• 更新日 : 2025年5月13日

電子署名とは?仕組み・やり方や活用事例をわかりやすく解説

電子署名とは、電子化された文書に対して行われる電子的な署名のことを指します。多くのメリットがあることから、電子署名がより一層重要なものとなってきています。
ここでは、電子署名の仕組みやメリットなどについて、詳しく解説します。

電子署名とは

電子署名とは、端的に言うと、紙媒体の書面で行っている署名・捺印を、電子上で行うことです。広い意味では、インターネット・メールを介してデータ上で、契約書に署名捺印を行うことを指すこともあります。

一方で、デジタル庁は電子署名について、「電磁的記録に記録された情報について作成者を示す目的で行う暗号化等の措置で、改変があれば検証可能な方法により行うもの」と定義しています。

引用:デジタル庁「電子署名及び認証業務に関する法律(電子署名法)及び関係法令」

つまり法律上では、電子署名とは、作成者本人の確認が行われ、内容の改変のおそれがないもののことを意味していると言えます。

従来の紙媒体での契約では、本人確認や契約書の偽造・変造を防止するため、実印による押印や印鑑証明書を添付し、契約書各ページに割り印をして対応してきました。

電子署名においても同様の法的効力を持たせるために、国は第三者認証機関を設け、電子署名の制度・仕組みを整える法律を定めました。これにより、電子署名は押印や手書きの署名と同様に、信用性・正当性が保証されています。

これからのインターネット社会において、電子署名はますます重要な役割を果たすことになるでしょう。

電子署名と電子印鑑の違い

電子署名と類似した言葉に、「電子印鑑」があります。電子印鑑とは、電子化された印鑑のことです。実際の印鑑の印影をデータ化したものもありますし、電子上で本人識別情報等を含めた印鑑データも含まれます。

いずれにせよ、電子印鑑とは、電子文書で用いられる電子化した印鑑そのものを指しています。これに対して電子署名は、電子上での署名捺印の方法・仕組み全体を示しているものと言えるでしょう。

電子印鑑の詳細についてはこちらの記事もご覧ください。

電子署名と電子サインの違い

電子印鑑以外にも、電子署名と似た言葉に「電子サイン」というものがあります。電子サインとは、電子を用いた本人確認のための方法のことで、電子署名より広義の概念です。例えば、飲食店等でクレジットカードを利用した際に、店側からタブレット端末の画面上にサインを求められることがありますが、これが電子サインの代表例です。

また、動画配信の月額サービスに登録してログインする際、本人確認のためにメール認証することも電子サインの一種です。

電子署名と電子サインとの違いは、第三者認証機関の認証が必要かどうかというところです。電子署名では、法律の下で第三者認証機関が設置されていて、同認証機関による電子証明書を発行することで電子署名への信用性を高めています。

一方で電子サインは、第三者による認証ではなく、契約当事者がサイン(ログイン)する仕組みを取ることで、本人確認を図るものです。

電子サインの詳細についてはこちらの記事もご覧ください。

電子署名とタイムスタンプの違い

電子署名は、文書の作成者が誰であるかを証明し、紙の契約書における署名や押印に相当する機能を有します。一方、タイムスタンプは、その電子文書がある特定の時点で確かに存在していたことを証明するものです。

また、電子署名では文書の作成者と内容の真正性を証明できますが、作成時刻を客観的に証明できません。これに対してタイムスタンプは、国家時刻標準に基づいて特定の時点での文書の存在と内容を証明できますが、作成者を特定できないという違いもあります。

実務上では、電子署名とタイムスタンプを併用することで電子契約の完全性が強化されるため、重要な電子契約においては併用するのが一般的です。

タイムスタンプの詳細についてはこちらの記事もご覧ください。

電子署名の役割

電子署名の重要な役割として、第三者認証機関による認証等の制度により、本人が署名捺印したものであるという証明が可能なこと、署名後の改ざんのおそれがないことの2点が挙げられます。

本人確認

電子署名では、まず、文章の作成者と日時が認証機関において記録として残ります。これにより、文書を本人が作成したもので間違いないことが証明されます。

改ざん防止

電子署名が交わされた文書については、第三者がその内容を変更することができません。もし第三者が変更しようとすると警告が表示されるようになります。これにより、署名後に文書が改ざんされるリスクを回避できます。

契約の証拠性

電子署名が交わされた文書は一定の証拠性が認められ、署名者は後から署名を否定することができません。電子署名を行うには秘密鍵が使用されますが、この秘密鍵は署名を行う本人しか知り得ないものだからです。

