- 更新日 : 2025年9月5日
リフォーム工事で契約書は作成が必要?作成手順や注意点を解説
リフォーム工事を行う際には、工事請負契約書の作成が不可欠です。工事請負契約書は、発注者と施工業者の間でのトラブルを防ぎ、工事内容や費用に関する合意を明確にするための重要な文書といえます。
本記事では、リフォーム工事の際に必要な工事請負契約書の作成手順や注意点について詳しく解説します。
▼内装工事請負に関する契約書テンプレートを無料でダウンロードいただけます。
目次
リフォームに工事契約書の作成は必要
リフォーム工事は、工事請負契約書の作成なしにはできません。その理由について、以下で詳しくみていきましょう。
建設業法により工事請負契約書の作成が義務
建設業法では、リフォーム工事を含むすべての工事において請負契約書を作成することが建築業法第19条で義務付けられています。
民法上は、原則として契約そのものは口頭でも成立するとされており、必ずしも契約書が必要なわけではありません。しかし、工事請負契約に関しては書面、または電子契約書の作成義務があり、契約書を作成しない施工業者は違法業者といえます。
工事請負契約書を作成する目的
工事請負契約書には、工事内容や費用、納期などを明記して双方が共通の理解を持つことを確認する役割があります。作成には法的義務があることはもちろん、詳細を書面または電磁的記録として残すことで誤解や後々のトラブルを未然に防ぐことにもつながるでしょう。
また、万が一問題が発生した場合にも法的な根拠として利用できます。
この記事をお読みの方におすすめのガイド4選
この記事をお読みの方によく活用いただいている人気の資料・ガイドを紹介します。すべて無料ですので、ぜひお気軽にご活用ください。
※記事の内容は、この後のセクションでも続きますのでぜひ併せてご覧ください。
電子契約にも使える!契約書ひな形まとめ45選
業務委託契約書や工事請負契約書…など各種契約書や、誓約書、念書・覚書、承諾書・通知書…など、使用頻度の高い45個のテンプレートをまとめた、無料で使えるひな形パックです。
実際の契約に合わせてカスタマイズしていただきながら、ご利用くださいませ。
【弁護士監修】チェックリスト付き 改正下請法 1から簡単解説ガイド
下請法の改正内容を基礎からわかりやすく解説した「改正下請法 1から簡単解説ガイド」をご用意しました。
本資料では、2025年改正の背景や主要ポイントを、弁護士監修のもと図解や具体例を交えて解説しています。さらに、委託事業者・受託事業者それぞれのチェックリストを収録しており、実務対応の抜け漏れを防ぐことができます。
2026年1月の施行に向けて、社内説明や取引先対応の準備に役立つ情報がギュッと詰まった1冊です。
弁護士監修で分かりやすい! 契約書の作り方・書き方の教科書
弁護士の南陽輔氏(一歩法律事務所所属)が監修している「契約書の作り方・書き方の教科書」ガイドです。
契約書作成の基本知識、作成の流れ・記載項目、作成時の注意点・論点が、分かりやすくまとまっています。手元に置ける保存版としてぜひご活用ください。
自社の利益を守るための16項目 契約書レビューのチェックポイント
契約書レビューでチェックするべきポイントをまとめた資料を無料で提供しています。
契約書のレビューを行う企業法務担当者や中小企業経営者の方にもご活用いただけます。
リフォーム工事に必要な契約書類
リフォーム工事には、複数の契約書類が必要です。それぞれの書類には特定の役割と記載内容があるため、各契約書類の概要について説明します。
工事請負契約書
工事請負契約書は、発注者と施工業者間で交わされる基本的な契約文書です。工事請負契約書では、建築業法19条1項において定めなければならない条項が詳細に記載されており、工事内容や請負金額、契約に関する紛争の解決方法などその項目数は16にも及びます。
契約書は2通作成し、双方が署名もしくは記名押印をしたうえで1通ずつ保管します。
工事請負契約約款
工事請負契約約款とは、工事請負契約書を補完し、より詳細な取り決めを定める文書です。契約の目的、請負代金の変更、契約の解除、損害賠償、契約不適合責任に関する規定などが含まれます。
工事請負契約約款は中央建設業審議会(中建審)などの団体や、国土交通省がひな形を公表しています。ひな形を活用するのが一般的ではありますが、その工事に適した内容に適宜変更して使用することが大切です。
見積書
見積書は、工事の詳細な内訳と費用を示す文書です。工事の項目ごとの詳細な内訳(材料費、施工費、諸経費など)を含める必要があります。
見積書は工事内容の変更などで見積もりに変更があるとその都度作成されるため、複数の見積もりがある場合は日付を確認して最新の見積もりを正確に把握しておくようにしましょう。
設計図
