- 作成日 : 2026年1月14日
合同会社の役員報酬とは?決め方や相場、変更ルール、節税シミュレーションも
合同会社を設立後、経営者が直面する最初にして最大の課題が「役員報酬の決定」です。 役員報酬は単なる給料ではなく、会社の利益(法人税)と個人の手取り(所得税・社会保険料)のバランスを左右する節税ポイントです。
この記事では、合同会社特有の役員報酬の決め方、適正な相場、手取り額のシミュレーション、そして税務調査で否認されないための厳格なルールの全容を解説します。
目次
合同会社の役員報酬とは?
合同会社の役員報酬とは、業務執行社員(株式会社の取締役に相当)に対して支払われる報酬を指します。従業員の給与とは法的・税務的な取り扱いが異なります。
役員報酬と給与の違いは?
役員報酬が給与と最も大きく異なるのは、好きな時に自由に変更できないという点です。利益が出たからといって急に増額したり、資金不足だからといって勝手に減額したりすると、税務上のペナルティ(損金不算入)を受けることになります。
| 項目 | 役員報酬 | 従業員給与 |
|---|---|---|
| 契約形態 | 委任契約 | 雇用契約 |
| 労働基準法 | 適用外(残業代なし) | 適用(残業代・有給あり) |
| 経費計上 | 厳しい制限あり(定期同額など) | 全額経費(損金)算入 |
| 金額変更 | 原則、期中の変更不可 | 随時変更可能(就業規則による) |
役員報酬を損金(経費)にするには?
役員報酬を会社の経費(損金)として計上し、節税効果を得るためには、以下の3つのいずれかに該当する必要があります。
- 定期同額給与(毎月固定の給与)
毎月同じ時期に同額を支給する、最も一般的な役員報酬の制度です。特別な届出は不要で損金算入できます。原則として、事業年度開始から3ヶ月以内に金額を決定し、その年度内は変更できないというルールがあります。 - 事前確定届出給与(賞与・ボーナス)
役員に対して賞与(ボーナス)を支払うための制度です。株主総会等の決議から1ヶ月以内(または期首から4ヶ月以内の早い方)に、税務署へ「事前確定届出給与に関する届出書」を提出することで、例外的に損金算入が可能になります。届出書に記載した「支給日」と「支給額」が少しでもズレると全額が損金不算入となる厳しい運用がなされています。 - 業績連動給与
利益や株価などの客観的な指標に基づいて報酬額が変動する仕組みです。欧米の企業や日本の大手上場企業ではインセンティブとして一般的ですが、非上場の合同会社でこれを導入して損金算入させるのは困難です。
したがって、通常の合同会社運営においては、「定期同額給与」か「事前確定届出給与」のどちらかで設計するのが基本となります。
参考:No.5211 役員に対する給与(平成29年4月1日以後支給決議分)|国税庁
役員報酬の相場と手取りシミュレーション
設立直後の中小企業では、月額30万円〜50万円程度が一般的ですが、売上が不安定な時期は月額5万円〜10万円程度に抑えるケースも多くあります。
- 生活費の確保: 最低限必要な個人の生活費
- 利益計画: 報酬を払った後に会社に利益(内部留保)が残るか
以下は、40歳以上(介護保険あり)、扶養家族なし、東京都の合同会社の場合の概算です。
| 月額報酬 | 個人の手取り | 社会保険料 (個人負担) | 社会保険料 (会社負担) |
|---|---|---|---|
| 5万円 | 約4万円※ | 約1万円 | 約1万円 |
| 10万円 | 約8.6万円 | 約1.4万円 | 約1.4万円 |
| 30万円 | 約24.9万円 | 約4.5万円 | 約4.6万円 |
| 50万円 | 約40.1万円 | 約7.5万円 | 約7.7万円 |
| 100万円 | 約80万円 | 約11.5万円 | 約11.7万円 |
※月額5万円など一定額未満の場合、社会保険(健康保険・厚生年金)の加入義務が発生しないケースがあります。
月額5万円に設定するメリットは?
月額10万5,000円未満(年収123万円以下など)に設定することで、所得税がかからず、かつ社会保険への加入義務もなくなる場合があります(非常勤や労働時間要件による)。これにより、会社の固定費流出を最小限に抑えられます。
月額5万円に設定するデメリットは?
社会保険に入れないため、国民健康保険・国民年金への加入が必要です。将来受け取る厚生年金が増えないことや、傷病手当金などの保障がない点がリスクとなります。
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合同会社の役員報酬を決める手順は?
