自動車運送約款とは、貨物自動車による運送に関する標準的な契約条件を定めたものです。引受け、貨物の受渡し、運賃・料金、事故時の責任、損害賠償など、運送取引で問題になりやすい事項が定められています。

約款は、個別の契約書にすべての条項を書き込まなくても、一定の共通ルールを取引に適用できる仕組みです。ただし、荷主側から見れば、約款の内容を確認しないまま契約すると、想定より運送人の責任範囲が狭い、免責事由が広い、損害賠償の請求方法に制約があるといった問題に気づかないおそれがあります。

参考:標準運送約款|国土交通省

契約書と約款の優先関係を明記すると解釈しやすい

運送委託契約書では、契約書、個別契約、運送約款のどれを優先するのかを定めておくと、解釈の混乱を避けやすくなります。一般には、個別契約、基本契約書、運送約款、法令の順に優先順位を置く設計が考えられます。

たとえば、基本契約書に「本契約および個別契約に定めのない事項については、運送人の定める運送約款を適用する」と定めることがあります。さらに、個別契約と基本契約書の内容が異なる場合は、個別契約を優先するのか、基本契約を優先するのかも書いておくと実務上扱いやすくなります。

約款任せにせず個別条件は契約書で補う

標準貨物自動車運送約款がある場合でも、すべてを約款任せにするのは避けたほうがよいでしょう。約款は標準的なルールであり、自社の商品特性、配送条件、納品先の要請、温度管理、時間指定、荷役作業などを細かく反映できるとは限らないためです。

たとえば、精密機器、食品、医薬品、危険物、高額品を運ぶ場合は、通常の貨物よりも管理条件を細かく定める必要があります。温度帯、積付方法、輸送中の記録、事故時の連絡先、保険加入の有無などは、契約書または個別契約で補うことで、実態にそくした運用が可能になります。

運送委託契約書に記載すべき項目は?

運送委託契約書には、業務内容、運送料、支払条件、荷主と運送人の義務、事故時の対応、損害賠償、再委託、契約期間などを記載しましょう。継続取引では、基本契約と個別契約の関係も定めるとよいでしょう。

記載項目 記載する内容の例 確認する観点
契約の目的 荷主が運送人に貨物運送を委託する旨 運送以外の保管・荷役まで含むか
運送業務の内容 貨物、区間、配送方法、車種、納品条件 個別契約で指定する項目との分担
運送料・料金 運賃、附帯料金、待機料、キャンセル料 料金表や見積書との整合性
支払条件 締日、請求書提出日、支払期日、振込手数料 遅延時の扱い
荷主の義務 梱包、貨物情報の提供、危険物申告 申告漏れ時の責任
運送人の義務 善管注意義務、法令遵守、事故報告 報告期限と報告方法
再委託 再委託の可否、事前承諾、責任範囲 下請運送会社を使う場合の管理
損害賠償 破損、滅失、延着、第三者損害 上限額や免責事由
保険 運送保険、貨物保険、加入者、費用負担 高額貨物への対応
契約期間・解除 契約期間、更新、解除事由 継続取引の終了方法
約款との関係 契約書にない事項への約款適用 優先順位の明確化
合意管轄 紛争時の裁判所 取引先所在地との関係

【運送業務の内容】貨物・区間・作業範囲まで定める

運送業務の内容では、運ぶ貨物、積地、卸地、運送方法、使用車両、納品条件を明確にしましょう。継続取引では基本契約書に共通ルールを置き、個別配送ごとの条件は発注書や配送指示書で指定する形が適しています。

注意したいのは、運送に付随する作業の扱いです。荷積み、荷降ろし、検品、棚入れ、開梱、回収、伝票処理などを運送人に依頼する場合、それが運送料に含まれるのか、別料金なのかを定めたほうがトラブル回避のためには良いと言えます。

【運送料】運賃と附帯料金を分けて定め

運送料の条項では、基本運賃だけでなく、待機料、荷役料、有料道路料金、燃料サーチャージ、キャンセル料などの扱いを整理しましょう。料金表を別紙にする場合は、その別紙が契約の一部になることを明記します。

物流取引では、運送そのもの以外に費用が発生しやすい点があります。たとえば、納品先で長時間待機した場合、ドライバーが荷降ろしを行った場合、再配達が発生した場合などです。これらを契約書に書かないまま運用すると、荷主は「運送料に含まれる」と考え、運送人は「別料金」と考える可能性があります。

