• 更新日 : 2026年1月28日

子供を扶養に入れる条件は?所得税・社会保険(健康保険)の違いや手続き方法を解説

従業員から「子供を扶養に入れたい」と相談された際、まず確認すべきは「税金」と「社会保険」どちらの手続きか、あるいは両方かという点です。 この2つは「年収の壁」や「必要書類」が全く異なるため、混同したまま進めると「税金は安くなったが、健康保険が使えない」といったトラブルになりかねません。

この記事では、子供を扶養に入れる条件や手順を、人事労務の初心者にもわかりやすく解説します。従業員への案内資料や、自身の知識整理にお役立てください。

子供を扶養に入れる条件は?

子供を扶養に入れる条件は、所得税(税法上の扶養)と社会保険(健康保険上の扶養)で全く異なる基準が設けられています。

「扶養に入れる」という言葉を使う際は、この2つを明確に区別して考える必要があります。混同すると「税金は安くなったが、健康保険が使えない」といったトラブルになりかねません。

以下の表に、それぞれの主な違いをまとめました。

項目所得税(税法上の扶養)社会保険(健康保険の被扶養者)
主なメリット親の所得税・住民税が安くなる(扶養控除子供の健康保険料がかからない(親の健康保険で受診可)
年収の壁(目安)123万円以下(給与収入のみの場合)原則130万円未満(かつ親の年収の1/2未満)
判定期間その年の1月1日〜12月31日の実績向こう1年間の見込み年収
交通費通勤手当収入に含まない(非課税限度額内)収入に含む
年齢要件16歳以上(控除対象扶養親族)特になし(新生児から可)

所得税(税金)における扶養条件

税法上の扶養に入る条件は、「生計を一にしていること」かつ「年間の合計所得金額が58万円以下(給与収入のみなら123万円以下)」であることです。

条件を満たすと、親(納税者)は「扶養控除」を受けることができ、手取り額が増えます。

対象となる子供の年齢によって、控除額が変わります。

  • 一般の控除対象扶養親族(16歳以上):38万円の控除
  • 特定扶養親族(19歳以上23歳未満):63万円の控除(大学生などが該当し、控除額が大きい)

なお、16歳未満の子供は「児童手当」の対象となるため、現在の税制度では扶養控除の対象外ですが、住民税の非課税判定等のために扶養親族としての申告は行います。

また、令和7年税制改正によって「特定親族特別控除」が創設されました。子供が19歳以上23歳未満で、控除対象扶養親族に該当せず、合計所得金額58万円超123万円以下であれば、最大63万円の控除が受けられます。

社会保険(健康保険)における扶養条件

社会保険の扶養に入る条件は、「主として被保険者(親)の収入により生計を維持されていること」かつ「年収が130万円未満で、親の年収の2分の1未満であること」です。なお、子供が19歳以上23歳未満の場合、年収の条件である130万円未満が150万円未満まで緩和されます。

この条件を満たすと、子供は親が加入している健康保険の「被扶養者」となり、保険料を負担することなく健康保険を利用できます(国民年金は20歳から加入義務があるため別扱いです)。

ここで最も重要なのは「年収」の定義です。社会保険における年収には、通勤交通費や雇用保険の失業給付なども含まれます。また、過去の実績ではなく「現時点から将来に向かっての年収見込み」で判定される点が税金とは大きく異なります。

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子供を扶養に入れるための必要書類は?

手続きに必要な書類は、「社会保険」と「税金」で大きく異なり、特に社会保険は証明書類の添付が必須となります。

一般的に、会社員の場合は以下の書類を揃えて会社の担当部署(総務・人事労務)へ提出します。

社会保険の必要書類

社会保険の加入審査には、「被扶養者(異動)届」に加え、続柄と収入を証明する書類の添付が必要です。

「本当に親の収入で養われているか?」「収入基準を超えていないか?」が厳格に審査されます。

【基本セット】
  • 健康保険 被扶養者(異動)届(必須)
  • 続柄確認書類:戸籍謄(抄)本または住民票
    • 人事担当者のポイント:届出書に「被保険者」と「子供」双方のマイナンバー(個人番号)を記載し、かつ会社側で本人確認済みであれば、原則として続柄確認書類(住民票等)の添付を省略できます(協会けんぽ等の場合)。書類不備を減らすためにも、マイナンバーの活用を推奨しましょう。

