• 更新日 : 2026年5月7日

最低賃金と住宅手当の関係は?算入ルール・残業代との違い・計算例を解説

Point住宅手当と最低賃金の関係性は?

住宅手当は、最低賃金を計算する際の対象賃金に含まれ、基本給と住宅手当の合計額を時給換算し、地域別最低賃金を上回る必要があります。

  • 最低賃金には「算入」:家族手当や通勤手当とは異なり、最低賃金の比較対象に含まれる。
  • 残業代からは「除外可」:家賃額に応じた支給など、一律支給でなければ残業代の基礎から外せる。
  • 一律支給は残業代に影響:全員一律の定額支給の場合、残業代の計算基礎にも含める必要がある。

住宅手当を含めても最低賃金を下回る場合は最低賃金法違反となり、差額の支払いや50万円以下の罰金が科される恐れがあります。毎年10月の改定時に「基本給+住宅手当」が基準を満たしているか確認が必須です。

「住宅手当は最低賃金の計算に含まれるのか」という疑問は、給与設計を行う人事担当者が直面しやすい実務上の重要テーマです。結論からいうと、住宅手当は最低賃金の比較対象となる賃金に含まれますが、割増賃金の算定基礎からは条件次第で除外できます。この違いを正確に理解していないと、法令違反や賃金未払いにつながるリスクがあります。

本記事では最低賃金と住居補助手当の関係を体系的に整理します。

最低賃金とは?

最低賃金とは、使用者が労働者に支払わなければならない賃金の最低額で、最低賃金法に基づき国が定める制度です。地域別最低賃金(都道府県ごとに定められる)と特定最低賃金(産業別に定められる)の2種類があり、両方が適用される場合は高い方が基準となります。

最低賃金は時間額で示されるため、日給制・月給制の場合は時間給に換算して比較します。最低賃金を下回る賃金を支払った場合は最低賃金法違反となり、50万円以下の罰金が科される可能性があります。

参照:厚生労働省|最低賃金の対象となる賃金

関連記事|最低賃金とは?制度の概要や種類をわかりやすく解説

最低賃金はいつ改定されるの?

地域別最低賃金は毎年10月頃に改定されます。厚生労働省に設置された中央最低賃金審議会が改定の目安額を提示し、各都道府県の労働局が地域の実情を踏まえて最終的な額を決定します。毎年改定されるため、自社の賃金水準が最低賃金を下回っていないかの定期確認が不可欠です。

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最低賃金の計算に含まれる賃金・含まれない賃金はどれか?

最低賃金の比較対象となるのは、毎月支払われる賃金をベースとします。ただし、すべての支給額を合算して比較するわけではなく、法に沿って一定の賃金項目を除外した上で計算します。

住宅手当は、最低賃金の比較対象となる賃金に含まれます(算入対象)

参照:厚生労働省|最低賃金の対象となる賃金

最低賃金の計算から除外される賃金一覧

除外される賃金 具体例
精皆勤手当 皆勤・出勤奨励目的の手当
通勤手当 交通費・通勤費の補助
家族手当 扶養家族の有無・人数に応じた手当
割増賃金 時間外・休日・深夜の割増賃金
臨時に支払われる賃金 結婚祝い金・慶弔見舞金など
1か月を超える期間ごとに支払われる賃金 賞与・年2回の手当など

住宅手当は上記の除外リストに含まれておらず、最低賃金の計算対象となります。したがって、月給制の場合は「基本給+住宅手当(+その他毎月支払われる手当)」を所定労働時間で割って算出した時給が、最低賃金額を上回っているかを確認します。

最低賃金の計算に含まれる主な賃金

  • 基本給
  • 職務手当・役職手当・資格手当
  • 住宅手当(居住補助手当)
  • 皆勤以外の業務関連手当
  • 毎月一定額支給されるその他手当

住宅手当はなぜ最低賃金に算入されるの?

住宅手当が最低賃金の計算対象に含まれる理由は、精皆勤手当・通勤手当・家族手当と異なり、住宅手当は最低賃金法上の「除外賃金」として明示されていないからです。

精皆勤手当は「欠勤すると支給されない」という性質から除外され、通勤手当・家族手当は「労働の対価ではなく個人的な事情による実費弁償的な支給」という性質から除外されます。一方、住宅手当には法律上このような除外規定が設けられておらず、最低賃金の比較計算に算入しなければなりません。

住宅手当と割増賃金の関係は?

住宅手当は最低賃金の算入対象ですが、割増賃金(残業代)の計算基礎からは、条件を満たす場合に限って除外することが認められています。この点が最低賃金の扱いと最も大きく異なります。

参照:厚生労働省|割増賃金の基礎となる賃金について

関連記事|住宅手当は割増賃金に含めない?含めるべき例と計算ルールを解説

最低賃金と割増賃金における住宅手当の扱いの違い

計算の種類 住宅手当の取り扱い
最低賃金の比較計算 算入する(含める)
割増賃金(残業代)の算定基礎 条件を満たす場合のみ除外できる

この違いを混同すると、最低賃金の判定が不正確になったり、割増賃金の計算誤りによる未払い残業代が発生したりするリスクがあります。

割増賃金の計算から住宅手当を除外できる条件は?

