業務委託契約書における実態調査

作成日:2026年6月2日

1. 調査概要

本レポートは、業務委託契約書の作成・運用実態に関する調査結果をまとめたものです。雛形の入手ルート、契約内容の確認時に重視する項目、電子契約の利用状況などを明らかにしており、自社の制度設計・運用改善にお役立ていただけます。

  • 調査時期:2026年1月実施
  • 調査対象:業務委託契約に関与する会社員等
  • 有効回答数:881名(うち業務委託契約に関与する605名)
  • 回答者属性:会社員(事務系)が主で、20代〜60代まで幅広い層が回答

回答者の業務委託契約への関与状況

  • 契約内容の検討・修正など「実務上の判断」を主に行っている:24.6%
  • 最終的な承認や契約書への「捺印・署名作業」を主に行っている:23.3%
  • 上記の両方(判断も署名も行う):20.6%
  • 業務委託契約に関わったことはない:22.4%
  • 主に「受注者」として関わっている:8.7%
  • その他:0.3%

2. 調査結果サマリー

4つのポイント

  1. 契約書雛形の入手ルートは「自社で管理・運用している標準雛形」が39.5%で最多となり、次いで「相手方が提示してきた雛形」が29.8%、「インターネットで検索・ダウンロード」が17.9%と続いた。
  2. 契約内容の確認では「業務の内容・範囲(32.6%)」「契約の解除・解約条件(28.8%)」「委託料の金額・支払時期(28.3%)」など実務条件が上位を占め、「知的財産権の帰属(17.7%)」「再委託の可否(15.5%)」など法的リスクの高い項目の確認率は低かった。
  3. 電子契約は「ほぼ全て電子契約(24.3%)」と「電子契約の方が多い(51.7%)」を合わせて76.0%が主体としており、紙契約のみは6.3%にとどまった。
  4. 年代・性別によって関与の仕方や雛形の入手経路に差が見られ、若手・中堅層ではインターネットテンプレートの利用率が高く、シニア層では自社標準雛形への依存が強い傾向がある。

3. 調査結果の詳細

3-1. 業務委託契約への関与状況

全回答者に対し、発注者として業務委託契約の締結にどのように関わっているかを尋ねました。

  • 契約内容の検討・修正など「実務上の判断」を主に行っている:24.6%
  • 最終的な承認や契約書への「捺印・署名作業」を主に行っている:23.3%
  • 業務委託契約に関わったことはない:22.4%
  • 上記の両方(判断も署名も行う):20.6%
  • 主に「受注者」として関わっている:8.7%
  • その他:0.3%

「実務上の判断」「承認・捺印」など、何らかの形で契約業務に関与している層が過半数を占めました。属性別では、経営者・役員層で「判断も署名も行う」が32.7%と高く、契約の最初から最後までを一貫して担当するケースが多いことがわかります。男性30代でも同項目が36.0%と全年代で最も高く、契約実務のキーマンとなっている様子がうかがえます。一方、女性20代では「捺印・署名作業を主に行っている」が53.6%と過半数を占め、締結フローの事務処理を担う割合が高い傾向にあります。

3-2. 業務委託契約書の雛形(テンプレート)の用意方法

業務委託契約の締結に関与する605名を対象に、契約書作成時に使用する雛形の入手元を尋ねました。

  • 自社で管理・運用している「標準雛形」を使用する:39.5%
  • 相手方(受注者)が提示してきた雛形をベースにする:29.8%
  • インターネットで検索し、テンプレートをダウンロードして使用する:17.9%
  • 過去の似たような契約書をコピーして流用する:7.4%
  • 弁護士などの専門家に依頼して作成する:3.1%
  • 決まったものはなく、社内の担当者から回ってきたものを使用する:1.7%
  • わからない/答えられない:0.5%
  • その他:0.2%

「自社の標準雛形」を使用するケースが約4割で最多となりました。年代別では、20代・30代でインターネット検索によるテンプレート利用率が全体平均(17.9%)を上回り、男性30代27.0%、女性30代26.9%、女性20代24.5%と高い傾向にあります。一方、男性60歳以上では「自社の標準雛形を使用する」が52.0%と過半数を占めており、独自のフォーマットが確立されている様子がうかがえます。

3-3. 契約内容確認時の重点項目(複数回答)

