- 更新日 : 2025年4月8日
免責条項とは?意味や例文、契約内容が有効・無効となる場合を解説
免責条項とは、ある事由に関する責任を免除するための条項を指し、契約書などに記載されることがあります。Webサイトやアプリの利用規約などでも「…について、当社は一切の責任を負いません」といった一文を見かけたこともあるのではないでしょうか。
当記事ではこの免責条項について言及し、有効性を判断するポイントなど詳しく解説していきます。
目次
免責条項とは?
「免責条項(めんせきじょうこう)」とは、契約の一方の当事者が、取引に伴い損害が発生した場合でも、その責任を負わない・責任を限定することを定めた条項のことです。
免責の意味
「免責」とは、責任を免れることを意味します。
法律用語としては、債務者が負うべき債務を免除すること、または、不法行為を行った者が負うべき損害賠償責任を免除することを指します。
通常、契約当事者の一方が契約上の義務違反や不法行為をはたらき他方当事者に損害を与えてしまった場合、損害を賠償すべき責任を負うこととなるのですが、このようなリスクを回避したり免除したりする場合に「免責」と表現されます。
免責条項の必要性・重要性について
免責条項は、ビジネスを行ううえで起こり得るトラブルや予想外の賠償請求から事業者を守るという重要な役割を果たします。
現代社会において事業者は次のようなさまざまなリスクと隣り合わせで活動をしていますので、その責任を少しでも制限あるいはなくすために活用されています。
- サービスの利用者が、サービスの利用方法を誤り、損害を被ったと主張してくる
- 製品の欠陥により、利用者が怪我を負ったり財産が損害を被ったりした場合の賠償責任
- 事業者側の提供する情報に誤りがあり、利用者が損害を被ったと主張してくる
免責条項を適切に設定しておくことで、事業者は過大な責任を負うことを回避することができます。
またこの条項は、利用者に対する注意喚起という役割も担います。
例えば、「本サービスは、利用者自身の責任で利用してください」といった条項を設けることで、利用者に対してサービス利用に伴うリスクを認識させ、注意を促すことができます。
後述するように免責条項も万能ではありませんが、条項を明確に定めておくことでトラブル発生時の責任の所在を明確にでき、紛争を未然に防ぐ効果も期待できます。
免責条項の具体的な例文
免責条項は、契約の内容や目的、当事者の関係性などによってパターンを分けることができます。ここでいくつか代表的なパターンをご紹介します。
免責条項のパターン | 文例 |
---|---|
サービス利用に伴う損害 | 「本サービスの利用により発生した損害について、当社は責任を負わないものとします。ただし、当社の故意または重過失による損害については、この限りではありません。」 ※SNS、オンラインゲーム、Webサイト、アプリなどの利用規約として置かれることが多い。 |
情報の正確性に関する免責 | 「本サービスで提供する情報について、いかなる保証も行いません」 ※事業者の提供する情報に誤りや不備があったとしても責任を負わないことを意味する。 ※情報ポータルサイト、不動産情報を提供するサービスの利用規約などで置かれることが多い。 |
第三者の行為に関する免責 | 「本サービスを通じて、利用者が他の利用者または第三者と行った取引またはそれらによって生じた損害について、当社は責任を負いません」 ※SNS、フリマアプリ、マッチングサービスなどの利用規約で置かれることが多い。 |
不可抗力による免責 | 「自然災害等、その他当社の責めに帰すべからざる事由により、本サービスの提供が遅延または不能となった場合でも、当社は責任を負いません」 ※地震や台風など、事業者のコントロールがおよばない事由による責任を負わないことを意味する。 ※通信サービス、運送サービス、イベントなどの規約で置かれることが多い。 |
なお、これらの例文はあくまで一例であり、実際の条文は個々のサービスや契約の内容に合わせて設定する必要があります。
免責条項の有効性の判断ポイント
免責について契約書に記載したからといって、どのような場合でも責任を免れることができるわけではありません。
そのため契約書や利用規約などを作成する事業者は、免責条項の扱い方について慎重になる必要があります。有効性に関わる以下のポイントは押さえておきましょう。
消費者契約法上との適合 | 一般消費者との取引では相手方が手厚く保護されるため、事業者間の取引と比べてより慎重に条文を設定する必要がある。特に事業者側に一方的に有利な条項、消費者側が一方的に不利な条項には注意が必要。 |
---|---|
事業者側の過失の程度 | 事業者側の過失に基づく損害について免責しようとする場合、重大な過失や故意に基づく損害については免責の効果が得られない可能性が高い。 |
免責の範囲 | 損害賠償責任の一部のみを免責する条項であれば有効となる可能性が高いが、全部を免責する内容だと無効となる可能性が高くなる。 |
ルールの明確さ | 免責の範囲や条件などがあいまいで、あえて広く解釈できるような表現だと無効になる可能性がある。有効となるためにはできるだけ明確に条文を設けるべき。 |
これらのポイントを踏まえて契約内容を設定することが重要です。
「一切の責任を負わない」と定めても有効?
「一切の責任を負わない」と定めることは、消費者契約法の内容を踏まえると、原則として認められません。同法の第8条では、“次に掲げる消費者契約の条項は、無効とする。”と柱書を置いて、無効となるケースをいくつか列挙しています。
そのうちの1つがこちらです。
事業者の債務不履行により消費者に生じた損害を賠償する責任の全部を免除し、又は当該事業者にその責任の有無を決定する権限を付与する条項
ここでいう“全部を免除”とは、事業者が一切の損害賠償責任を負わないとすることを意味し、少なくとも消費者契約法が適用される取引において、事業者側が義務を果たさなかったにも関わらずその責任を負わないとするルールは無効となります。
また、うえの条文の後段にあるように、事業者自身が責任の有無を決められるようなルールを設けることも実質全部の免除ができることになってしまいますので無効となります。
なお、仮にこの規定に従い免責条項が無効になってしまったとしても、契約自体が無効になるわけではありません。当該条項のみが無効となるのみで、その他の部分に違法性がなければ契約として有効に成立します。
免責条項が無効となるケース
前項の内容も踏まえて、免責条項が無効となる具体例をいくつか列挙します。
- 重大な過失に基づく責任を免除する条項
- 例)「当社の重大な過失による損害であっても責任を負いません」など
- 特定商取引法に違反する条項
- 例)「クーリングオフには対応しません」など
- 信義則・公序良俗等に反する条項
- 例)「○○は、いかなる理由があっても損害賠償請求ができません」など
- あいまいな表現で記載された条項
- 例)「当社の責めに帰すべき事由による場合を除き、一切の責任を負いません」など
※どのような場合に事業者が責任を負うのかが不明確なため
- 例)「当社の責めに帰すべき事由による場合を除き、一切の責任を負いません」など
免責条項を設定する際は、消費者契約法、民法などの関連法令を遵守し、公序良俗に反しない内容にする必要があります。また、具体的な表現を用いるなど条項の内容を明確にする ことも大事です。
免責条項が原因でトラブルにならないように注意
免責条項は、自社のリスクを軽減するためのルールです。トラブルを回避するために設けるものですが、一方的に自社が有利となる内容になっていると無効となることがありますし、契約書を作成する段階で相手方と揉める可能性もあります。
このように、免責条項が原因でかえってトラブルが起こってしまうケースもありますので、消費者契約法など各種法令にも留意して条文の内容を考えるようにしましょう。重要度の高い契約においては、法務に強い弁護士などの専門家を活用することも推奨されます。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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