- 作成日 : 2025年7月17日
紙カルテを電子化するには?アプリの導入ポイント
カルテをアプリで管理すれば、手間が減り業務が効率的になります。紙のカルテでは避けられない紛失や記入ミスのリスクを抑え、いつでもどこでもデータの確認ができます。この記事では、カルテの電子化方法から、おすすめの電子カルテアプリ、導入時のポイントや注意点まで、わかりやすく解説します。
目次
紙カルテを電子化する方法
医療や福祉、美容などで使われてきた紙のカルテを電子化する方法は、電子カルテアプリを導入する方法とスキャナーを使ってPDFなどの形式で保存する方法の大きく分けて2つあります。
電子カルテアプリを使う方法
カルテの情報をアプリ上に直接入力し、データとして一元管理する方法です。入力と同時に情報はクラウドや端末に保存され、複数のスタッフが同時に確認・編集できます。多くの現場で導入が進んでいるのは、以下のような理由やメリットがあるからです。
- 過去のカルテがすぐに検索できる
- 手書きによるミスや読み間違いを防げる
スマホやタブレットでどこでも記録できる - アクセス制限や通信暗号化で情報を安全に管理できる
動バックアップやレセプト連携などの機能も利用できる
特に、マイナンバーや医療情報を扱う業務では、安全に取り扱える仕組みが整ったアプリの導入が不可欠です。
スキャン保存による簡易的な電子化
紙のカルテをスキャンし、PDFなどの形式で保存する方法です。導入コストは比較的低く抑えられますが、次のような課題があります。
- 内容の検索や編集ができない
- ファイルが増えると目的の情報を見つけにくい
- 利用履歴やアクセス管理ができずセキュリティが弱い
そのため、スキャン保存はあくまで補助的な手段として使われることが多いです。
おすすめ電子カルテアプリ比較(無料あり)
電子カルテアプリはクラウド型が主流で、機能・価格ともに幅広い選択肢があります。ここでは主なアプリと、それぞれの特徴を紹介します。
エムスリーデジカル
エムスリーデジカルは、クラウド型の電子カルテアプリで、8年連続でクラウド電子カルテシェアNo.1の実績があります。AIが入力内容を学習し、効率よく記録ができるようになります。iPadにも対応しており、外出先や診療中の操作もスムーズです。 クラウド型で6年連続シェアNo.1。AIがカルテ入力を学習し、入力スピードが向上。iPadにも対応しており、モバイル利用もスムーズ。
- 初期費用:0円(データ移行はオプション)
- 月額費用:11,800円〜(ORCA連動型)/24,800円〜(レセコン一体型)
- 機能:利用管理、ログ管理、データ移行
CLIUS(クリアス)
CLIUS(クリアス)は、予約や診察、院内フローまでを一元管理できるクラウド型電子カルテです。オンライン診療やバックアップ機能など、実用的な機能が充実しており、多忙な診療現場でも安心して利用できます。 UI(ユーザーインターフェース)にこだわり、直感的な操作が可能。サーバー停止時でもローカルバックアップでカルテ閲覧が可能。オンライン診療にも対応。
- 初期費用:0円(CLIUS Directプラン)/20万円〜(CLIUS 通常プラン)
- 月額費用:19,800円(CLIUS Directプラン)/12,000円(CLIUS 通常プラン)※ レセコンの費用が別途必要
- 特徴:30日無料トライアルあり
きりんカルテ
きりんカルテは、無床クリニック向けに設計されたクラウド型電子カルテです。日本医師会ORCA管理機構のWebORCAと連携しており、手書き機能や直感的な操作画面が特長です。電子カルテ部分は無料で提供されていますが、レセコン部分は有料となっています。 日本医師会のWebORCAと連携し、手書き機能やわかりやすい操作画面が特長。無床クリニックに向いており、電子カルテ部分は無料。
- 初期費用:0円(電子カルテ)/33万円(レセコン導入にかかる費用)
- 月額費用:0円(電子カルテ)/22,800円(レセコン利用料)
- 無料利用可:一部機能に限定あり
BrainBoxCloud
BrainBoxCloudは、AIが入力パターンを学習して使うほどに効率化されるアプリです。サブサーバーを標準で備えており、通信障害時もカルテ作成が止まりません。自院の運用に合わせて柔軟にカスタマイズできる点も魅力です。 AIによる入力学習と最適化が強み。回線トラブル時もサブサーバーが作動し、業務を止めずに続行可能。カスタマイズ性も高い。
- 初期・月額費用:要問い合わせ
- 特徴:AI学習、バックアップ自動化、自由度の高いUI
Medicom-HRf Hybrid Cloud
Medicom-HRf Hybrid Cloudは、クラウド型とオンプレミス型の両方の利点を兼ね備えたハイブリッド型の電子カルテです。院外からのアクセスや訪問診療にも対応しており、柔軟な運用が可能です。レセコン一体型で、事務作業の効率化も実現できます。 クラウド型とオンプレミス型を組み合わせたハイブリッド型。訪問診療や院外からのアクセスにも対応し、事務作業の効率化にも有効。
- 初期・月額費用:要問い合わせ
- 特徴:デバイスフリー、レセコン一体型
電子カルテアプリを選ぶポイント
電子カルテアプリを選ぶ際は、使いやすさやセキュリティ、サポート体制など、複数の観点から比較することが大切です。導入後に「合わなかった」とならないよう、事前にチェックすべきポイントをご紹介します。
操作のしやすさを確認する
誰でも直感的に使えるシンプルなインターフェースが理想です。特にベテランスタッフやITに不慣れな職員でも扱えるかをチェックしましょう。
ペンタブレット対応や手書き機能があると、紙カルテに慣れている医師でもスムーズに移行できます。例えば、「きりんカルテ」や「エムスリーデジカル」は、手書き入力に対応しており移行しやすい設計です。AIによる入力補助機能があるアプリでは、日々の入力時間を大きく短縮できます。