設計図は、リフォーム工事の内容を視覚的に示す文書です。一般的に、平面図、立面図、断面図、詳細図などが含まれます。設計図は工事の具体的な内容を示すものとして契約書の一部として扱われます。
仕上げ表
建物の内部・外部、また各部屋などの仕上げについてまとめた書類であり、材料、規格などが記されています。外壁やバルコニーなどの仕上げについてまとめた外部仕上げ表、室内の仕上げについて記した内部仕上げ表があります。
工事請負契約書の作成手順
工事請負契約書の作成は、発注者と請負者の間で工事内容や条件を明確にし、トラブルを防ぐために重要な書類であり、正しく作成しなければなりません。以下に、工事請負契約書の一般的な作成手順を示します。
- 請負者による契約書案の作成:請負者(施工会社)が、工事内容や見積書に基づいて契約書の案を作成します。
- 発注者への契約書案の提示:作成された契約書案を発注者(施主)に提示し、内容について詳細な説明を行います。
- 発注者による内容確認:発注者は、提示された契約書案の内容を慎重に確認し、不明な点や疑問点があれば質問します。
- 契約内容の協議・調整:発注者と請負者の間で、契約内容について協議を行い、必要に応じて修正を加えます。
- 最終確認:調整後の契約書の内容を、発注者と請負者の双方で最終確認します。
- 契約書の作成と署名・押印:最終確認が完了したら、正式な契約書を作成し、両者が署名・押印します。
- 契約書の交換:作成された契約書は、通常2部作成し、発注者と請負者がそれぞれ1部ずつ保管します。
工事請負契約書を作成する際の注意点
工事請負契約書を作成する際には、いくつか注意点があります。法の遵守、またトラブル防止の観点から、気を付けるべきポイントをみていきましょう。
一括下請負・一括委任の禁止
一括下請負とは、元請負人が請け負った建設工事の全部または主たる部分を一括して他の業者に請け負わせることを指します。一括委任は、受託した業務の全部を他の者に委託することです。一括下請負・一括委任は建設業法および建築士法により原則として禁止されています。
禁止の目的は、発注者の信頼保護、中間搾取や工事品質の低下防止、労働条件の維持、施工責任の明確化にあります。ただし、元請負人が工事に「実質的な関与」(施工計画作成、工程管理、品質管理など)をしている場合は、一括下請負とはみなされません。
民間工事では、発注者の事前の書面による承諾があれば一部例外的に認められる場合もありますが、多数の者が利用する重要な建設工事では禁止されています。工事請負契約書作成時は規定を理解し、一括下請負・一括委任の禁止に抵触しないよう注意が必要です。また、下請負を行う場合の手続きや条件を定めることも重要です。
クーリングオフ
リフォーム工事の契約において、訪問販売や電話勧誘で契約締結する場合は特定商取引法に基づくクーリングオフ制度が適用されます。この場合工事請負契約書には、クーリングオフに関する事項を明確に記載しなければなりません。
クーリングオフの期間、行使方法、効果などを分かりやすく説明し、消費者の権利を保護する内容を盛り込むことが求められます。
個人情報の取扱い
リフォーム工事の契約では、発注者の個人情報を取り扱います。そのため、個人情報保護法に基づき適切な個人情報の取扱いが求められます。
工事請負契約書には、個人情報の利用目的、管理方法、第三者提供の有無などを明記し、発注者の個人情報を適切に保護する旨を記載することが重要です。また、工事完了後の個人情報の取扱いについても、明確に定めておく必要があります。
改正民法への対応
2020年4月に施行された改正民法により、請負契約に関する規定も変更されました。特に重要なのは、従来の「瑕疵担保責任」に代わり「契約不適合責任」が設置された点です。
工事請負契約書には、新たに契約不適合責任に基づいた内容や期間を明記する必要があります。また、請負人の担保責任の存続期間が延長されたことにも注意が必要です。
参考:e-Gov法令検索 民法
内装工事請負契約書のテンプレート
工事請負契約書を一から作成するには専門の知識が必要であり、簡単にできるものではありません。指定の要件を満たす必要もあり、不備があると後々のトラブルにつながる可能性もあります。マネーフォワード クラウド契約では、弁護士監修の内装工事請負契約書のテンプレートをご用意しています。無料でダウンロードできるため、ぜひご利用ください。
ただし、テンプレートはあくまでも基本形です。個々の工事の特性や当事者間の合意内容に応じて、適切にカスタマイズすることが重要です。必要に応じて専門家のアドバイスを受けながら、適切な契約書を作成してください。
弁護士監修の内装工事請負契約書テンプレートは、以下のリンクからダウンロードいただけます。
工事請負契約書の作成は電子化できる?
