- 更新日 : 2025年11月11日
【例文あり】発注依頼メールや返信の書き方とは?チャットとの違いも解説
発注を依頼するメールは、商品やサービスの注文意思を明確に伝え、取引を円滑に進めるための重要なビジネス文書です。そのため、件名で用件を明確にし、注文内容や納期、金額といった必須項目を漏れなく記載することが求められます。
口頭でのやり取りだけでは、認識の齟齬(そご)や忘れてしまうリスクが伴うため、メールや添付する発注書といった書面の形で送ることで、取引の透明性を確保する目的があります。
この記事では、初めて発注メールを送る方でも迷わないよう、社外・社内別の例文や返信方法、法律上の注意点まで網羅的に解説します。
目次
発注はメールで依頼しても問題ない?
メールでの発注依頼は、多くのビジネスシーンで一般的に行われており、法的な契約としても成立します。取引の履歴が文章として残るため、電話のような「言った・言わない」のトラブルを防ぎ、当事者間の合意内容を明確にするうえで効果的です。
発注依頼をメールで行うメリット・デメリット
メールでの発注は、迅速かつ手軽に依頼できるメリットがある一方、相手が見落とすリスクや、正式な発注書に比べて簡易的になりがちなデメリットもあります。
- 時間や場所を選ばずに送信できる
- 送受信の履歴が残る
- 複数人に同時に共有できる
- 相手が見落とす
- 迷惑メールになる可能性がある
- 緊急の要件には向かない
- ニュアンスが伝わりにくいことがある
メールでの発注が持つ法的な意味合い
民法上、契約は当事者双方の意思が合致すれば口頭でも成立するため、メールによる発注依頼も法的に有効な「申込み」と見なされます。相手方がこれを承諾する返信をしたり、実際に商品の発送準備を始めたりした時点で、契約が成立したことになります。
ただし、取引の明確化とトラブル防止のために、メール本文に発注の意思を明記し、必要に応じて注文書(発注書)を添付することが望ましいでしょう。
参照:契約について|法務省
下請取引で発注依頼メールを送る際の法的注意点とは?
下請事業者との取引においてメールで発注する場合は、下請法(下請代金支払遅延等防止法)の規定を遵守しなくてはなりません。親事業者は、下請事業者に対して発注内容を明記した書面(注文書)を交付する義務があります。
下請法で定められた書面の交付義務
下請法第3条では、親事業者が下請事業者に業務を委託する際、発注内容、金額、納期、支払方法などを具体的に記載した書面(3条書面)を直ちに交付することが義務付けられています。この書面交付は、立場の弱い下請事業者を守り、不当な取引を防ぐためのものです。
メールで発注する場合の対応方法
電子メールで発注する場合でも、下請法の要件を満たす必要があります。具体的には、必要な記載事項を網羅した注文書をPDF形式などで作成し、メールに添付する方法が一般的です。メール本文だけで済ませるのではなく、必ず正式な書面として交付しましょう。
- 親事業者および下請事業者の名称
- 製造委託、修理委託等の内容
- 下請代金の額
- 支払期日および支払方法
- 給付の内容、納期(納入場所)
- 検査をする場合は、検査を完了する期日
これらの項目が漏れていると下請法違反となる可能性があるため、注意が必要です。
参照:下請代金支払遅延等防止法第3条の書面の記載事項等に関する規則|e-Gov法令検索
参照:親事業者の義務|公正取引委員会
発注依頼メールに記載すべき必須項目とは?
取引をスムーズに進め、認識の齟齬を防ぐために、発注メールには以下の項目を漏れなく記載しましょう。これらの項目は、後々の経理処理や在庫管理においても重要な情報となります。
| 項目 | 内容 | 記載例 |
|---|---|---|
| 件名 | 「発注依頼」であることが一目でわかるように記載 | 【発注のお願い】株式会社〇〇 鈴木 |
| 宛名 | 会社名、部署名、担当者名を正式名称で記載 | 株式会社△△ 営業部 佐藤様 |
| 挨拶 | 日頃の感謝を伝える簡潔な挨拶 | いつもお世話になっております。株式会社〇〇の鈴木です。 |
| 発注内容 | 商品名、型番、数量を正確に記載 | 商品A(型番:A-001) 10個 |
| 金額 | 単価、合計金額(税抜・税込)を明記 | 10,000円(税抜) / 合計 11,000円(税込) |
| 納期 | 希望する納品日を具体的に記載 | 2025年11月15日(金) |
| 納品場所 | 納品先の住所、担当者名を記載 | 弊社本社ビル 3階 〇〇部 宛 |
| 支払条件 | 支払い方法や支払期日など(取引基本契約書に準ずる場合が多い) | 貴社指定の方法にて、月末締め翌月末払い |
【シーン別】すぐに使える発注依頼メールの例文は?
