- 更新日 : 2024年11月14日
社宅使用契約書とは?雛形をもとに内容や注意点を解説
企業が従業員に対して社宅を提供する場合、一般的には「社宅使用契約書」を作成することになります。
社宅使用契約書にはどのような事項を記載すべきで、どのような点に注意すべきなのでしょうか。雛形をもとに解説します。
社宅使用契約書とは?
社宅を提供する際、貸主である会社と入居者である従業員が交わす契約を「社宅使用契約」と呼びます。「社宅使用契約書」は社宅の使用に関する契約を締結するにあたり、契約内容を取りまとめた文書です。
「使用」という名称が付されることが多いのですが、使用貸借の関係になるとは限らず、実質的には賃貸借契約として取り扱われるケースも少なくありません。特に社宅の使用料が賃料の相場に近い場合は、契約書の表題に「賃貸借契約」と明記されているかどうかに関わらず、当該社宅使用契約は賃貸借契約にあたると判断される可能性が高いです。
社宅使用契約は主に福利厚生を目的として導入され、遠方から出てきた従業員や転勤を要する従業員などのために提供されます。社宅は一般的な賃貸物件より安く居住できるケースが多いため、従業員の満足度向上や離職率低下にも寄与すると考えられています。
社宅使用契約書の雛形
社宅使用契約書の雛形を用意しました。社宅を提供するにあたり、実際にどのような契約書を交わすことになるのかを知るための参考にしてください。
なお、雛形はよくある条項をまとめたものであり、そのまま使用できるものではありません。雛形をもとに、自社に適した形へと調整してください。
社宅使用契約書に記載すべき事項
社宅使用契約書には、以下の事項を記載します。
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具体的にどのような規定を置くべきか、自社でよく検討することが大切です。また、契約書を作成するにあたっては、記載した文言に対して複数の解釈ができるような曖昧さがないようにしましょう。
社宅使用契約を結ぶ際の注意点
社宅使用契約を締結する際は、「使用料」「社宅の使用規則の整備」「税務上の取扱い」に留意する必要があります。
使用料の定め方
社宅の使用料については、以下の2つの観点で考えることが大切です。
- 借地借家法の適用可否
- 従業員の負担
借地借家法の適用を受けた場合、契約を終了させるには厳格な要件を満たさなくてはなりません。解約の申し入れには正当な事由が必要ですし、原則として契約終了により即座に明渡しを求めることはできず、6か月間の経過を待たなくてはなりません。
同法の適用に影響する主な要因は、使用料の額です。上述のとおり、物件の規模・立地等を鑑みて賃料に相当する金額なら賃貸借契約となり、借地借家法の適用を受けることになります。その結果利用者は手厚く保護され、簡単に社宅の明渡しを求めることはできなくなるのです。一方で賃料より明らかに低く維持費にも満たない場合などは、同法の適用を受けないと考えられています。
従業員の負担については、借地借家法の適用可否の問題を考慮しつつ、給与とのバランスも考えて設定することが大切です。従業員の負担が大きいと会社側は楽ですが、社宅を利用するメリットが小さくなってしまいます。逆に会社側の負担を増やして従業員の負担を減らせば従業員の満足度が増し、借地借家法の適用も避けやすくなります。また、好条件の社宅は対外的なアピール材料になるため、人材獲得等の面で会社側にもメリットがあります。
社宅の使用規則を定める
居住にあたっての詳細なルールは、社宅使用契約書とは別に使用規則として作成するのが一派的です。
例えば、ゴミ出しのルールや駐車場および駐輪場の利用方法、騒音防止に関すること、社宅の管理・運営者の定め、入居申請の手続方法、同居人の具体的な範囲、その他禁止事項などを規則に定めます。
契約書内には「第三者への同居を禁ずる」「適切に管理する」といった基本的で最低限の内容しか記載しないケースが多いため、これを補完する形で策定するとよいでしょう。
税務上の取扱い
従業員の給与に対して源泉所得税が課されますが、社宅の使用料として一定額以上を定めている場合、その分は給与として課税されなくなります。
しかし、一定額未満だと差額分に対して課税されます。このような税務上の取扱いにも注意しましょう。
ここで基準となるのが「賃料相当額」です。賃料相当額が1万円の場合を考えてみましょう。従業員に無償で使用させた場合は、1万円が給与として課税されます。一方、1万円で貸与した場合はその分が給与として課税されなくなります。4,000円での貸与であれば、賃料相当額との差額である6,000円が給与として課税されます。
ここで注意したいのが、使用料が賃料相当額未満かつ半額以上のケースです。この場合、差額は給与として見なされず、課税されません。そのため、7,000円を使用料として定めたとしても、差額の3,000円には課税されないのです。
使用料に注意して社宅使用契約書を作成しよう
社宅使用契約について解説し、社宅使用契約書に定めるべき事項などを説明しました。利用者の義務や解除、退去に関することなど、契約書に記載すべき事項はたくさんありますし、細かい居住ルールを使用規則として別途整備することも大切です。
しかし、最も慎重に検討すべきなのは「使用料の定め」でしょう。使用料が借地借家法の適用可否に関わりますし、従業員の負担にも直接関わります。また税務にも影響が及ぶので、専門家に相談しつつ社宅使用契約の内容を考えるとよいでしょう。
よくある質問
社宅使用契約書とは何ですか?
社宅使用契約書とは、「従業員に社宅を使用させる」とする契約締結時に交わす文書のことです。詳しくはこちらをご覧ください。
社宅使用契約書に記載すべき事項は何ですか?
社宅使用契約書には、対象の物件じゃ使用料の有無及び金額、支払方法、利用者の義務・解除・退去・損害賠償・原状回復に関する事項などを記載します。詳しくはこちらをご覧ください。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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