電子署名には後から署名を行った事実が否定されるのを防止する効果があり、これを否認防止といいます。ただし、秘密鍵などの情報が外部に流出してしまった場合は署名の証拠性を立証するのが難しくなることがあります。

電子署名による否認防止には秘密鍵を安全に管理し、本人しか利用できないようにすることが重要です。

コンプライアンス強化

電子署名は、企業にとってコンプライアンス強化の役割も持ちます。社内で作成する契約書などを紙で管理する場合は、紛失や盗難、改ざんなどのリスクがありますが、電子署名によって締結された契約書はこれらのリスクを軽減できます。

また、適切な方法で電子署名が行われた契約書は紙の契約書と同等の法的有効性を持ちます。

これは電子署名法第3条で「電磁的記録であって情報を表すために作成されたものが行われているときは、真正に成立したものと推定する。」(一部抜粋)とされていて、電子署名は特段の反証がない限り有効とされているからです。

電子署名の仕組み

電子署名の仕組みの核となるのが「公開鍵暗号方式」であり、文書のハッシュ値による同一性確認と組み合わせることで、高度な安全性を実現しています。

「公開鍵」と、「秘密鍵」を利用した公開鍵暗号基盤のイメージ

公開鍵暗号方式とは

公開鍵と秘密鍵は、暗号化技術において対となるペアの鍵です。秘密鍵は所有者のみが保持し、公開鍵は広く公開できます。この2つの鍵は同時に生成されますが、それぞれ異なる性質や役割を持っています。

公開鍵と秘密鍵の違いは、以下の通りです。

公開鍵秘密鍵
保持者誰でも入手できる所有者のみ
公開範囲一般公開非公開
主な用途署名の検証、平文の暗号化署名の生成、暗号文の復号
管理レベル特別な管理は不要厳重な管理が必要
セキュリティ漏洩しても大きな問題はない高いレベルの漏洩防止対策が必要

公開鍵で暗号化されたデータは対応する秘密鍵でのみ復号可能であり、秘密鍵で暗号化されたデータは対応する公開鍵でのみ復号可能です。この仕組みにより、通信の安全性が確保されています。

電子署名では、文書の作成者が自身の秘密鍵で文書を暗号化し、受信者は作成者の公開鍵を使用して文書を検証します。

ハッシュ値とは

ハッシュ値とは、ハッシュ関数という関数を用いて計算される文字列のことです。電子データにハッシュ値を適用すると同じハッシュ値を得ることができることから、ハッシュ値が同じであれば同じデータであると判断できます。

適用したハッシュ値は公開鍵暗号方式により暗号化され、電子ファイルとともに相手方に送信されます。ファイルを受信した側は公開鍵を用いてファイルを復元し、ハッシュ値を生成します。

このときに得られたハッシュ値が元のハッシュ値と同じであれば、2つは同じ文書でありデータが改ざんされていないことが証明されます。

電子署名の流れ

続いて、電子署名の流れについて解説します。

認証局が電子証明書を発行

電子署名の利用を始めるにあたって、まず利用者は信頼できる認証局に電子証明書の発行を申請しなくてはなりません。認証局では申請者の本人確認が厳密に行われ、完了すると電子証明書が発行されます。

電子証明書には利用者の公開鍵が含まれており、本人のものであることを証明する電子的な身分証明書として機能します。なお、公開鍵について詳しくは後述します。

電子署名の実施

電子署名を行う際、送信者はまず電子文書をハッシュ関数で圧縮し、ハッシュ値を生成します。ハッシュ値とはデータを固定長の不規則な文字列に変換した値(暗号)で、元データの指紋のような役割を果たすものです。

次に、送信者は自身の秘密鍵を使用してこのハッシュ値に署名を付与し、これが電子署名になります。その後、電子署名を付与した文書と電子証明書を受信者に送信します。

電子署名の検証

受信者側では、受け取った電子文書から新たにハッシュ値を生成します。そして送信者の公開鍵を使用して電子署名を復号し生成したハッシュ値と比較し、両者のハッシュ値が一致すればその文書が改ざんされていないことが証明されます。

