- 更新日 : 2025年11月25日
法人登記のデメリットとは?設立前に知るべき費用や手続きを解説
法人登記には、設立・維持にかかるコストの増加、手続きの複雑化、社会保険の加入義務といったデメリットがあります。そのため、個人事業主と比べて金銭的・時間的な負担が増える点を理解しておく必要があります。
法人化(法人成り)を検討する際、節税などのメリットに目が行きがちですが、これらのデメリットを把握せずに進めると、かえって経営の重荷になる可能性もあります。この記事では、法人登記の具体的なデメリットをわかりやすく解説します。
目次
法人登記で発生する費用のデメリットとは?
法人登記とその後の会社運営には、個人事業主の時にはなかった様々な費用が発生します。特に設立時の初期費用、赤字でもかかる維持費用、そして事業を終える際の廃業費用は、あらかじめ理解しておくべきでしょう。
法人設立時に初期費用がかかる
法人の設立手続きには、法律で定められた法定費用がかかります。株式会社の場合は最低でも約20万円、合同会社でも最低約6万円の費用が必要です。これに加えて、手続きを専門家へ依頼する場合は別途報酬が発生します。
【法人設立に必要な法定費用の目安】
| 費用の種類 | 株式会社 | 合同会社 |
|---|---|---|
| 登録免許税 | 資本金の0.7%(最低15万円) | 資本金の0.7%(最低6万円) |
| 定款認証手数料 | 約3万〜5万円(一定の条件を満たす場合は1万5,000円) | 不要 |
| 定款用収入印紙代 | 4万円(電子定款は不要) | 4万円(電子定款は不要) |
| 合計 (電子定款の場合) | 約20万円 | 約6万円 |
個人事業主の開業手続きには費用がかからないため、この初期コストは法人化の大きなハードルの一つといえるでしょう。
赤字でもランニングコストがかかる
事業が赤字であっても、法人である限り支払い義務が生じる費用があります。代表的なのが「法人住民税の均等割」と「社会保険料」です。
法人住民税の均等割
法人住民税の均等割は、資本金の額や従業員数に応じて課税される税金で、利益が出ていない赤字の状態でも納税義務があります。事務所を置く自治体によって金額は異なりますが、最低でも年間7万円程度の負担が発生します。
参照:法人住民税|総務省
社会保険料の会社負担
法人は、役員が1名のみの場合でも、社会保険(健康保険・厚生年金保険)への加入が義務付けられています。保険料は会社と役員・従業員がそれぞれ半分ずつ負担(労使折半)する仕組みのため、会社は従業員の給与以外に社会保険料の会社負担分を支払う必要があります。この負担は、人件費を大きく押し上げる要因です。
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法人登記による事務手続きのデメリットとは?
法人化すると、経理や登記に関する事務手続きが格段に複雑化します。専門的な知識が求められる場面が増え、バックオフィス業務の負担は個人事業主の比ではありません。しかし、これらの負担は会計ソフトやクラウド型のITツールなどを活用することで軽減することも可能です。
経理・税務申告が複雑化する
法人の税務申告は、個人事業主の確定申告よりも複雑です。個人の青色申告でも貸借対照表や損益計算書を作成しますが、法人では作成すべき書類がさらに増えます。また、法人税の申告書は計算項目が多く専門知識を要するため、税理士に申告や決算を依頼するケースが一般的です。その際には、顧問料や決算報酬といった追加コストが発生します。
会計ソフトと補助金の活用
近年は、クラウド会計ソフトの普及により、これらの事務負担は軽減されつつあります。金融機関の取引データを自動で取り込み、仕訳まで行う機能を活用すれば、経理の専門知識がなくても日常的な処理が可能です。こうしたソフトの導入には、中小企業庁が管轄する「IT導入補助金」などを活用できる場合があり、初期コストを抑えながら業務効率化を図れるでしょう。
役員変更や移転のたびに登記申請が必要
法人は、登記事項(会社の重要な情報)に変更があった場合、2週間以内に法務局へ変更登記を申請する義務があります。例えば、以下のようなケースで登記申請が必要です。
- 役員の就任・退任・辞任
- 代表取締役の住所変更
- 本店の移転
- 事業目的の変更
- 増資(募集株式の発行)
これらの手続きを怠ると、代表者個人が100万円以下の過料(行政上の罰則)を科されるおそれがあります。変更のたびに手間と登録免許税(費用)がかかる点は、法人ならではの負担といえるでしょう。
なぜ法人には社会保険への加入が必須なのか?
法人登記のデメリットとして特に影響が大きいのが、社会保険の加入義務です。これはコスト増に直結するだけでなく、個人事業主の時とは働き方の前提が大きく変わる点でもあります。
強制加入の対象となる
法人は、業種や規模、従業員の人数にかかわらず、健康保険・厚生年金保険への加入が法律で義務付けられています。たとえ社長1人だけの会社であっても、役員報酬を受け取っている限り、社会保険に加入しなければなりません。
個人事業主の場合、常時使用する従業員が5人未満であれば加入は任意であるため、この点は大きな違いです。
保険料の会社負担が発生する
社会保険料は、会社と役員・従業員でそれぞれ半分ずつ負担します。例えば、役員報酬(標準報酬月額)が30万円の場合、保険料の総額はおおむね8万5,000円〜9万円前後(令和6年度・東京都の保険料率で試算)となり、その半分を会社が負担します。
従業員を雇用すれば、その人数分だけ会社の社会保険料の負担も増加します。こうした負担は、人件費の固定化につながり、資金繰りや経営の安定性に影響を及ぼす可能性があります。
自宅を本店所在地として法人登記するデメリットとは?
