• 更新日 : 2026年2月24日

確定申告しない、申告不要な人でも開業届は必要?

Point確定申告が不要でも開業届は必要?

確定申告が不要でも、事業を始めたなら開業届は原則必要です。

  • 申告要否と届出義務は別
  • 所得額に関係なく事業開始で対象になる
  • 青色申告の事前準備になる

税金が発生しない年でも出す意味はあります。開業届がないと青色申告を選べず、将来の65万円控除を失う可能性があります。

新しく事業を開始する場合、管轄の税務署に開業届を出す必要があります。売上も十分で事業として安定しているなら当然、届出の必要があると判断できるでしょう。

しかし、確定申告をしなくてもよいような少額の利益しかない場合はどうでしょうか。確定申告しない場合、つまり確定申告が必要ない場合であっても開業届を税務署に出さなければならないのでしょうか。

この記事では、確定申告が必要ない場合の開業届の必要性と関連性、注意点を解説していきます。

目次

そもそも開業届を提出すべき人とは?

開業届は、個人で事業を開始したことを税務署に届け出るための重要な書類です。全ての収入に必要なわけではありませんが、継続的に事業を行う場合には、税務上・実務上ともに提出が推奨されます。ここでは、どのような人が開業届の提出対象となるのかを整理します。

継続的に収入を得る意思がある個人

開業届を出すべきなのは、反復・継続して事業として収入を得ようとする個人です。たとえば、フリーランスのライター・デザイナー・プログラマー、ネットショップ運営者、ハンドメイド作家などが該当します。単発の副収入や一時的なアルバイトでは対象外となることが多いです。

事業所得または雑所得ではなく「事業所得」として扱いたい人

開業届を提出することで、税務上その収入が「事業所得」として扱われるようになります。これにより、青色申告や経費計上の幅が広がり、節税メリットを得られます。開業届を出していない場合、同じ収入でも「雑所得」と判断され、節税面で不利になることがあります。

参考:A1-5 個人事業の開業届出・廃業届出等手続|国税庁

確定申告の必要がなくても開業届は出すべき?

確定申告と開業届は「税務署に提出する書類」という点では似ていますが、目的や提出条件は異なります。収入が少なくて確定申告が不要な場合でも、開業届は出しておくべきケースがあります。ここでは両者の関係性を解説します。

開業届と確定申告は関連性はあるが、提出義務は別

開業届は「事業を始めたこと」を税務署に知らせるための書類で、確定申告とは目的が異なります。確定申告は、年間所得が基礎控除(58万円)を超えるなど、納税の必要がある人が行う手続きです。一方、開業届は所得の金額に関係なく、事業を始めた時点で原則提出が必要とされています。

確定申告が不要な場合でも開業届を出すメリットがある

たとえ収入が少なく、確定申告の必要がない年でも、開業届を出すことで「青色申告」を選択できるようになり、将来的な節税につながる可能性があります。また、開業届を提出することで「事業所得」として扱われ、経費の幅も広がるため、今後の事業拡大に備える意味でも有効です。

確定申告が必要な人は?

確定申告が必要な人についての代表的な例も確認しておきましょう。

複数から給与所得を受けている人

本業のほかにアルバイトやパートなどで副業をしていて、複数から給与所得を受け取っている場合、年末調整を受けなかった給与収入が20万円を超えたら確定申告が必要です。(※給与の全部が源泉徴収の対象になっている場合に限られます)

会社員で給与所得以外に該当する副業をしている人

会社から給与収入がある会社員で、副業が給与所得に該当しない、例えば業務委託で仕事をした場合は所得が20万円を超えた時、確定申告が必要です。

公的年金を受給している人

老齢基礎年金や老齢厚生年金など、公的年金を受給している場合も、確定申告が必要なケースがあります。原則は、公的年金等の雑所得から所得控除などを差し引いた時に課税額があれば確定申告することとなっています。

ですが公的年金等の場合、収入金額が400万円以下であり、かつ、その公的年金等の全部が源泉徴収の対象となる場合において、公的年金等に係る雑所得以外の所得金額が20万円以下である時は確定申告の必要はありません。