ここでは、様々なビジネスシーンでそのまま使える発注メールの例文を紹介します。自社の状況に合わせて適宜修正してご活用ください。
社外向け:初めて取引する場合の例文
初めて発注する相手には、自社の情報や取引開始の経緯を簡潔に伝え、丁寧な表現を心がけましょう。
件名: 【発注のお願い】株式会社〇〇(自分の会社名)
本文:
株式会社△△
営業部 〇〇様
初めてご連絡いたします。
株式会社〇〇の購買部、佐藤と申します。
貴社ウェブサイトを拝見し、製品「●●●(型番:●●)」について、
ぜひ弊社にて利用させていただきたく、ご連絡いたしました。
つきましては、下記の内容にて発注させていただきたく存じます。
————————————
■ 発注内容
- 製品名:●●●
- 型番:●●
- 数量:5台
- 単価:50,000円(税抜)
- 合計金額:275,000円(税込)
■ 希望納期:2025年11月20日(木)
■ 納品場所
〒100-0001 東京都千代田区千代田1-1
株式会社〇〇 本社ビル3階 総務部宛
電話番号:03-1234-5678
■お支払い条件
月末締め翌月末払い(貴社指定の方法)
————————————
お手数ですが、本メールにご返信いただく形で、 ご注文内容のご確認(請書)をいただけますと幸いです。 ご不明な点がございましたら、お気軽にお申し付けください。 何卒よろしくお願い申し上げます。
— 署名 —
社外向け:見積もり後に送る場合の例文
すでに見積もりを取得している場合は、どの見積もりに基づく発注なのかを明記すると、相手もスムーズに処理できます。
件名: 【発注のご連絡】〇〇のお見積もりについて(株式会社〇〇)
本文:
株式会社△△
営業部 〇〇様
平素より大変お世話になっております。 株式会社〇〇の佐藤です。
先日は、お見積書(見積番号:12345)をお送りいただき、誠にありがとうございました。 社内で検討いたしました結果、ぜひ貴社にお願いしたく、ご連絡いたしました。
つきましては、お見積もりいただいた内容で、下記の通り発注させていただきます。
【発注内容】 (見積書No.12345に基づく)
- 商品名:〇〇
- 数量:10個
- 合計金額:¥55,000(税込)
- 希望納期:2025年11月15日(金)
内容をご確認いただき、お手すきの際に受注のご連絡をいただけますと幸いです。
引き続き、どうぞよろしくお願い申し上げます。
— 署名 —
社外向け:注文書(発注書)を添付する場合
発注書(注文書)は、メールにPDF添付するのが望ましいです。内容の正確性が高まり、相手方も正式な依頼として処理しやすくなります。
件名: 【発注のお願い】商品Aにつきまして(株式会社〇〇)
本文:
株式会社△△
営業部 〇〇様
いつもお世話になっております。 株式会社〇〇の佐藤です。
さて、先日ご相談いたしました商品Aにつきまして、正式に発注させていただきます。 詳細を記載した注文書(No.20251007-01)を添付ファイルにてお送りいたしますので、ご査収ください。
お手数をおかけしますが、内容をご確認のうえ、受注のご連絡をいただけますようお願い申し上げます。
ご不明な点がございましたら、お気軽にお知らせください。
今後ともよろしくお願いいたします。
— 署名 —
社内向け:部署間で備品などを発注依頼するメール例
社内の担当部署へ依頼する場合は、社外向けほどの堅い表現は不要ですが、依頼内容が正確に伝わるように要点をまとめて記載しましょう。
件名: 【備品発注依頼】営業部 佐藤
本文: 経理部 備品担当者様
お疲れ様です。営業部の佐藤です。
下記の備品を発注していただけますでしょうか。
- 品名:ノートPC用モニター
- 型番:XYZ-24
- 数量:2台
- 希望納期:来週末まで
- 使用目的:新入社員用
お忙しいところ恐れ入りますが、ご対応のほどよろしくお願いいたします。
— 署名 —
発注依頼メールへの返信はどう書く?
発注メールを受け取った際は、注文内容を承諾した旨をできるだけ速やかに返信することが、相手に安心感を与え、信頼関係を築く上で大切です。
発注を承諾する場合の返信メール例文
注文内容に問題がなく、承諾する場合は、感謝の意を伝え、納期などを改めて連絡しましょう。
件名: Re: 【発注のお願い】商品Aにつきまして(株式会社△△)
本文:
株式会社〇〇
購買部 佐藤様
平素は格別のご高配を賜り、厚く御礼申し上げます。 株式会社△△の鈴木です。
この度は、「商品A」にご発注いただき、誠にありがとうございます。 添付の注文書(No.20251007-01)も確かに拝受いたしました。
ご注文内容は下記の通り承りました。
- 商品名:商品A
- 数量:〇個
- 金額:〇〇円(税込)
- 納期:2025年〇月〇日(〇)
つきましては、ご指定の納期に合わせて滞りなく手配を進めてまいります。 商品発送の際には、改めてご連絡いたします。
今後とも、弊社製品をご愛顧賜りますよう、お願い申し上げます。
— 署名 —
納期や金額の確認が必要な場合の返信メール例文
提示された納期での対応が難しい場合や、金額に確認が必要な場合は、まずはお礼を述べたうえで、確認・相談したい点を具体的に伝えましょう。
件名: Re: 【発注のご連絡】〇〇のお見積もりについて(株式会社△△)
本文:
株式会社〇〇
佐藤様
いつも大変お世話になっております。 株式会社△△の鈴木です。
この度は、〇〇にご発注いただき、心より感謝申し上げます。
ご注文内容を拝見いたしました。 誠に申し訳ございませんが、ご希望の納期(2025年11月15日)につきまして、現在生産が込み合っており、最短でも11月20日頃の納品となってしまいます。
ご希望に沿えず大変恐縮ですが、納期についてご調整いただくことは可能でしょうか。
お忙しいところ申し訳ありませんが、ご検討いただけますと幸いです。 何卒よろしくお願い申し上げます。
— 署名 —
発注依頼メールを送る際に注意すべき点は?
