• 更新日 : 2025年11月11日

発注業務を効率化するには?フローやアルバイトに依頼する場合の注意点

発注業務の効率化は、正確な業務フローの理解と自社に合った改善策の導入で実現できます。そのため、適切な発注管理はコスト削減や生産性向上に直結するでしょう。

しかし、「発注ミスが減らない」「紙の書類管理が煩雑で時間がかかる」といった課題に直面することも少なくありません。

この記事では、発注業務の基本的な流れから、明日から実践できる効率化のコツ、さらにはアルバイト・パートに依頼する場合の注意点までわかりやすく解説します。

発注業務とは?

発注業務とは、企業の事業活動に必要な商品やサービスを、取引先に注文し、支払いまでを管理する一連の業務です。単にモノを注文する作業ではなく、適切な品質・量・タイミング・価格での仕入れを通じて、企業の利益を最大化する起点となる重要な仕事といえます。

発注業務の主な役割

発注業務が担う主な役割は、在庫の最適化、コスト管理、そして取引先との良好な関係構築の3つです。業務範囲は仕入れ先の選定から始まり、見積取得、価格交渉、発注書の作成、納品管理、検収、支払い処理まで多岐にわたります。

これらの役割を適切に果たすことで、欠品による販売機会の損失や、過剰在庫による保管コストの増加を防ぎ、事業の安定的な運営を支えます。

購買業務や調達業務との違い

発注業務と購買・調達業務の主な違いは、業務の範囲と戦略性にあります。発注が「個別の注文実行」というミクロな視点なのに対し、購買や調達は「仕入先の選定」や「全社的な戦略」といった、よりマクロな視点を含みます。

用語主な業務内容目的・視点
発注業務決定された品目・数量を注文し、受け取るまでの一連の事務手続き個別の取引を正確に実行する(ミクロな視点)
購買業務発注業務に加え、仕入先の選定や価格交渉までを含むより良い条件での購入を目指す(やや広い視点)
調達業務購買業務に加え、全社的な視点での戦略策定やサプライチェーン管理までを含む経営戦略に基づき、安定供給とコスト最適化を図る(マクロな視点)

中小企業では、一人の担当者がこれらすべてを兼任することも少なくありません。自社の業務がどの範囲を指しているのかを理解し、改善していきましょう。

なぜ発注業務は難しい?よくある課題と根本原因

発注業務が難しい、大変と感じられる主な原因は、ヒューマンエラーの発生、業務の属人化、そしてアナログな管理手法の限界という3つの課題に集約されます。

ヒューマンエラー(入力ミス・発注漏れ)の発生

手作業によるデータ入力や書類作成は、ヒューマンエラーを避けられません。数量の桁間違い、品番の入力ミス、発注の重複や漏れなどは、企業の金銭的な損失に直結する深刻な問題です。

特に、多くの品目を扱っていたり、急な発注依頼が多かったりする現場では、担当者の注意深さだけに頼る管理には限界があります。

業務の属人化とブラックボックス化

「この発注はAさんしかわからない」という業務の属人化は、大きな経営リスクです。特定の担当者しか業務の進め方や取引先との交渉経緯を把握していないと、その担当者の不在時や退職時に業務が滞り、ノウハウが失われてしまいます。

紙やExcel(エクセル)によるアナログ管理の限界

紙媒体での発注書や請求書のやり取りは、印刷、郵送、ファイリングといった手間とコストがかかります。また、Excel(またはGoogleスプレッドシート)での管理も手軽ですが、リアルタイムの情報共有が難しく、データの破損やバージョン管理の煩雑さといった問題が生じがちです。

【7ステップ】発注業務のフロー(流れ)とは?