この一連の検証プロセスにより、文書の完全性と送信者の真正性の確認が可能です。

電子署名の活用事例

電子署名はビジネスのほか、日常生活などの私たちの身近なところでも導入されています。具体的に活用されているのは次のような場面です。

契約締結

電子署名を用いる最も身近な場面は、契約締結の際です。近年では、紙の契約書により契約を締結する方法以外に、多くの企業で電子契約システムの導入も進んでいます。電子契約により締結した契約書には、電子署名を行うのが一般的です。

また、ビジネスの場面以外にも、個人で保険契約を締結する場合に電子署名を用いることがあります。実際、大手保険会社などでは保険契約の際に電子契約が導入されていて、保険契約の際に電子署名を求められることがあります。

金融機関での手続き

金融機関での手続きでも電子署名が活用されています。従来は銀行の窓口手続きをする際に押印を求められることが一般的でしたが、金融機関でも電子契約の導入が進んでいます。

金融機関からの融資の場面で電子署名が活用されることがあり、これまで対面で行っていた手続きを、自宅にいながら、24時間いつでもできるというメリットがあります。

手続き方法は金融機関により異なりますが、電子契約書の利用申込書を提出しIDとパスワードを登録した後、電子契約を行うという流れが一般的です。

行政手続き

役所の窓口でこれまで行っていた行政手続きでも、電子署名の導入が進んでいます。主な手続きの例としては、e-taxを利用した国税の申告、納付や年金や社会保険の手続きなどがあります。

確定申告などの税金に関する手続きなどの他、年金の受け取りや会社が行う社会保険の加入手続きなどで電子申請が行われています。

これらの手続きでは、一部を除き電子署名が必要とされていて、私たちの生活に必要な行政手続きでも電子署名は活用されています。

医療関係の同意書

病院などの医療機関では、患者に対して今後の治療方針について同意書に署名を求められることがあります。同意書についても医療機関では電子化が進められていて、これを電子同意書と呼びます。電子同意書には主に以下の2つのタイプがあります。

  • 対面でタブレット端末に署名を行う(電子サイン)
  • オンラインで同意書に電子署名を行う(電子契約)

電子署名を行うのは後者のタイプで、患者は電子メールによって受信した同意書にオンライン上で署名します。

介護サービスの利用

介護サービスを利用する際の契約書でも、電子署名が用いられることがあります。2021年度の介護報酬改定では、一定の要件を満たす場合には、介護事業の契約書について電子化が認められました。

これにより介護サービスを提供する事業者側の負担が軽減され、利用者やその家族にとっても対面で署名する手間が省略できるメリットがあります。

電子署名のやり方

電子署名は、以下の4つの方法が一般的です。

電子署名のやり方
  1. Adobe AcrobatでPDFファイルに電子署名する方法
  2. WordやExcelファイルに電子署名する方法
  3. メールに電子署名する方法
  4. 電子契約サービスで電子署名する方法

ここから、それぞれのやり方・流れを紹介します。

Adobe AcrobatでPDFファイルに電子署名する方法

Adobe Acrobatを利用して、PDFファイルへの電子署名が可能です。PDFに署名する際には、Acrobat Readerの「編集」メニューから環境設定を開き、署名の設定画面でメールアドレスと名前を入力してデジタルIDを作成しましょう。

そのうえで、以下の手順で署名します。

  1. PDFファイルを開き、「ツール」→「証明書」を選択
  2. 署名を入れたい場所を指定
  3. デジタルIDを選択しパスワードを入力
  4. 署名済みファイルを保存

WordやExcelファイルに電子署名する方法

WordやExcelといったMicrosoft Office製品で電子署名をするには、署名を入れたい場所を選択したうえで「挿入」タブから署名欄を表示させましょう。

署名タブに名前や役職、署名の説明など必要情報を入力し、署名欄をクリックして確定させると選択場所に電子署名が表示されます。

メールに電子署名する方法

Outlookなら、メール作成時に以下の手順で簡単に電子署名が付与できます。

メールに電子署名する方法
  1. メール作成画面で「オプション」タブを開く
  2. 「暗号化」グループ内の「署名」ボタンをクリック
  3. 「メッセージに署名を追加」を選択
  4. 送信前に署名が付与されていることを確認
  5. 通常どおりメールを送信

電子契約サービスで電子署名する方法

公的書類など重要な書類の電子署名には、法的効力が確保できる電子契約サービスの利用がおすすめです。電子署名をする方法はサービスによって若干異なりますが、一般的な流れは以下のとおりです。