工事請負契約は、電子契約が認められています。電子契約は、紙の契約書と同等の法的効力を持つとされており、オンラインで締結が可能です。電子契約のメリットとしては、契約締結の迅速化、保管・管理の効率化、印紙税の節約などが挙げられるでしょう。
ただし、電子契約を行う際には、電子署名法に基づく電子署名の使用や、タイムスタンプの付与など、注意点があります。また、電子契約システムのセキュリティ対策や、個人情報の保護にも十分な注意を払わなければなりません。
リフォーム工事に工事請負契約書の作成は必須
リフォーム工事に、工事請負契約書は欠かせません。適切に作成された契約書は、発注者と請負者の権利義務を明確にし、潜在的なトラブルを未然に防ぎます。契約書作成の際は、法令遵守はもちろん、工事の特性や当事者間の合意内容を適切に反映させることが大切です。
必要に応じて専門家のアドバイスを受けるなど、細心の注意を払って工事請負契約書を作成しましょう。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
契約の知識をさらに深めるなら
※本サイトは、法律的またはその他のアドバイスの提供を目的としたものではありません。当社は本サイトの記載内容(テンプレートを含む)の正確性、妥当性の確保に努めておりますが、ご利用にあたっては、個別の事情を適宜専門家にご相談いただくなど、ご自身の判断でご利用ください。
関連記事
販売仲介契約とは?締結するケースや書き方をひな形とともに紹介
販売仲介契約とは、商品の販売について仲介をしてもらうときに交わす契約のことです。コストはかかるものの、メーカーにとっても効率的に商品販売ができるという利点が得られます。 当記事ではこの販売仲介契約について言及し、契約書のひな形を紹介するとと…
詳しくみるソフトウェア販売代理店契約書とは?ひな形をもとに書き方や項目、注意点を解説
ソフトウェア販売代理店契約書とは、メーカーが販売代理店に自社のソフトウェアの販売を許諾・委託する際に締結する契約書です。契約書には、ソフトウェアの機能や使用の許諾、禁止事項などを記載します。 本記事では、企業の法務担当者に向けて、ソフトウェ…
詳しくみる雛形付き – 契約社員の雇用契約書について解説
契約社員を雇う場合、企業はどのようなことに気をつければよいのでしょうか。ここでは契約社員とパート社員の違いや、雇用契約を締結する際に必要となる契約書の作成方法などについて解説します。また、雇用契約書及び有期雇用契約書のテンプレートも紹介して…
詳しくみる商標権侵害に基づく警告書とは?ひな形をもとに書き方や注意点を解説
商標権侵害に基づく警告書とは、自社の商標権を侵害する者に対して、侵害行為の停止を求める警告書です。侵害行為の内容を正確に示したうえで、速やかな停止を求める旨を記載しましょう。本記事では、商標権侵害に基づく警告書の書き方やレビューのポイントを…
詳しくみる商標使用権設定契約書とは?ひな形をもとに書き方・例文を解説
商標使用権設定契約は、第三者に商標を使用させる際に締結する契約です。これを結ぶことで、他者が持つ商標を用いてビジネスを展開できるようになります。この記事では、商標使用設定契約書の書き方や必要な項目を紹介します。 ▼商標使用権設定契約書のひな…
詳しくみる遺言書とは?ひな形をもとに書き方や注意点を解説
遺言書は、人の最期の意思を示すために作成する文書です。 遺産の分配方法や取得割合を指定するなど、円滑な遺産承継を実現するための重要なツールとして役に立ちます。上手く使えば相続トラブルを予防することもできますが、そのためには書き方のポイントを…
詳しくみる