一般的な発注業務は、取引先の選定から支払い・保管まで、大きく7つのステップで進められます。この一連の流れを標準化し社内で共有することが、ミスを防ぎ効率化を図る上で不可欠です。

STEP1:見積依頼と取引先の選定

まず、必要な商品やサービスについて複数の取引候補先(サプライヤー)に見積を依頼します。価格だけでなく、品質、納期、支払い条件、サポート体制などを総合的に比較検討し、最も自社の要求に合う取引先を選定しましょう。

STEP2:社内での発注申請と承認

次に、取引先と発注内容が決まったら、社内ルールに基づき発注申請を行います。一般的には、発注内容(品名、数量、金額、納期など)を明記した「発注稟議(りんぎ)書」を作成し、上長や経理部門の承認を得るプロセスです。

STEP3:発注書(注文書)の発行と送付

社内承認後、正式な「発注書(注文書)」を作成し、取引先に送付します。発注書は法的に契約の申し込みを示す重要な書類であり、後々のトラブルを防ぐためにも、発注日や合計金額、納期といった項目を正確に記載しなくてはなりません。

STEP4:商品の納品と検収

取引先から商品が納品されたら、発注書の内容と相違がないかを確認する「検収」作業を行います。数量や品名は正しいか、破損や不良がないかを細かくチェックし、問題がなければ受領書にサインします。もし問題が見つかった場合は、速やかに取引先に連絡し、対応を協議する必要があります。

STEP5:請求書の受領と処理

検収が完了すると、取引先から請求書が送られてきます。請求書を受け取ったら、発注書や納品書の内容と金額が一致しているかを確認し、社内の経理システムへの登録など、規定の処理を進めます。

STEP6:支払い処理

経理担当者は、請求書に記載された支払期日までに、指定された方法で代金を支払います。この支払いをもって、一連の取引における自社の義務は完了となります。

STEP7:取引の記録と保管

最後に、発注から支払いまでの一連の取引に関する書類(見積書、発注書、納品書、請求書など)を保管します。これらの書類は、法人税法で原則7年間保管する義務があるため、いつでも参照できるよう整理してファイリングしておきましょう。

参照:No.5930 帳簿書類等の保存期間|国税庁

明日からできる!発注業務を効率化・改善する5つのコツ

発注業務の課題を解決し、日々の業務を効率化するには、具体的な方法を知ることが重要です。ここでは、明日からでも始められる5つの改善策を紹介します。

発注点のルール化で担当者の負担を減らす

発注点、すなわち「在庫がこの数量になったら発注する」という基準を商品ごとに設定します。このルール化によって、担当者の経験や勘に頼ることなく、誰でも適切なタイミングで発注できるようになり、欠品や過剰在庫を防ぐことが可能です。

マニュアル作成で業務を標準化する

業務の属人化を防ぐ最も効果的な方法は、誰が見ても業務を再現できるマニュアルの作成です。業務フローの図解、書類の作成ルール、取引先ごとの情報、イレギュラー対応集などを盛り込み、業務プロセスを標準化しましょう。

取引先ごとに情報を一元管理する

取引先ごとに、発注書、納品書、請求書といった関連書類をまとめて管理する仕組みを構築します。物理的なファイルでもPC上のフォルダでも構いません。取引履歴をすぐに参照できるようにすることで、問い合わせ対応や価格交渉の確認が迅速になります。

ペーパーレス化を進め、管理コストを削減する

発注書や請求書をPDFなどの電子データでやり取りすることで、印刷代、郵送費、保管スペースといった物理的なコストを大幅に削減できます。電子帳簿保存法への対応という観点からも、ペーパーレス化は避けて通れない課題といえるでしょう。

参照:電子帳簿保存法関係|国税庁

発注管理システムを導入する

予算に余裕があれば、発注管理システムの導入が最も効果的な解決策です。システムを使えば、発注データの入力、発注書の作成・送信、納期管理、支払い状況の確認まで一元管理でき、ヒューマンエラーの削減と業務時間の大幅な短縮につながります。

発注業務に向いている人の特徴と求められるスキルは?