発注メールは契約に関わる重要な連絡です。ミスを防ぎ、円滑な取引を行うために、送信前に以下の4つの点を確認しましょう。
誰が見ても内容がわかる件名を付ける
受信者は毎日多くのメールを受け取ります。件名だけで「どの会社」から「何に関する」メールなのかが瞬時にわかるように工夫しましょう。「【発注のお願い】」のような定型の枕詞を入れると、よりわかりやすくなります。
発注書(注文書)をPDFで添付する
特に下請取引や高額な取引では、発注内容の詳細を記載した発注書を添付することが推奨されます。WordやExcelのままではなく、改ざん防止のためにPDF形式に変換してから添付するのがビジネスマナーです。
送信前に宛先や内容をダブルチェックする
宛先(To, Cc, Bcc)の間違いは、情報漏えいにつながる重大なミスです。また、商品名、数量、金額などの発注内容に誤りがないか、指差し確認をするなどして、送信前に必ず見直しましょう。
メール送信後は電話やチャットで伝える
重要な発注や、急ぎの案件の場合は、メールを送った後に電話やビジネスチャットで「先ほど〇〇の件で発注メールをお送りしましたので、お手すきの際にご確認ください」と一本連絡を入れると、より確実です。相手への配慮にもつながり、見落としを防げます。
発注依頼メールは会計上の証憑になる?
発注メールや、それに添付された注文書(の控え)は、取引の事実を証明する書類として、会計上の「証憑(しょうひょう)」にあたります。そのため、税法や電子帳簿保存法に定められた期間、適切に保存しなくてはなりません。
電子帳簿保存法におけるメールの取り扱い
2022年1月に改正された電子帳簿保存法により、電子メールなどの電子データで受け取った取引情報は、原則として電子データのまま保存することが義務付けられました。つまり、発注に関するメールや添付のPDFを紙に印刷して保存するのではなく、データとしてPCやサーバー、クラウドストレージなどに保存する必要があります。
- 真実性の確保:
タイムスタンプを付与する、訂正削除の履歴が残るシステムを利用する、などの措置が必要。 - 可視性の確保:
- 取引年月日、取引先、金額などで検索できるようにしておく必要がある。
- ディスプレイやプリンタで速やかに出力できる状態にしておくこと
中小企業や個人事業主においても、これらのルールへの対応が求められます。会計ソフトのメール取り込み機能や、文書管理システムなどを活用して、法令に準拠した管理体制を整えましょう。
参照:電子帳簿保存法が改正されました|国税庁、電子帳簿保存法一問一答(Q&A)|国税庁
発注依頼はメールとビジネスチャットどちらが良い?
近年では、SlackやMicrosoft Teams、Chatworkなどのビジネスチャットを通じて発注依頼を行うケースも増えています。メールとビジネスチャットでは特性が異なるため、相手との関係性や案件の内容に応じて使い分けることが大切です。
どちらを利用するかは、会社としての方針や取引先との合意に基づいて判断すると安心でしょう。証拠や記録の管理の観点から、社内ルールを明確に定めておくこともおすすめです。
メールはフォーマルな依頼や記録を残したい場面に適しており、ビジネスチャットは継続的な取引やスピーディなやり取りを求める場合に便利です。
- メール:新規取引や高額な契約など、正式な記録(エビデンス)としての重要性が高い場合に適しています。
- ビジネスチャット:継続的な取引における追加発注や、仕様の確認など、スピード感が重視される場面で有効です。
発注依頼メールは下請法を遵守し円滑な取引を
発注メールは契約内容を明確にし、後のトラブルを防ぐためにも、記載すべき項目や注意点をしっかりふまえて作成しなくてはなりません。特に下請法が関わる取引や、会計上の証憑として保存する際には、法的な要件も満たす必要があります。
今回紹介した様々なシーン別の例文や、ビジネスチャットとの使い分けも参考に、自社の状況に合わせた最適な方法で発注業務を行い、取引先との良好な関係を築いていきましょう。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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