• 更新日 : 2026年1月28日

扶養手当の条件は?支給対象となる必須要件や家族構成ごとの基準を解説

多くの企業で導入されている「扶養手当(家族手当)」ですが、その支給条件は法律で一律に決まっているわけではなく、会社の「就業規則(賃金規程)」によって定められています。

しかし実務上は、税法や社会保険の基準を組み合わせた4つの共通条件をベースに制度設計されるケースが大半です。 本記事では、人事労務の初心者が判断に迷いやすい扶養手当の条件について、まず結論となる4つの必須要件を提示した上で、複雑な年収の壁や証明書類の運用実務を体系的に解説します。

扶養手当の支給条件とは?

一般的に「家族関係」「年齢・身分」「生計維持関係(収入)」「同居・別居」の4つの要素すべてを満たすことが条件となります。

企業ごとに細則は異なりますが、支給・不支給を判断する際は、必ず以下の4つのチェックポイントを通過する必要があります。まずはこの全体像を把握してください。

1. 家族関係の条件(範囲)

誰を対象とするかの範囲です。「配偶者」と「子」のみを対象とする企業が大半ですが、親や兄弟姉妹まで含める場合もあります。

  • 配偶者: 法律婚だけでなく、事実婚(内縁関係)やパートナーシップ宣誓者を条件に含める企業が増えています。
  • 子: 実子、養子、および養子縁組をしていない配偶者の子(継子)などが対象になります。
  • その他: 父母、祖父母、孫、兄弟姉妹など(範囲は企業により限定的です)。

2. 年齢・身分の条件

主に「子」に対して設定される条件です。

  • 年齢制限: 「18歳到達年度の末日まで(高校卒業)」または「22歳到達年度の末日まで(大学卒業)」とするのが一般的です。
  • 身分制限: 22歳未満であっても「就職していないこと(学生であること)」や「既婚者でないこと」を条件とするケースが多いです。

3. 収入の条件(年収の壁)

対象となる家族にどれくらいの収入があるかという条件です。

  • 上限額: 「年収123万円以下」または「年収130万円未満」のどちらかを閾値(しきいち)とするのが通例です。
  • 期間: 昨年の年収実績で見るか、向こう1年間の見込みで見るかが分かれます。

4. 生計維持・同居の条件

その家族を従業員が養っている実態があるかどうかの条件です。

  • 同居の場合: 家計が同一とみなされ、収入条件さえクリアすれば認められやすいです。
  • 別居の場合: 「定期的な送金(仕送り)」の事実確認が必須条件となります。また、親や兄弟姉妹については「同居に限る」という厳しい条件を設けている企業も多くあります。
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扶養手当の条件のベースとなる基準とは?

扶養手当の条件(収入要件や判定方法)を詳細に定める際、企業はゼロから独自のルールを作るのではなく、国の公的な制度である「税法(所得税)」か「社会保険(健康保険)」のどちらかの基準をモノサシとして利用するのが一般的です。

自社の規程がどちらの基準ベースで作られているかによって、同じ「年収の壁」という言葉を使っていても、「収入に交通費を含むか」「判定期間はいつか」といった具体的な条件が決定的に異なります。ここを混同すると、従業員への誤った案内につながるため注意が必要です。

Aパターン:税法基準(所得税法準拠)

その年の1月〜12月の給与収入が123万円以下(合計所得58万円以下)であることを条件とするパターンです。令和7年度税制改正によって、それまでの基準である103万円から123万円に引き上げられているため、会社の基準も合わせた方が良いでしょう。

  • 判定期間: 歴年(1月1日〜12月31日)の実績および見込みで判断します。
  • 特徴とメリット: 年末調整の計算ロジックと連動するため、人事担当者にとっては事務処理がわかりやすいのが最大の特徴です。「年末調整で配偶者控除がついている=家族手当も支給」というシンプルな図式が成り立ちます。
  • 注意点とリスク:
    • 交通費の除外: 非課税通勤手当(交通費)は収入に含まれません。そのため、遠距離通勤で交通費が高額なパート社員でも、手当の対象になりやすい傾向があります。
    • 遡及返還のリスク: 「12月の給与で想定外に残業してしまい、結果的に年収が123万円を超えた」という場合、その年の1月まで遡って手当の返還を求める必要が出てくるケースがあります(規程によります)。