【ケース別の収入証明書類(例)】

16歳以上の子供(高校生・大学生・専門学生など)や、退職した子供を扶養に入れる場合は、状況に応じて以下の書類が必要です。

子供の状況必要な添付書類の例
学生(16歳以上)在学証明書 または 学生証のコピー
退職直後退職証明書 または 雇用保険被保険者離職票(コピー)
無職(現在収入なし)非課税証明書(所得証明書)
アルバイト中直近の給与明細書(3ヶ月分など)や課税証明書
失業給付受給終了雇用保険受給資格者証(受給終了の記載があるもの)

税金(扶養控除の適用)の必要書類

税金の扶養手続きは、「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」の提出のみで、証明書類の添付は原則不要です。

従業員の自己申告に基づき手続きが行われます。

  • 給与所得者の扶養控除等(異動)申告書
    • 入社時や年末調整で配られる書類ですが、年度の途中で扶養親族が増えた場合も、この書類を使用します。
    • マイナンバーの記載が必要です(会社ですでに管理している場合は不要なこともあります)。

子供を扶養に入れる手順は?

子供を扶養に追加する手続きは、「事実発生から5日以内」に行うのが原則です。 ここでは、一般的な会社員(協会けんぽ加入などを想定)が、新生児や就職していない子供を扶養に入れるフローを解説します。手続きは同時に行いますが、提出後の完了までのスピードが異なります。

ステップ1:扶養要件の確認(共通)

まず、子供の年収見込みや同居・別居の状況を確認し、扶養の条件を満たしているか判断します。 特に子供がアルバイトをしている学生の場合や、退職して一時的に無職になった場合は、直近の収入状況や失業給付の受給有無を整理しておきましょう。

ステップ2:会社への提出(一括申請)

準備した「社会保険」と「税金」の書類をまとめて、会社の総務・人事労務担当へ提出します。

  • 人事担当者のポイント:被扶養者(異動)届の法令上の届出期限は「事実発生から5日以内」と非常に短いです。従業員には余裕を持って書類を準備してもらうよう案内し、社内的な提出期限をあらかじめ周知しておくとスムーズです。

ステップ3:手続き完了までの流れ(社保と税金)

提出後、被扶養者として健康保険が利用できるようになるまでの期間や、給与に反映されるタイミングは以下の通り異なります。

  1. 社会保険 「申請→審査→反映」という承認プロセスを経るため、時間がかかります。
    1. 届出:会社が日本年金機構(または健康保険組合)へ届け出ます(5日以内)。
    2. 審査:年金機構等で「本当に扶養要件を満たしているか」が厳しく審査されます。
    3. 反映:審査に通れば被扶養者として、健康保険が利用できるようになります。
      • 所要期間:通常、提出から1週間〜2週間程度かかります。
  2. 税金(給与計算への反映まで) 会社内の処理のみで完結します。
    1. データ更新:会社の給与計算担当者が、給与システムの扶養人数設定を変更します。
    2. 反映:直近の給与計算から所得税(源泉徴収税額)が安くなります。
      • 注意点:提出が遅れても、その年の「年末調整」までに申告していれば、1年分の税金が再計算されて精算(還付)されます。

判断に迷うケース:共働き夫婦や別居の子供の扶養条件は?

基本の条件に加え、判断に迷いやすい「夫婦共働きの場合」と「子供と離れて暮らしている場合」の基準について解説します。

共働き夫婦の場合、どちらの扶養に入れるべき?

原則として、夫婦のうち「年間収入が多い方の親」が子供を扶養に入れます。

日本年金機構の運用指針において、夫婦が共同で子供を扶養している場合、主として生計を維持している者(=収入が高い方)の被扶養者とすることが定められているためです。

夫婦の年間収入の差が約1割以内である場合は、主として生計を維持する者の被扶養者として届け出た方が認められるケースが一般的です。つまり、年収がほぼ同じであれば、届出を行う側の親の扶養に入れることができます。

ただし、健康保険組合によっては独自の規定を設けている場合があるため、迷う場合は加入している健保組合や事業所の人事担当者に確認することをおすすめします。

別居している子供を扶養に入れる条件は?