契約内容を確認する際、特に注意して確認している項目を尋ねました。

  • 業務の内容・範囲:32.6%
  • 契約の解除・解約に関する条件:28.8%
  • 委託料(報酬)の金額・支払時期:28.3%
  • 秘密保持に関する条項:27.1%
  • 損害賠償の範囲・上限:21.0%
  • 禁止事項(競業避止など):20.8%
  • 著作権等の知的財産権の帰属:17.7%
  • 締結までのリードタイム:17.2%
  • 再委託の可否:15.5%
  • 特にない:2.8%
  • わからない:0.7%
  • その他:0.3%

業務範囲や報酬などの実務条件が上位を占め、法的リスクの高い「著作権等の知的財産権の帰属(17.7%)」や「再委託の可否(15.5%)」の確認率は低く、実務(何をいくらでやるか)に意識が集中している傾向が読み取れます。属性別では、男性20代(n=14)で「知的財産権の帰属」を気にする割合が57.1%と非常に高く、成果物の権利に対する意識の高さが示唆されます。男性60歳以上では「秘密保持に関する条項」への関心が56.0%と突出しており、情報漏洩リスクを最優先で確認している傾向があります。

3-4. 電子契約の利用状況

業務委託契約の締結方法として、電子契約を利用しているかを尋ねました。

  • 電子契約と紙契約どちらも使うが、電子契約のほうが多い:51.7%
  • ほぼ全ての契約で電子契約を利用している:24.3%
  • 電子契約と紙契約どちらも使うが、紙契約のほうが多い:16.0%
  • ほぼ全ての契約で紙契約を利用している:6.3%
  • わからない/答えられない:1.7%

「ほぼ全て電子契約」と「電子契約の方が多い」を合わせると76.0%が電子契約を主体としており、紙契約のみの層はわずか6.3%でした。デジタル化が標準となっている状況がうかがえます。年代別では、女性20代で電子契約メインが98.0%に達する一方、男性50代は「ほぼ全ての契約で紙契約を利用している」割合が14.4%と全体平均(6.3%)の2倍以上を示しており、一部でアナログな商習慣が残っていることが推測されます。

4. 調査結果から見える課題と対策

本調査の結果から、業務委託契約の運用において、3つの課題と、その対策の方向性が浮かび上がりました。

課題①:法的リスク項目への確認意識の低さ

契約内容の確認は業務範囲や報酬といった実務条件に集中しており、知的財産権の帰属(17.7%)や再委託の可否(15.5%)など、トラブルにつながりやすい法的項目の確認率が低い実態があります。

対策の方向性:契約締結フローに知財・再委託などの権利関係を確認するチェック項目を組み込み、実務条件と同等の重要度で確認する運用を定着させることが求められます。

課題②:雛形の入手経路のばらつきと品質管理

雛形は自社標準(39.5%)が最多である一方、相手方提示の雛形(29.8%)やインターネットからのダウンロード(17.9%)も一定数を占めており、特に若手・中堅層でWebテンプレートの利用率が高くなっています。入手経路が分散することで、内容の正確性や最新性の担保が課題となります。

対策の方向性:法改正にも対応した自社標準雛形を整備・定期的に更新し、社内で一元的に利用できる体制を整えることで、雛形品質のばらつきを抑えることが有効です。

課題③:電子化の進展と一部に残る紙運用の併存

電子契約が76.0%まで浸透する一方で、男性50代など一部の層では紙契約中心の運用が全体平均を上回って残存しており、社内で運用方法に差が生じています。

対策の方向性:電子契約への移行を前提とした契約書式・署名フローへ統一し、紙運用が残る層に対しても移行を後押しする支援を行うことで、運用の標準化を進めることが望まれます。

5. まとめ

本調査からは、業務委託契約の実務が電子契約を前提に回っている一方で、雛形の入手経路が分散し、法的な権利関係への確認意識が十分でないという実態が明らかになりました。

  • 法的リスク項目への確認意識の低さ:知財・再委託など権利関係の確認率が低い → 契約トラブルや権利関係の紛争リスク
  • 雛形の入手経路のばらつき:相手方雛形やWebテンプレートの利用が混在 → 契約書の正確性・最新性が担保されないリスク
  • 電子化と紙運用の併存:一部の層で紙契約が残存 → 社内運用の非効率・標準化の遅れ

これらの課題に対しては、最新の法令に対応した自社標準雛形の整備、権利関係を含めた確認項目の標準化、電子契約への運用統一を進めることが、安全かつスムーズな取引開始の実現につながります。

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出典

マネーフォワード クラウド、業務委託契約書に関する調査データ(回答者:881名(有効回答:業務委託契約に関与する605名)、集計期間:2026年1月)

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