Bパターン:社会保険基準(健康保険法準拠)

向こう1年間の年収見込みが130万円未満、かつ被保険者の年収の1/2未満であることを条件とするパターンです。

  • 判定期間: 認定日以降の将来に向かって判断します。具体的には、直近3ヶ月の平均月収が108,333円(130万円÷12ヶ月)未満であるかどうかが目安となります。
  • 特徴とメリット: 「健康保険が利用できる(被扶養者である)=手当支給」とリンクさせて管理できるため、現在多くの企業で採用されています。扶養手当のためだけに別途所得証明書を集める手間が省ける点がメリットです。
  • 注意点とリスク:
    • 交通費の算入: 最大の落とし穴が「交通費」です。税法基準とは異なり、交通費を含んだ総支給額で判定します。そのため、時給や労働時間は控えめでも、交通費が高いと条件から外れてしまうことがあります。
    • 収入の範囲が広い: 失業給付(失業保険)や傷病手当金、公的年金なども「収入」とみなされるため、税法基準よりも条件が厳しくなります。

扶養手当の条件に影響する年収の壁と収入範囲は?

扶養手当の条件を確認する際、最もトラブルになりやすいのが「収入の範囲(何を含んで計算するか)」に関する認識のズレです。

特に、前述の「社会保険基準(Bパターン)」を条件として採用している場合、税金の計算とは全く異なる計算式になるため注意が必要です。ここでは、扶養手当の支給条件を左右する年収の壁と、具体的な収入項目の内訳を解説します。

扶養手当の支給条件に関わる3つの年収の壁

パート・アルバイト等の家族を持つ従業員が意識すべき壁は以下の3つです。どの壁を扶養手当の条件としているかにより、支給停止のラインが決まります。

年収の壁(基準法)条件の詳細扶養手当への影響
123万円(税法:所得税)給与収入のみで123万円以下税法基準を条件とする企業では、ここを超えると支給停止。
106万円(社会保険適用拡大)従業員51人以上の企業等で週20時間以上勤務など本人が社会保険に加入するため、社会保険基準を条件とする企業では、手当も連動して即停止。
130万円(社会保険:健保)年収見込み130万円未満社会保険基準を条件とする企業では、ここを超えると支給停止。

扶養手当の条件判断で収入に含まれるもの

「社会保険基準」を扶養手当の条件としている場合、以下の項目が収入に含まれるかどうかが支給・不支給の重要な分岐点となります。

  • 交通費(通勤手当): 【含む】
    • これが税法との最大の違いであり、扶養手当の条件から外れる原因として最も多いケースです。
  • 残業代・賞与: 【含む】
    • 臨時的なものではなく、恒常的な給与として計算に入れます。
  • 失業給付(雇用保険): 【含む】
    • 受給期間中(日額3,612円以上など)は収入ありとみなされ、多くの企業で手当停止の条件となります。
  • 傷病手当金・出産手当金: 【含む】
    • 休業中の生活補償給付ですが、収入とみなされます。
  • 公的年金: 【含む】
    • 親を扶養に入れる条件を確認する際、年金受給額もカウントします。
  • 退職金・譲渡益: 【含まない】
    • 一時的な収入は、原則として継続的な生計維持能力の判定(条件)からは除外されます。

家族構成によって扶養手当の条件はどう変わる?

家族の続柄(配偶者・子・親など)によって、求められる扶養手当の条件の厳しさは異なります。ここでは実務で頻出するケースごとに、具体的な判定基準を解説します。

配偶者の扶養手当条件

法律婚に限らず、健康保険の被扶養者として認定されていれば、手当の条件も満たすとする運用が一般的です。

住民票上「未届の妻(夫)」となっていたり、パートナーシップ証明書があったりする場合、生計維持関係があれば支給対象とする企業が増えています。ただし、規程に「戸籍上の配偶者に限る」と明記されている古い規程の場合は対象外となるため、確認が必要です。