【事故時の報告と損害賠償】実務に合わせて書く

貨物の破損、滅失、延着、誤配送、盗難、交通事故が発生した場合に備え、報告方法、報告期限、証拠資料、賠償範囲を定めます。事故対応の初動が遅れると、原因調査や保険請求が難しくなるため、連絡ルールを契約上も整えましょう。

損害賠償では、直接損害に限るのか、逸失利益や営業損害まで含めるのか、賠償上限額を設けるのかが重要なポイントになります。荷主側は損害回復の余地を確保したい一方、運送人側は無制限の責任を避けたい立場です。貨物の価額や保険加入の有無を踏まえ、過度に片方へ偏らない設計にしましょう。

運送委託契約書を作成する流れは?

運送委託契約書は、運送実態を確認し、基本契約と個別契約の分担を決め、料金・責任・約款との関係を整理して作成します。契約書だけでなく、発注書や配送指示書の運用も合わせて設計します。

1. 現在の運送条件を整理する

最初に、現在の運送条件を整理しましょう。確認する内容は、運送する貨物、配送頻度、配送エリア、車種、積込み方法、納品条件、附帯作業、請求方法、トラブル発生時の対応です。

現場の実態を見ずに契約書を作ると、契約書上は整っていても実務で使えない内容になります。契約書作成前に、営業、物流、経理、現場担当者から情報を集めましょう。

2. 基本契約と個別契約の分担を決める

継続的な運送委託では、すべての配送条件を基本契約書に書き込むのではなく、共通条件と個別条件を分けることが多いです。基本契約書には共通ルールを定め、個別契約や発注書には毎回変わる条件を記載しましょう。

基本契約書に入れる内容は、支払条件、損害賠償、秘密保持、再委託、契約期間、解除、約款との関係などです。個別契約に入れる内容は、配送日、積地、卸地、貨物、数量、運送料、車種、時間指定などです。

3. 約款・料金表・発注書との整合性を確認する

契約書案を作成したら、運送約款、料金表、見積書、発注書、配送指示書と矛盾がないかを確認しましょう。契約書では別料金とされている作業が、料金表では運送料込みになっているなどの不整合があると、後で解釈が分かれてトラブルに発展しかねません。

また、契約書に「別途協議」とだけ書きすぎると、実際には何も決まっていない状態になります。金額を毎回固定できない場合でも、料金表、見積承認、発注書、メール合意など、どの方法で決定するのかを記載しておくとトラブルを回避しやすくなります。

運送委託契約書を確認する際の注意点は?

運送委託契約書では、業務範囲、料金、事故時の責任、再委託、約款との関係を重点的に確認しましょう。荷主側と運送人側では、同じ条項でも見るべき観点が異なります。

【荷主側】損害回復と納品品質を確認する

荷主側は、貨物の破損、紛失、延着、誤配送が起きた場合に、運送人へどの範囲で責任を問えるかを確認しましょう。標準約款や契約書に免責事由が定められている場合、想定どおりに賠償を受けられないケースもあります。

また、納品先との関係で、時間指定、検品、伝票処理、返品回収などが発生する場合は、運送人の業務範囲に含まれるかを明確にします。納品品質は荷主の信用にも関わるため、「運ぶ」だけではなく、納品完了の定義まで確認しましょう。

【運送人側】附帯作業と責任上限を確認する

運送人側は、運送以外の作業が無制限に含まれていないかを確認しましょう。荷積み、荷降ろし、仕分け、棚入れ、検品、待機、再配達などが発生する場合、それぞれの料金や対応可否を定めておくと、現場負担を管理しやすくなります。

損害賠償については、貨物価額に比べて過大な責任を負う内容になっていないかを確認しましょう。高額品を扱う場合は、保険加入、事前申告、賠償上限、免責事由を組み合わせて、受けられるリスクの範囲を明らかにしておくべきでしょう。

再委託は許可制・通知制・禁止のいずれかを選ぶ

運送業務では、元請運送事業者が協力会社に再委託することがあります。再委託を完全に禁止すると運用が難しくなる一方、無条件に認めると品質管理や事故時の責任追及が難しくなる場合があります。

契約書では、再委託を事前承諾制にするのか、一定条件のもとで認めるのか、通知だけで足りるのかを定めましょう。再委託先の行為について、元の運送人が責任を負う旨を入れておくと、荷主側は責任の窓口を一本化できます。

運送委託契約書と取適法の関係は?