退職金を受け取った人

退職所得は、退職所得の受給に関する申告書を勤務先に提出していれば、分離課税で支給時に源泉徴収されることから、基本的に確定申告の必要はありません。退職金を受け取った場合で確定申告が必要なのは、源泉徴収されない外国企業から退職金を受け取ったケースです。

そのほかの所得で課税額がある人

公的年金受給者、給与所得や退職金の受け取りがあった人以外については、事業所得などすべての所得を集計して、所得控除を差し引いたあと所得税額がある(配当控除があれば残額がある場合)時、確定申告が必要です。

確定申告の青色申告と白色申告の違いは?

個人事業主として確定申告を行う際には、「青色申告」と「白色申告」の2つの方法から選ぶことになります。ここでは、それぞれの制度の違いや、どちらを選ぶべきかを整理して解説します。

【青色申告】メリットが多いが事前申請と帳簿管理が必要

青色申告は、事業所得や不動産所得がある個人が、一定の帳簿を備えて正しく記帳・申告することで税制上の特典が受けられる制度です。主な特徴は以下の通りです。

  • 事前の届け出が必要:「青色申告承認申請書」を税務署に提出し、承認を受ける必要があります(原則として開業から2か月以内)。
  • 特別控除がある: 最大で65万円(複式簿記かつ電子申告等を行う場合。複式簿記のみの場合は55万円)の青色申告特別控除が受けられます(簡易な記帳の場合は10万円)。
  • 赤字の繰越が可能:損失が出た場合、3年間の繰越控除が可能です。
  • 専従者給与の全額経費化:一定条件を満たせば、家族に支払った給与を必要経費にできます。
  • 複式簿記での記帳が必要:65万円控除を受けるには、複式簿記による帳簿付けと、貸借対照表損益計算書の提出が必要です。

【白色申告】簡単に始められるが節税効果は限定的

白色申告は、青色申告のような事前申請が不要で、帳簿の記帳要件も比較的ゆるやかです。かつては簡単なメモ程度でも認められていましたが、2014年からはすべての白色申告者に記帳と帳簿保存が義務付けられています。

  • 申請不要で簡単に始められる
  • 控除や節税メリットはほぼなし
  • 損失の繰越や専従者給与の全額経費化は不可
  • 帳簿は単式簿記でOK(義務化されているが簡易)

青色申告と白色申告はどちらを選ぶべき?

開業初期であっても、収入がある程度見込まれるなら青色申告の選択が有利です。収入がごくわずか、または試験的な副業で始めた場合は、初年度は白色申告でも構いません。

事業者で確定申告が必要ないケースは?

開業届が必要でも、確定申告が必要ないケースもあると上記で説明しました。事業者(不動産所得、事業所得、山林所得のある人)に該当する場合であっても確定申告が必要ない場合とは、具体的にどのようなケースがあげられるのでしょう。青色申告、白色申告にかかわらず、確定申告が必要ないケースについて説明します。

事業をはじめる準備は進めたが年度末までに事業を開始しなかった

事業をはじめる準備は進めたものの、年度末までに事業を開始しなかった場合は、確定申告の必要はありません。なお、このケースでは事業も開始していないので、開業届の提出もまだ必要ないということになります。

所得額が所得控除を下回ったため税金が発生しない

事業開始後、順風満帆に利益が出るとは限りません。事業拡大のための設備投資などで支出のうち費用になる部分が大きかったり、売上が落ち込んだりした場合、所得(益金から損金を引いた額)が思うように上がらないこともあります。

所得から控除される基礎控除、社会保険料控除など、所得控除を差し引いた額がゼロまたはマイナスになる時は、所得税の対象になる課税所得はゼロになります。この場合、所得税が発生しませんので、確定申告は必要ありません。

ただし状況によっては確定申告した方が良いケースもある

確定申告が不要な場合であっても、状況によっては確定申告をした方が良いケースもあります。所得税の還付がある時です。例えば、同年度に源泉徴収された所得税があれば、確定申告によって還付を受けることができます。

また、金融機関から融資を受ける場合や、各種補助金・助成金の申請の際は確定申告書の提出は必須事項となりますので、確定申告をしておいた方が良いでしょう。

確定申告の必要ない専業者、副業者の届出の扱いは?

