- 更新日 : 2026年1月9日
退職合意書とは?ひな形をもとに書き方や注意点を解説【無料テンプレ付き】
退職合意書とは、労働者が退職する際に、使用者と労働者の間で締結する合意書です。
退職日・退職条件・秘密保持などに関する事項を定めます。本記事では退職合意書の書き方やレビューに当たってのポイント、記載すべき事項の具体例などを解説します。
目次
退職合意書とは
退職合意書とは、退職に関する条件や退職後の約束事項などを定めた合意書です。労働者が退職する際に、使用者と労働者の間で締結します。
退職合意書を締結することにより、円満な合意退職である旨が明確化されます。また、退職合意書を締結して退職条件や退職後の約束事項をあらかじめ合意しておけば、労使間のトラブルの予防に役立ちます。
退職届との違い
退職合意書は、使用者と労働者の間で締結する合意書です。これに対して「退職届」は、労働者が単独で作成し、使用者に対して提出する書面であり、両者の性質は異なります。
退職届には、単に退職する旨の意思表示のみを記載するのが一般的です。
一方、退職合意書には、使用者と労働者が話し合ったうえで取り決めた退職条件や約束事項を詳しく記載することが多いようです。
退職合意書の法的効力
退職合意書は、使用者と労働者が互いに自由な意思に基づいて締結した場合には、原則として使用者・労働者の双方を法的に拘束します。
ただし、使用者が労働者に対して退職するよう圧力をかけたなど、労働者側が自由な意思によって締結したものと認められない場合には、退職合意書が取り消されることがあります。
また、退職合意書の内容が公序良俗に反する場合には、その部分が無効となります(民法90条)。特に退職後の競業避止義務に関する規定は、労働者の職業選択の自由を過度に制限する内容である場合には、無効と判断されやすいので注意が必要です。
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退職合意書を作成するケース
退職合意書を作成・締結するのは、使用者と労働者の合意に基づいて労働者が退職する場合です。
労働者は本来、使用者の同意がなくても、2週間前に通知すれば退職できます(無期雇用労働者の場合。民法627条1項)。
しかし、労働者の一方的な意思表示で退職する場合には、使用者と労働者の間で退職後の約束事項などを取り決めることができません。また、けんか別れのようになってしまうと、退職後にトラブルが発生するリスクが高くなります。
そのため、できる限り合意退職を成立させることが望ましいといえます。労使双方が合意退職に前向きであれば、あらかじめ退職条件や退職後の約束事項を話し合ったうえで、その内容をまとめた退職合意書を締結するのがよいでしょう。
退職合意書のひな形
退職合意書のひな形は、以下のページからダウンロードできます。実際に退職合意書を作成・締結する際の参考としてください。
退職合意書に記載すべき内容
退職合意書には、主に以下の事項を記載します。
- 退職日
- 退職者の私物の処分
- 退職金などの金額・支払方法
- 秘密保持など
- 清算条項
退職日
労働者が退職する日を明記します。引き継ぎにかかる期間なども考慮して、会社の業務に滞りが生じないような時期に退職日を設定することが望ましいです。
(例)
甲と乙は、乙が甲を令和○年○月○日付で自己都合により退職することを合意した。
退職者の私物の処分
労働者が退職した後に私物が残されているケースがあります。私物の処理に関するトラブルを防ぐため、処分の方法や費用負担などを明確化しておきましょう。
(例)退職日以降、甲の施設内に乙の私物がある場合、乙は甲に残置した一切の私物について、その所有権を放棄し、甲が任意の方法により処分することについて一切の異議を述べない。なお、乙が甲に残した私物の処分にかかる費用は、全額甲の負担とする。
退職金などの金額・支払方法
会社が退職金規程を設けている場合には、その定めに基づいて計算した退職金の額を明記しましょう。また、退職勧奨などに伴って上乗せ退職金を支給する場合には、退職慰労金などの名目でその金額も明記します。
退職金などの支払方法については、法定控除(源泉所得税・社会保険料)を実施する旨、銀行口座への振り込みにて支払う旨、振込手数料の負担者などを定めるのが一般的です。
退職合意書を退職日より前に締結し、その後の就労義務を免除する場合には、その旨も退職合意書に定めておきましょう。
(例)甲は、乙に対して、退職金規程に基づく退職金として金○○円、また別途退職慰労金として、金○○円を支払うものとし、これを令和○年○月○日限り、法定控除を実施のうえ、乙の指定する銀行口座に振り込む方法により支払う。振込手数料は甲の負担とする。
2 甲は乙に対して、令和〇年●月●日から退職日までの就労義務を免除し、令和〇年●月分給料として、金○○円を、前項と同じ日付および方法で支払う。
秘密保持など
退職した労働者が営業秘密を流用し、会社のノウハウや顧客を奪うような事態が発生すると、会社は大きな損害を被る恐れがあります。こうした事態を避けるため、退職する労働者に対して秘密保持義務を課しておきましょう。
また、会社から労働者に対して交付した資料や貸与した物は、情報漏洩などを防止する観点から、退職時に全て返却させることが大切です。その旨も退職合意書に定めておきましょう。
(例)第4条
乙は、在籍中に従事した業務において知り得た、甲が管理している技術上・営業上の秘密情報について、退職後においても、これを他に開示もしくは漏洩しないことを誓約する。
第5条
乙は、前条にかかる資料並びに甲からの貸与物(乙が甲から業務上借り受けた制服、社員証、名刺、健康保険証(家族分を含む)、その他甲の乙に対する貸与物一切)は、全て退職日までに甲に返却し、退職日以降一切所持しないことを誓約する。
第6条
乙は、本件合意書の存在およびその内容の一切を厳格に秘密として保持し、その理由の如何を問わず、一切開示もしくは漏洩しない。
清算条項
清算条項とは、当事者の間に何らの債権債務が存在しないことを相互に確認する旨の条項です。当事者間において、訴訟提起などの紛争が生じることを防止するため、合意書などにおいて定めることがあります。
退職合意書においても、未払い賃金請求や不当解雇に関する紛争などをできる限り予防するため、清算条項を定めておきましょう。
(例)甲と乙は本件合意書に定める他、何らの債権債務が存在しないことを相互に確認する。
退職合意書の作成・レビューのポイント
退職合意書の作成・レビューに当たっては、退職条件(退職日・退職金など)と退職後の約束事項(秘密保持など)を、疑義がないように明確に定めることが大切です。
退職合意書は労使紛争を予防することを目的としますが、条文にあいまいな部分があると、かえって労使紛争を誘発してしまいます。必要に応じて顧問弁護士のリーガルチェックを受けるなどして、必要十分な事項が適切に定められた退職合意書を作成しましょう。
適切に退職合意書を締結すれば、円満な退職につながります
退職合意書を使用者・労働者の双方が納得したうえで締結すれば、円満な退職を実現できます。
労使紛争への対応は、会社にとって大きなコストを伴います。そのため、退職合意書を適切に締結し、労使紛争を予防することは非常に大切です。
ただし、労働者の意向を無視して退職合意書の締結を強制したり、労働者の権利を過度に制限するような事項を退職合意書に定めたりすると、かえって労使紛争の原因になってしまいます。
労働者の希望をよく聞いたうえで、労使双方にとって無理のない退職のスケジュールおよび退職条件などを設定しましょう。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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