別居していても、「親からの仕送り事実があり、その収入で生活している」と認められれば扶養に入れることが可能です。

扶養の定義である「生計維持関係」があれば、同居・別居は問われないためです。ただし、同居の場合よりも客観的な証明(仕送りの証拠など)が厳しく求められます。

【税法(税金)上の別居扶養】 

「常に生活費、学資金、療養費などの送金が行われていること」が必要です。 修学(下宿など)のために別居している場合は、基本的に生計を一にするものとして扱われます。

【社会保険(健康保険)上の別居扶養】

以下の2点を満たす必要があります。

  1. 子供の年収が130万円未満であること
  2. 子供の年収が、親からの仕送り額(援助額)より少ないこと

社会保険では「親の援助がないと生活できない状態」であることを厳密に審査されます。 そのため、「送金の事実を証明する書類(銀行の振込明細書のコピーなど)」の提出が一般的です。手渡しでの仕送りは証明が難しいため、扶養に入れる予定がある場合は必ず銀行振込の記録を残すようにしましょう。

子供を扶養に入れる際の注意点とは?

子供を扶養に入れる際は、年収の壁の管理や自身の就職による扶養外れなどの条件に十分な注意が必要です。

誤って扶養に入れ続けてしまうと、後から遡って扶養削除となり、医療費の返還(健保負担分の7割返金)や追徴課税が発生します。

これらは従業員にとって大きな金銭的負担になるだけでなく、会社側にとっても遡及手続きという多大な事務コストになります。トラブルを未然に防ぐため、以下のポイントを必ず確認しましょう。

アルバイト収入と交通費の判定基準

子供がアルバイトをしている場合、年収の計算方法に注意してください。

  • 税金(123万円の壁):交通費は含まれません。
  • 社会保険(130万円の壁):交通費を含んだ総支給額で判定します。

「扶養控除の範囲(123万円)で働いているから大丈夫」と思っていても、交通費を含めると130万円を超えており、健康保険の扶養から外れなければならないケースが多発しています。

失業給付(失業保険)受給中の扱い

就職活動中の子供を扶養に入れる場合、失業給付の日額が「3,612円」以上の場合は、社会保険の扶養に入ることができません。失業給付は「収入」とみなされるためです。

日額3,612円×30日=108,360円となり、年換算で130万円相当を超えるため、受給期間中は扶養から外れる手続きが必要です。給付終了後に再度、扶養に入れる手続きを行います。

複数のアルバイト(掛け持ち)の合算

子供がカフェと塾講師など、複数のアルバイトを掛け持ちしている場合、すべての収入を合算して判定します。 一箇所ごとの給与が少なくても、合計して130万円(税金なら123万円)を超えれば扶養から外れます。

特に学生の場合、「A社では扶養内だから大丈夫」と勘違いし、B社の分を計算に入れ忘れるケースが多いため、必ず「全収入の合計」を確認してください。

自身の勤務先での社会保険加入(優先加入)

たとえ年収が130万円未満であっても、子供自身の勤務先で社会保険に加入した時点で、親の扶養からは外れなければなりません。 社会保険のルール上、自分が被保険者になること(本人加入)が、親の被扶養者になることよりも優先されるためです。

学生ではないフリーターの子供や、夜間学生などで「週20時間以上」働く場合、年収106万円の壁(従業員数51人以上の企業等)に該当し、強制的に保険加入となるケースがあります。

就職時の切り替え忘れ(4月1日の罠)

子供が4月に就職する場合、「就職した日(入社日)」をもって親の扶養から外れる手続きが必要です。 

よくある間違いが、「初任給が出るまでは収入がないから扶養のままでいい」という思い込みです。社会保険は収入の有無にかかわらず「資格取得日(入社日)」で切り替わります。 もし4月1日入社で、4月中旬に親の健康保険を使って病院に行くと、後日医療費(7割分)の返還請求が来る恐れがあります。

インターンシップや一時所得

近年増えている有給インターンシップや、ネットビジネス(YouTuber活動やアフィリエイト等)による収入も当然カウントされます。これらは給与所得ではなく「雑所得」や「事業所得」になる場合がありますが、社会保険上の収入としてはすべて合算して判断されるため、子供の収入状況は定期的に確認しましょう。

子供を扶養に入れる条件を正しく理解し、トラブルのない手続きを

子供を扶養に入れる条件は、税金(123万円以下・16歳以上)と社会保険(130万円未満・交通費含む)で基準が大きく異なり、必要な手続きも別物です。特に社会保険は見込み年収での判定となり、異動届に加え在学証明書や非課税証明書などの添付が必須となります。

手続きの不備や認識違いは、後々の扶養削除や返金トラブルに直結します。従業員は自身の状況を正しく把握し、人事担当者はポイントを押さえた的確な案内を行うことで、双方にとって手戻りのないスムーズな手続きを実現しましょう。


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