  1. 契約書をシステムにアップロード
  2. 文書内の署名箇所を指定
  3. 署名依頼先のメールアドレスを入力して送信

無料で電子署名する方法

前の項目で紹介した電子署名方法のうち、Adobe社が提供するPDF閲覧ソフト「Acrobat Reader」であれば、無料で電子署名の利用が可能です。Acrobat Readerは有料プランもありますが、署名機能は回数が限定されていますが無料プランで利用できます。

また、電子契約サービスのフリープランを利用する方法もあります。なお、インターネット上には無料の電子署名ツールが多数存在しますが、セキュリティ面での懸念があるため、重要な契約書には電子契約サービスがおすすめです。

マイナンバーカードで電子署名する方法

マイナンバーカードを使用して電子署名を行うには、公的個人認証サービスを利用します。公的個人認証サービスはマイナンバーカード内の電子証明書を活用し、オンラインで本人確認や文書の改ざん防止を実現する仕組みです。

e-Taxでの申告・納税、特許庁の電子出願システムでの手続き、社会保険関連手続きなどで活用できます。

パソコンを使用した方法

パソコンで電子署名を行うためには、以下を準備します。

  • 電子証明書記録済みのマイナンバーカード
  • ICカードリーダー
  • JPKI利用者ソフト

JPKI利用者ソフトは、公的機関のウェブサイトからダウンロードでき、WindowsおよびMacに対応しています。準備後は、行政手続きサイトやJPKIソフトの案内に従い操作を進めます。

スマートフォンを使用した方法

スマートフォンを利用する場合は、ICカードリーダーが不要で、マイナンバーカード対応のNFC機能を使用します。以下の手順で進めます。

スマートフォンを使用した方法
  1. マイナポータルアプリのインストール
  2. マイナンバーカードの読み取り
  3. 署名の実行

手続きに応じて必要な情報を入力し、パスワードを設定して電子署名を実行します。スマートフォンの場合は特別に手配するべきものもなく、より手軽に電子署名を行うことが可能です。

電子署名に必要な電子証明書の取得方法

電子署名を行うには、電子証明書という証明書の取得が必要です。

電子証明書とは、電子データが改ざんされていないことを証明するためのもので、実印における印鑑登録証明に相当するものです。

電子証明書を取得する流れは以下の通りです。

  1. 申請書類や本人確認書類を準備し、webサイトを通して申請する
  2. 審査が完了したら電子証明書が発行される

なお、電子証明書の仕組みや取得方法については下記で詳しく解説していますので参考にして下さい。

電子署名のメリット

電子署名を利用する具体的なメリットを以下に挙げていきます。特にアフターコロナの社会においては、リモートワークの浸透により、直接紙媒体に署名捺印する従来の形式は廃れ、電子署名の活用がさらに広がることが見込まれます。

契約業務の効率化

紙媒体の契約書の場合、自社内での決済で各部署を回ったり、契約相手方との署名捺印のために訪問や郵送をしたりなど、物理的な書類のやり取りが必要です。しかし、電子署名を用いれば、これらの手続きはすべてオンライン上で行えますので、時間や手間が減り、業務効率化に繋がります。

書類を保管する手間やスペースの削減

紙媒体の契約書は、ファイリングする手間と、ファイルを保管する場所を要します。しかし、電子署名を用いた電子契約であれば、ファイリングする手間が省け、保管スペースを大幅に削減できます。

電子署名を導入するときの注意点

電子署名の導入時には、社内フローの見直しが必要です。また、電子署名の導入について従業員に周知したうえで新しいフローの共有、必要に応じて研修なども行いスムーズな運用ができるようにしましょう。

また、取引先との調整も必要です。一部の取引先は電子契約に対応していない場合や、従来通り紙での契約書を希望する場合があります。そのため、事前に取引先と合意形成を行うことが重要です。

さらに、新たに電子署名を導入する際には、その利用方法や法的効力について取引先にも説明し、理解を得る努力が求められます。

法的効力がある電子署名は手続きや契約業務を効率化できる

適切な方法で行われた電子署名には、紙の署名と同じように法的有効性があります。

ビジネスの場面のほか、日常生活のあらゆる場面で利用されている電子署名には、公開鍵暗号方式とハッシュ値の組み合わせにより、文書の改ざんや盗難、紛失のリスクを軽減できるメリットがあります。

今後もさまざまな場面で電子署名を用いる機会は増えていくことでしょう。社内での契約業務などに電子署名を利用すれば業務の効率化にもつながります。必要に応じて電子契約システムなどの導入も検討してみると良いでしょう。


※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。

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