ここまで、事業者であっても、確定申告が必要ないケースもあると説明しました。それでは、確定申告の必要がない専業者の場合、副業者の場合で、開業届の必要性は変わってくるのでしょうか。

専業者なら開業届が必要と考えられる

事業所得、不動産所得、山林所得、のいずれかの所得が発生している人で、事業に専業している人なら事業者と認められますので、開業届が必要と考えられます。前述のように、確定申告の有無は関係ありません。

副業の開業届の必要性はケース・バイ・ケース

副業については、開業届が必要かどうかは微妙なところです。不動産所得、事業所得、山林所得、いずれかの所得があり事業として行っているのであれば開業届が必要ですが、同じような仕事内容でも事業と判断されないことがあります。

例えば、ブログを運営して広告収入を得ている場合です。事業として行っていないなら雑所得になりますが、事業として行っているのであれば副業でも事業所得になります。

確定申告や開業届の手続きで実際に多くの人が迷うポイントは?

株式会社マネーフォワードは、2026年1月に開業届に関する実態調査を実施しました。その結果、これまでに開業届を自分で作成・提出した経験がある人は71.3%に達しており、多くの個人事業主が自力で手続きを行っていることがわかりました。

手続きのハードルは作業量よりも「制度理解」と「判断」

同調査で、開業届の手続きにおいて最もハードルが高いと感じた点について聞いたところ、最も多かった回答は「青色申告などの関連書類の理解」で21.4%、次いで「記入内容の判断(職業欄の書き方、開業日の設定、屋号など)」が20.2%でした。一方で、「書類の作成・入力作業」そのものを挙げた人は11.3%にとどまっています。このことから、多くの人は書類作成の手間よりも、青色申告制度の仕組みを理解することや、自身の事業に合わせて正しく記入することに難しさを感じている傾向にあります。
開業届と同時に「青色申告承認申請書」を提出した人の割合は66.0%
今は確定申告が不要な場合でも、将来的な事業成長と節税メリットを見据えて、開業届と青色申告の手続きをセットで行う人が多いことがうかがえます。
出典:マネーフォワード クラウド、開業届の作成・提出経験、手続きで「面倒・ハードルが高い」と感じた点、青色申告承認申請書の提出状況【開業届に関する調査データ】(回答者:812名、集計期間:2026年1月実施)

 

確定申告の必要がなくても開業届をするべきケースもある

確定申告の有無は、開業届が必要かどうかの判断にはほとんど関係ありません。確定申告の必要がなくても、開業届を出さなければならないケースもあります。確定申告に引っ張られず、開業届が必要な対象者であるかどうかに注目して判断しましょう。開業届が必要なのは、不動産所得、事業所得、山林所得のある人のうち、事業を開始した人です。

(参考)
国税庁|No.1420 退職金を受け取ったとき(退職所得)
国税庁|No.2070 青色申告制度
国税庁|No.2080 白色申告者の記帳・帳簿等保存制度
国税庁|確定申告が必要な方
国税庁|[手続名]個人事業の開業届出・廃業届出等手続

よくある質問

確定申告の必要がなくても開業届は必要なのか?

確定申告の有無と開業届に関連性がないことを考えると、確定申告をしない場合でも開業届が必要なケースもあります。詳しくはこちらをご覧ください。

事業者で確定申告が必要ないケースとは?

事業をはじめる準備は進めたが年度末までに事業を開始しなかった場合や、所得額が所得控除を下回ったため税金が発生しない場合があります。詳しくはこちらをご覧ください。

確定申告の必要ない専業者、副業者の届出の扱いは?

専業者なら開業届が必要と考えられますが、副業の開業届の必要性はケース・バイ・ケースとなります。詳しくはこちらをご覧ください。


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