割増賃金(残業代)の算定基礎から住宅手当を除外するには、その手当が「住宅に要する費用に応じて算定される」ものでなければなりません。名称が「住宅手当」であっても、支給の実態が費用に連動していない場合は除外できません。

除外できる住宅手当の条件

厚生労働省の通達(平成11年3月31日 基発第170号)では、割増賃金の算定基礎から除外できる住宅手当の条件を次のように示しています。

  1. 住宅に要する費用に定率を乗じた額を支給するもの (例:賃貸居住者に家賃月額の20%、持家居住者に住宅ローン月額の20%を支給)
  2. 住宅に要する費用を段階的に区分し、費用が増えるにしたがって額を多くするもの (例:家賃月額5〜10万円の者に2万円、10万円超の者に3万円を支給)

除外できない住宅手当のケース

支給方法 割増賃金の扱い
全従業員に一律定額で支給 除外できない(算定基礎に含める)
賃貸・持家の形態ごとに一律定額で支給 除外できない(算定基礎に含める)
役職・雇用形態ごとに一律で異なる額を支給 除外できない(算定基礎に含める)
家賃額の一定割合を支給 除外できる
家賃額の段階に応じた金額を支給 除外できる

「住宅手当」という名称であっても実態が一律支給であれば除外できないという点は、実務で頻繁に誤りが生じる箇所です。支給条件は規程の文言だけでなく「支給の実態」によって判断されます。

関連記事|割増賃金は手当も含まれる?残業代の計算方法を解説

最低賃金の計算方法と住宅手当を含めた具体的な計算例は?

月給制の場合、最低賃金の計算は「最低賃金の対象となる月額賃金 ÷ 1か月平均所定労働時間」で求めた時給が、最低賃金額(時間額)以上かどうかを確認します。

計算式

1か月平均所定労働時間 =(365日 − 年間休日数)× 1日の所定労働時間 ÷ 12か月
最低賃金比較用の時給 = 最低賃金対象の月額賃金 ÷ 1か月平均所定労働時間

計算例①:住宅手当を含めるケース(合否の判定例)

条件:

  • 月給:基本給18万円、住宅手当1万円、家族手当2万円、通勤手当1万円
  • 年間休日120日、1日所定労働時間8時間
  • 適用される最低賃金:時給1,226円(記事公開時における東京都の最低賃金による例示)

計算:

1か月平均所定労働時間 =(365 − 120)× 8 ÷ 12 = 163.3時間

最低賃金対象の月額賃金: 基本給18万円 + 住宅手当1万円 = 16万円 (家族手当2万円・通勤手当1万円は除外)

最低賃金比較用の時給:160,000 ÷ 163.3 ≒1,163円

→ 1,163円 < 最低賃金1,226円 → 最低賃金を下回るため、賃金改定が必要

このように住宅手当を算入した上でも最低賃金を下回るケースがあるため、精皆勤手当・通勤手当・家族手当以外のすべての月次手当を含めた正確な計算が重要です。

計算例②:精皆勤手当の誤算入によるよくある間違い

精皆勤手当は最低賃金の計算に含められません。精皆勤手当を誤って算入して計算した場合、見かけ上は最低賃金をクリアしていても、正しく計算すると最低賃金を下回っていた、というケースが実務でよく発生します。

住宅手当の設計と最低賃金・残業代のバランスはどう考えるべきか?

住宅手当は最低賃金の算入対象であることから、基本給が低い場合でも住宅手当を加算することで最低賃金のクリアをしやすくする効果があります。一方で、住宅手当の設計方法によっては割増賃金(残業代)の算定基礎に含めなければならなくなり、残業コストが上昇するという側面もあります。

住宅手当の設計方針別の影響比較

設計方針 最低賃金への算入 割増賃金への算入 特記事項
費用に応じた手当(定率・段階方式) 算入する 除外できる 最低賃金対策と残業代コスト抑制を両立しやすい
全員一律定額 算入する 算入が必要 割増賃金も増加するため残業コストに注意
住居形態ごとの一律額 算入する 算入が必要 一律支給は除外不可

費用に応じた手当(家賃の一定割合支給など)は、割増賃金の算定基礎から除外できる可能性がありますが、個々の従業員ごとに支給額の計算・管理が必要になるという事務負担が生じます。

住宅手当を最低賃金の計算に使う際の実務上の注意点は?

住宅手当を最低賃金の計算に含める際には、手当の支給条件が変動することによる毎月の確認負担が生じることに注意が必要です。

実務上のチェックポイント

  1. 住宅手当の支給規程を確認し、「費用に応じた支給」か「一律支給」かを明確にする
  2. 一律支給の住宅手当は割増賃金の計算基礎に算入することを徹底する
  3. 費用応動型の住宅手当は、毎月の家賃・ローン額の確認・記録が必要であることを把握する
  4. 最低賃金改定のたびに「基本給+住宅手当(+その他算入対象手当)」が最低賃金額を上回るか確認する
  5. 就業規則(賃金規程)の定めと実際の支給実態が一致しているかを定期的に照合する

同一労働同一賃金と住宅手当の関係は?

正規・非正規間の待遇格差を問う同一労働同一賃金の観点からも、住宅手当の扱いは注目されています。同一労働同一賃金の考え方では、住宅手当を正社員にのみ支給してパートタイマー・有期契約社員には支給しない場合、合理的な理由がなければ不合理な待遇格差として問題になる可能性があります。

最高裁判決(日本郵便事件ほか)では、住宅手当を含む各種手当について正規・非正規間での支給の合理性が問われており、手当設計の見直しが急務となっている企業も少なくありません。

関連記事|同一労働同一賃金で各種手当はどうすべき?対応方法を解説

最低賃金と住宅手当の関係を正確に把握して賃金管理を適正化しよう

最低賃金と住宅手当の関係を一言でまとめると、「住宅手当は最低賃金の比較対象に含まれるが、割増賃金の算定基礎からは支給方法次第で除外できる」ということです。

精皆勤手当・通勤手当・家族手当と混同しやすい論点であり、誤った計算を放置すると最低賃金法違反や残業代未払いのリスクが生じます。住居補助手当の設計方針を整理し、最低賃金のクリアと割増賃金の適正計算を両立させる賃金規程の構築が、健全な労務管理の基盤となります。


※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。

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