事業年度開始から3ヶ月以内に、定款または社員の同意によって決定し、必ず「決定書(同意書)」を作成・保存してください。株式会社のような株主総会議事録は必須ではありませんが、税務調査対策として「同意書」や「決定書」の保管は必須です。
1. 事業年度開始から3ヶ月以内に金額を決定する
役員報酬の金額を決定・変更できるのは、会社設立時または新しい事業年度が始まってから3ヶ月以内です。
例えば、3月決算(4月開始)の会社なら、4月から6月の間に今期の報酬額を決定します。この期間を過ぎてから変更しても、変更分の差額は損金として認められません。
2. 定款または社員の同意で決定する
合同会社には株主総会がないため、定款の規定に従い、社員(出資者)の同意によって報酬を決定します。
会社法第598条により、定款に別段の定めがない限り、社員の過半数の同意などで業務を執行するため、報酬も同様のプロセスを経ます。
3. 決定書(同意書)を作成・保存する
決定した内容は必ず書面(決定書や同意書)に残し、会社で最長10年間保存します。税務調査における最重要証拠となります。
合同会社で最も軽視されがちなのが、この書面の作成です。株主総会議事録のような厳格な形式でなくても構いませんが、以下の要素を含んだ「同意書」や「決定書」を必ず作成し、押印して保管してください。
- 決定日時と場所
- 出席した社員の氏名
- 決定内容(誰の報酬を、いつから、月額いくらにするか)
税務調査が入った際、調査官は必ず「役員報酬を決めた時の議事録を見せてください」と言います。この時に書面がサッと出てくるかどうかが、会社の信頼性を左右します。
合同会社の役員報酬を変更する手順は?
役員報酬を変更する場合、単に金額を変えて振込額を調整するだけでは不十分です。特に注意が必要なのが、社会保険料の改定手続きと、税務上で経費として認められるための要件確認です。
これらを怠ると、将来的に年金事務所から追徴金を請求されたり、税務調査で経費否認(追徴課税)されたりするリスクがあります。
社会保険の変更手順
標準報酬月額が2等級以上変動した場合、年金事務所への届出が必須です。
役員報酬の金額が変われば、連動して社会保険料(健康保険・厚生年金)の金額も変わります。金額変更に伴う手続きにおいて、以下の点に注意が必要です。
- 変更手続きの基準
役員報酬の金額が大きく変わり、「標準報酬月額」の等級が2等級以上変動した場合などが対象となります。 - 手続きを忘れた場合のリスク
正しい金額を申告しないと、年金事務所の調査が入った際に、過去に遡って保険料を徴収される可能性があります。- 本来より安く払っていた場合:不足分をまとめて支払う必要があり、資金繰りを圧迫します。
- 本来より高く払っていた場合:還付手続きが必要となり、事務処理が非常に煩雑になります。
- 届出先についての注意
役員報酬の変更について、税務署への届出は原則不要ですが、年金事務所への届出は必須である点を忘れないでください。
税務上の変更ルール
役員報酬は、利益操作を防ぐために原則として年度途中での変更ができません。増額・減額のいずれを行っても、ルールから逸脱した分は税務上のペナルティ(損金不算入)が発生します。
ただし、以下の特別な事情がある場合に限り、期中でも変更後の金額を経費にすることが認められます。
- 職務内容の重大な変更(臨時改定事由)
平社員(平取締役)から代表社員になった、病気で入院し役職を辞任したなど、役員の地位や職務が激変した場合が該当します。 - 経営状況の著しい悪化(業績悪化改定事由)
売上減少や利益目標の未達といった理由では認められません。資金繰りが逼迫しており、第三者(銀行や株主など)から役員報酬の減額を条件に支援を受けるような、客観的かつ深刻な状況に限られます。
変更を決めたら必ず「同意書」を作成する
変更を行う際は、開始時期や金額について社員(出資者)の同意を得た上で、必ずその内容を記した「決定書(同意書)」を作成し、保存してください。
これは税務調査が入った際、適正な手続きを経て報酬を変更したことを証明する重要な証拠となります。
合同会社の役員報酬に関してよくある質問
最後に、合同会社の役員報酬に関してよくある質問をまとめました。
資金繰りが厳しく、役員報酬が払えない時はどうする?
未払いでも「経費計上」と「源泉税の納付」が必要です。 現金がなくても、帳簿上は毎月役員報酬を計上(未払金処理)します。この際、源泉所得税の納付義務は発生するため、社長が会社にお金を貸し付ける(役員借入金)などして納税資金を確保し、適切に処理する必要があります。放置すると税務署から指摘が入ります。
役員報酬をゼロにすることは可能?
法的には可能です。 創業初期に赤字を抑えるためにゼロにするケースはあります。
- 赤字を抑えられる
- 個人の税金がかからない
- 社会保険(健保・厚生年金)に加入できない
- 個人の生活費をどう工面するか(貯金の切り崩しや借入)の計画が必要
役員報酬は3ヶ月以内に慎重に決定を
合同会社の役員報酬は、以下のポイントを押さえて決定しましょう。
- 事業年度開始から3ヶ月以内に決定する
- 定期同額給与(毎月同額)を守る
- 決定書(議事録)を作成して保存する
- 賞与を出すなら事前に税務署へ届け出る
これらを適切に行うことで、無駄な税金の流出を防ぐことができます。個別の最適な金額設定については、経営状況を総合的に判断できる税理士へ相談することをおすすめします。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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