自院の診療スタイルに合っているか
自院の診療内容や流れに合ったアプリを選ぶことも重要です。
例えば、専門外来や訪問診療が中心なら、その診療に特化したテンプレートや入力補助機能があるかを確認しましょう。予約・検査・会計までの流れをアプリ内で一貫して管理できるかどうかも、運用効率に直結します。外部検査機関からのデータ取り込み機能の有無も忘れず確認してください。
セキュリティ対策は十分か
診療情報やマイナンバーなどの個人情報を扱うため、セキュリティはとても重要です。次のようなセキュリティ機能が備わっているかがポイントです。
- ログイン制限(ID・パスワード管理)
- アクセス権限設定(職種ごとに閲覧制限)
- 通信データの暗号化
- 操作履歴の自動記録(監査ログ)
また、厚生労働省が定める「電子保存の三原則(真正性・見読性・保存性)」に対応しているかも確認する必要があります。
サポート体制の充実度
導入後に不具合や疑問が発生した際に、迅速に対応してくれるサポート体制が整っているかも重要です。24時間のサポート窓口や、導入時の研修・マニュアル提供などがあるかを確認しておくと安心です。
既存システムとの連携ができるか
今使っている医事会計システムや検査機器、予約システムなどとの連携がスムーズにできるかも、業務効率を大きく左右します。レセコンと連携する場合は、ORCA対応か、レセコン一体型かも判断材料になります。
電子カルテアプリを導入する際の注意点
電子カルテ導入には移行準備や操作支援、災害対策が欠かせません。導入時の注意点を紹介します。
移行の準備を整える
電子カルテを導入する前に、自院の課題や診療スタイルに合ったアプリを選び、運用フローを見直すことが大切です。紙カルテからのデータ移行方法には以下のような選択肢があります。
- スキャンしてPDF化する(院内作業または業者委託)
- 再来患者から順に電子化する(診察時に入力)
- 既存レセコンのデータを取り込む
再来患者から段階的に移行するやり方は、現場への負担が少なくおすすめです。導入後は、まず少人数で試験運用を行い、問題点を確認してから本格導入に進みます。
スタッフの不安に配慮する
電子カルテの操作に不安を持つスタッフには、事前の説明や継続的な研修を用意し、職種別のマニュアルを整備すると効果的です。対応策として、以下のような取り組みが有効です。
- ITに慣れたスタッフをサポート役に配置する
- 明確な操作目標を設定する(例:「1週間で入力に慣れる」)
- 段階的な導入で無理なく慣れてもらう
紙と電子を併用する時期を管理する
導入初期は紙カルテと電子カルテを併用する期間が必要な場合があります。この期間中は、記録の二重化や漏れを防ぐために、どの情報をどちらに記載するかルールを明確に決めておく必要があります。完全電子化に向けて、併用中も操作に慣れる時間として活用します。
停電や災害に備えておく
電子カルテは電源とネットワークに依存するため、停電や障害時の備えが欠かせません。次のような対策が求められます。
- UPS(無停電電源装置)を設置する
- データの自動バックアップ体制を整える
- 紙の記録用テンプレートを準備する
クラウド型アプリであれば、遠隔地のデータセンターによるバックアップがあり、早期復旧も可能です。
法令に沿って保存と運用を行う
診療録は医師法で5年間の保存が義務付けられています。また、厚生労働省が示す「電子保存の三原則」に対応した管理体制を整える必要があります。
- 真正性:改ざんされていないこと
- 見読性:必要なときに読める状態にすること
- 保存性:復元できる状態で保存すること
これらを満たしていないと、個人情報保護法や医師法違反につながるおそれがあるため、保存体制も確認しておくことが重要です。
カルテアプリで紙の管理は不要になる?
電子カルテアプリを導入することで、日常業務の多くが電子化され、紙のカルテを使用する機会は大幅に減らせます。診療記録や処方歴、検査結果などはすべてアプリ上で完結でき、保管場所や印刷作業も減らせます。特にクラウド型であれば、データは自動保存・共有ができ、業務の効率化にもつながります。
とはいえ、紙をまったく使わないというのは、まだ現実的ではない場面もあります。例えば高齢の患者さんに対しては紙での案内が必要なケースが多く、ITに不慣れなスタッフには紙資料のほうが扱いやすいこともあります。また、災害時やシステム障害時には電子カルテにアクセスできなくなるリスクもあります。
そのため、現在でも次のような紙の補助運用を残している施設は多くあります。
- 停電時に使える紙の記録テンプレートの常備
- 法的保管が必要な情報の一部を紙でバックアップ
- 記録の信頼性確認のための出力控えの保管
電子カルテを中心に据えつつも、現場の状況に応じて紙と併用しながら段階的に移行を進めることが現実的です。
電子カルテアプリの導入は段階的に
電子カルテアプリを取り入れることで、記録業務の簡略化や情報の共有がスムーズになります。使いやすいアプリを選び、自院に合わせて導入を進めれば、スタッフの負担軽減とサービス向上につながります。現在は無料プランから始められるアプリも多く、選択肢が豊富に揃っています。
導入は一度にすべてを変えるのではなく、段階的に進めることが成功のポイントです。紙と併用しながら、自院に合った形で少しずつ移行していくことで、無理なく電子化を進めることができます。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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