運送委託契約書では、取適法や物流取引の適正化に関する観点も確認しましょう。取適法では、発荷主から元請運送事業者への一定の運送委託も対象取引に加わる流れがあります。取適法とは従来の下請法のことです。2026年に下請法から取適法へと改正され、併せて、特定運送委託業務にも取適法が適用されることとなりました。

発注内容と支払条件を明確にする姿勢が欠かせない

運送委託では、発注内容、運送料、支払期日、附帯作業、キャンセル時の扱いを明確にしましょう。発注のたびに条件が変わる場合でも、発注書や配送指示書に残る形で管理すると、後から確認しやすくなります。

口頭や電話だけで依頼を重ねると、作業内容と料金の対応関係が不明確になります。荷主が「ついでに」と依頼した作業であっても、運送人側には人件費や時間の負担が発生します。契約書と発注書の両方で、何が有償作業なのかを定めておくことが望ましい運用です。

荷待ち・荷役・附帯作業は契約書で分けて定める

物流現場では、荷待ち時間や荷役作業が争点になりやすい傾向があります。契約書では、運送、荷役、待機、検品、付帯作業を分けて定義し、それぞれの料金発生条件を定めます。

たとえば、納品先で30分を超えて待機した場合に待機料を請求できるのか、ドライバーが荷降ろしを行う場合に荷役料が発生するのかを明記しましょう。これにより、現場の暗黙対応に依存せず、契約上の根拠を持って精算できます。2026年4月より改正物流効率化法が施行され、一定規模以上の荷主に物流効率化に向けた新たな措置が義務づけられました。契約書の作成においては常に最新の法令の動向にも注意しておく必要があります。

運送委託契約書に収入印紙は必要?

紙の運送委託契約書には、内容によって収入印紙が必要になる場合があります。運送に関する契約書は第1号文書、継続的取引の基本となる契約書は第7号文書に該当する可能性があります。

単発の運送契約は第1号文書に該当する場合がある

1回限りの貨物運送について、運送区間や運送料を定めた契約書は、印紙税法上の「運送に関する契約書」として第1号文書に該当する場合があります。税額は契約金額に応じて変わります。

たとえば、特定の貨物を特定の日にA地点からB地点まで運び、運送料を明記する契約書であれば、運送に関する契約書として第1号文書(課税文書)に該当します。見積書、注文書、請書などの形式であっても、契約の成立を証明する内容であれば課税文書に該当する可能性があります。

継続取引の基本契約は第7号文書に該当する場合がある

継続的な運送取引の基本条件を定める契約書は、「継続的取引の基本となる契約書」として第7号文書に該当する場合があります。国税庁は、貨物運送基本契約書を第7号文書に含まれる例として示しています。

第7号文書に該当すると、印紙税額は原則として1通につき4,000円です。ただし、契約期間が3か月以内で更新の定めがない場合など、該当しないケースもあります。契約書に具体的な契約金額が記載されている場合は、第1号文書との関係も確認しましょう。

参考:印紙税法|e-GOV

電子契約では収入印紙の扱いが変わる

電子契約で運送委託契約書を締結する場合、紙の契約書を作成しないため、通常は収入印紙を貼る対象がありません。印紙税は紙の課税文書に対して課されるため、電子契約は印紙コストを抑える手段としても利用されています。

ただし、電子契約にしたから契約管理が不要になるわけではありません。契約データ、締結日、相手方、添付された料金表、発注書との関係を後から確認できる状態にしておきましょう。物流取引では、基本契約と個別発注が分かれるため、電子データの紐づけ管理も大切です。

運送委託契約書は約款と現場運用をつなぐ形で整備しよう

運送委託契約書は、貨物運送の条件を明確にし、荷主と運送人の責任分担を整理するための書面です。標準貨物自動車運送約款がある場合でも、個別の配送条件、附帯作業、料金、事故対応まで約款だけで足りるとは限りません。基本契約書、個別契約、料金表、発注書を連動させることで、トラブルを防ぎやすくなります。運送契約書を作成する際は、印紙税、取適法、再委託、保険、現場の運用まで含めて確認し、自社の物流実態に合う内容へ調整しましょう。

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