コストを抑えるために自宅を本店所在地として法人登記するケースもありますが、これにはプライバシーや契約上のリスクが伴います。安易に決定する前に、デメリットを十分に理解しておきましょう。
住所が一般に公開される
法人登記された所在地は、登記事項証明書(登記簿謄本)に記載され、法務局で手数料を払えば誰でも閲覧できます。つまり、自宅の住所が公の情報としてインターネット上にも公開されるということです。
これにより、不特定多数からの営業訪問やダイレクトメールが増えるなど、プライバシーや安全面のリスクが生じるおそれがあります。
賃貸契約や住宅ローン契約に違反する可能性
居住専用として契約している賃貸物件を事業目的で利用することは、賃貸借契約違反にあたる可能性があります。また、住宅ローンを利用して購入した物件も、その多くが事業利用を制限しています。
契約違反が発覚した場合、退去を求められたり、ローンの一括返済を迫られたりするリスクも考えられます。自宅を登記する前に、オーナーや管理会社、金融機関などに事前確認を行い、明確な許可を得ておくことが重要です。
許認可が取得できない業種がある
事業内容によっては、自宅を事業所として営業するための許認可が下りない場合があります。例えば、以下のような業種では、事業所の独立性や衛生管理、スペースの確保などが要件となるため、自宅での開業が難しいケースが多いです。
- 飲食店
- 建設業
- 人材派遣業
- 古物商
- 不動産業
これらの事業を計画している場合は、別途事務所や店舗を確保する必要があり、その分のコストが発生します。
バーチャルオフィスの活用でリスク回避も
自宅登記に伴うプライバシーや契約上のリスクを回避する方法として、バーチャルオフィスの活用が一つの選択肢です。バーチャルオフィスとは、事業用の住所や電話番号をレンタルできるサービスです。月額数千円から利用できるため、プライバシーを保護しつつ、都心の一等地の住所で登記することも可能です。
ただし、業種によっては許認可が下りず、銀行口座の開設で不利になるケースもあるため、注意が必要でしょう。
個人事業主からの法人成りのデメリットは?
個人事業主が事業を拡大して法人化する「法人成り」には、資産の引き継ぎや契約関係の名義変更、税務上のルールの変更といった、移行期特有のデメリットがあります。
これらは個人事業の時にはなかった手続きや制約であり、時間的・金銭的なコストが発生します。
事務手続きの引き継ぎが煩雑
法人成りの課題の一つが、個人事業から法人へ事業を引き継ぐための事務手続きです。法人設立後、スムーズに事業を再開するためには、これらの手続きを計画的に進める必要があります。
- 資産の引き継ぎ:
個人事業主時代に使っていたパソコンや車、在庫といった事業用資産は、法人へ売却するか現物出資する形で引き継がなければなりません。どちらの方法をとるにせよ、適切な価格評価や法的な手続きが必要です。 - 許認可の再取得:
建設業や飲食業など、許認可が必要な業種では、個人で取得した許可を法人に引き継ぐことはできません。法人として改めて申請し、再取得する必要があります。 - 契約の名義変更:
取引先との基本契約、事務所の賃貸借契約、銀行口座、電話回線など、個人名義で契約していたものは、すべて法人名義で契約し直す手間が発生します。
これらの手続きには時間も費用もかかり、一時的に事業運営に支障をきたす可能性もあります。
交際費の損金算入に上限が設けられる
個人事業主の時は、事業に関連する交際費であれば全額を経費として計上できました。しかし、法人になると経費として認められる金額に上限が設けられます。資本金1億円以下の中小法人の場合、原則として「年間800万円までの交際費全額」か「接待飲食費の50%」のいずれかしか損金に算入できず、上限を超えた分は損金不算入(=課税対象)となります。
参照:No.5265 交際費等の範囲と損金不算入額の計算|国税庁
個人の資産と法人の資産が明確に分離される
個人事業主は、事業資金を「事業主貸」として引き出し、生活費に充てることができます。しかし、法人の場合はそうはいきません。会社の資産と個人の資産は明確に区別されます。
社長であっても、会社の資金を個人的な目的で引き出すことはできず、「役員報酬」という形で給与として受け取る必要があります。この役員報酬の金額は、事業年度の途中で自由に変更できず、税務上の制約(定期同額給与)を受けるため、資金繰りの自由度は大きく低下します。
法人登記のデメリットを理解し最適な事業形態を選択する
法人登記には、社会的信用の向上や節税といったメリットがある一方、これまで解説してきたように、費用・手続き・社会保険の負担増、そしてプライバシーリスクといった多くのデメリットが伴います。
特に、赤字でも支払い義務のある法人住民税の均等割や、役員1人でも加入が必須となる社会保険料は、事業の収益が安定しない段階では大きな負担となり得るでしょう。
これらの法人化に伴うデメリットを正しく理解し、ご自身の事業規模や将来の展望と照らし合わせながら、個人事業主のままでいるのか、法人化を進めるのか検討しましょう。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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