発注業務を円滑に進めるためには、正確性、コミュニケーション能力、計画性などのスキルを持つ人材が適しているでしょう。これらのスキルは、業界を問わず共通して求められます。

求められる3つのコアスキル

発注業務で特に成果を出す人材は、以下の3つのスキルを高いレベルで備えています。

  1. 正確性と注意力:
    金額や数量といった数字を正確に扱い、細部まで注意を払い、ダブルチェックを怠らない几帳面さが求められます。
  2. コミュニケーション能力:
    社内外の関係者と円滑にやり取りを進め、納期交渉やトラブル対応を的確に行う力が必要です。
  3. 計画性とマルチタスク能力:
    複数の発注案件を同時に管理し、優先順位をつけて計画的に業務を進める能力が求められます。

また、業界ごとの特性を理解していると、さらに専門性を発揮できるでしょう。例えば、小売業や卸売業であれば需要予測や販売データを分析した経験が、製造業であれば生産管理や部品に関する知識が直接的に役立ちます。また、EC事業においては、販売促進キャンペーンと連動した仕入れ計画を立てるなど、Webマーケティングや在庫管理システムの利用経験が大きな強みとなるのではないでしょうか。

発注業務はアルバイトに任せられる?

結論として、発注業務をアルバイトやパート、派遣社員などに任せることは可能です。ただし、業務範囲を明確に限定し、正社員による厳格なチェック体制を構築することが絶対条件です。企業の資産に直接関わる業務だからこそ、適切な管理が求められます。

正社員が担うべき業務とアルバイトに任せられる業務

全ての業務をアルバイトに任せるのはリスクが高すぎます。会社の利益や信頼に直結する判断業務は正社員が担い、定型的な作業をアルバイトに任せる、という役割分担が基本です。

アルバイトに任せやすい業務
  • 定型的なデータ入力:在庫管理システムへの入力、発注リストの作成など
  • 発注書作成の補助:承認された内容に基づき、発注書のひな形に入力する作業
  • 検収作業の補助:納品された商品の数量や型番がリストと合っているかの確認
  • 書類の整理・ファイリング
正社員が担うべき業務
  • 取引先の選定・交渉:新規取引先の開拓や、価格・納期などの条件交渉
  • 発注内容の最終決定・承認:発注する品目、数量、金額の最終判断と承認
  • 予算管理:仕入れ全体の予算策定と進捗管理
  • イレギュラー対応:納期遅延や品質問題など、取引先との調整が必要な業務

アルバイトに依頼する場合に必須のチェック体制

アルバイトに発注業務の一部を依頼する際は、ミスや不正を防ぐための仕組みづくりが不可欠です。少なくとも以下の3つの体制は必ず構築しましょう。

  1. ダブルチェックの徹底
    アルバイトが入力・作成した発注データや発注書は、必ず正社員が最終確認し、承認してから取引先に送付するフローを徹底してください。金額の大小にかかわらず、承認プロセスを省略してはいけません。
  2. システム権限の適切な設定
    発注管理システムを利用している場合、アルバイト用のアカウントには権限設定を行いましょう。例えば、「データの入力・閲覧はできるが、発注の最終確定・送信はできない」ように設定することで、誤操作や不正な発注を防ぎます。
  3. わかりやすい業務マニュアルの整備
    作業手順はもちろん、「こういう場合は誰に相談するか」といった判断基準まで記載した、わかりやすいマニュアルを用意します。これにより、アルバイト担当者が自己判断で業務を進めてしまうリスクを減らし、業務の品質を均一に保てます。

もしアルバイトがミスをしたら?

万が一アルバイト担当者が発注ミスをした場合、感情的にならず、組織として冷静に対応することが重要です。

まず事実確認を行い、取引先への謝罪や訂正といった復旧対応は、必ず正社員が主導して行います。その後、本人任せにせず、ミスが起きた原因を一緒に考え、チーム全体で共有できる再発防止策を策定しましょう。

注意点として、ミスを理由に給与から一方的に損害額を天引きしたり、全額賠償を求めたりすることは法律に抵触する可能性があります。また、人格を否定するような過度な叱責はパワーハラスメントにあたるため、絶対に行ってはいけません。

ミスの対応は、業務体制を見直す機会と捉えることが大切です。

発注業務の最適化は、企業の成長に欠かせない

この記事で解説したとおり、発注業務の改善は、単なるコスト削減や時間短縮にとどまりません。ヒューマンエラーの削減は企業の信頼性を高め、属人化の解消は持続可能な事業運営を可能にします。

まずは自社の発注フローを見直し、マニュアル作成やルールの統一など、できることから改善を始めてみてはいかがでしょうか。その一つ一つの取り組みが、企業の健全な成長を支えることにつながるでしょう。


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