子供の扶養手当条件

満22歳未満であっても、学校を卒業して就職した場合は、その時点で支給条件から外れます。

多くの規程では「18歳到達年度末」または「22歳到達年度末」までと定めていますが、但し書きで「就職し自らの収入で生計を維持する者を除く」といった条件が付与されています。 したがって、高卒で就職した19歳の子は、年齢条件はクリアしていても収入・身分条件でアウトとなります。

共働き夫婦(ダブルインカム)の扶養手当条件

夫婦共に収入がある場合、子供の手当は「年収が高い方(生計維持者)」に支給されるのが原則的な条件です。

夫婦が別の会社に勤務している場合、二重取り(両方の会社から子供分の手当をもらうこと)は禁止事項とするのが一般的です。 判断基準は健康保険のルールに準じ、「前年の年間収入が多い方の被扶養者とする」のが明確です。妻の年収が夫より高い場合、夫の会社の手当は停止し、妻の会社で申請する必要があります。

別居家族(親・単身赴任)の扶養手当条件

答え:別居の場合は「定期的な送金(仕送り)」が支給継続の絶対条件となります。

  • 単身赴任の本人: 従業員本人が転勤で別居する場合は、生計同一とみなされ、そのまま支給継続されます。
  • 実家の親・就学中の子: 別居している親や子を対象とする場合、以下の「仕送り要件」証明が必要です。
    • 送金方法: 銀行振込や現金書留(手渡し不可)。
    • 送金額: 対象者の収入以上、かつ社会通念上妥当な額(月数万円以上)。

扶養手当の条件確認に必要な書類と運用手順は?

扶養手当の条件を正確に判断するためには、申請時および年1回の定期検認で、必ず客観的な証明書類を提出させることが必要です。ここでは、適正な運用のために企業が定めるべき提出時期と実務条件を解説します。

申請時の条件確認で提出させるべき必須書類

口頭申告は不可とし、以下のエビデンス提出を必須条件とします。

客観的な証明書類がなければ、後に税務調査や労務監査で指摘を受けるリスクがあります。対象者ごとに以下の書類を確認します。

対象者確認書類チェックする条件
配偶者年収見込みが130万円(または123万円)未満か。
  • 健康保険証の写し
  • 在学証明書(18歳以上の場合)
年齢および学生であるか。

扶養に入っているか。

別居家族
  • 銀行振込明細書の写し(直近3ヶ月分)
定期的な仕送りが行われているか。

継続支給の条件を確認する定期的な現況確認(検認)

年に1回、全対象者の状況が変わっていないかを確認することを、継続支給の条件とすべきです。

一度認定したら終わりではなく、毎年6月(算定基礎時)や11月(年末調整時)に「扶養状況確認書」を提出させます。

特に2025年は最低賃金の上昇により、同じ労働時間でもパート年収が上限を超えてしまうケースが増えています。「知らないうちに条件から外れていた」という過払いを防ぐため、定期チェックは必須です。

条件変更時の支給開始・停止のタイミング

規程によりますが、計算を簡素化するため以下の条件設定が推奨されます。

日割り計算を行うと事務負担が大きくなるため、月単位での切り替えが一般的です。

  • 支給開始: 届出があった月の「翌月」から。
  • 支給停止: 事由が発生した日の属する月の「翌月」から。
  • 返還条件: 届出が遅れ、遡って不支給となった場合は、過去に支払った手当を「給与から控除して返還させる」旨を規程に明記します。

扶養手当の条件を正しく理解し、適切な運用を

扶養手当の条件は一見複雑に見えますが、「誰を対象とするかという家族範囲」、「収入の上限はいくらかという年収の壁」、「同居や学生といった状態要件は満たしているか」、そして「共働きによる重複受給はないか」という4つの視点に分けて考えることで整理しやすくなります。

人事担当者がトラブルを防ぐための最大のポイントは、自社の規程が「税法基準」なのか「社保基準」なのかをまず明確にし、それに応じた「収入の定義(特に交通費を含むかどうか)」を従業員へ正確に案内することです。曖昧な運用は過払いや不公平感を生む原因となります。明確な基準と定期的な現況確認によって、適正な制度運用を心がけましょう。


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